Arubaroでヴァカンスを

8月に開催するイベントの情報を載せています。 過去記事はスカートの裾まつりのです。暇ならみてください。 ※このデザインは私たちが檻に閉じ込められているのを 暗喩しているわけではありません。 悪しからず。

出演者情報更新

プログラム内容が少し変更になっています。
ご覧下さい。

演劇の出演者が決まりました。

作.演出 
名嘉友美(シンクロ少女) 

出演者
市子嶋しのぶ(主婦)
兵藤公美(青年団)

女性の二人芝居です。



 

37歳の忘却力 〈西田夏奈子〉

都内のIT企業にアルバイト勤務して8年。

バイオリンを弾けるようになって30年。

自称、俳優をやり始めて20年。

運命の出会いから17年。

運命の別れから14年。

紅白出場まで11年。

実家に寄生して37年。

未婚歴37年。



思い出せるのはこれぐらいですよね。


三十代に入って、記憶を保持する力が格段に衰えまして。

それは、ちょうどその頃、忘れたいことがひとつあったんですね。



それで、忘れますように忘れますようにと、猛烈な勢いで毎日祈って過ごしました。
本気で祈ったのは、あれが最初で最後です。

そうしたら、その忘れたいことを見事に忘れることができました!
やればできるんだな、と思って、私すごいなぁと自分で自分を誉めてやりましたよね。


そしたら、同時に、その頃の、その他の出来事をも、まるごと忘れていました。

あとから気づいたのです。

これは、覆水盆に返らずですよ。

その他の記憶にしてみれば、完全にとばっちりを受けた形ですよね。


それ以降、新しい出来事について記憶するのが非常に難しくなっているのにも、あとから気づきました。


それまでの私は、記憶力はわりと良いほうで、それを自分のよいところだと思っていましたから、正直不本意でした。

憶えていられないことは、世の中のすべてに対して失礼な話だと思ってね。

何かが人の記憶から消えてしまうことは、すごく悲しいことのような気がしていたんです。


だから、昔の出来事を反芻したり、忘れてはいけないことを真面目な顔で脳内リストするのは、私の義務のようなものでしたよ。

別に誰にも頼まれていないのにね。

あたかも、それがなされなくては誰かの命に関わるかのような雰囲気を出すのが私の仕事みたいなね。


で、独りで抱え込むんですよね、そういうのって。
人に言うことじゃない感じがしました。


誰にも気づかれないことを、気づかれないだろうなってわかっていながらしてるけど、本当は気づいて欲しいよ!
って時、だいたい心身が弱ります。

しかも、それがぜんぶ脳内で行われているのだから、脳やら心やらの疲労はたまるばかりですよね。



だから、よかったんだよね。
憶えていられない人間に変わってよかったんです、結局。



記憶力に自信を持てないことは、台本の覚えや、人との出会い、ここ一ヵ月の自分のスケジュール、昨日見た舞台、飲んだ相手、行った場所、話したこと聞いたこと、もうそのすべてに確信が持てないことに直結します。

それって何だか、すごく残念なことに思えませんか?
恥ずかしいことのように?


いえ、そんなことはありません。

だって、それでも憶えていることがあるんです。

その記憶に生かされていると思えるような「画」がいくつかあって、それは例えば、「何度引っ越ししても手放せない品」のようなものってことだろう。

と、この忘却力が、逆に私に教えてくれるのです。

何度もよみがえってくるような「画」は、旧いものばかりというわけでもありません。
ちゃんと新しいのも増えてる、大丈夫。


それにたとえ思い出せないにしても、人は記憶をすべて脳内に刻んでいるものらしいですからね。

つまり思い出せないだけであって、忘れてるわけじゃないんだよな。
平気平気。

みたいな。


さあ、私のひどく薄情な一面を打ち明けてしまいましたよ。

私とちょっと付き合ってみたら、この薄情さはすぐにわかります。

何度も同じ話をしたり、前に聞いた話を初めて聞くわその話みたいな顔で聞いたりしますからね。


とりあえず、冒頭にこっそり入れておいた「紅白出場まで11年」ていうのに何人が「ん?」って引っ掛かってくれたのかな、ていう事が、今、気になっています。

ああ紅白に出たいなあ。桜 西

まあ、でも、あと11年あるので。
あと11年は、がんばれたら、と思うんです。

その頃私は48歳です。

大丈夫、皆さんが忘れた頃に出ることになります。
どうか、びっくりしてください。

西田さん

坊薗注:今回もこんな感じのことしてくださる予定です。
でも、もう少しラフな格好だとは思います。

32歳の再会〈中道智子〉

地震があった次の週、数年ぶりに「ゆで太郎」に行きました。
最後に行ったのは2年前だったかそれ以上前か、というくらい前です。
行かなくなったきっかけは、ほぼ毎日食べていたカレーそばが消えたこと。
食券機からカレーそばのボタンが無くなってからも
裏メニューのようにカウンターで直接支払って食べていました。
しかし、あるゴールデンウィーク明けの晴れた日に店員さんが全員変わっていました。
動揺しつつもいつものようにカウンターで「カレーそばください」と言い小銭を取り出すと、
「食券機にあるのからお願いします」と非情な声が……
Why?! なぜ?! どうして…?!  さらに動揺した私は
「じゃあいいです」と言い放って会社に戻り
もう二度と行く事はないだろうと同僚に宣言したものです。
数年前のことですが昨日のことのように思い出されます。
恥ずかしながらかなりショックでした。
その後「ゆで太郎」はラーメン屋になったり、また「ゆで太郎」に戻ったりしていましたが
もうあの情熱(カレーそば)は無いのだなと思うと全く行く気になれませんでした。
では何故行こうと思ったのかと言うと、
地震直後に前を通りかかった時に「お待たせしました カレーそば」の文字を見たのです。
でも、普通の精神状態ではないし、夢で見たことを勘違いしているだけかもしれないので
同僚にそのことを打ち明けて一緒に行ってもらいました。夢だった時むなしいですからね。
実際行ってみると、ありました。
違ったのは「お待たせしました」のポスターが
B1サイズくらいの大きい物のような気がしていましたが
A4サイズの小さな貼り紙だったことくらいでした。
震える指で、堂々と黄色く輝く「カレーそば」のボタンを押し、しばし待ちます。
そして遂に、カレーそばが!!
……やっと逢えたね…… あの名台詞が口をついて出ます。
隣で頷きながら フ とニヒルに微笑む同僚を差し置いて食べ進めると、
そこには昔のままの彼(カレーそば)が微笑んでいました。
長々と書きましたが、ゆで太郎のカレーそばは380円で
かけそばにカレーがかかっているタイプです。
最初からつゆにカレーが混ざっていないところがチャームポイントです。
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