アメナクシテニジハナシ

一般内科,感染症,HIV,救急などの医学領域と個人的な趣味について

2011年12月

皆既月食 @ 裾野

皆既月食.
自宅のベランダからも観察できました.
太陽-地球-月が一直線に並び,月に当たる太陽光を地球が遮り,地球の影が月に映ります.
全国で観察できたのは,2000年7月16日以来11年ぶりだそうです.
次回は2014年10月8日とのこと.

皆既月食(2011年12月10日)

EOS Kiss X3(夜景ポートレートモード)で撮影.

最近のHIV診療(日本エイズ学会 2011)その3

●長期管理
(HIV感染症「治療の手引き」<第15版>改訂箇所)
「手引き」でも長期の非感染性合併症の予防と管理の項を追加
(日本人向き手引きの作成を予定している)

6か月後からは,メタボ,腎臓,骨,がん
CKD,CVD,糖尿病を意識する

EACSガイドライン(おすすめ)
Non-infectious co-morbidities in HIV
http://www.europeanaidsclinicalsociety.org/

糖尿病・高脂血症

HbA1c
・6-7 monotherapy
・7-8 combination
・8-10 intensified combination therapy
・>10 insulin

治療薬
・メトホルミン:選択肢,第一選択になりうる
・チアゾリジン:選択肢,膀胱がんに注意
・α-GI(食後高血糖):自己血糖測定が必要
・短時間+長時間インスリン:アドヒアランスに注意
・長時間インスリン

DPP4阻害薬なども(一度最近の糖尿病治療の確認を)

食事療法
糖尿病のガイドラインのほうが高脂血症のガイドラインよりtight
→糖尿病のガイドラインに従えばよい

高脂血症の二次的原因:
・高血糖,CKD,HIV
・ライフスタイル:飲酒,喫煙,運動不足,高炭水化物食,肥満
・薬剤:エストロゲン,サイアザイド,βブロッカー,ステロイド,PI

治療薬
・オメガ3(フィッシュオイル):エパデール+市販のサプリメント
・エゼチミブ(ゼチーア)
・スタチン+フィブラート:横紋筋融解症の警告はあるが,大丈夫かも?

治療自己中断によりもとのもくあみ状態になってしまったら…
まず前のレジメン(ARV+経口糖尿病治療など)を再開する

CVD
βブロッカー,ACE阻害薬,アスピリン,スタチン,オメガ3,運動,禁煙,うつ
Framingham soreを利用したリスクアセスメント

骨粗鬆症
HIVそのものあるいはTDFにより骨粗鬆症の問題はあるがビスホスホネート使う前には歯に注意する

ARTの選択(最も使いやすいのは?)
→RALが選択肢
・ABC:cohort signal of MI association,HCV治療(リバビリン)の妨げになる可能性
・EFV:risk of HL,HCV治療(IFN)の妨げになる可能性(うつ)
・LPV:cohort signal of MI association
・RTV:risk of HL
・TDF:risk of nephrotoxicity(HCV & renal atrophy)

(おまけ)
Telaprevir(C型肝炎の新しい抗ウイルス薬)
副作用として皮疹と貧血が多い
薬剤相互作用の問題:RAL,ATV,EFVは少ない

●総合内科的な視点

感染のうちの不明熱の場合に考えるのは「膿瘍,血管内,細胞内」
膿瘍→画像,血管内→血液培養,細胞内→抗酸菌など

HIV感染者の不明熱

・HIV感染症自体でも発熱はある
・免疫不全の程度と地域性の要素*
・感染症(HIV患者のFUOの8割が感染症)
 PCP/CMV/MAC/TB
 トキソプラズマ,サルモネラ
 クリプトコッカス
 悪性腫瘍(非ホジキンリンパ腫,薬剤熱)

地域性の要素*
ヒストプラズマ
ペニシリウム(とくに東南アジア領域では播種性ペニシリウム症)
リーシュマニア
寄生虫
結核,NTM
コクシジオイデス(米国)
ブラストマイセス

結核

結核は間違った治療をしてもよくなるし,正しい治療をしても悪化する.
結核はそれ自体がimmune-suppressorであり,非HIVでも免疫再構築の病態は以前から知られていた(paradoxical reaction).

新規感染も多い→多剤耐性結核のリスク
先進国でもアウトブレイクの報告あり

結核合併例のART
(HIV感染症「治療の手引き」<第15版>改訂箇所)
DHHSガイドラインと記載を一緒にした
抗結核治療開始から抗HIV治療開始までの期間
CD4 0~200:2~4週以内
CD4 200~500:2~4週以内または,少なくとも8週以内
CD4 >500:8週以内

N Engl J Med. 2011 Oct 20;365(16):1538-40.
When to start antiretroviral therapy in HIV-associated tuberculosis.
PMID: 22010921
SAPIT,CAMELIA,ACTG 5221の3研究
→ARTの早期開始が推奨される
→途上国での研究であるため,日本でそのまま当てはめてよいかは?
→4剤終わってからのART開始でもよいか

早期ARTの問題点:Pill berden,相互作用,IRIS

ART内服中Cre上昇傾向
鑑別:高血圧,糖尿病,薬剤性(TDF),HIV腎症(本邦では少数,高ウイルス・未治療例,巣状糸球体硬化症のタイプが多い)
プロテインによる腎障害も(J Am Soc Neph)

HIV患者の下痢症

Aliment Pharmacol Ther. 2011 Sep;34(6):587-603. doi: 10.1111/j.1365-2036.2011.04781.x. Epub 2011 Jul 20.
Review article: the aetiology, investigation and management of diarrhoea in the HIV-positive patient.
PMID: 21777262


HIV感染症の各ステージ別の下痢の原因
・急性感染症による下痢
・CD4が低下するにつれて
↓ 細菌,結核,イソスポーラ,サイクロスポーラ,糞線虫,消化管がん
↓ クリプトスポリジウム,微胞子虫(CD4 <100)
↓ MAC,CMV(CD4 <50)
・HIV治療による下痢

3週間続く水様性下痢の原因は?
クリプトスポリジウム,ジアルジア,赤痢アメーバ,MAC,カポジ肉腫

播種性MAC感染症
抗MAC療法の選択肢は?
CAMが第一選択
(AZMも選択肢だが血液培養の陰性化がCAMの方が早いというデータ)
EBが第二選択
RFBが第三選択
ほかに活性が証明されている薬剤:AMK,SM,NQ,INH 重症ならこれらの併用も
最低1年間は治療
CAM + EBが基本+RFB(or +CPFX)

最近のHIV診療(日本エイズ学会 2011)その2

●抗HIV治療にについて

即時に起こりうる合併症の管理が優先
例:
日和見感染症予防
糖尿病治療
→抗HIV療法は最終的な治療成功のカギだが急がない

●バックボーン(backbone)
(HIV感染症「治療の手引き」<第15版>改訂箇所)
・AZT/3TC削除
・ABCのCVDリスクを否定するFDAメタ解析

1999:AZT,3TC,ddI,ddC,d4Tから2剤
 2001:ddC dropped
 2003:ddI dropped
2003:AZT + 3TC,d4T + 3TC,TDF + 3TC
 2004:d4T dropped
 2008:AZT dropped
2008:ABC + 3TC,TDF + FTC

ミトコンドリア毒性(乳酸アシドーシスなど)
d-drug>AZT>EZC,TVD

DHHS・IAS-USAガイドラインで2009年にABC dropped
ABC過敏症とCVDリスクが理由,しかし
・HLA-B5701日本人0%
・CVDも米国ほど問題にならない
・TDFは小柄な日本人では腎障害が多いかもしれない
日本ではABC/3TCも上手に使おうという立場

ただし日本でも新規ではbackboneのほとんどがTDF/FTC
しかし治療経過とともにABCが増えてくるという,ぶり返しの現象が起こっている

EZC(ABC/3TC)選択のときには以下に注意
・HBVキャリアではない
・(HLA-B5701ではない)
・治療前HIV-RNA <10^5 cpmではない
(カレトラとの併用ではウイルス量で差はないという報告)
・心血管障害のリスクが少ない
(D:A:D studyの報告,FDA metaでは差がない)
・(腎疾患のリスクがある)
・(HIV脳症・髄膜炎(髄液移行はABCあり,TVDなし))

どういうときにEZCにするか?
・腎障害(糖尿病を含め)
・リンパ腫治療(抗がん剤治療)の際にはRAL + EZCが多い
・中枢移行性を理由に
・日和見治療との兼ね合いでも

TDF/3TCによる腎障害(とくに尿細管障害)
TDF使用例の尿中β2MG上昇例は多い.数千なら気にしないが万のオーダーなら考える.尿中α1グロブリンをみている施設もある(100超えたら注意らしい)

TDF/3TCによる骨粗鬆症
50歳以上のTDF使用例ではDXAするようにしている

HBV合併例について
TDF/3TCによるHBVのVLの減り方はHIVと違ってとてもゆっくり
HIV未発覚でエンテカビルが入ってしまってからくる症例がある
→HBV症例では必ずHIVチェックを!
TDFはB型肝炎治療薬としての発売の予定あり
→今後TDFがすでにHBV治療で使われてくる症例が出てくる可能性がある

HBV/HIV IRISによるALT Flare
・ALT 基準値の5倍以上
・ALT >2000
とすると20%くらいに起きる
1~3カ月でALTは100-1000程度まで上昇するが自覚症状なく急速にpeak outする

●キードラッグ(key drug) DRV or RALといった構造
(HIV感染症「治療の手引き」<第15版>改訂箇所)
・SQV + RTV削除
・MVC初回治療適応取得
・DRV治療経験者QD取得
・LPV/r QD取得

EFV

新規は少なくなっているが,QDで食事と関係ないという理由での新規処方例まだまだあり
使用者では継続希望者が多かったりもする

EFVからの変更理由
抑うつ,悪夢・不眠>肝障害,慢性掻痒疹,>ウイルス学的失敗
ほかにもVRCZ併用不可など

K103変異の耐性株が新規患者でもあり

結核治療中はEFVの増量の考慮が必要

suicideなどのリスクを考えた場合にガイドラインに残すべきか?
・実際にはEFVに関係のない例が多い.
・とは言っても,早めに察知するよう努め,そのような患者には使わない.

ATV

PIで高脂血症が少ないのが特徴だったがDRVが出てからはDRVにとられた
ただし安定していればATV→DRVに変える必要はない
PPIと尿管結石には注意

PPI併用による中断例あり
副作用:尿路結石,発疹,黄疸,肝障害,高脂血症

ATVからの変更理由
薬物相互作用>尿管結石>治療失敗>食事との関連>黄疸>脂質
薬物相互作用の内訳:PPI・H2ブロッカー>化学療法薬>向精神薬

DRV

ここ数年で大きく変わった
2008年:LPV/r or ATV or FPV
(ウイルス量10^5ならLPV,10^4ならATVという感じ)
2011年:DRV or RAL
(ウイルス量あまり気にせず)

食後というのはデメリット
LPV/rは下痢が多くてDRVにとられている
DPVは皮疹に注意.日和見の複雑な例ではDRVの代わりとしてLPV/rを使うことも.
CVDリスクや相互作用の問題がある症例はRAL

LPV/r,DRV,RALの比較で,48週での成功率(<40cpm)は同等だが,途中はRAL>LPV/r>DRVなのかも.
<400cpmだと同等.臨床的にどれだけ意義があるかは不明.
すっと下がった後に,その後は下がり悪い印象

RAL

食事制限なし,冷所保存が不要,相互作用が少ない,副作用が少ない
2回というのはデメリット
肝障害は多少であれば,経過みていても大丈夫

others

MVCの新規症例もあり:MVCを使用する前にHIV指向性検査の確認を
耐性症例でのETRの使用


Genetic barrier
RAL,EFVはGenetic barrierが低い
→1カ所変異が入ると耐性の度合いが大きい
→が,きちっと飲んでいれば大丈夫
DRVはGenetic barrierが高い

DRV vs RAL
RAL選択理由 副作用>相互作用>患者希望
Genetic barrierの問題.RALの2回は….初来のインテグラーゼ阻害薬使用のためにも.
DRV選択理由 QD>副作用>治療効果
発症例や高齢者.導入はRALでその後変更する例も多い.

長期生存時代へ向けた課題
長期毒性の回避
・脂質異常症
・ミトコンドリア異常
長期にわたるウイルス学的効果の維持
・簡便な服薬スケジュール
・自覚的な副作用
・Genetic barrier
長期にわたる精神の健全の維持
・精神神経症状
・CNS penetration

NRTI sparingについて
原則はスイッチで,ナイーブ例ではしない
スイッチ例は腎障害,心血管障害,NRTIの耐性蓄積などが理由
NRTIアレルギーでナイーブ症例でやっている例もあるが少数
NRTI spareの報告はたくさん出てきているが結果はまちまち
・高ウイルス量でDRV + RALは失敗例多いというパイロットスタディあり
・失敗が多いという報告(DRVの血中濃度低下)もあるが,それほど問題ない印象.

まとめ
治療開始症例
・DRVまたはRALが主に選択される
・EFV,LPV/rが選択される頻度が減少
・BackboneにABCが用いられる頻度が増加傾向
継続症例
・LPVの使用頻度の低下
・d4T,ddI,ZDVの使用頻度の減少
・TDFで開始後にABCに変更する症例の増加
・NRTI sparing regimenの増加
・新規薬剤であるMVCが使用され始めている(T-20からの変更やNRTI sparing)

●妊婦に対する抗HIV療法
(HIV感染症「治療の手引き」<第15版>改訂箇所)
妊婦の場合にはAZT/3TC + LPV/rはBIDを推奨(QDではない)

●ウイルス学的失敗の定義
(HIV感染症「治療の手引き」<第15版>改訂箇所)
ブリップや検査のばらつきを除外するため>200 copy/mLとした

最近のHIV診療(日本エイズ学会 2011)その1

11月30日~12月2日に日本エイズ学会が行われました.
そこで見聞きしたものをまとめました.
日進月歩の分野なので遅れをとらないようにしたいものです.

●HIV-RNA定量

(HIV感染症「治療の手引き」<第15版>改訂箇所)
コバスTaqMan HIV-1「オート」v2.0法が開発され,
・測定下限が20 copy/mLとなった
・Amplicor法との乖離が解消された

TaqMan(検出限界<40cpm)はもともとはAmplicor法(検出限界<50cpm)に比べてウイルス量が多く出やすかった

●HPTN052による二次予防の報告(今年のトピック)

HPTNとは
HIV Prevention Trials Network
NGOなどの協力による国際的なネットワークによる予防の取り組み
(予防の方法:抗ウイルス療法,行動介入,性感染症のコントロール…)

HPTN052とは
・ARTがHIVの伝搬を抑えるか
・早期だとどうか
性的に活発なserodiscordantなカップル(CD4 350~550)
Immediate 350~550 vs Delayed ART <200
→同一ウイルスによる非感染者の感染28名のうちImmediate 1名,Delayed 27名

ARTの意義(今回③が加わった)
①Mortalityの低下とAID-related mortalityの低下
②HIV-related mortalityの低下
③伝搬の低下

●抗HIV療法をいつ開始するか
(HIV感染症「治療の手引き」<第15版>改訂箇所)
CD4<350 ただちに治療開始(合併症ありの際の注あり)
CD4 350~500 治療開始を推奨
CD4>500 DHHSガイドライン委員のあいだでも半々

ART開始時期の変遷

1993:早期治療の無効
2001:リポディストロフィがART開始遅れの理由に
2007:CD4>350で治療開始すれば7年でCD4>800
2008:ウイルス抑制後のART継続はART中断より優れる

CD<500での開始はデータがしっかりある

CD>500でもARTするか?
NA-ACCORDとART-CCで結果が異なる
DHHSガイドライン委員のあいだでも意見は半々

Lancet. 2009 Apr 18;373(9672):1352-63. Epub 2009 Apr 8.
Timing of initiation of antiretroviral therapy in AIDS-free HIV-1-infected patients: a collaborative analysis of 18 HIV cohort studies.
PMID: 19361855
Free PMC Article

メタ解析によるCD4別の経時的死亡率(Figure 2)
500でどうするかはわずかな差
→絶対に!というわけではなく症例によって個別に決定するべき
執筆の機会を与えていただいた書籍・雑誌
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