アメナクシテニジハナシ

一般内科,感染症,HIV,救急などの医学領域と個人的な趣味について

2011年05月

唾液腺炎(慢性編)

前回の続きです.
今回は慢性唾液腺炎を中心とした内容です.

Chronic Sialadenitis
・消散していない急性耳下腺炎の結果として起こるかもしれない.またたいてい持続的な唾液の流れの減少に付随する.
・顎下腺の慢性唾液腺炎が比較的commonで,たいてい唾石による導管閉塞の結果である.
・最初は分泌物の貯留による再発性の腫脹が特徴的だが,慢性感染が続発すると,唾液腺が炎症を起こし,最終的には線維化し,堅固な腫瘍様の腫瘤を形成する:Kuttners tumor
・唾液腺造影では導管拡張や腺房成分の萎縮が示されるかもしれない.しかし拡張の程度は,病理組織学的な程度や患者の表現する症状よりも,より重度かもしれない.
・時として疼痛(典型的には食事中の)を伴うことがあるが,一つ以上の唾液腺の再発性の腫脹の病歴で診断がつく.
・触診では,腫脹し,硬結性の,軽度の圧痛のある唾液腺である.指診では唾液の流量の減少と膿様粘液が示される.
治療は保存的であるべき.レモンやチューインガムのような唾液分泌促進薬が唾液の流出と導管の灌漑を刺激する.患者による侵された唾液腺の定期的なマッサージもまた助けとなるかもしれない.
急性増悪は急性化膿性唾液腺炎として治療されるべきである.
・サリチル酸は疼痛のコントロールに役立つかもしれないし,水分補給は重要である.
・導管の探査は狭窄や結石の可能性を評価するために推奨されているが,急性期には推奨されない.
・外科的治療は根治のために行われており,導管開口部の周期的な拡張,導管の結紮,唾液腺全体の放射線照射,側頭下窩の耳介側頭神経の剥離が含まれる.鼓室神経切断術は化膿のない慢性再発性耳下腺炎の治療に推奨される.
・もし長期の入念な保存的管理が失敗すれば,手術(表在的または全耳下腺摘出術あるいは顎下腺切除)が唯一効果的な手段である.

慢性唾液管拡張
・慢性唾液管拡張は慢性再発性唾液腺炎の末期を表しているのかもしれない.
・重症な炎症性のウイルス性 or 細菌性感染のあとに起きるかもしれない.
・患者の最も一般的な主訴は,片側の耳下腺のびまん性腫脹で,数カ月~数年かけて徐々に増大しうる.
・鑑別には良性リンパ上皮性病変と悪性腫瘍が挙がる.
・組織学的には,間質へのリンパ球浸潤と筋上皮成分の萎縮を伴った導管と腺房成分の小嚢形成がみられる.腺の他の部分には線維化と萎縮がみられるかもしれない.

唾石症
・唾石症は慢性再発性唾液腺炎の原因でも結果でもあり,それに加えてしばしば急性化膿性唾液腺炎の原因でもある.
・唾石症は耳下腺よりも顎下腺により一般的で(10%に対して83%),残りは小唾液腺または舌下腺である.
・顎下腺は唾液腺よりも次のような理由で結石をつくりやすいといわれている.
1) より長くより大径の導管で流量がゆっくりである
2) 重力に拮抗した唾液の流れ
3) よりアルカリ性の唾液
4) ムチンとカルシウムの含有量の高い唾液
・これにより粘液の濃縮が起こる,とくに脱水や発熱の際に.
・小さな結石は導管から自然に排出され,それあと濁った唾液が湧き出るかもしれない.
・導管内の結石はたいてい繰り返す導管閉塞と腫脹のエビソードを引き起こす.
・急性の膿瘍が続発しない限り,最終的に唾液腺は萎縮し線維化する.
・唾石の治療は症状と結石の位置によって決まる.結石は口腔内で,あるいはワイヤーバスケットを使って除去できる.体外衝撃波結石破砕(ESWL)の使用も報告されているが,現在のところ特殊施設でしか利用できない.

動物(猫)ひっかき病
・Animal scratch diseaseは直接は唾液腺を侵さないが,耳下腺と顎下三角のリンパ節を侵すかもしれない;回りまわって隣接する広がりによって唾液腺も侵されるかもしれない.
・猫ひっかき病はそのうちのひとつで,主として小児と若年成人を侵す.
動物との接触の病歴,たいてい猫または子猫(猫によるひっかき,咬傷,あるいはなめるだけでも),が報告症例の67~90%で引き出されている.
・この疾患の真の発端はBartonella henselaeが関係あるとされている.
・PCRでBartonellaのDNAを検出することで病原体を同定できる.
・猫ひっかき病患者の血清検査ではB. henselae抗体が少なくとも1:64のtitersを示している.
・抗菌薬は疾患の経過を短縮する効果は示されていないので治療は支持療法からなる.
・リンパ節腫脹はたいてい2~3ヶ月以内に合併症なく消失する.

肉芽腫性唾液腺炎
・肉芽腫性唾液腺炎は慢性唾液腺炎の一型で,多くの潜在的な原因がある.
結石や腫瘍に続発する導管の閉塞が最も一般的な原因である.
・まれに唾液腺は,結核梅毒淋菌,またはアクチノミセスのような,特定の炎症性疾患に侵されるかもしれない.
・これらのなかでは結核が最も一般的で,耳下腺内リンパ節病変の結果として,しばしば耳下腺を侵す.
・特定の感染症ばかりでなく,サルコイドーシス患者の5%までが耳下腺を侵されうる.通常の全身性の徴候に加えて,無痛性で,堅固な結節性の耳下腺腫脹が起こり,典型的な非乾酪性肉芽腫を含んでいる.口蓋や口唇の小唾液腺も侵されるかもしれない.
ウェゲナー肉芽腫症では,片側性の腫瘍状の腫脹がとくに耳下腺においてみられる.肉芽腫性反応には,巨細胞,壊死,そして壊死性血管炎という特徴がある.

結核
・耳下腺のマイコバクテリアリンパ節炎が唾液腺を侵すマイコバクテリア感染の最も一般的なかたちである.
・結核と非結核性抗酸菌の両方の感染が起こる.
・実質の感染はまれ
・口腔や咽頭の感染から腺の導管系のリンパ液ドレナージの結果,耳下腺内と傍耳下腺のリンパ節が感染する.
・プレゼンテーションの違いと年齢が診断のカギになるかもしれないが,身体所見ではたいてい報いが得られない(…)ので,最終的な診断は特別な検査に依存している.
・現在,最も価値ある検査はfine needle aspiration biopsyのようだ.高頻度で診断を確かめることができ,切除手術の後遺症を避けられる.
・FNABの役割は,ひとつには,悪性疾患の可能性の除外にある.肉芽腫性疾患であることがわかれば,他疾患の過程で血清学的な除外は必要であるが(Fig.2),外科的手術を恐らく避けられるという意味で有益である.
・病変の画像検査は,最初は超音波で行い,充実性か嚢胞性か区別する.
・結核の管理においてもこの病変が腫瘍であっても,切開生検は非難される
・もしFNABではっきりしなければ,最も確実な組織診断は外科的な切除に基づく.
・結核の内科的治療は,イソニアジド,リファンピシン,ピラジナミド(エタンブトールもでしょう).
・非結核性抗酸菌では化学療法は普通は効果がないが,suboptimal surgeryには寄与するかもしれない.

サルコイドーシス
・サルコイドーシスにおける唾液腺病変はしばしばみられ,さまざまな臨床パターンをとる.
・最も一般的には,両側の耳下腺腫脹がある.
口腔乾燥症はしばしば存在する.
Heerfordt症候群ブドウ膜耳下腺熱)は,ブドウ膜の炎症,両側の耳下腺腫脹,脳神経病変(顔面神経麻痺ですね)の三徴がある.
・急性期患者の多くで,耳下腺の流れとアミラーゼ・カリクレインという酵素が有意に減少する.
・さまざまな診断的耳下腺生検の部位が提案されている.正常にみえる口蓋唾液腺の生検で,サルコイドーシス患者の38%は陽性となる.口唇生検の36~58%が陽性となる.耳下腺は93%で陽性で,組織学的な確認のためには最も信頼できる部位である.
・サルコイドーシスの治療開始のためのガイドラインはほとんど存在しない.疾患の徴候が多彩であるため(例えば,多くの症例が治療なしで自然回復し,従来の治療(ステロイド)では重要な副作用が起こる),標準ガイドラインの制定は複雑である.

次回に残りの内容(包虫症,アクチノミセス,ウイルス)を.

唾液腺炎(急性編)

先週,県内の感染症の研究会で化膿性耳下腺炎の症例を発表させていただきました.

 ●背景:衰弱・脱水や術後の患者に多い.
 ●微生物:黄色ブドウ球菌が最多.嫌気性菌が増えている.
 ●合併症:気道閉塞,骨髄炎,Lemierre症候群,顔面神経麻痺など

ということをTake Home Messageとしてお伝えしました.

原因菌の頻度については
J Med Microbiol. 2002 Jun;51(6):526-9.
Aerobic and anaerobic microbiology of suppurative sialadenitis.
PMID:12018662
をご参照ください.

UpToDateにもしっかりまとまっていました.

今回は
Curr Infect Dis Rep. 2002 Jun;4(3):217-224.
Microbiology and Management of Sialadenitis.
PMID: 12015914
をご紹介します.
急性化膿性耳下腺炎だけでなく急性と慢性の唾液腺炎についてまとまっています.今回は急性編

Introduction
・唾液腺炎は唾液腺を侵す急性慢性,あるいは再発性の感染または炎症である.
・Seifertによる分類(表)
・唾液腺炎には急性の感染症から免疫関連疾患までのたくさんの状況が含まれている.
耳下腺がもっとも頻繁に侵される.
・唾液腺の感染症はさまざまな微生物により起こる.細菌,ウイルス,原虫・寄生虫.
・感染性または化膿性の唾液腺炎は幼児と高齢者に多い.

Etiologic Factors
細菌感染
・唾液腺の細菌感染の2つの重要な生理的メカニズム.ひとつは口腔内常在菌の唾液管・実質組織への逆向性の混入.もうひとつは唾液の停滞
・これらの過程はいずれの大唾液腺・小唾液腺をも侵しうるが,耳下腺,顎下腺の順に頻度が高い.
ウイルス感染
・発症から全身性である.
・地域性に流行し,飛沫核を介して広がり,上気道を介して体内に入る.曝露後2~3週間の潜伏期の間に上気道でウイルスが増殖し,その後3~5日間のウイルス血症を起こす.その後ウイルスは生物学的に活性のある組織へ局在する(唾液腺,胚組織,中枢神経など).
・“the mumps syndrome”を起こすウイルスは耳下腺への親和性が強いが,顎下腺や舌下腺も侵しうる
慢性再発性細菌性唾液腺炎
・より特徴的に耳下腺を侵し,時に両側性になりうる.
・もっとも一般的な病因は導管閉塞であるが,先行する化膿性感染やムンプスの病歴があるかもしれない.
・急性と慢性の炎症性疾患の関係の仮説(図)
・最初に病因となる出来事は,耳下腺の唾液分泌率の低下であると考えられ,その結果分泌物のうっ滞と濃縮が起こり,導管系へ上行性に細菌が侵入する.
・急性化膿性唾液腺炎は腺房成分の破壊と線維化を招き,その結果導管が拡張する.
・最も一般的には,慢性的に唾液の流れが減少すると,頻回の日和見感染を起こし,慢性唾液腺炎とsialectasiaを招く.
・難治性の慢性疾患の管理には外科的切開が必要である.

Acute Infections
急性細菌性唾液腺炎
・急性は,大部分が口腔からの上行性の細菌の炎症で,最も頻繁に耳下腺に局在する.顎下腺ではそのような急性の炎症はよりまれである.
・化膿性唾液腺炎は急性の単一エピソードか複数の再発エピソードとして出現しうる.
・急性化膿性耳下腺炎は,慢性扁桃炎や歯性感染症のような口腔内の感染病巣から生じうる.そして,鎮静剤を使用している患者でもみられる.鎮静剤は唾液の分泌を抑制する.
・唾液分泌の流れの減少は重要な病原因子であり,衰弱し脱水の患者に最も多く,大手術が続く.昏睡患者にもみられる.
・急性細菌性唾液腺炎は急性発症で,耳下腺または顎下腺のひとつあるいは両方に圧痛と疼痛のある腫脹を伴う.
・触診では,堅固で,硬結性の,圧痛のある耳下腺がわかる.
導管開口部赤く腫れて,口腔内への排膿があるかもしれない.
・時として膿は限局し,膿瘍を形成し,直接皮膚を介して排膿する.
・病気を疑う適切な導管からの培養の後で,推奨された治療を開始すべきである.
血液培養も採取すべきである.
黄色ブドウ球菌が急性耳下腺炎において培養される最も一般的な微生物であり,肺炎球菌やβ溶血性連鎖球菌も検出されている.
・マネージメントは補液とメチシリン(オキサシリンでは?)のようなペニシリンに耐性の黄色ブドウ球菌に対する適切な全身抗菌薬からなる.
・もし化膿性のイベントが進行したり,正確な診断が遅れれば,膿瘍の外科的ドレナージを考慮すべきである.
・顎下腺の波動する膿瘍は切開・ドレナージとそれに続く切除に反応する.
・耳下腺の筋膜は垂直に分かれているので,最も化膿が進行した時期であっても波動する耳下腺腫瘤はめったに出現しない.進行する浮腫,硬結,そして敗血症が耳下腺膿瘍の切開の適応である.
耳下腺炎の細菌学
黄色ブドウ球菌が急性化膿性耳下腺炎の最も一般的な原因菌であり,50~90%の症例で培養される.
肺炎球菌化膿性連鎖球菌(β溶血性連鎖球菌)を含むStreptococcus属やHaemophilus influenzaeも急性化膿性唾液腺炎の一般的な原因菌として認識されている.
・唾液のなかにみられるフィブロネクチンがブドウ球菌や連鎖球菌属の付着力を促進することが示されている.
・より低い頻度で,大腸菌,Klebsiella pneumoniaeP. aeruginosaを含めたグラム陰性桿菌が唾液腺の感染から培養されている.
サルモネラ属による耳下腺膿瘍がHIV患者で報告されている.
・東南アジアでは,Pseudomonas pseudomallei(土壌や地表水にみられる微生物)が,とくに小児では,急性耳下腺炎の一般的な原因菌である.
最近,唾液腺内の急性細菌感染において嫌気性菌が認識されてきている.
Bacteroides属,Peptostreptococcus属,Fusobacterium属は43%もの数の感染症から培養されている.この所見は微生物学的な変化というよりむしろ培養技術の改善によるものだと考えられている.
・嫌気性菌とグラム陰性桿菌の増加は院内感染を反映しているという主張もある.
・急性顎下腺感染症のうちの925例はより一般的なブドウ球菌による市中発症であるため,一般的でない原因菌は,一般的には耳下腺の感染症でみつかる.
結核菌梅毒は,急性耳下腺炎における極めてまれな原因菌として報告されているが,悪性腫瘍と混同されうる無痛性の慢性の唾液腺感染症と関連している.

化膿性脊椎炎(3/3) -治療とフォローアップ-

Therapeutic approaches

Antibiotic therapy
・安全で,感染部位へ浸透でき,骨髄炎の一般的な原因菌のほとんどに活性があるので,(エンピリック治療として)βラクタム薬(って山ほどあるが…)が第一選択.骨培養に基づいて広域抗菌薬から特異的な抗菌治療へ変更できる.
・至適治療期間は文献上で議論されてきており,いくつかの研究では6~8週の静注を,他の研究では4週間のみの治療を推奨している.
コストやルート確保の不便性や院内感染のリスクを理由に,静注以外のルートが評価されてはいるが,経口治療のみにする前に少なくとも1週間は静注薬が必要である.しかし,いくつかの研究では,静注薬での治療が4週間より短いと再発率が25%ということが示されている.
・安全なマージンをとって6週間の静注薬のあと6週間の経口薬という提案もある(Hadjipavlouら).
・外科的治療施行の決定がたいてい下される重篤な最初の月にESR値を考慮に入れるべきである.一般的な傾向として,非外科的な治療を行った最初の1ヶ月間のESRの減少が予後良好のサインであることが示唆されている(Carrageeら).
・しかしESRの迅速な反応が50%以下でも(1ヶ月でESRが半分以下にならなくても)治療失敗と関連することはまれで,ESRの高値が続いた症例の40%は保存的な治療が成功している.
・ESRに対して,背部痛の軽減,健康の回復,危険因子,年齢,免疫抑制,神経学的状態の安定性を含めた臨床的な指標が治療の効果を評価するために役立つかもしれない.
・骨髄炎が再発したときには,抗菌薬の管理よりも外科的なアプローチがより重要で,局所の積極的な治療,すなわち感染骨の除去が必要かもしれない.
・危険因子の除去,すなわちカルシウム,ビスホスホネート,そして/あるいはビタミンDの補給,テストステロンそして/あるいはエストロゲンの治療が骨の修復を促進するかもしれないということを示唆する報告もいくつかある.

Surgical treatment
・脊椎感染のマネージメントの一般的な原則は非手術的で,外固定抗菌薬投与(静注→内服)から成り立つ.
・外科的(手術的)デブリードマンの適応は,静注抗菌薬開始後2~3週間で臨床的改善のない症例で,持続的な腰痛の存在や,低栄養やカセクシス?のような慢性感染の全身への影響があった場合である.
・神経学的に危険な状態の存在・進行は膿瘍や椎体の崩壊の結果かもしれず,加齢や頸椎の感染でリスクが高い.膿瘍の形成も,抗菌薬は一般的に効果がなく,ドレナージが必要なので,外科的手術の適応である.
・感染が慢性になったときには,適切な治療にも関わらず,次の2つの合併症で手術を要するかもしれない:生体力学的な不安定性の進行とそれに関連する慢性疼痛,そして/あるいは進行する変形に伴う椎体破壊
・(手術内容についての記載もあり)
活動性の感染が内固定の使用の妨げとはならない

Flow-up strategies
治療70日後に,MR画像TCスキャン骨シンチを再検しなくてはならない.
骨シンチが感染のために(どうやって判断?)まだ陽性であれば,もう2ヶ月の安静と抗菌薬が必要である.陰性になるまで臨床検査と骨シンチを繰り返す.
骨シンチが陰性であれば,SPECT Ga-67スキャンを施行し,回復を確かめる.もし陰性であれば,患者は回復しており,経口抗菌薬は終了し,矯正器を使った動作が許される.もし陽性ならば,もう2ヶ月の安静と抗菌薬が必要である.陰性になるまで臨床検査とGa-67スキャンを繰り返す.
・臨床所見と画像が悪化した,あるいは保存的治療4ヶ月で改善がない場合,外科的なアプローチを考慮すべきである.
臨床所見とMRIの所見は相関しないかもしれないので,治療への反応のフォローにおけるMR画像の妥当性については依然として明らかにされていない.
・患者は臨床上よくなっているのに,治療を始めた最初の1週間でMRIは改善するかもしれないし,悪化するかもしれないし,変わらないかもしれない.
・このような理由で,抗菌薬治療の反応をフォローするためにルーチンでMRIを使用することは正当化されない.
・新しく根症状や馬尾症候群が出てきたようなときには,膿瘍や他の占拠性病変の進展を除外するために,MRIの適応となるべきである.

化膿性脊椎炎のフォローと抗菌薬終了のタイミングの判断においてここまで明確に書かれたものは珍しいように思いました(よろしければ原著のFig.もご覧になってみてください).2010年のNEJMのレビューをみても,やはりフォローの仕方についてはあまり詳しくは書かれていません.
X線で骨形成の有無を確認して,あとはESRとにらめっこしながら,恐る恐る抗菌薬終了…といった感じが実際には多いように思います.ESRは参考にはなりますが,下がりきらない場合もありますし,判断に迷います.
とはいっても,このstrategyの記載の箇所には参考文献がふっていなくて,怪しくも感じます.もっといいものがあればご紹介いただければありがたいです.

化膿性脊椎炎(2/3) -診断的アプローチ-

前回の続きです.

Diagnostic approaches

Laboratory tests
・HVOにおける臨床検査の価値はまだわからない.
・白血球値は典型的には上昇しない(13~60%).ESRはより頻繁に上昇する(73~100%).
血液培養は最も役立つ検査であり,30~50%の症例に微生物学的な診断を与えてくれる.
・もし敗血症の原因がわかれば,あるいは血液培養が陽性であれば,さらなる侵襲的な検査を行われる可能性はより低い.しかし生検が行われなければ,二番目の微生物を見逃す可能性は存在する.
・血液培養が陰性だと,化膿性脊椎炎の病因診断はしばしば難しい.これらのなかで30~70%は,閉鎖経皮的なあるいは開放外科的な生検により,脊椎検体が得られている.
・結核性か化膿性かの診断は難しいかもしれない.
・他の組織あるいは液体サンプルからの結核菌の分離あるいは乾酪性肉芽腫の組織的な証明があれば,結核性椎体炎の診断に十分という意見もある.
・結核性椎体炎の21%は,以前あるいは現在の椎体外結核の診断がなく,結核の家族歴がなく,ツ反陰性であった.
・ブルセラ感染症では,細菌学的な検査と血清学的な検査のyieldはとても高かった.

Imaging Tehniques

Plain Radiography
・早期の段階の椎体炎において単純X線は所見がない.
・椎体終板の脱塩そして/あるいは不整を含んだわずかな変化は指摘されるかもしれない.
・化膿性感染における最も早いX線の所見は3週目に現れる.椎体間スペースの軽い狭小化上方終板の不鮮明
・椎間板スペースの進行性の狭小化,椎体辺縁の不整を伴う骨溶解の段階的な進展,そして軟骨下板のさらなる破壊と続く.
4週目では,椎体破壊の所見はいくつかの症例ではみられるかもしれないが,6週後には椎体破壊は常に明らかとなる.
・終板が明瞭で椎間板のよく保たれた椎体の破壊像はがん浸潤の診断を支持し,椎体の終板が不鮮明で椎間板の高さが失われていることのある椎体破壊病変は感染を示唆する.
・椎間板スペースの狭小化は感染とは関係なく椎間板変性疾患の偶発によることもある.

Bone scintigraphy
・早期診断においてシンチグラフィの役割は重要.骨シンチは広く利用されており,施行しやすく,安全で,はやく完了する.
Tc-99m-MDP SPECTは骨髄炎の早期発見において感度90%
・ノーマルなTc-99m-MDPの脊椎の骨画像は,高い確実性で骨髄炎を除外する.
・症候が限局しにくく,そして/あるいは患者が高齢で,混乱し発熱のあるとき,最初の全身スキャンが診断には極めて重要である.
・残念ながら特異的ではない
・特異度は骨の基礎状態に依存する.正常のX線像で骨のターンオーバーの増加する理由がない成人においては,スキャンの特異度はより高い.骨折,腫瘍,活動性の変形性関節症,非感染性炎症性病変,偽関節によって骨のリモデリングが増加している場合,骨スキャンの特異度は下がる.
・骨スキャンの偽陰性は高齢の患者で観察されているが,おそらく動脈硬化性疾患に続発する局所虚血が原因である.

Ga-67 Citrate Imaging
特異度を上げるために骨シンチの補助として使われる.
・Ga-67 citrate SPECTで,心内膜炎,傍脊柱膿瘍,腋窩下軟部組織膿瘍,そして他の感染巣といった思いもよらない原因を見つけることができる.
・99 Tc SPECTや平面のGa-67 citrate画像と違って,Ga-67 citrate SPECTは感染の重症度を見積もることができる?
・すばらしい結果が蓄積されているにも関わらず,dual-tracer技術に欠点がある.手順には2つの異なるtracerが必要であり,異なった日に複数の長い画像化時間が必要である.コストも増え,患者(多くは高齢,衰弱)には不便である.
・骨のリモデリングに対する感度はより低く,感染過程の活動性の程度をより正確に反映するので,Ga-67画像は治療の反応のフォローアップにおいてよりよいツールかもしれない.
99 Tcシンチは完全な治癒となるまでは陽性のままであり,感染が休止したあとも,骨のリモデリングと修復に対する感度のよさから,陽性のままかもしれない.
・Ga-67スキャンは,感染症が活動性の時期にだけ陽性となるだろう.

CT
・侵された椎間板は低濃度な領域となるので,CTでは早期でも陽性所見が得られる.
・椎間板の平坦化と椎体終板の破壊は,早期には一般X線撮影ではわからないが,CTではわかる.
・炎症過程の広がりがはっきりする.腸腰筋病変を合併した傍脊柱膿瘍は造影剤投与で容易にわかる.
・硬膜外膿瘍の髄腔内への進展はMRIのほうがはっきりする.
・CTはより直接的には,疑わしい病変の針吸引による診断において使用することができる.
・画像的な診断で感染性の椎間板炎が診断されたときであっても,definitiveな抗菌薬治療のために,微生物学的な診断はとても望ましい.
・針吸引は胸椎と腰椎では使用できるが,一般的に頸椎に試みるには危険すぎる.
・CTガイド下針吸引は椎間板スペースの細菌や肉芽腫性感染症の確認のためには正確な方法であるが,偽陰性の症例ではすべて真菌感染症であるという報告あり(Chewら).
・微生物学的に同定された病原菌の検出率は報告によってさまざま.Chewら:91%(39/43),Perronneら:74%(29/39),Carragee:61%(27/44).
・培養陰性の場合には,生検前の抗菌薬投与十分な組織サンプリングの採取ができない小径の生検針自然治癒の3つの説明が考えられる.
・椎体の軟骨下板の血管肉芽組織が感染した椎間板スペースに入り込み,それを再吸収し,約6週後に感染部位が自然治癒できるようにする.このようにして培養が陰性化する.
・なぜ椎体椎間板炎が非易感染性宿主ではself-limitedな経過をとりうるのかも,このことで説明できる.
・病原菌が検出できなかった場合,必ずしも,感染がない,あるいはなかった,あるいはそのような患者はエンピリカルに選択した抗菌薬治療の恩恵を受けないということを示唆しているわけではない.

MRI
・MRIは脊椎骨髄炎の診断学的な画像検査法として推奨される(accuracy rate 90%).
・感染の早期診断を可能にし,髄腔内造影剤なしに,脊髄,クモ膜下腔,硬膜外軟部組織,脊柱を直接視覚化できる.
・いつも骨髄炎と重度の変形性関節症を区別できるとは限らない.
・感染過程の最も早期の所見は,椎体内の浮腫の蓄積による椎体内の骨髄シグナルの変化である.
・単純あるいは造影した矢状断(骨の構造の評価)水平断(傍脊柱膿瘍の評価)を施行.
・感染が考えられる場合:
(A) T1強調画像で椎骨骨髄と椎間板スペースのシグナルが低下し,椎間板と隣り合う椎骨骨髄の境界が識別できなくなる
(B) T2強調画像で侵された椎間板と隣り合う椎骨骨髄と椎間板自体のシグナル増強
(C) Gd-DTPA静注による画像で椎間板と椎体の均一な造影剤の増強
・ほとんど必ず傍脊柱軟部組織の腫脹が示される.硬膜外スペースに向けて後方へ,そして椎間孔に向かって後外側方へ広がりうる.
・硬膜外膿瘍は,T2強調画像で高信号の硬膜外病変として矢状断ではっきりと示される.
・硬膜外腫瘤(膿瘍)の正確な指摘はGd-DTPAの静注によってのみ可能である.真の膿瘍内容物に相当した中心部の低信号と周囲の炎症組織の高信号.
・感染性の脊髄炎はまれ.ふつう硬膜外からの圧迫のない神経脱落症状を伴い,Gd-DTPAで増強される.
・結核性椎体炎はいくつかの特有の所見がある.椎間板スペースのシグナルが正常傍脊髄軟部組織腫瘤の存在複数の椎体にまたがる病変椎体の後方やアーチへの局在.傍脊髄腫瘤のサイズは他の化膿性感染よりも結核においてより大きいのがふつう.
・MRIは結核感染と他の椎体炎の慢性期を鑑別するのに有用.結核では後期のT1強調画像でやや高いシグナルを示し,他では低信号を示す.
がん転移では椎間板は侵されず,侵された椎体は造影剤で増強されない

次回,「治療とフォローアップ」編に続きます.

化膿性脊椎炎(1/3) -病因,身体所見-

Eur Rev Med Pharmacol Sci. 2005 Jan-Feb;9(1):53-66.
Clinical features, diagnostic and therapeutic approaches to haematogenous vertebral osteomyelitis.
PMID: 15852519
 Free Article(だったのですが,いつのまにかみられなくなっています…)
というreviewを読みました.
化膿性椎体炎のフォローの仕方について調べていたときにみつけました.有用性はさだかではありませんが,最後にカラフルなアルゴリズムが登場します.

椎体炎のreviewについては
N Engl J Med. 2010 Mar 18;362(11):1022-9.
Clinical practice. Vertebral osteomyelitis.
PMID:20237348
の方が知られていると思います.そちらもご参照ください.

Introduction
・血行性の化膿性脊椎炎(HVO)は感染性の骨疾患の2~4%と比較的まれ.
・若年者のIVDUの増加,血管内デバイス,泌尿生殖器手術・操作を用いる高齢者の増加により,最近は増えてきているようだ.
・発症時の症状は典型的には潜行性の頸部あるいは背部の痛みで,患者によってしばしば過小評価される.
・検査やX線所見も非特異的で,背部痛はよくみられる症状であるため,早期診断は難しい.
・いくつかの研究では,症状が始まってから診断に至るまで平均2~6ヶ月遅れると報告している.

Etiopathogenesis
・最も頻繁に侵されるのは前方カラムと中間カラムである.
・硬膜外膿瘍は骨髄炎の部位に隣接して起きるが,まれに新たな場所に起こることもある.
・椎体(とくに前縦靱帯の近くの前方の軟骨下部領域)は動脈網により豊富に供給を受けている.
・成人の椎間板は無血管なので,通常は最初には侵されない.小児では椎間板内が最も頻繁な新規感染部位である.
・Batson傍脊椎静脈叢が骨盤臓器からの潜在的な感染ルートとして働く.
・化膿性脊椎炎は腰椎胸椎頸椎仙椎の順に頻度が多い.結核性脊椎炎は胸椎に多い.これは縦隔リンパ節や胸膜からリンパ行性に脊椎に至るからかもしれない.
・結核性脊椎炎では23%が複数の脊椎を侵すが,化膿性脊椎炎では9%という報告あり.
・骨髄炎の原因菌は黄色ブドウ球菌が最多.成人では腸管のグラム陰性桿菌が2番目,幼児ではH. influenzae,新生児ではB群連鎖球菌が多い.
Streptococcus pneumoniaeS. agalactiaeS. viridansS. faecalisProteus mirabilisPseudomonas aeruginosaCandida glabrataはuncommon.
・HVOの発生率は高齢者では増加しているようだ.一般人口の寿命が延びたことや重症疾患のより積極的な集中治療,がん治療のための化学療法と免疫異常が関係しているかもしれない.
・Carrageらの111名のreviewでは,55%が60歳以上,40%が免疫系の異常があった.
・高齢者の感染源は,院内菌血症を合併した血管内デバイスの使用と関係している.
・他の感染源としては,呼吸器あるいは口腔内感染,皮膚潰瘍,泌尿生殖器手術,膀胱留置カテーテルや尿管ステントの留置がある.
・典型的には,グラム陰性桿菌(主にEscherichia coliProteus Mirabilis)によるHVOは尿路由来である.
・腎不全,慢性肝疾患,アルコール依存,最近の外科手術,血液透析は高齢者で認められる他の危険因子である.
・若年者でHVOの発生が増えているのは,IVDUの数が増えていることと心内膜炎が関係している.

Physical Findings
・背部痛と傍脊柱筋のスパスムが最も共通した臨床所見.
発熱の存在は10~45%という報告あり.
・発熱の欠如と脊柱の変形は脊柱結核において頻度がより高い.
・脊柱感染において,かすかだが持続性の発熱は65~90%という報告もある.
・1~2の神経根に限られた軽度の神経脱落症状は28~35%にみられる.
・完全または不完全対麻痺のような重度の障害はまれに起きるかもしれない.
・神経脱落症状(とくに麻痺)は硬膜外膿瘍にしばしば合併する.
・101例の化膿性脊椎感染の研究で,脊椎炎の合併症として,33例の硬膜外膿瘍が報告されており,そのうち15例に対麻痺があった.
・29例の脊椎結核の後向き研究では,22例に神経脱落症状があり,11例は髄腔内肉芽腫組織,2例は髄内結核腫,9例は顕著な骨の崩壊によるものだった.
重症な神経学的合併症が起きる可能性は,腰椎よりも胸椎や頸椎で高く,硬膜外膿瘍の形成の可能性の評価と神経学的後遺症の予防により注意を払うべきである.
・結核性骨髄炎でより神経脱落症状が多いのは,診断の遅れが多いことと脊椎変形の存在が多いことで部分的に説明できる.
・脊柱後弯症はまれな合併症で,結核性椎体炎でより高頻度に起きる.
・SLRテスト陽性,ポケット形成?(sinus tract formation),皮下膿瘍は数パーセントの患者にしか存在しない.
・傍脊柱腫瘤は49.7%(結核:78%,ブルセラ:39.8%,化膿性:53.5%),硬膜外膿瘍は36.5%(結核68.3%,ブルセラ:23.5%,化膿性:40.8%),腸腰筋膿瘍は10.9%(Colmeneroらの報告).
・症状は時として非特異的であったり,ぼんやりとしていたり,ほとんどなかったりするので,HVOの診断はとても難しいかもしれない.
・CTや骨シンチの使用にも関わらず,通常の診断の遅れは2~4ヶ月と報告されている.
・MRIを用いた研究では,発症から診断までの中央値は3週間以内であり,MRIの使用は早いステージでの診断を可能にするだろう.
・発症から診断までの平均期間は結核ではより長かったという報告あり.結核の進行がゆっくりであることで説明されうる. 33~52%の症例に,現在あるいは以前の椎体外の結核の診断が示された.
・化膿性感染における診断の遅れは有意に短く,臨床的な症候が出やすいことを反映するのかもしれない.
・誤診は60~70歳の患者でより多く,腰椎の病変でより高頻度である.
転移性がん脊柱管狭窄髄核ヘルニア腰椎捻挫としばしば混同される.
・いくつかの研究で,誤診と有意に関連しているのは,患者の年齢発熱の欠如SLRテスト陽性である.

次回,「診断的アプローチ」編に続きます.

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