2008年09月09日

3094059b.jpg作編曲家の小川よしあきさんが亡くなられた。(60 歳代後半だと思うが心臓病の持病があった)僕は音楽業界に入った1977年くらいから数年はよく小川さんのレコーディングに立ち会っていて、弟子だったわけではないが、ほんとうにお世話になった。神田小川町の生まれ育ちの生粋の江戸っ子の小川さんは、いかにも江戸っ子らしい都会的なセンスの人だった。雑学博士の面も持ち合わせていて飲みに連れていってもらうと楽しい話がはずんだ。僕のようなロック育ち、ジャズ育ち人間がストリングスを作曲できるようになったのも小川さんのスコアを見て憶えた面も大きい。熱い情緒派ではなかったけど、かといって理論派でもなかった。江戸っ子さっぱり派でしょうか。ただプロデューサーには最も重宝にいろんな音楽をうまいことつくってくれる大事な人だったのではないでしょうか。

その小川さんも音楽は独学のようだが若い時に映画音楽の巨匠でシンセサイザーでのクラシックのパイオニアの作曲家富田勲さんのところに出入りしていたとも聞く。
代表作であるテレビドラマ『岸辺のアルバム』は僕にとっても思い出に残るドラマで、日本を代表する脚本家の山田太一作の社会派風ホームドラマとでもいうべき大ヒット作だった。多摩川の狛江が舞台のそのドラマは普通の幸福が成立していると思っていた普通の家庭が、実はいろいろあり、一家の主(杉浦直樹)は商社マンで東南アジアで人身売買が絡む違法行為をしていたり、娘は娘でいろんな意味で乱れていたり、で家庭が崩壊していく、妻役は八千草薫だった。家庭が内側から崩壊していく時、台風で多摩川が洪水を起こし狛江のこの家が流されてしまう、実際の家も崩壊していった時に家族は精神的にあるつながりへ導かれる・・・という深い話で実際あった狛江の洪水をもとに山田太一が鋭い作品を書いた。

音楽は主題歌のジャニス・イアンの「Will You Dance?」。これはハバネラ風リズムにのったジャニスの内省的な、でもリズムのある素晴らしい楽曲。そしていわゆるタイアップのテーマ音楽ではなく実際に劇中でも使用され、小川さんの劇伴奏音楽にもそれを反映したもので制作された。この時代は予算も恵まれていて毎週音楽録音を早稲田AVACOスタジオで行っていた。(今の時代NHK大河ドラマでさえ「ため録り」と聞くので、毎週、その話ごとの音楽録音してるドラマはないのではないか)
地味な仕事かもしれないが小川さんの秀逸な音楽がとても生きたと思う。僕はTBSテレビでの打ち合わせとレコーディングとほぼすべてに音楽制作助手みたいなぺーぺーの立場で立ち会った。TBSの演出の鴨下さんの鋭い演出は音楽にも向けられた。

小川さんはCM 音楽の専門家でもあり、おそらく3000~5000曲くらいは作曲しているのではないだろうか。当時は音楽プロダクションが毎週スタジオをレギュラーで3日間はキープ(仕事があろうがなかろうが)してあるという今では考えられない時代でした。(ちなみに今のCMの殆どは事務所の小さなスタジオで打ち込み中心に録るプロダクションが全盛)凄い量の仕事をこなす景気良い時代だったようです。
シベリウスの作品をアレンジしたCM 作品で日本広告音楽制作者連盟(JAM)でのフェスティバルで受賞している。そのレコーディングにも僕は立ち会っている。
「MOVING」というキャッチコピーでオンエアして好評を得た小川さん作曲の伊勢丹のTVCMでは当時人気のコーラスグループ「サーカス」が歌い坂本龍一編曲でレコード化された。そのCMversionでのシンセサイザーのリフレインフレーズでは僕のアイデアを生かしてもらった。まだ20代なかばの僕にとっても光栄な出来事だった。自分が参加したからではないが小川さん編曲のVersonのほうができはよかった。

また十朱幸代さん主演の連続テレビドラマでは「周防君も手伝いで書いてみろ!」数曲助手的に作曲させていただいた。またフロリダ半島やマイアミ辺りの自然、街をドキュメントしたビデオの仕事でも1曲作曲させていただき、この時は小川チームのゴースト扱いではなくクレジットされ印税も入るようにしていただいた。ありがとうございます。
また1970年代後半、まだコンピュータ打ち込みもほぼない時代だが、当時ロック系のリズムセクションをヘッドアレンジ風にあまり譜面に書かないでもレコーディングできることに危惧をいだいておられて「今のレコーディングはリズムセクションなんかはスコア書かなくても彼らがうまいこと演奏してくれるからたいしたことない作曲家でもどうにかなる」と、厳しい忠告も発言されていたことを思いだす。

僕が音楽担当した映画『Shall weダンス?』のサントラをさしあげ喜んでいただいたが「周防君、社交ダンスの音楽ってちょっと違うだろ?」って言われた。そうですねえ、僕の音楽は社交ダンスの職人的再現の音楽でないですもんね。「社交ダンスの音楽」って割り切って受け身に捉えるのがイヤだったので・・・だいたい僕の場合良く言えばオリジナル性がでちゃってんです。そこら辺は職人系の小川さんとは意見別れたでしょうね。でもそんな議論もできないのはちょっと寂しいです。

小川さんの音楽は洒落たインスト的な音楽で最もそのセンスが発揮されたと思う。ちょっとセミクラシカルでポップな辺りの。フランシス・レイなんかの雰囲気からデイヴ・グルーシン手前みたいな.....。地味だけど、趣味のよい、そしてあまり泥臭いメロディは江戸っ子のテレでできなかったのかもしれない。世代的にはロック色だったりはしないが、かといって歌謡曲でもない。さっぱりした性格を反映されたプロフェッショナルなサウンドをつくられていた。
慎んでご冥福をお祈り致します。

(01:03)

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