よく旅行者が、現地の治安は? などと聞くが、一般論と実際論とでかなり違う。たとえば、一般論で言えば、ヨーロッパなんて、どこもあんまりいいところではない。だが、実際論としては、ある程度の良識があれば、そうそう巻き込まれるものでもあるまい。まして、旅行者となると、その人次第。

 とはいえ、ここしばらく、どうしても、というほどの用もないし、いろいろこっちで忙しくて、さあ、観光に遊びに行くぞ、という時間の余裕もない。えい、やっ、っと、午前中に乗ってしまえば、現地夕方に着くのはわかってはいるが、それほど気分が盛り上がらない。

 というのも、治安だ。こっちではほとんどニュースにもならないが、実際は、きな臭い話がいっぱい。未然に防いだというような小ネタは、かなり多い。そして、昨夏のニースの花火大会テロ、昨年末のベルリンのクリマテロのように、かんたんに現実化する。中東「難民」も、最初のころこそ好意的だったが、徒党を組んで力尽くで権利主張するようになると、受け入れ側の反発も高まる。ヨーロッパは、一般には、カネを落とす日本人は歓迎されるが、安価なものが溢れる日本でのように爆買いするわけでもなく、ただ来るだけの中国人には嫌悪感が向きだし。そして、どういうわけか、どこでも韓国人は激しく嫌われている。そして、連中に、日本人と中国人、韓国人の違いが顔でわかるはずもなく、まちがえられても面倒なだけ。

 おまけに、気候だ。気候が悪いから、現地の連中がカリカリしているのかもしれない。夏は酷暑、冬は極寒。この数年来、かなりひどい。住んでいたってしんどいのに、旅行でそんな気候の中をわざわざうろうろしに行くのは、浮浪者並みの話。そこまでしてなにも、と思ってしまう。

 行ってみたいところが無いわけじゃない。行けば多くの発見があるのはわかっている。だが、この治安、この気候をおしてまでわざわざという気分にはなれない。友人が1年のサバティカルを取ると聞いてうらやましいかぎりだが、彼もどうも国内でおとなしくしているようだ。私もいずれとは思うが、ヨーロッパの中でもこれまで比較的、温和で良好だったバーゼルのような町がかえってイスラムが多くて、近年は揉めていると聞くと、さてどこへと思ってしまう。いっそイタリア北部山麓とか、チェコ東部平原とも思うが、そんな大学も無いようなところでは、サバティカルにならないし。風土で決めるのは本末転倒のようだが、実際問題として、治安リスクの大きいパリやロンドン、ベルリンなどは、いましばらく問題外だろう。一方、ローマは、年来、気候が最悪。あんなところ、夏場に寄りたいとも思わない。

 まあ、そんなこんなで、ことしもチャリンコレースでも見て、旅行気分でいいか、というところ。どういうわけか、「成城石井」や「カルディ」のようなところだけでなく、「業務スーパー」みたいなところでも、最近はやたらヨーロッパの食品なども売っているし、わざわざ買い出しに行かなくても、けっこういろいろ手に入る。ドイツなどはまだグーグルアースが無いところもあるが、他のところなら、路地裏まで探訪できる。日本のマッサージチェアに座りながら、向こうの菓子をかじって、VRでグーグルアースの町歩きでもしているのが、とうざ、いちばん安全なのかもしれない。