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Spaceghostpurrp/Rvidxr Klvnはその輪をどんどんと広げているが(前回のエントリー後に出たThe Clvsh『OPMは傑作!)、彼/彼らを一躍有名にしたのが、今をときめくA$AP Mob(エイサップ・モブ)との仕事だろう。A$AP Mobはニューヨーク州ハーレム出身のA$AP Rockyを中心としたクルーで、2011年にデビュー・ミックステープLiveLoveAをリリースすると、たちまち話題になり、現行シーンの最重要アクトとなった。


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A$AP Mobについては、この記事が詳しい。A$AP Yams、A$AP Bari、A$AP Ferg、A$AP Ty Beats、A$AP Nast、A$AP Twelvy、A$AP Antと、各メンバーのプロフィールがインタヴューとともに詳細に掲載されている( リーダーのA$AP Rockyは別項で取り上げられている)。謎だらけのRVIDXR KLVNとはずいぶん違うわけだが、両者の親交は深い。『LiveLoveA』でSpaceghostpurrpが1曲をプロデュース、その曲を含めた2曲でフィーチャリングされているほか、Jucy J『Blue Dream & Lean』ではA$AP RockyがSGPと同じ曲で客演。さらにA$AP Rockyの2012年新曲「Pretty Flacko」もSGPがプロデュースしている。また、前回掲載したレイダー・クランのメンバーであるPerrionの『Circuit Breaker』には、A$AP Fergと(上の紹介記事には載ってなかった)A$AP Soloman Fayeが参加しているし、「A$AP Worldwide x Raider Klan Stash House Freestyles」と題されたこんな動画まである。

  
これは「Part.4」で、そのほかにいくつもアップされている


A$AP Rocky以外のメンバーはまだアルバムはリリースしていないものの、それぞれ単発の曲は発表している。すべてを網羅しているわけではないが、datpiffにひと月前にアップされたA$AP Mobのコンピレーションは役立つかもしれない。また、A$AP Rockyが参加したアルバムとして、Smoke DZA『SweetBabyKushedGodSchoolboy Q『Habits & Contradictionsも聞いておきたい。特に後者は非常にクォリティの高い仕上がりで、彼が所属するTop Dawg Entertainmentの、Kendrick Lamar、Jay Rockといった他の面々と併せ、必聴。なお、Schoolboy Qについてもこちらの記事に詳しい説明がある。 


Schoolboy q - Habits_and_Contradictions by Prince K Frempong


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『LiveLoveA』の高い評価には、トリルウェイヴ/クラウド・ラップの文脈が大きく寄与している。同盤では、Spaceghostpurrpのほか、Beautiful Lou、Soufein3000、 DJ Burn Oneらがプロデュースに関わっているが、何といっても5曲を手掛けたClams Casinoが核となっている。Mike Volpeこと、Clams Casinoはニュージャージー出身のプロデューサー/トラックメイカー。Balam Acabが主催するウィッチハウスの総本山、Tri Angle RecordsからRainforest EPもリリースしているが、ヒップホップへのトラック提供で名を挙げた人で、Lil B、Soulja Boy、Main Attrakionz、Mac Millerと、提供先はいずれもヒップホップ界のライジング・スターばかりだ。 

彼の仕事ぶりはInstrumental Mixtapeでだいたいを知ることができる。妖しく浮遊するシンセとポスト・ダブステップ的なビートが組み合わされた、ゴシック・ダンス・チューンの数々は、まさしくウィッチハウスの本流。A$AP Rockyの『LiveLoveA』は、ウィッチハウスの流行やLil B等へのトラック提供によって、プチ・ブレイクを果たした彼が大きくフィーチャリングされた初めてのアルバムであり(ブレイク前の作品としてはこれなど)、Lil Bやオッド・フューチャーなど、もやもやと盛り上がりつつあった同シーンの決定打として迎えられた一枚といえるのだ。そして同時に、Spaceghostpurrp/Rvidxr KlvnとClams Casino/Tri Angle Recordsという、トリルウェイヴ/クラウド・ラップ・シーンの双璧を同じ場に介させたという点でも、非常に意味が大きいだろう。


(タイトルは違うが、『Instrumental Mixtape』と同内容)

 
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そんな、Spaceghostpurrp、A$AP Mob、Clams Casinoの関係に、さらに彩りを加えるのが、オークランドのMondre M.A.N.Squadda Bのデュオ、Main Attrakionzだ。彼らのBlackberry Ku​$​hにはSGPプロデュースの「Stoner Gang (snippet)」が収録されているが(ボーナス・ディスクに完全版収録)、これはSGP『Blvcklvnd Rvdix 66.6 (1991)』収録の「STONERGANG RAIDERS」と同じもの。同曲では、ウィッチハウスやSGPの回で言及したアラバマのSortahumanがフィーチャリングされており、このシーンの担い手たちがそれぞれつながっていることが良く分かる。また、昨年、さまざまなベスト・アルバム企画で取り上げられていた808s & Dark Grapes IIには、Clams Casinoプロデュースの「Take 1」を収録。ここで客演しているのはA$AP Rockyであり、同曲は彼の『LiveLoveA』にも「Leaf Feat Main Attrakionz Prod By Clams Casino」として収録されている。




2061177406-1Main Attrakionzの『808s & Dark Grapes II』 はクラウド・ラップの名盤として必聴だが、 Mondre M.A.N.、Squadda Bそれぞれのソロ作やMain Attrakionzを中心としたクルー、Green Ova Undergrounds周辺も同傾向のミュージシャンが多いのでそちらも聞いておきたい。Mondre M.A.N.のソロ作MANは傑作だ。“Dreamcollabo”と称し、1曲ごとに違うプロデューサーと組んだ全9曲(ボーナス・トラック含む)は、どれもドリーミーかつソウルフルな出来で、ひたすら心地好い。しかし、この本編以上に素晴らしいのが、同盤のリミックス版M A N // R E M I X E D。「Cloud // Zachg Bass City Forevergladian Remake」を筆頭に、原曲のふわふわ感、どろどろ感を増幅させた、深い味わいのリミックス・ヴァージョンが並ぶ。Squadda Bはラッパーとして非常に客演が多い人だが、ソロ作も数枚出している。最新作はBack $ellin Crackだ。




ontask『MAN』、『M A N // R E M I X E D』のクールなアルバム・カヴァーはOnTaskFamilyのデザイン部門=JustOnTaskによるもの。OnTaskFamilyはさまざまな分野のアーティストを抱える集団で、デザイン、写真、映像などのほかにも、AhyveSpace Ghost(Spaceghostpurrpとは別人)といったラッパー/プロデューサーを抱えており、アルバムも何枚もリリースしている。すべての作品はここでダウンロードできるが、そのなかにはMain Attrakionzのもう片方、Squadda BのI Smoke Because I Dont Care About Deathのジャケットも掲載されている。また、Sum More Shit』『Dharliingといったコンピレーションは、GrimesやMemory Tapesといったチルウェイヴ勢、Burial「Shell of Light」のShlohmoミックスなどを収録した、ちょうどここ数回書いているようなポスト・チルウェイヴ/ポスト・ダブステップな内容なのだが、同時にA$AP RockyやMain Attrakionz、後述するMetro Zuといったトリルウェイヴ/クラウド・ラップ勢も同居させており、彼らを結び付ける、媒介としての役割も果たしているようだ。


1630055021-1Main Attrakionzが中心となっているGreen Ova Undergrounds周辺では、まず、つい先日Green Ova Undergrounds名義で発表されたコンピレーションDiamonds Of God EPを挙げたい。全8曲と短いが、総じてクォリティが高く、クラウド・ラップ/トリルウェイヴ・シーンの深化を感じることができる良作だ。Main Attrakionz以外のアクトでは、We$tern TinkShady BlazeRyan Hemsworth(Shady Blazeとの共演盤もある)、Silky Johnson.L.W.H.、Julian WassNem270SKYWLK、Dope G、Marlee Bあたりが近いところだろうか。なかでも、.L.W.HとJulian Wassのデュオ=The Executive SeriesがMain AttrakionzのアルバムをリミックスしたChandelier Reduxや、oOoOOやPhase Oneといったウィッチハウス/チルウェイヴ系のトラックを使ったWe$tern Tink、Main Attrakionzに次いでGreen Ovaを代表するShady Blazeは必聴。また、オークランドのデュオ、FriendzoneによるコンピレーションKuchibiru Network 2は、Green Ova周辺のアーティストをうまくまとめた好編集盤だが、日本のラッパーCarios、プロデューサー=konyagatanakaによる「田中仮雄」にD.K.X.O.が参加したトラック「Long Distance」を収録していることも注目だろう。なお、彼らがかかわっている日本のヒップホップ集団T.R.E.A.M.のサイトにはFriendzoneのインタヴューが掲載されているので、要チェックだ。T.R.E.A.M.はこれまた謎の多い集団でよくわからないのだが・・・。



Kuchibiru Network 2 by FRIENDZONE
PUNPEE (PSG) "P≠† (Who is Tanaka?)" by SUMMIT2011
PSGのPUNPEEによる、今夜が田中とはだれか? T.R.E.A.M.とは何か? についての曲だが、これを聞いても彼らが何者なのか、分かるわけではない。むしろ、「Long Distanceが出来るまで」と題された、こちらの記事に手掛かりがありそうだ。
 

次回で終わりにします