アメナクシテニジハナシ

一般内科,感染症,HIV,救急などの医学領域と個人的な趣味について

2011年07月

認知症(1)

最近認知症の勉強をする機会がありました.
その際に,

Ann Intern Med. 1984 Mar;100(3):417-23.
Dementia in elderly outpatients: a prospective study.
PMID:6696360


Arch Intern Med. 1986 Oct;146(10):1917-22.
Diagnostic tests in the evaluation of dementia. A prospective study of 200 elderly outpatients.
PMID:3767535


という文献を読みましたが,これらの論文の著者であるLarson EB先生は,実は『Diagnostic Strategies for Common Medical Problems』(通称:赤本)の認知症も担当していることがあとでわかりました.
古い文献ではありますが,今日は前者の論文をご紹介します.

Abstract
・107名の任意抽出の外来患者における認知症の評価を前向きに研究.
・83名がいわゆる“不可逆性の”認知症で,そのうち74名がアルツハイマー型認知症.
・15名がpotentially reversible dementias(PRD)で,そのうち甲状腺機能低下と薬物毒性が最も頻度の高い原因であった.
・可逆性認知症の特徴は,より短期間,より多くの処方薬,より軽症の認知症であった.
・患者のほとんど半分に以前に認識されていない他の治療可能な内科的疾患があった.
・ほとんどの診断は病歴,身体所見,精神状態の検査からなされた.
・可逆性認知症の患者は改善したが正常に戻ることはまれであった.
・認識されていなかった共存する内科的そして精神的疾患の治療あるいは不要な薬物の中止の後に25名の患者において客観的な改善が起こった.
・注意深い臨床的観察が評価の最も有用なパートであり,追加検査は全ての患者には必要ないかもしれない.
・可逆性認知症を不可逆性認知症と区別することを強調しすぎることは,より頻繁で,治療可能な機能不全や苦痛の原因の認知を損なうかもしれない.

背景
・いままでの文献は典型的には,10~30%の患者が可逆性あるいは潜在的に治療可能な認知症で,10~20%は真の認知症ではなく共存するうつあるいは一過性の錯乱状態で,残りがいわゆる不可逆性の認知症,原発性のアルツハイマー型認知症と多発脳梗塞性認知症であると報告している.
・これらの研究の結果は,単に老年性認知症のレッテルに追いやるのではなく,患者をアプローチするにあたっての正確で注意深い鑑別診断の重要性を気付かせる結果となった.しかし,これらの研究には,推奨するプラクティスの標準の基礎として使うことを制約するいくつかの短所がある.研究は入院患者の評価を記述しており,認知症の患者のほとんどは外来患者である.もうひとつの問題は,長期間のフォローアップは限られるため,ほんとどの研究が認知症の潜在的な可逆的原因を記述していることであり,患者のアウトカムはたいてい評価されていない.最後に,適切な診断評価について不一致がある.USの専門家やNIA Task Forceの提案は広範囲で高額で,虚弱で高齢な患者に完遂するのは難しいかもしれない.一方でイギリスの報告では,認知症のすべての患者に,いくつかの可逆性ではあるがまれな状況を見つけるための検査のバッテリーを行うことは有害であるかもしれないことを強調している.
・このような背景から,私たちは認知症疑いの高齢外来患者の従来の認知症評価を前向きに研究した.私たちの目的は,認知症疑いの外来患者のシリーズの調査から診断学的なyieldを決定することである.すなわち,あるとすればどんな特徴で潜在的に可逆性の認知症と他の認知症を区別できるのか,潜在的に可逆性の認知症の原因をもつ患者は治療後に改善するのかどうか,ルーチンの徹底的な診断学的評価よりも別の選択的な診断学的評価がふさわしいかどうか.

方法
・対象患者は60歳を超える年齢,主訴は全般的な精神障害(記憶障害,精神錯乱,思考低下,ケア不能,自己無視(neglect)),症状は少なくとも3カ月.⇒107名
・すべての患者が内科医により完全な病歴聴取,身体所見,神経所見をとられた.90%を超えて精神科医の評価を受けた.
・DSM-Ⅱを用いて認知症と判定された患者は認知症の評価の一部として推奨される診断的検査を受けた.認知症でないと判定された患者は評価者の裁量にて診断的検査を受けた.
・評価は完全な病歴,全身の身体所見,神経所見(精神状態の検査,脳神経所見,小脳機能,運動評価,深部腱反射と足底反射)から成った.
・精神機能はmini-mental stateとdementia rating scaleで等級分けされた.
・検査室評価はふつう,CBC,ESR,SMA-12血液生化学解析(血糖,Na,K,Cl,重炭酸,BUN,Cre,Ca,Bil,ALP,Alb,TP),甲状腺機能検査(ラジオイムノアッセイによるサイロキシン(T4),トリヨードサイロニン(T3)レジン摂取率,もし適応があればTSH),VDRL,ビタミンB12,葉酸,脳CT,胸部X線,心電図を含んでいた.
・フォローアップは初診のあとの2~6週間後に組まれ,そこで患者は再評価され,治療を処方され,患者と診断学的な評価の結果を話し合った.
・アルツハイマー型認知症は環境に適応するための患者の能力が危うくなるレベルまでの全認知機能の喪失,進行性の悪化,期間は少なくとも6カ月,の証明に基づいて診断された.精神状態の検査においては,患者は次の能力のうちの少なくとも2つの障害を示す必要があった.すなわち,学習,注意,記憶,見当識.そして加え次の認知能力のうちのひとつ,すなわち,計算,抽象化,判断,理解.
・多発脳梗塞性認知症はHachinskiの虚血スコアが4点未満で除外された.
・認知症の他の原因は上記の検査室評価に基づいて除外された.
・アルツハイマー型の認知症があり,パーキンソン病の症状(硬直,粗い振戦,動作緩慢,小股歩行)もある患者はアルツハイマー型認知症とパーキンソン病があるものとして診断した.
・多発脳梗塞性認知症はHachinskiの虚血スコアが7点より大きいことで診断した.
・うつの診断は研究診断基準に基づいた.
・可逆性認知症の原因は典型的な臨床所見と検査所見の確認で診断した.
・最初の臨床評価で薬剤誘発性の認知症が疑われた際には,薬剤は書き留められ,可能なら中止された.しかし,薬剤の中止後に改善したようにみえたときにだけ認知症は潜在的に可逆性であると分類された.
・他の種類の認知症(進行性核上性麻痺やウェルニッケ・コルサコフ症候群など)は特徴的な臨床所見に基づいて診断された.

結果
・107名の患者が研究対象となり,102名の患者が外来で診断評価できた.
(Table 1. Characteristics of Study Population of Patients with Suspected Dementia)
<診断>
・認知症の診断をTable 2に示す.
(Table 2. Diagnosis of Dementia After Evaluation)
・8名の患者が2疾患が認知症の原因であると考えられた.
・他の不可逆性認知症は低酸素脳症後,進行性核上性麻痺,恐らく外傷後脳症.
・精神障害を主訴とした15名の患者が認知症でないことがわかった.自覚的な認知障害あるいは見てくれの障害の原因となりうる様々な疾患をもっていたが,精神状態の検査やフォローアップに基づくと,認知症の客観的な特徴はみられなかった.これらのグループの最終診断はうつ(7例),脳血管障害(3例),多発性硬化症,酒さ,末梢神経障害,薬剤誘発性ループスエリテマトーデス,良性老人性健忘(各1例)であった.うつの7例中4例には部分的にうつの原因となりえたいままでに診断されていなかった内科的疾患(うっ血性心不全,鉄欠乏性貧血とアスピリン胃炎による消化管出血,転移性乳癌,疼痛を伴う圧迫性神経障害)があった.
・PRDの原因をTable 3に示す.
(Table 3. Causes of Potentially Reversible Demantia in 15 Patients)
・すべての患者がこれらの状況に典型的な臨床的あるいは検査室的特徴を持っていたが,診断の時点では,PRDが認知症の単独の原因であるかどうかあるいは不可逆性認知症にスーパーインポーズした可逆性疾患を表しているのか決められない場合もあった.
・最も頻度の高い原因は薬剤であった.認知症の原因である可能性のあった単一薬剤による副作用にはアマンタジンによる精神錯乱,インスリンによる低血糖,ハロペリドールによる過鎮静,パーキンソン病があった.複数の薬剤が認知症の原因薬剤の可能性があるときには,次のような薬剤が含まれた.すなわちクロラゼプ酸とロラゼパム,メプロバメートとプロトリプチリンとチオリダジン,レセルピンとジアゼパムとメプロバメート.
・患者のチェックリストからのデータに基づいて,可逆性認知症の15名と可逆性の要素のない不可逆性認知症の大きなサブグループとを比較した.
(Table 4. Features of Potentially Reversible Dementia)
・可逆性認知症の患者は有意に,症状の期間が短く,軽症で(mini-mental state testの高得点あるいは反対のdementia rating scale),よりたくさんの薬剤処方を受けていた.
・精神状態の検査の個々の要素も不可逆性認知症患者でより異常である可能性が高かった(p < 0.01).可逆性のグループで有意により頻繁に使用された(p < 0.05)薬剤は催眠鎮静薬,降圧薬であった.
・可逆性のグループから浮上した臨床的に重要なサブグループは認知症の経過が突然あるいは急性の悪化で特徴づけられた5名の患者を含んでいた.このグループの診断は,硬膜下血腫(2例),一過性脳虚血発作,躁うつ病,リウマチ様血管炎であった.症状の期間は5名とも12カ月未満であった.
・115の診断のうちの106(92.2%)は認知症の診断は病歴と身体所見と神経所見(とくに精神状態の検査)で行われた.
・CTは硬膜下血腫(2例)の診断において最も確実であり,多発脳梗塞性認知症が疑われた2例と認知症のない脳血管障害の1例の患者において役立った.
・甲状腺機能検査は4例の甲状腺機能低下の診断に役立ち,そのうちの2例は病歴と身体所見からは疑われなかった.
・スクリーニングの血液生化学検査でインスリンによる低血糖がみつかった.この患者にはめまいと失神もあった.
・48名の患者に他の以前には認識されていないが治療可能な疾患があった.それらは症状あるいは機能障害の原因となっており臨床的に重要であると判定された.
(Table 5. Other Previously Unrecognized but Treatable Diseases in 48 Patients with Dementia)
・“Other”は低Na血症,転移性大腸癌,十二指腸潰瘍(2例),症候性前立腺肥大.
・88診断のうちの62(70.5%)は病歴と身体所見と精神状態の検査からだけでなされた.
・役立つ診断法には,CBC,スクリーニングテストとしての血液生化学パネル,排尿障害・頻尿・尿失禁のある患者の尿培養,そして心不全,関節炎,圧迫骨折疑いの臨床所見のある選択された患者のX線が含まれた.
・葉酸低値のある1例だけに大球性貧血があった.
・他の26診断は,葉酸低値の診断を除いて,臨床評価から疑われた後で臨床検査で確認されたか,スクリーニングの血液生化学検査あるいはCBCに基づいてなされた.
<結果>
・アウトカムの評価は初期評価の少なくとも6カ月後の77名(107名のうちの72%)の患者のデータに基づいた.
・アウトカムは疾患の2つの一般的なカテゴリー(認知症と他の内科的疾患)において評価された.
・25名(総サンプルの23.7%,フォローアップできた77名の患者の32.5%)が少なくともひとつのカテゴリーで明確な改善を示した.
・16名の患者がmini-mental stateあるいはdementia rating scaleの改善に基づいてあるいは認知症の症状の明確で十分な改善を家族が報告したことによって,認知機能の客観的な改善があったと判定された.20名の患者が,(貧血あるいはうっ血性心不全の解消,パーキンソン病における歩行時間や書字の改善のような)客観的な徴候の改善を示すか,より効果的に日々の活動ができるようになったと家族が評価したために,他の内科的疾患の治療後に明確な改善があったと評価された.11名は両方のカテゴリーにおいて改善した.
・認知機能が改善した16名の患者のうち,11名は可逆性認知症があると診断されていたが,5名は最初は不可逆性であると分類されていた.
・“不可逆性”の認知症患者の認知機能の改善は,うっ血性心不全,うつ,鉄欠乏性貧血,パーキンソン病を含む併存疾患の治療のあとに起こった.
・これらの5名の患者は認知が改善したが,まだ認知症のままであった.
・PRDの3名の患者だけが完全な可逆性(フォローアップ時の精神状態の検査の正常化)を示した.ひとりは最初から硬膜下血腫があり,もうひとりはレセルピン,ジアゼパム,メプロバメートの毒性,あとはリウマチ様の脳血管炎の患者だった.リウマチ様血管炎の患者以外は最初からかすかなあるいは軽度の精神状態異常だけであった.
・可逆性認知症の13名の患者は2年にわたってフォローされていた.8名(甲状腺機能低下の4名のうちの3名,硬膜下血腫の1名,薬物毒性の6名のうちの4名)はアルツハイマー型認知症で矛盾しない進行性の悪化をきたした.5名(甲状腺機能低下,硬膜下血腫,リウマチ様血管炎が各1名,薬物の副作用が2名)は認知症の進行は示さなかった.
<診断指針>
・この患者群で有効であった私たちの指針は次のようであった.明らかな最初のステップは,望ましくは病歴の詳細をくれて確かめてくれる観察者(ふつうは家族)と一緒に,患者の病歴をとり,身体所見と精神状態の検査を含めた神経所見をとることだ.
・特定の臨床検査からなる2つめのステップは可逆性認知症の患者をみつけるために,そして正確な病歴を教えることができない高齢患者において診断の難しい併存した治療可能な疾患をスクリーニングするために必要である.私たちの患者群で明白に価値のある最適な検査は,甲状腺機能検査,CBC,血液生化学パネル(SMA-12)であった.
・3つめのステップはより広範囲にハイリスクなサブグループを評価することであり,そのグループでは頭部CTが診断の補助となる.私たちの患者のハイリスクの特徴は急性あるいは突然の悪化と最近の発症(12ヶ月未満)の病歴や軽症の認知症(mini-mental state score 20を超える).このストラテジーを使って17のCTが施行され,硬膜下血腫の2名の患者と多発脳梗塞性認知症のすべての患者の診断の補助となっただろう.
・代わりの3つめのステップは低リスクやリスクのないグループを考えて,病歴と身体所見によってとくに示唆されない限り,CTあるいはさらなるルーチン評価を行わないことである.私たちの患者では,低リスクグループの特徴は,急性増悪の病歴がない,症状の期間が長く(36ヶ月を超える)重症の認知症(mini-mental state score 15以下)のいずれか.このストラテジーで72名の患者がCTを受けずにすんだだろう.
・これらのストラテジーのいずれかを使って,CT上の診断学的に重要な所見を見逃すことはなかっただろうし,ハイリスクストラテジーを使って75の陰性CTが,低リスクストラテジーを使って72の陰性CTが施行されずにすんだだろう.
・このストラテジーによって見逃される重要な所見は同様に集められた患者の4%にすぎなかっただろう.

考察
・ほとんどの報告が高齢者を大多数として含んでおらず,入院患者を評価.私たちの研究は,60歳を超える外来患者に限っている(現実的).
・私たちの研究と他の報告には2つの特徴ある違いがあった.
・多発脳梗塞性認知症あるいは切除可能な腫瘤病変のような,局所性の破壊的な神経疾患が私たちの研究では少なく,正常圧水頭症の患者はいなかった.
・ほとんどがより若い患者であったいくつかの研究に基づいて,Rubinsteinは最近,406名の患者のうち約10%は多発脳梗塞性認知症で,3.7%は切除可能な腫瘤病変で,5.4%は正常圧水頭症であったと報告している.私たちの研究ではこれら3つの診断のいずれかは5.7%だけであった.不可逆性認知症の患者でより頻度が高かったのは,よりびまん性で非局所性のアルツハイマー型認知症であり,可逆性認知症の患者でより頻度が高かったのは,甲状腺機能低下あるいは薬物副作用に関連した認知症であった.
・多発脳梗塞性認知症の頻度が比較的少ないのは,これらの患者の多くは神経内科医によってすでに評価されており,評価のために紹介されないため,紹介のパターンを反映しているかもしれない.
・他の研究で切除可能な腫瘤病変と正常圧水頭症の頻度が多いのは,おそらく,入院患者の研究では多いであろう外科的に治療される神経疾患の過剰提示のためだろう.
・過去の報告のごとく80歳を超えるひとの20%がアルツハイマー病であれば,高齢者に限定した研究でアルツハイマー病が優位であることは不思議ではない.同様に,外来患者の任意抽出の研究で,頻度の高いPRD(が甲状腺機能低下あるいは薬物副作用に関連した認知症)も不思議ではない.高齢者で単剤と多剤の投薬が広範囲に用いられることは多くの研究で示されている.
・潜在性の甲状腺機能障害は入院高齢患者の2.5%と報告されている.
・すべての患者に広範囲の評価を推奨するひとと慢性の精神錯乱の任意抽出の患者でまれな疾患を見つけるために複数の診断学的検査をルーチンで使用することの実用的価値は疑わしいと主張するひととの間での議論にこの研究は付加データを与える.
・症状がより短いこととより軽症な認知症であることはいわゆる可逆性認知症の患者を特徴づける.FreemonとRuddもまたPRD患者の症状の期間が短いことを報告している.Foxらは病歴と身体所見だけでは潜在的に治療可能・治癒可能な患者の多くと現在のところ治療できない認知症の患者は区別できないと報告している.
・私たちは病歴と身体所見からほとんどの診断がなされるか少なくとも疑われることがわかった.
・認知症のワークアップの一部として何をすべきで何をすべきでないかについて明確な推奨をするには107人では不十分である.また患者集団は抽出されたもので他の環境における患者を代表しないかもしれない.
・CTの使用は特定のグループに限定し,反対に重症で期間の長い臨床的にアルツハイマー型認知症の患者にはCTを施行する必要はないとう私たちの結果は,確かめられれば,医療資源を節約し,潜在的な不必要な検査を割愛できる.一方で,可逆性認知症を見逃した際のコストは,もし浅はかな老人ホームへの入所の結果になってしまえば,膨大である.これらと他のコストのあいだの未知のバランスはさらなる研究の必要性を強調する.
・他の認識されていない治療可能な疾患の存在の頻度が高かったことは特記に値する.認知症患者は典型的に医療機関を探すことがよりできないし,単に症状や病歴の詳細を忘れてしまっているだけかもしれない.それ故,未診断の疾患の頻度が高くても不思議ではない.NIA Task Force Reportは幅広い疾患が,認知症,せん妄の原因となるだけでなく増悪しうることを認識している.
・私たちのデータが再び強調するのは,認知症のタイプを診断するばかりでなく,認知症を悪化させ,認知症のひとをより無機能的で,世話をするのを大変にさせる他の疾患を注意深く探すことを目的とした心の広い全身の評価の重要性である.
・これらの他の認識されていない疾患の治療は,可逆性認知症の治療と診断よりも,患者の永久的な施設収容を避けたり,未然に防ぐのに役立つ可能性が高い.
・可逆性認知症の患者は確かに改善したが,異常から正常な精神状態への改善は92名のうち3名でしか認めず,そのうち2名はもともとの異常がかすかであった.
・さらにより長期のフォローアップでは(他では報告がない),可逆性認知症の患者のほとんどに併存する不可逆性認知症があることが示された.これらの患者は可逆性の要素を治療することで改善したが,結局アルツハイマー型認知症に特徴的な進行性の経過が再び始まった.
・4名の患者は精神状態の改善の明確な証拠があったが,古典的に考えられていた可逆性認知症の型ではなかった.むしろ,これらの患者は以前に診断・治療をされていなかった併存した内科的疾患の治療のあとに,精神状態が改善した.
・それゆえ私たちのフォローアップ研究の結果からは,可逆性認知症は限られた重要性しかもたなかったかもしれないことが示唆される.最初に,可逆性認知症の患者は典型的には,正常までは戻らず,進行性の認知症を示し続けうる.2つ目に,治療後に少なくとも一過性の認知機能の改善を示した何人かの患者は全く可逆性の認知症でない.
・可逆性-不可逆性と治療可能-不可能の二分法は患者のケアのための実用的価値が限られるかもしれない.CasselとJametonはこの(二分法の)強調がいかに認知症のケアや管理から医師の心をそらせているかを最近示した.Wolffもまた可逆性認知症にフォーカスをおくことの疫学的基礎に疑問をなげかけている.
・この二分法の代わりは,全認知機能障害のある高齢者にはさまざまな治療可能な併存疾患のリスクがあるということを考えることである.
・単純に可逆性と不可逆性を区別することを強調しすぎると,より頻度の高い,治療可能な原因の認識から気が散ってしまう.

セファレキシンと骨髄炎

椎体炎や骨髄炎などの骨感染症.頻度としてはやはり黄色ブドウ球菌が多いのですが,このしつこい菌が骨についてしまうと治療も長丁場となりやすいです。シンプルな症例なら静注抗菌薬を6~8週くらい投与して治療終了できることもあるかと思いますが,なんだかんだが内服抗菌薬にスイッチして赤沈をみながらというのが多い.ということで骨感染症の内服抗菌薬について.

N Engl J Med. 2010 Mar 18;362(11):1022-9.
Clinical practice. Vertebral osteomyelitis.
PMID: 20237348
をみると

oral bactericidal drugs with excellent bioavailability, such as fluoroquinolones, allow for the possibility of an early switch to the oral route (e.g., the combination of a fluoroquinolone and rifampin for the treatment of staphylococcal osteomyelitis).
In a randomized trial involving patients in Europe with deep-seated or bacteremic staphylococcal infection, including patients with acute bone or joint infection, the combination of an oral fluoroquinolone and rifampin resulted in cure rates that were similar to those with the standard intravenous therapy.
Clindamycin has good bioavailability but is bacteriostatic only against staphylococci. It is adequate for long-term treatment of chronic S. aureus osteomyelitis, but data from trials of clindamycin for the treatment of acute S. aureus osteomyelitis in adults are lacking. β-Lactam antibiotics should not be given orally for the treatment of osteomyelitis because of their low bioavailability.

とあります.
まず骨感染症ではβラクタムはどうも…という考え方もあるんだということがわかります.キノロンは骨への移行はとてもよいようですが,長期使うとなるとやはり気がひけます.clindamycinは骨への移行も期待でき,長期に用いることにもあまり抵抗は感じません.
でもMSSA感染症の静注にはcefazolinを使っているわけだしcephalexinならbioavailabilityもよいはずだからよいのかなあと自分は思うわけです.

まず
Int J Infect Dis. 2005 May;9(3):127-38.
Antibiotic treatment of osteomyelitis: what have we learned from 30 years of clinical trials?
PMID:15840453
には

Cephalosporins were used in many of the osteomyelitis studies and were generally found to be effective.
Most of the studies used intravenous cephalosporins, although oral agents, e.g., cephalexin, are often used clinically.

とあります.
そこで見つけたのが下記の文献.

J R Coll Surg Edinb. 1981 Nov;26(6):335-9.
Cephalexin in chronic osteomyelitis.
PMID:7320969

古い文献で,慢性骨髄炎でのはなし.明らかにunder-powerでしょうが.
でも「ステロイドの入った関節リウマチ患者の骨髄炎以外ならセファレキシンでいいんじゃない?」という内容です.

【Abstract】
慢性的に排膿のある骨感染症の患者14例をセファレキシン500mg 4回/日 6ヶ月間という内容を含む単一レジメンで治療し,平均3.75年フォローアップした.
臨床的なアウトカムは,感染の起こったコンディションと関係しているようだった.
ステロイドの入った関節リウマチ患者では,不満足に(感染は)進行したが,変形性関節症,外傷,あるいは急性血行性骨髄炎に合併した慢性感染の患者では,利用した管理方法によく反応した.

【背景】
・骨の慢性感染は除菌が難しいことでよく知られている.
・かつては(っていつの話や!)慢性骨髄炎は,小児の急性血行性骨髄炎の合併症として一般的であったが,これらの小児の管理の改善によって,部分的には現代の(っていつの話や!)抗菌化学療法によって,急性骨髄炎の発症率は低下した.
・一方で,複雑骨折後の直接感染や隣接した軟部組織病巣からの波及による感染は明らかに増えている.
・慢性骨髄炎の自然史は,長引く経過で,不規則な間隔で,ときには何年も離れて,再燃する.
・それゆえ,特定の治療が治癒に結びついたか確かめるのは難しいし,さまざまな量で,さまざまな期間の抗菌薬が処方されている.たいていは短い期間.
・適切な抗菌薬治療の長期的なコースを内容とした治療指針を開発すべきようだ.
・ブドウ球菌への活性がよく,他の一般的なグラム陽性菌やグラム陰性菌の多くもカバーするので,今回の目的にはセファレキシンを選択した.副作用も少ないし,忍容性良好.
・この文献では,様々な原因で起こった慢性骨感染症の患者をこの抗菌薬で治療した結果を発表する.

【患者と方法】
・14例(9例が女性,5例が男性)の慢性骨髄炎患者.32~81歳(平均59歳).
・セファレキシン1g 4回/日 2週間投与の後,500mg 4回/日とし,合計6ヶ月.
・フォローアップ期間は2~5年.平均3.75年.
・感染部位,有症期間,以前の治療,痛みの程度,炎症の存在,関節が侵されていれば,可動域を記録.排膿があれば洗浄し,吸引培養.ESR,白血球分画,X線をチェック.
・1ヶ月毎にフォロー.
・創部がhealthで,排膿と痛みがなく,可動が回復していれば,感染が除去できていると考えた.
・3人の患者で,セファレキシンの血中濃度と膿への排出量を測定した.(結果は原文参照:あまりたいした内容ではない).

【結果】
・排膿のある場合,多くは菌が同定された.表皮ブドウ球菌7例,黄色ブドウ球菌3例,大腸菌1例,プロテウス1例.
・多くの患者は,少なくとも1年前から感染があり,1例は15年ものであった.
・基礎背景によって2群に分けて考える

(1)骨折後あるいは急性血行性骨髄炎後の慢性骨髄炎(Table1)
・このグループは5例.3例は菌が同定された.3例は外傷後,2例は15年前と8年前の急性血行性骨髄炎後であった.
・2例は骨折した脛骨に内固定が行われており,金属は除去され,腐骨は切除され,創部はしっかり洗浄された.
・3例は治療2ヶ月後に排膿はなくなり,他の2例は3カ月後と4カ月後に排膿がなくなった.
・すべての患者がフォローアップ期間中は感染の除去は維持され,創部は治癒した.

(2)関節全置換後の慢性骨髄炎(Table2)
・このグループは9例.4例は変形性関節症,1例は大腿骨頸部骨折後のオースチンムーア型単純人工骨頭.4例は関節リウマチ.
・変形性関節症の2例は数年前に人工物除去されている.
・1例はセファレキシンのみで感染は除去.他は外科的な洗浄と3週間のcefuroximeの追加が必要だった.
・ステロイドの入った関節リウマチ患者は3例すべて,セファレキシンには反応せず.排膿は衰えず持続した.
・それに対して,3例の変形性関節症と大腿骨頸部骨折の半関節形成術例は,人工物の除去なしに6ヶ月間の治療で治癒した.

【考察】
・全マネージエントは以下からなる:微生物の同定への一致した試み,創洗浄の徹底,可能なときは腐骨と金属の除去,そしてセファレキシンの6ヶ月投与.
・外傷後や急性血行性骨髄炎後の慢性骨髄炎,変形性関節症の関節置換後の早期感染も,このレジメンによく反応したようであった.
・以前に人工物を除去し,その後持続的に排膿していた症例でさえ利益を得た.
・しかし,関節置換後の感染を来たしたリウマチ患者では低迷し,抗菌薬では改善しないことが明らかとなった.
・関節リウマチ患者では一度慢性感染が起きると,適切な抗菌薬を適切な量,数ヶ月間投与しても,疼痛や他の症状が持続する.たぶん関節リウマチ患者は,ある免疫不全により感染の除去が妨げられるのであろう.
・変形性関節症よりも関節リウマチ患者の方が,関節置換後の感染が高率であるようだという報告がある.
・慢性感染の患者に次のような指針を提案する.
①可能であれば微生物を同定する
②すべての壊死物質を除去する
③抗菌薬を長期間,高容量使用する.
・我々の限られた経験では,これは,慢性骨髄炎で約2~4ヶ月,関節全置換後の感染で3~6ヶ月で効果を生む.
・ステロイドの入っていない非リウマチ患者の人工物の早期感染では,人工物の除去は必要ないかもしれない(強気ですね).

そもそも症例数が少ない.
とくにS. aureusも3例しかない.
文献が古い.
などいろいろ問題はありそうですが,静注薬を十分使用したあとの内服へのスイッチとしては(どちらかというとchronic suppressionのような意味で)適応を気をつければ使えるのではないかと思っています.

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