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1位 『Purple Naked Ladies』 The Internet  関連記事

OFWGKTAの紅一点、Syd Tha KydとMatt Martiansのデュオの初作。90年代R&Bに、ゲスト参加もしているQuadronに似たエレクトロニック・ソウル、マットが組んでいるJet Age of Tomorrowのコズミック・ファンク、オッド・フューチャーのトリルウェイヴといったスパイスをまぶした、2012年屈指のヴォーカル・アルバム。吸い込まれるような音色のシンセと、心地好い揺れは、陶酔感たっぷり。迷わず1位にした。

2012年はR&Bの年だった。もちろん、R&B本道のことではなく、黄金期のR&Bを聞いてきた「非R&Bシンガーたち」による、似非R&Bのこと。ここ数年のトレンドのひとつである、音響の快楽を利用した、ブルー・アイド・ソウルの新しいかたちというか、歌モノのあり方が、アンビエントR&Bや、エレクトロニックな歌モノや、USインディ・シンセ・シーン(の一部)などとして、いろいろなところから提示された年だったように思う。それと、あと個人的には、オッド・フューチャーの多彩さを改めて実感した年でもあった。フランク・オーシャンのデビュー作は世界から絶賛され、メロウハイプのアルバムも傑作だった。オッド・フューチャーは、タイラー・ザ・クリエイターだけではない。個人的にアツいと感じていたそれらの動きを象徴するのが本作だった。

シドはレズビアンであり、オーシャンはゲイであることにも彼らの多彩さは表れている。ヒップホップと同性愛の関係については以前書いたように、Queer Rapの面々とはまた違うやり方で、彼らはヒップホップを変えていくかもしれない。






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2位  『Guitar & Voice』 Eric Chenaux 紹介エントリー 関連エントリー

トロントの天才ギタリストにして、同地のインディ・シーンの最重要人物による4枚目。サイケデリックなエフェクトを施したエレクトリック・ギターとネオ・クラシカルなストリングスが幻想的に重ねあわされた幽玄な世界。ぬくもりのある声と素朴に爪弾かれるアコースティック・ギターが生み出すタイトル通りのパーソナルな雰囲気。その両方が絶妙に重なるさまが美しい。
 




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3位 『channnel ORANGE』 Frank Ocean 紹介エントリー

カミングアウトも話題になった、OFWGKTAのシンガーによる初作。柔らかな声質によく合う、ゆらゆらとしたアンビエントR&Bを基調とした内容で、ファルセットや多重コーラスを駆使する姿にはマーヴィン・ゲイも重なる。オーケストラとの絡みや、BBNGのようなジャズ感、プログレ的な曲展開など、流行のアンビエントR&B風でも、それにとどまらない魅力がたっぷり。デビュー前の音源とは比べ物にならない。
 



 
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4位 『Mysterious Phonk』 Spaceghostpurrp 関連エントリー 関連エントリー

オカルト集団レイダー・クランの中心人物による、4ADからの初正規盤。90年代Gラップ経由の骸骨や十字架といったオカルト的意匠、チョップト&スクリュードが生むホラーな響き、『モータル・コンバット』の恐怖の効果音などを混交させたマイアミの悪夢。ヘヴィなオカルト的趣向を纏った酩酊感たっぷりのTrillwaveには、一年通して気持ち良く悪酔いさせてもらった。12月に出した『B.M.W. EP』も良かった。


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5位 『Lucifer』 Peaking Lights

Aaron CoyesとIndra Dunisのカリフォルニアのサイケ夫婦デュオの3枚目。レゲエ/ダブやクラウト・ロックなどをベースにした、クール&ルーズなコズミック・ラウンジ・ミュージック。これまでよりもレゲエ~カリブ色が強い内容で、グルーヴィなベースやトロピカルなビートが強調されている。いつものように淡々としながらも、そうした要素がスモーキーで幻想的なダブ・ワールドに豊かな彩りと小気味良さをもたらしていて、非の打ちどころがない出来に。



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6位 『Post-Empire』 Will Stratton 紹介エントリー

カリフォルニア出身の男性SSWの4作目。穏やかな声と確かなギター・テクを持った人で、ギターの多重録音、フィールド・レコーディングのサンプル、ストリングスや女声を効果的に配しながら、奥行きのある幽玄な世界をつくりだしていく。ブルースやフォークといったアメリカーナな音楽を、幻想的な音響で包み込んで描く”ポスト・エンパイア”。ノスタルジーと空想がごっちゃになった、彼の脳内にあるアメリカの風景がもやもやと立ちあがってくる。






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7位 『#MAJI超!』 HIGH 5  関連記事

岩国のヒップホップ・ユニットによるミックステープ。「意味ないことにこだわる主義」(どの曲かは忘れた)のリリック通り、無意味な言葉の羅列、というか酷い下ネタのオンパレードに驚愕するが、それ以上に素晴らしいのがMaster Cを始めとした声の曲芸ぶり。サーカスでストッリップ・ショーを観ているような、アクロバティックな珍芸に悶絶する。既に解散してしまったが、広島のToy Soldierなどもメンバーをに迎えながらMVJI MOBとして活動中。


ジューク×日本語ラップ企画の「160or80」の応援歌も担当!


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8位 
『Silver & Gold』 Sufjan Stevens
米インディ最強のSSWによる、2006年に続く、ふたつめのクリスマス・ボックス。彼流にアレンジしたスタンダードなクリスマス・ソングとオリジナル曲が混在する全58曲はどれもホリデイ感溢れる素晴らしいものばかり。ただ、50州シリーズの作風だけではなく、『The Age Of Adz』やs/s/sのエレクトロニックな曲もたっぷりで(ガンダム・ジャケットのやつ最高!)、前作よりもヴァリエーションは豊か。ほんわかしつつ、凄みがある。年末にはラッパーとのコラボ・ミクステも。







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9位 『青い夜のさよなら』 寺尾紗穂 紹介エントリー

日本の女性SSWの5枚目。キセル、七尾旅人、DARTHREIDERら、畑の違うアーティストがピアノ弾き語りの寺尾の曲をアレンジ。あちらこちらに散りばめられたSEが楽しいイルリメの「はねたハネタ」(DARTHREIDERのカヴァー)が白眉だが、それぞれの特徴が出た好アレンジばかり。電子音に囲まれれば囲まれるほど、ラップやSEが目立つほど、物語性のある歌詞、詩情溢れる歌い口、清冽なピアノは、凛と存在感を増すようで、弾き語り以上に胸に迫る。
 






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10位 『Vicious Lies and Dangerous Rumors』 Big Boi

Outkastの片割れのソロ2枚目。A$AP RockyやBig KRITなどのラッパーから、Little DragonやWavvesといったインディ・ロック寄りの人まで、ほぼ全曲にゲストを招集。客演者に合わせたサウンドはかなり幅広いが、大活躍のPhantogramやJai Paulを始め、エレクトロニックな歌モノ志向の人選が基本で、彼らによる「歌」が、多彩さが雑多に陥らない支えとして機能しており、耳当たりは非常にメロディアス。