2011年11月15日

食事をすると血糖値は上昇し、その後低下します。糖尿病及び予備軍でなければ、血糖値は、70mg/dl から、140mg/dl の間で動きます。病気でもない限り、血糖値は、この正常範囲からはみでることはまずありません。

糖尿病では、この血糖値が、正常の範囲をこえた状態が持続します。急速に発症する1型糖尿病では、のどの渇き、多飲多尿、だるさ、体重の減少などの症状が認められます。糖尿病の大部分を占める2型糖尿病では、初期に、自覚症状がほとんどなく、進行もゆるやかです。血糖が高くても症状がないことがありますので、健康診断での早期発見が、重要です。

糖尿病であるかどうか、その根拠になっているのは、糖尿病網膜症です。糖尿病網膜症になった方たちの過去の血糖値を詳細に調べ、診断基準が定められています。

血糖値は、常に動いています。血糖の平均値を代表し、HbA1c(過去1-2か月の血糖値と相関)を、低い値を代表して、早朝空腹時血糖値を、高い値を代表して、経口ブドウ糖負荷試験の2時間値を、食事と関係なく測定した血糖の代表として随時血糖値が、基準に使われています。

経口ブドウ糖負荷試験2時間値が200mg/dl以上、もしくは、随時血糖が200mg/dlを常時こえていれば、糖尿病型と診断します。随時血糖200mg/dlは、早朝空腹時血糖値で、126mg/dl前後に相当します。この値をこえていれば糖尿病型と診断します。

血糖値(空腹時126mg/dl以上、75g経口糖負荷試験で、2時間200mg/dl以上、随時200mg/dl以上のいずれか)、もしくは、HbA1c6.1%以上で糖尿病型とされます。

糖尿病と診断されるには、

(1)血糖値とHbA1cともに糖尿病型、
(2)血糖値のみ糖尿病型で、糖尿病の典型的な症状もしくは、確実な糖尿病網膜症を認める場合、
(3)HbA1c値のみ糖尿病型で、再検査の結果、
  ①血糖値とHbA1cともに糖尿病型、
  ②血糖値のみ糖尿病型、の場合です。


以上の条件を満たさない糖尿病及び予備軍の存在が知られています。

糖尿病の早期発見・治療のため、特定健診では、空腹時血糖110mg/dl以上を、メタボリックシンドロームの条件の1つとしています。

空腹時血糖の正常値は、110mg/dl以下です。空腹時血糖が正常でありながら、食後のみ血糖値が高い値を示す場合があります。食後の高血糖は、動脈硬化を進ませることが知られています。

糖尿病の基準を満たさなくとも、血糖値が高めの値を示した場合、さまざまな予防の方法が考えられます。糖尿病にならない、また動脈硬化を進行させないため、食習慣を見直す。またウオーキングなどの運動に取り組む。また、糖尿病予防に有効とされる薬の内服を開始することも選択肢のひとつです。




 



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2011年11月14日

糖尿病や高血圧など、病気になりやすい体質をもった方が、体に負担のかかる生活習慣を続けることで、病気を引き起こすことから、「生活習慣病」と呼ばれるようになりました。

朝起きる時間、身づくろいの順番、帰宅後の過ごし方など、日々の生活のリズムには、ひとそれぞれの理由や意義があります。この生活習慣を、少しでも変えるのは、よほどのことがない限り、難しいことと思います。

気持ちの上で無理に無理を重ねても、長続きはしません。ダイエットに熱心に取り組んだあとに、リバウンドを起こす場合が、実に多くあります。たとえ理屈の上で正しい方向であったとしても、生活習慣を変える場合、「ささやかな変化」にとどめることがコツです。そのかわり、継続することです。

栄養士さんから、食品交換表を使った栄養指導を受けて、そのとおり実践している方は、意外と少ないという印象を持っています。栄養相談は、食習慣の中で、1つでも2つでも、取り組む課題を見つける「作戦会議」と考えてみてはいかがでしょうか。

間食を控える、箸置きをおいて、ゆっくり噛んで食べる、腹八分目にする、1日3食にする等で、糖尿病のコントロールをよくすることが、期待できます。

3日坊主で終わりそうになっても、気にすることはないと思います。生活習慣を変えようと努力した事実は、決して無駄にはなりません。再度、努力目標を下げてチャレンジしてみてはいかがでしょうか。



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2011年11月12日

昭和30年代前半、糖尿病の方の人数は、今ほど多くはありませんでした。おそらく現在の50分の1位かと思います。一食あたり、ごはんを茶わんに1-2杯、お味噌汁と漬物、そして魚中心のおかずが平均的なメニューだったかと思います。一人あたりの魚の量も、今と比べて、相当に少なかったと記憶しております。テレビのコマーシャルでは、「たんぱく質が足りないよ」と流れていました。イメージとしては、塩でごはんを食べているような感じです。低たんぱく・低脂質・高炭水化物・食塩の過剰摂取ということになります。

高度経済成長を経て、食生活の欧米化が進みました。肥満・脂肪肝・糖尿病及び予備軍の方が、増加し続けています。昭和30年代前半と比較し、意外にも、食事の総摂取カロリーは、あまり変わっていないとされます。栄養素のバランスが大きく変わっています。高たんぱく・高脂質・低炭水化物・食塩の過剰摂取の若干の改善、といえるかと思います。

脂質の取りすぎは、動脈硬化を促進します。欧米では、脂質の制限による狭心症・心筋梗塞の予防に力を入れていることは、周知の事実です。

昭和30年代前半、働き盛りの中高年男性が、脳卒中やがんで倒れることが多く、国として、「成人病」という言葉を作って、予防に力をいれました。その一つが、日本各地で行われた「減塩指導」です。食塩の過剰摂取は、高血圧の発症、動脈硬化の促進、胃がんの発症率の増加などと関係しております。

慢性腎炎や、糖尿病性腎症などで、腎臓の働きが低下した場合、腎機能の低下を遅らせるために、たんぱく制限・塩分制限が行われます。実際、このたんぱく制限・塩分制限が厳密に守られた場合、人工透析になる手前で、相当期間生活できている例が、報告されています。1日に必要なカロリーを確保したうえで、低たんぱく・塩分制限食となると、当然高糖質食となります。

そこで、今話題になっている炭水化物を制限したダイエットです。低糖質ダイエット、低インスリンダイエットとも、言われています。

炭水化物を摂取すると、確かに、血糖値はすぐに上昇します。たんぱく質や脂質は、血糖値をあまり上昇させません。ひとのエネルギーは、主として、空気中の酸素と、体内のブドウ糖をもとに、細胞の中でつくられています。体内で、一定量のブドウ糖は欠かせません。ブドウ糖のもとになる炭水化物を、直接摂取しなくとも、体のなかでは、たんぱく質や脂質から、ブドウ糖をつくりだすことになります。

炭水化物は、糖質と食物繊維の総称です。ごはん、パン、めん類、イモ類、くだものに多く含まれます。低炭水化物食をとるためには、たんぱく質・脂質を相対的に、多くとることになります。ごはんを減らすか、極端な場合ごはんなしで、おかずを多くとる食事になります。

肉・魚などのたんぱく質を多く含むおかずは、味付けに食塩が欠かせません。また、油で炒めたり、揚げたり、脂質も当然使います。

過去、糖尿病の治療として、低炭水化物ダイエットがなされたことがあります。血糖は確かに改善しますが、結局すい臓に負担をかけつづける高脂質・高タンパク食のため、重症の糖尿病になってしまうと言われております。

明年、糖尿病の食品交換表が、改定される予定で作業が進んでいます。取りまとめの責任者の方が、低炭水化物ダイエットの害について、警告をしております。

昭和30年代前半から、現在へ、食事のバランスは、低炭水化物食に大きく変化してきていると思います。さらに糖質の制限を強化する低炭水化物ダイエットは、健康にとってよいことか、大いに疑問です。




住友内科クリニックsumitomoclinic at 12:50│コメント(0)トラックバック(0)糖尿病 | ダイエット