※この記事は、元々2015年8月25日に公開した内容になります。誤字脱字を修正する際、一時的に非公開にしていました。ですので、本文に記述されている「先日」や「○年前」となっているものは、すべて2015年8月25日の「先日」や「○年前」という意味になります。
 読む際、その点だけご留意くださると助かります。







 自室の窓にはシャッターが付いており、シャッターを降ろす→窓を閉める→鍵を二重に掛けるといった、なんとも安心かつ面倒なつくりとなっている。

 その面倒臭さが災いし、この部屋の窓は年中シャッターを降ろしきったまま、年始にしか開かれることがない開かずの窓状態……。

このシャッターを普段上げていなかったことが、騒動の一因といえるのかも知れない。










【シャッターを叩く音】










 ここ数ヵ月、俺はあることに関して頭を悩ましていた。

 週に1、2回起こるそれは――シャッターの音。

 閉まりきっているシャッターを、まるで誰かが正拳突きをしたかのような音が唐突に発生するのだ。

 昼間などであれば、弟の友人が『遊びに来たぞ』といった合図に叩くこともあるため、気にはならなかった。

  しかし最近、これらの現象が日に日に増してきた。それだけでなく、夜中にも関わらず叩かれ始めたのである。

 弟の友人であれば、夜中にシャッターを叩く等という不躾なことは絶対にしない。

 風が強いせいかと思うも、隣のシャッターは、うんともすんともピクリともしない。

 そしてある日の丑三つ時、外から、椅子を引き摺るような音が、微かに聞こえてきたのだ。

 ビビりの私は、心臓が飛び出るかと思うくらい驚いて、頭の中もパニック状態になってしまった。

『ホームレスが休んでいるのか?』

『いやいや、泥棒か!』

『……え、まさか、まさか幽霊!?』

『シャッターの主、ポルターガイスト!!』

 不安な気持ちは収まらない。


 それから数日。


 もはや日に1度は、シャッターが叩かれるようになってしまった。

 毎回、不意打ちに近いタイミングで叩かれるのは心臓に悪い上、近所迷惑でもある。

 ――確認した方が、良いのだろうか?





 そう考えていた最中、その日はついにやってきた。





 普段であれば1~2回叩けば収まる筈が、5、6と増えていき、もはや確認しなければ、いつになっても緊張が解けなくなってしまったのだ。

『確認しなければ――いつまで経っても舐められっぱなし! 誰かいたら怒鳴りつけてやる!!』

 そう決心した自分は、外にいると思われる存在に気付かれないよう、そーっと近付くことを画策した。

 シャッターを開けたら、その音で察せられてしまうし……何よりも、いきなり目の前に、満面の笑みを浮かべるドナルd......ピエロなんかがいたとしたらメッチャ怖いじゃんっ!

 んなアホな。自分に言い聞かせても、馬鹿げた思考は止まることを知らない。

『行くぞ! ......あの~、瑠奈さん? つ、ついてきて貰ったりとか――その』

『は?』

『無理ですよね、そりゃそうですよね! すみませんいってきます』

 あいつホントに俺のタルパなの? あんな冷たいのに? あんな怖いのに?

 自らの片割れである瑠奈(※タルパ)からの、あまりにも冷酷な返答。抑えきれない愚痴をこぼしつつ、懐中電灯片手に玄関から外へ出た。





 マンションをぐるりと周り、ベランダ側へ到着。

 気づかれないようライトをつけないで、自室の窓前へ向かい、静かに歩き出す。

 恐怖と好奇心が混ざりあい、奇妙な感覚に襲われる。

 目の前にいるはずのソレへ、ゆっくりと、しかし確実に、一歩ずつ近寄っていく。

『っ!?』

 自室の前から十数メートルに到達したとき、再びシャッターを叩く音が響いた。

 それにより、まだ“ソレ”がいることを強く確信する。

 しかし、なにやら変な気がする。ああまでハッキリ聞こえたのに、シャッターを叩く者の姿が捉えられないのだ。

 ……おかしい。やっぱりおかしいだろ。


 ――たしかに、ライトを点けていないため、まだ視界は薄暗い。

 ――たしかに、ソレとの距離は、まだ10メートル以上離れてはいる。


 けど……人影1つ見えないなんて、いくらなんでもおかしい。この距離であっても、普通なら何かしら見えるはずだ。なのに、それらしき姿は、まったく視界に入らない。

「ま……マジで、ゆ……幽……霊……なの……か……?」

 震える手足を、無理やり抑える。ここまで来ておいて逃げ帰るなんて、無様だろ砂風。やるんだ、いけ、見るんだ砂風! 自身を鼓舞させながら、ベランダへにじり寄る。例の場所まで、あと数メートル。

 怖くて前を正視できず、顔を横へと背けてしまう。それでも、横目で様子を窺うのを止めない。

 ──ターーーーーンッ!

『!?!?』

 自室の窓から、もう5メートル離れていない。向かい合っていてもおかしくないほどの至近距離にいる……のに......音しか聞こえないっ!?

 もう相手には見えている。目の前でシャッターを叩き挑発する幽霊――やってやらぁぁあぁああぁぁぁあぁぁっっちっっくしょょぉおぉおぉぉぉぉぉっ!!!

 あまりの緊張に頭が狂いそうになった俺は、半ばヤケクソ気味にライトを点け、同時に光を視線でも追う。

 すると……そこには……………..











「シャーッ!!」











「…………」

 小さな物体が……3つ。……いや、3匹と表した方が正しいだろう。

「何でお前ら、んなことしてるんだよ?! 俺の緊張返せよバカぁぁぁっ!!」

 あまりの脱力感に耐えきれず、膝を崩しながら、嗚咽なのか雄叫びなのか区別がつかないような声を発してしまう。

なんともバカな話だ。よくよく考えれば、一番可能性が高いのはまずコイツらだってわかるだろ!? このバカ! バカ砂風!

 そう......ベランダには、色とりどりの小さな子猫が3匹いたのだ。それらはバラバラの行動に勤しんでいる。

 
 まず、リーダー格らしき1匹目。彼(彼女?)は威風堂々として面持ちで、椅子の上に鎮座している。俺に対し、一瞬だけ視線を寄越すが、『どうでもいい』というかのごとく元のポーズに戻ってしまった。


 もう一匹は、なにが嬉しいのかわからないが、庭――いや、ベランダを駆け回っている。お前は犬か。


 そして、俺に威嚇をかましてきた最後の一匹は……なぜか、シャッターに向かって、一定の周期で身投げをしていた。ぶつかる場所が上になればなるほど、聞き慣れた音が響いてくる。


 弟の友人や、不審者などではなかった。もちろん、幽霊でもない。

「ニャー」

「うぐっ……くそっ、可愛いじゃねーか!」

 それはそれは、とても可愛い子猫のイタズラだったとさ。












 何とも下らない真実。もう、シャッターを叩く音が癒しにしかならない……w

 そもそもの話、どうしてこのマンションの周囲には、こうまで沢山の猫が住み着いてるの?

 そういえば前にベランダ覗いたときも、優雅にひなたぼっこしてる猫がいたし……。誰かが餌でもやっているのだろうか?

 その割りには近づくと一瞬で逃げ去るんだよなぁ……あの威風堂々猫は逃げなさそうだったけど。

 下らない話ですが、本気で怖かったのも手伝い、ついついブログに書いてしまった。

 ……また来ないかな。





【追記】
 写り悪いけど、どうにか3匹のうち2匹だけ撮影に成功。

1匹目(判りにくいけど黒い物体のやつ。こいつはタックル猫。窓開けたら逃げられてしまった)
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2匹目(こちらは前の反省を生かし、窓の内側からそーっと撮影……結局逃げられるというw)
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 しかし、2匹目の猫を撮影した時、新たなことが判明するという。

 この猫、兄弟かは知りませんが、同じ柄のが3匹固まっていた……。

 何とか撮影に成功した後、逃げる前に撮ろうとシャッターを上げたら、同じ柄の猫がもう2匹いたという……。

 直ぐ散るように逃げ去って、撮影には失敗したのが悔やまれる。

 この前の猫は、3匹共にバラバラの柄。最低でも5匹いるとか……撮りたいなぁ。

 飼い猫(※)が、外に向かって唸っているのを度々見掛ける。もしかしたら原因はこれだったのかも知れない……。





(※)飼い猫『ミント』
 自分がここに引っ越してきた当初、父が連れてきた子猫である。
 仕事現場の端、親猫に見捨てられてしまったのか、長いあいだ一匹だけで必死に鳴き声をニィニィ上げていたらしい。
 作業をしながらそれを見ていた父が『台風来るのに親猫が来ない! 飼うしかねぇ!』と、段ボールに入れ現場から連れてきたのであった。
 当初、本当に小さく、手のひらに乗るくらいのサイズしかない上、まだ上手く鳴けないらしく、手足もプルプル震えており、家族誰もが『可哀想だけど長くはないだろうな……』と察していた。
 それに反し、翌日には復活。今では、わざとらしく人の抱き枕の上に鎮座し、こっちを見下ろし挑発するくらい元気になっているのであった。
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【2017年8月――追記】

 近所には今でも猫が溢れている。どうやら大家も原因の一端を担っているみたいだった。

 とはいえ、きちんと病院へ連れていき、駆除されないよう避妊手術をしているらしい。

 そんな大家宅には、4匹前後の猫が代わり代わりに暮らしている(飼う時期が揃っていたため、最初から飼っていた猫が亡くなるのも揃ってしまったらしく、寂しかったのだろう)。

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協力オナシャーッッス↑