アメナクシテニジハナシ

一般内科,感染症,HIV,救急などの医学領域と個人的な趣味について

2011年03月

Q. 抗酸菌塗抹を1回行うことに(どのくらい)意味があるのか?

高齢者の方が肺炎の疑いで入院する際に「念のため」喀痰の抗酸菌塗抹・培養検査を1回だけ,一般細菌塗抹・培養と一緒にオーダーしておくことは,よくあることのように思います.とくに1回の塗抹陰性を確認してから入院したりするわけですが,このpracticeは適切なのでしょうか.
(文献の図表を掲載しておらず,わかりにくいところもあるかと思いますがご容赦ください.)

●教科書的な記載
『結核診療プラクティカルガイドブック』には次のように記載がなされています.下線については別途記載します.
直接塗抹と寒天培地培養での検痰の回数と累積陽性率を図4.6に示す.集菌塗抹や液体培地でもほぼ同様の傾向(JCLM.2000.38.3608)を示す.一般に6~8回以上の検痰は無意味とされる.検体回数として通常3回検痰による塗抹培養同定検査が推奨されるが,初回の喀痰検査で塗抹陽性であれば3回目の喀痰培養の意義は(用いる培地に関係なく)乏しい(結核.2006.81.511).複数検体で抗酸菌が培養された場合,同定検査は1回のみでもよい.核酸増幅法を複数回行う有用性は少ない(経験的に活動性結核であっても1回目陰性なら2回目も90%前後は陰性).

図4.6 検痰回数と塗沫および培養の累積陽性率

図をみると塗抹3回の累積陽性率は60%弱.文献3にも約60%という記載あり.

●集菌塗抹について
集菌とは,NaOHやN-acetyl-L-cysteineで不要なものを取り除き,そのうえ遠心することで抗酸菌を集めたうえで検鏡することをいいます.
とある病院の副院長が抗酸菌を専門とした先生で,その講義を聞いた際には「集菌したほうが検出率が上がるから,そうすればいいのに」とおっしゃっていました.
結核診療プラクティカルガイドブックの著者伊藤邦彦先生の文献でも次にようにあります.
集菌塗抹/蛍光染色による2回の喀痰検査の感度は以前の直接塗抹/Ziehl-Neelsen染色による3回の喀痰検査の感度と同等かそれ以上になるものと推測された。
http://jdream2.jst.go.jp/jdream/action/JD71001Disp?APP=jdream&action=reflink&origin=JGLOBAL&versiono=1.0&lang-japanese&db=JMEDPlus&doc=06A0394976&fulllink=no&md5=4f7d720ba197cea6ca7012e0844f064f

ちなみにこの研究では,喀痰結核菌陽性肺結核患者(Gold Standard)362症例中3回の検痰で集菌塗抹(蛍光染色)陽性であったのは304例(84.0%の累積陽性率).
つまり『結核診療プラクティカルガイドブック』には「同様の傾向」とあるものの,集菌したほうが感度は高くなることが予想されます.

●最近のトレンド
今回調べた文献も多くの場合は集菌法も用いていました.
そもそも「3回」という推奨は,CDCやATSが行ってきたもののようですが,そのデータは1940~1950年代のもので,技術の向上した現代では適さないのかもしれず(文献3),「2回と3回は同等である」というデータが出てきているようなのです(文献4).

●地域差
検査特性がどのような母集団における検査特性であるかを知っていないと,そのデータの有用性は低くなります.よって文献を考察する際には,その研究が行われた地域の結核の有病率・発症率を考慮しておく必要があります.

図4 先進諸国およびアジア諸国の結核罹患率
http://www.jata.or.jp/rit/rj/2006toukei.pdf

日本はトルコと似たような結核罹患率で,米国よりはかなり高いことがわかります.
以上のような前提のもとでいくつかの文献を見てみると….

Jpn J Infect Dis. 2007 May;60(2-3):73-5.
Is it valuable to examine more than one sputum smear per patient for the diagnosis of pulmonary tuberculosis?
PMID: 17515635


これはトルコの文献なので,結核罹患率は日本とほぼ同様だと思います.
トルコは3回も検査していたら技師さんのheavy workloadになるから,3回の検査がいつでもできるわけではないようです.
抗酸菌塗抹は集菌塗抹(Kinyoun染色)を用いています.以下が結果です.
165例の喀痰抗酸菌培養陽性患者(Gold Standard)(菌同定までしているという記載があるのでおそらく結核)のうち,70例が塗抹1回以上陽性(累積陽性率42%).
70例のうち68例が1回目で陽性,2例が2回目で陽性,3回目で陽性であったのは0例.
ちなみに培養は,165例のうち155例が1回目,9例が2回目,1例が3回目で陽性.
ということで,塗抹では2回施行と3回施行は同等の効果という結論.
3回目の検痰は塗抹では付加価値なし.培養ならあるかもしれない.
この研究のように塗抹1回目でみつかることが多いという結果は,他の研究でも報告あり.
Discussionにおいて参照された文献の一つでは,培養をGold Standardとして2回目塗抹の感度のincremental yieldは9%,3回目塗抹の感度のincremental yield 4%.もう一つの文献では,3回目塗抹のincremental yieldは0.7~7.2%.

Fig.1. The flow chart for the results of the smear examinations

累積陽性率がやけに低いですが,陽性のものはほとんどが1回目で陽性という結果でした.これをみると最初のQ.で挙げた「入院時に1回」というのはありかもしれません.

Am J Infect Control. 2005 Feb;33(1):58-61.
How many sputum specimens are necessary to diagnose pulmonary tuberculosis?
PMID: 15685138


米国の研究ですが,high incidenceなurban medical centerで行ったと書いてあります.
培養陽性をGold Standardとし,集菌塗抹(蛍光染色)をみています.
HIVとnon-HIVでも比べています.
結果の表を示します.

Table 2. AFB smear sensitivity in culture-confirmed PTB cases

425例の喀痰培養陽性肺結核で集菌塗抹の感度を示しています.注意すべきは1回目の感度の計算には,採痰回数が1回だけの例,2回だけの例,3回の例をすべて合わせて計算しているのですが,2回目,3回目の感度の計算には,採痰の回数が3回の例だけを使って計算している点です.つまり表のsmear 1とsmear 2,3は全く別の話.
3回目だけ塗抹陽性となったのはわずか採痰回数が3回の147例のうち4例だけで,3回目の喀痰は診断的な付加価値がないとの結果です.
またnon-HIVの方が塗抹陽性になりやすい,X線に所見があるほうが塗抹陽性になりやすいという結果になっています.

この文献のDiscussionでも記されていますが,喀痰培養の陽性例を集めたこのような研究では,感度を求めることはできても特異度(negative in health)を求めることはできません.

そこで次のようなprospective studyがありました.

BMC Infect Dis. 2009 May 6;9:53.
Sensitivity of direct versus concentrated sputum smear microscopy in HIV-infected patients suspected of having pulmonary tuberculosis.
PMID: 19419537


これは「HIV患者では集菌法は直接塗抹と変わらない」という結果の文献なのですが….
(さっきと話が違う!HIVだから?)
2週間以上咳が続くHIV患者で行ったprospective studyなので特異度もわかります.
ただし,2週間以上咳が続く結核疑いのHIV患者という前提での話ということになります.

Table 2: Sensitivity and Specificity of Concentrated and Direct smear, By Reference Outcome

痰は1回の早朝痰を用いています.
表がわかりにくいですが,A. SensitivityのtotalにGold Standardを満たした患者数が,B. SpecificityのtotalにGold Standardを満たさなかった患者数が記されています.
例えば培養陽性を肺結核のGold Standardとしたとき,肺結核は170名,非肺結核は109名ということになります(肺結核多っ!)
Gold Standardの培養にはBALの培養も含まれています.
行(横)のpositive/negativeが集菌塗抹,列(縦)のpositive/negativeが直接塗抹を表しています.
直接塗抹も集菌塗抹も特異度は9割くらいといったところのようです.

ここで喀痰グラム染色の感度・特異度の話を思い出しました.
確かEBMジャーナルの岩田健太郎先生の原稿にも感度には幅があるが,概ね特異度は良いという記載があったと思います.塗抹検査の宿命?
ということは結核susp.の患者で抗酸菌塗抹の特異度9割くらいというのは,それほど幅のあるものではないと予想されます(感覚的にも).

あとはさらっと流しますが(というかちゃんと読んでないだけ…),
Int J Tuberc Lung Dis. 2001 Sep;5(9):855-60.
Yield of smear, culture and amplification tests from repeated sputum induction for the diagnosis of pulmonary tuberculosis.
PMID: 11573898


Table1に誘発喀痰の集菌塗抹,培養,PCRの累積陽性率が載っています.塗抹結果良すぎ?

Int J Tuberc Lung Dis. 2007 May;11(5):485-95.
Yield of serial sputum specimen examinations in the diagnosis of pulmonary tuberculosis: a systematic review.
PMID: 17439669


3回目の塗抹検査の感度のincremental yieldは2~5%ほどで,2回だけでもいいのではという結論.集菌かどうかは不明.

Infect Control Hosp Epidemiol. 2002 Mar;23(3):141-4.
Preventing nosocomial transmission of pulmonary tuberculosis: when may isolation be discontinued for patients with suspected tuberculosis?
PMID: 11918119


このstudy自体は微妙な気がした.Discussionには,他のmeta-analysisでも2回と3回では肺結核診断の感度は同じという結果という記載あり.areas with a low to moderate prevalenceなら2回でよい?

●まとめ
抗酸菌が塗抹で陽性になるときには初回に陽性になることが多い.
集菌塗抹だと感度が上がるかもしれず(とくにnon-HIV),集菌なら2回だけでもいいかもしれない.2回目と3回目で感度は変わらないというデータが多い.
3回の直接塗抹では感度は概ね6割と言われていたが,とある日本のデータでは集菌法3回では8割強,誘発痰ならもっといいかも?
→実はAm J Infect Control. 2005 Feb;33(1):58-61のTable2っていい線いっている?
特異度はきっと9割くらい.

Q.の直接的な回答にはなっていませんが,以上を踏まえてよろしければみなさんも考えてみてください.

参考文献
1) 結核診療プラクティカルガイドブック 伊藤邦彦著 南江堂
2) 結核.2006 May;81(5):357-62.肺結核の感染性評価に必要な喀痰集菌塗抹検査の回数
3) Infect Control Hosp Epidemiol. 2002 Mar;23(3):141-4.Preventing nosocomial transmission of pulmonary tuberculosis: when may isolation be discontinued for patients with suspected tuberculosis? PMID: 11918119
4) Am J Infect Control. 2005 Feb;33(1):58-61.How many sputum specimens are necessary to diagnose pulmonary tuberculosis? PMID: 15685138
5) Jpn J Infect Dis. 2007 May;60(2-3):73-5.Is it valuable to examine more than one sputum smear per patient for the diagnosis of pulmonary tuberculosis? PMID: 17515635
6) BMC Infect Dis. 2009 May 6;9:53.Sensitivity of direct versus concentrated sputum smear microscopy in HIV-infected patients suspected of having pulmonary tuberculosis. PMID: 19419537
7) Int J Tuberc Lung Dis. 2001 Sep;5(9):855-60.Yield of smear, culture and amplification tests from repeated sputum induction for the diagnosis of pulmonary tuberculosis. PMID: 11573898
8) Int J Tuberc Lung Dis. 2007 May;11(5):485-95.Yield of serial sputum specimen examinations in the diagnosis of pulmonary tuberculosis: a systematic review. PMID: 17439669

感染性心内膜炎手術と頭蓋内合併症

感染性心内膜炎の診療上いつも悩ましいのは,いつ外科治療に踏み切るかという点です.早期の段階から心臓外科医に連絡を取って方針を協議しておくことが望ましく,自施設に心臓外科がない場合には,無理に頑張ることはせずに手術可能な医療機関への転院を検討する必要があります.

手術に対する閾値は低く設定しておいたほうがよく,新しく置換される弁が再感染する可能性が2~3%程度であるのに対し,手術適応の理由として最多であるうっ血性心不全は,保存的治療の場合には死亡率は51%にのぼるとされています(IDATENセミナーテキスト編集委員会 編集:市中感染症診療の考え方と進め方,医学書院,2009)

どのような患者にいつ外科治療をするかについて
Circulation. 2010 Mar 9;121(9):1141-52.
Surgery for infective endocarditis: who and when?
PMID: 20212293
にまとまっています.記事の一番最後にまとめておきます.

この文献のなかにも記載があるのですが,よく問題になるのは,頭蓋内合併症を起こした際には手術はどうするべきか,ということです.

・合併症として脳出血を伴う場合には,(進行する心不全がない限り)少なくとも1ヶ月は手術を延期すべきとされています.
症候性の脳梗塞合併例での手術のタイミングについては,十分なデータがなく議論の余地はありますが,他の理由による緊急性がないのなら,2~4週間後の方が術後の神経症状の増悪が少ないという報告があります.
無症候性の脳塞栓一過性脳虚血発作で手術を遅らせる必要はないとされています.
頭蓋内感染性動脈瘤が原因の出血であれば,動脈瘤の手術や血管内治療の後であれば,早期の心臓手術は可能かもしれないとされています.

つまり,頭に何かあるかどうかだけで議論しても仕方なくて,それが何なのかまできちんと押さえておく必要があります

J Neurol. 2004 Oct;251(10):1220-6.
Timing the valve replacement in infective endocarditis involving the brain.
PMID: 15503101
Fig.2にまとまっていますので,興味のあるかたは是非ご一読を.

●感染性心内膜炎の手術適応
うっ血性心不全
・重症AR/MR,疣贅による弁閉塞(稀)によるうっ血性心不全
・左室拡張末期圧の上昇や肺高血圧のエコー所見を伴う重症AR/MR
・人工弁の離開や閉塞によるうっ血性心不全
弁輪部拡大
・ほとんど場合,膿瘍形成あるいは瘻管形成を伴う
全身性塞栓
・適切な抗菌薬治療においても再発する塞栓
・抗菌薬治療開始後,1回以上の症候性あるいは無症候性塞栓の後でも大きな疣贅(>10mm)
・大きな疣贅と合併症の他の予測因子の存在
・塞栓症を合併してない巨大疣贅(>15mm),とくに弁温存手術が可能な場合(controversial)
脳血管合併症
・他の手術適応があれば無症候性の神経学的合併症あるいは一過性脳虚血発作があっても手術適応
・脳出血が除外されており,神経学的合併症が重症(例えば昏睡)でなければ,虚血性脳卒中があっても他の手術適応があれば手術適応
持続性敗血症
・適切な抗菌薬内容でも発熱あるいは血液培養陽性が5~7日以上続く場合.疣贅や手術を要する他病変が持続し,敗血症の原因が心外にあることが除外されている場合が前提
・再発性のIE,とくに感受性の連鎖球菌以外の起炎菌あるいは人工弁の場合
難治性微生物
S. aureusによるIE(人工弁症例や左心系の自然弁のほとんどの症例)
・他の侵攻性の微生物によるIE(BrucellaStaphylococcus lugdunensis
・多剤耐性微生物(MRSA,VRE)によるIEやグラム陰性菌による稀な感染症によるIE
Pseudomonas aeruginosaによるIE
・真菌によるIE
・Q熱によるIE
人工弁の心内膜炎
・早期の人工弁心内膜炎の実質的全症例
S. aureusによる人工弁心内膜炎の実質的全症例
・人工弁の離開や閉塞による心不全を合併した後期の人工弁心内膜炎

●感染性心内膜炎の手術のタイミング
Emergency surgery(24時間以内)
・自然弁(大動脈弁または僧帽弁)あるいは人工弁の心内膜炎で,次の原因で重症うっ血性心不全あるいは心原性ショックを合併した場合:
  急性の弁逆流
  重症の人工弁機能不全(離開または閉塞)
  心腔あるいは心周囲への瘻孔形成
Urgent surgery(数日以内)
・うっ血性心不全が続く,血行力学的耐性の乏しい徴候を伴う,あるいは膿瘍を伴う自然弁/人工弁の心内膜炎
・ブドウ球菌あるいはグラム陰性菌による人工弁の心内膜炎
・塞栓症の伴う大きな疣贅(>10mm)
・合併症の他の予測因子を伴う大きな疣贅(>10mm)
・保存的な手術が可能な巨大疣贅(>15mm)
・コントロール不能な感染を伴う大きな膿瘍and/or 弁輪部病変
Early elective surgery(入院中)
・うっ血性心不全が薬物治療に良好に反応した重症AR/MR
・弁離開あるいはうっ血性心不全を合併したが薬物治療に良好に反応した人工弁の心内膜炎
・膿瘍や弁輪部拡大の存在
・心外のフォーカスが除外された持続的感染
・真菌あるいは薬物治療に耐性の感染

地震と医療

地震の被害が次々と明らかになっています.被災地の皆様がご無事であることを心より願っています.被災地の医療機関の皆様,DMATの皆様,ご尽力のほど宜しくお願い申し上げます.
更新:2011年3月20日

●【緊急掲載】 このたびの大地震に際しまして(日本内科学会)
日本内科学会のホームページには,昨年の日本内科学会雑誌99巻に連続掲載された「内科医のための災害医療活動」という企画のPDFデータがダウンロードできるようになっています.

http://www.naika.or.jp/info/info110311.html

●災害時の感染対策(ブログ『楽園はこちら側』)

http://georgebest1969.typepad.jp/blog/2011/03/%E7%81%BD%E5%AE%B3%E6%99%82%E3%81%AE%E6%84%9F%E6%9F%93%E5%AF%BE%E7%AD%96.html

●災害後の挫滅症候群のマネジメント(西伊豆早朝カンファランス)

http://www.nishiizu.gr.jp/intro/conference/h18/conference-18_08.pdf

●「大地震!!!  当直医の対応」「トリアージ」(西伊豆早朝カンファランス)

http://www.nishiizu.gr.jp/intro/conference/h23/conference-23_03.pdf

●PLAMEDサーチ
(株)プラメドで提供している医療用医薬品やOTC医薬品の画像や添付文書などのデータを検索できるサービス【PLAMEDサーチ】が,医療従事者の誰でもが利用できる設定となっています.

http://www.plamed.co.jp/pr/search.html

●Japan - earthquake and tsunami
米国医学図書館NML(National Library of Medicine) のウエブサイトEmergency Access InitiativeにJapan - earthquake and tsunamiがたちあがりました.被災地の医療活動への支援のため3月14日から4月8日(米国時間)までデータベースやEジャーナルが無償で利用できるようになっています.

http://eai.nlm.nih.gov

●雑誌『JIM』(15巻8号)「特集:災害被災地におけるプライマリ・ケア」
雑誌『JIM』(15巻8号)「特集:災害被災地におけるプライマリ・ケア」を,当面の間,全文無料で公開しています.

http://www.igaku-shoin.co.jp/misc/jim/1508index.html

●健康手帳(有事版)(「ほぼ日の健康手帳」簡易版)
この用紙の使い方の例
いざという時のために,自分でいつでも持っておく
仮設診療所で問診用紙に使う
受診した患者さんへ今後のために渡す
できれば,被災地に入る医療チームが印刷して持参する

http://www.1101.com/20110311/deardoctors.html

●UpToDate
災害医療に活用する目的のUpToDateオンラインへのアクセスは,日本からはオープンされているとのことです.ダイレクトにパスワード入力なしで閲覧可能です(”Japanese Humanitarian Effort”のアカウントで自動アクセスされます).

http://www.uptodate.com/online

●「やむを得ない場合の抗HIV薬内服中断の方法について」(エイズ治療・研究開発センター)

http://www.acc.go.jp/accmenu.htm

●ブログ『災害時(津波を含む)の感染症対策』

http://blog.livedoor.jp/disasterinfection/

●Medical e-hon
Medical e-honサイトで災害医療関連の42コンテンツが期間限定で無料DLできます.
協力出版社 (2011年3月18日16時現在)
メディカ出版/医歯薬出版/日本看護協会出版会/医学芸術社/医学図書出版

http://www.me-hon.ne.jp/meb/bin/pickup_report_desc.asp

Bacillus cereus菌血症と温故知新(2)

温故知新と言っておきながら,古い文献のみでしたので,今回は古いのと新しいのと両方で.

まずは古い方から.
Clin Microbiol Rev. 1993 Oct;6(4):324-38.
Bacillus cereus and related species.
PMID: 8269390
 
Systemic Disease
・Systemic diseaseの菌の侵入門戸には,例えば髄膜炎の脳室シャントや菌血症の静脈内カニューレがある.
B. cereusの感染症では壊死が起こりやすい.エンテロトキシンが関係している.
・一般に血液培養の汚染菌であるため,診断が妨げられる.
B. cereusによる臨床症例の実際の数は恐らく多い:多くの研究報告では,Bacillusのspeciesレベルまで同定していない.

菌血症と敗血症
・臨床的に有意なillnessのほとんどのケースはIVDU血液透析や持続点滴静注を受けている患者新生児担がん患者に起こる.
・菌血症には,眼そして肺の感染症,膿瘍形成,心内膜炎を合併するかもしれない.

心内膜炎
・少ないながらも心内膜炎の原因菌になりうる,とくに静脈内薬剤投与や弁膜症が背景にある場合.
・ドラッグや注射器材がたいてい菌のソースとなる.ほとんどの患者で三尖弁が侵される.
・抗菌薬治療と血栓予防がたいてい有効で,2例の弁置換例と2例の死亡例がある.

治療
B. cereusは,炭疽菌と違って,たいていβラクタマーゼをつくるため,βラクタムに耐性である.
・アミノグリコシド,クリンダマイシン,バンコマイシン,クロラムフェニコール,エリスロマイシンにたいてい感受性である.
・眼感染症はとてもaggressive(12~18時間以内に失明しうる)で,培養結果の前に,全身・局所の抗菌薬治療が欠かせない.
・クリンダマイシン+ゲンタマイシン,そしてバンコマイシン単剤が成功裏に用いられてきた.イミペネムも使える.
・シプロフロキサシンは気管支拡張症のまれな症例の治療で有効であった報告がある.
・髄膜炎や重症な全身性感染症の症例では,バンコマイシンとアミノグリコシドのエンピリカル治療が最も適切な併用である.

最後に新しいものを.in vitroにおける抗菌薬感受性について.
Clin Microbiol Rev. 2010 Apr;23(2):382-98.
Bacillus cereus, a volatile human pathogen.
PMID: 20375358

抗菌薬
B. cereusの感染症が疑われれば,抗菌薬の感受性を待っているあいだにエンピリカル治療が必要かもしれない.
・一般的にB. cereusはβラクタマーゼを産生するためペニシリンやセファロスポリンには耐性.
・エリスロマイシン,テトラサイクリン,カルバペネムへの耐性も報告されている.
・Weberら(54株の微量希釈法):イミペネム,バンコマイシン,クロラムフェニコール,ゲンタマイシン,シプロフロキサシンにすべて感受性.ほとんどの株がクリンダマイシン,セファゾリン,セフォタキシムに耐性.多くの株がエリスロマイシン,テトラサイクリンに感受性.
・NCCLS(微量希釈法とディスク拡散法):mezlocillinを除いたペニシリン,オキサシリン,セファロスポリンにすべて耐性.ticarcillinにクラブラン酸を併せても,活性は上がらず.→“B. cereus感染症のエンピリカル治療にはバンコマイシンがよさそう.”広域セファロスポリンやticarcillin-clavulanateは避けるべき.
・Turnbullら(67株のE test):ペニシリン,アンピシリン,セファロスポリン,トリメトプリムへの耐性はconstant.クリンダマイシン,エリスロマイシン,クロラムフェニコール,バンコマイシン,アミノグリコシド,テトラサイクリンはたいてい感受性.シプロフロキサシンへの感受性は一様で,B. cereusの創感染には高い効果がみられる.
・クリンダマイシン,エリスロマイシン,ST合剤への耐性の報告はある.
・新しい抗菌薬について:ガチフロキサシン,レボフロキサシン,モキシフロキサシン,リファンピン,ダプトマイシン,リネゾリドは感受性あり.

ということで前回の記載も含めてまとめると,大枠は

バンコマイシンでエンピリック治療
クリンダマイシン感受性なら,クリンダマイシンへde-escalation
でよさそうです.
シプロフロキサシンは代替薬として使用できるかもしれません.
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