お久しぶりです.
結核性リンパ節炎のreviewです.
逆説的反応についてもまとまっています.

Clin Infect Dis. 2011 Sep;53(6):555-62.
Current diagnosis and management of peripheral tuberculous lymphadenitis.
PMID: 21865192

Abstract
・表在結核性リンパ節炎は米国の結核症例の10%以下.
・男女比は1:1.4,ピーク年齢は30~40歳で,外国生まれ(とくに東アジア)に多い.
・単一グループの頸部リンパ節の無痛性の腫脹の1~2ヶ月の病歴.
・確定診断は結核菌の培養か核酸増幅.
・抗酸菌(塗沫のことだろう)と肉芽腫性炎症の証明も役立つ.
・切除生検は最も感度が高く80%だが,FNA(fine-needle aspiration)はより非侵襲的で,役立つかもしれない.
・薬物治療が治療の要であるが,肺結核よりも反応はゆっくりである.
・逆説的反応は20%の患者に起こりうる.
・ステロイドの役割はcontroversial.
・最初の切除生検は最適な診断とそれ以外の方法では治療の反応がゆっくりな場合に検討に値する.


背景
・以前は“瘰癧 scrofula”と呼ばれていた.
・疫学的な特徴は肺結核と異なる.
・治療に対する反応は,ゆっくりあるいは逆説的で,有効な治療のあいだやそのあとにさえリンパ節の拡大や新たなリンパ節の出現がしばしば起こる(HIV陰性患者でもHIV陽性患者の免疫再構築症候群IRISでも).


疫学
・米国では,肺結核が減り続けているのに対して,肺外結核とそこに含まれるリンパ節炎の割合は増えている.
・2008年の米国の12904例の結核のうち,1103例(8.5%)がリンパ節炎であった.
・ほとんどのシリーズで,結核性リンパ節炎は男性より女性に多い(1.4:1).肺結核は男性のほうが多い.
・かつては子供の病気であったが,最近のシリーズではピーク年齢は30~40歳である.
・結核の流行していない国では,患者の多くは外国生まれで,再活性化のパターン.
・流行していない国の研究では,東南アジアとインドからの移民が結核性リンパ節炎の予測因子のようである.
・アフリカ人もリスクかもしれない.
・リンパ節結核を含めて,肺外結核は,HIV感染を含めた免疫不全患者により多い.
・糖尿病は肺結核の危険因子であるが,研究では糖尿病は結核性リンパ節炎の相対危険を減らすことが示唆されている.
・米国の肺外結核のreviewでは,ホームレス,アルコール多飲というような肺結核の伝統的な危険因子は,(肺外結核 or リンパ節結核の?)低リスクと関連している.


微生物学
M. bovisは歴史的には結核性リンパ節炎の一般的な原因であったが,低温殺菌とウシ型結核プログラムが先進国におけるヒトのM. bovis感染を実質的に排除した.低温殺菌していない牛乳の消費によるリスクは残っている.
M. tuberculosisが結核性リンパ節炎の一般的な原因である.
・慢性リンパ節炎の他の原因菌は,非結核性抗酸菌(M. scrofulaceumM. aviumM. haemophilumなど),Toxoplasma属,Bartonella属,そして真菌が含まれる.非感染性の原因には悪性腫瘍,サルコイドーシス,Castleman病,薬物反応,非特異的反応性過形成が含まれる.


臨床的特徴
・結核性リンパ節炎はたいてい,緩徐進行で,単一グループのリンパ節が無痛性に腫脹する.
・来院時の症状の期間は典型的には1~2ヶ月で,3週間から8ヶ月までの幅がある.
・リンパ節サイズの中央値は3cmだが,8~10cmまでになりうる.
・患者が来院時に有意な疼痛を訴えることは一般的でなく,診察時の圧痛は10~35%だけに指摘される.
・排膿瘻孔は4~11%に存在しうる.
・85%が1~3つのリンパ節の片側病変.頸部リンパ節病変は最も一般的で45~70%,鎖骨上リンパ節が12~26%,20%以下の症例が両側性である.
・ザンビアの研究では,3cm未満の対称性のリンパ節腫脹が,HIV合併結核性リンパ節炎では29%であったのに対してHIVによるリンパ節腫脹では94%であった.対照的に,対称性のリンパ節腫脹は,HIV陰性の結核性リンパ節炎患者では11%だけで,この群のリンパ節は典型的には3cmを超えていた.
・全身症状の頻度は地理や症例の選択によって各シリーズで異なる.
・全身症状はHIV陰性患者よりもHIV陽性患者で頻度が高い(台湾の報告では76% vs 12%).
・肺結核の合併は18~42%で,HIV陰性患者よりもHIV陽性患者で頻度が高い(ロサンゼルスの報告では90% vs 28%).
・HIV陽性患者の結核性リンパ節炎では典型的にはHIV陰性患者よりも,播種性疾患が多い(38% vs 8%).


診断学的検査
・結核性リンパ節炎の確定診断は侵されたリンパ節の培養またはPCRによる結核菌の証明によってなされる.それ故,リンパ節炎を起こしうる他の抗酸菌と区別できる.
・培養は診断のゴールドスタンダードのままであるが,結果が出るまでに2~4週かかる.
・抗酸菌染色の陽性は,抗酸菌が原因であることを示唆し,成人においてはM. tuberculosisに高い特異性を有する.
・組織学的な特徴(非特異的リンパ球浸潤,非乾酪性肉芽腫,あるいは乾酪性壊死のなかのランゲルハンス巨細胞)は塗沫培養陰性例において結核の診断を補助する.
・診断的アプローチの選択においては,検査の感度と潜在的な治療上の効用を考慮すべきである.
・切除生検は最も侵襲的であるが,最も感度が高く,より迅速で好ましい症状への反応を起こしうる(治療的側面もあるということ).そして複数のリンパ節を侵す症例で推奨されている.
・稀な合併症に術後疼痛,創感染,瘻孔形成,手術痕がある.
・香港の研究では,切除生検の検体の80%は培養陽性の結果であったのに対し,FNAの検体では17%だった.


・FNAは,とくに結核の流行している国において,第一選択の診断技術として登場し,そこでは感度・特異度ともに高い.FNAは,とくにリソースの限られた環境においては,(切除)生検よりも,より安全で,非侵襲的で,実践的である.
・しかし,これらの地域のFNAの研究の多くは,結核の診断は肉芽腫性炎症の発見に基づいている.結核が流行していない環境において,肉芽腫性炎症の所見は結核に特異的でないかもしれない.
・英国の97例(90%は外国生まれ)の研究では,FNA検体の67%が培養陽性の結果で,79%が肉芽腫性炎症があった.肉芽腫炎症のあった77のFNA検体のうち44(70%)が培養陽性だった.
・カリフォルニアの研究では,180例(106例HIV陽性)のFNA検体の18%が培養陽性で,塗沫との組み合わせで,FNA検体の感度は46%,特異度は100%だった(塗沫と組み合わせて感度が上がる?).
・(別の)カリフォルニアのHIV陰性症例が優位な106例では,切除生検とFNA検体の培養陽性率は同様であった(71% vs 62%,P = .4).


・核酸増幅検査(NAATs)は迅速で,特異的で,高感度な診断手段かもしれない.
・インドの研究では,培養と肉芽腫性炎症の発見によって診断された22例のうち17例(77%)が,切除生検検体の検査で発見され,9例(41%)がFNA検体の検査で発見された.FNA検体の追加NAATで,18例(82%)が発見された.
・結核性リンパ節炎のNAATのsystematic reviewでは,大きさばらつきと結果の不一致(感度2~100%,特異度28~100%)が明らかになった(市販のアッセイのより好ましいパフォーマンスと20μLを超えるサンプル量で).


補助的検査
・確定診断の前に結核性リンパ節炎を疑うために,あるいは診断に結び付く微生物学的・組織学的所見のない症例の診断を補助するために有用.
・米国では,結核性リンパ節炎のHIV陰性患者92例のうち90例(98%)がTST陽性であった.TSTは過去のBCGや過去の非結核性抗酸菌感染のある患者では偽陽性となりうる.
・interferon-γ release assays(IGRAs)はBCGやM. marinumM. kansasiM. szulgaiを除く非結核性抗酸菌の影響を受けず,TSTより特異的である.
・韓国の結核性リンパ節炎の研究では,TSTの感度と特異度は,それぞれ86%と67%,IGRAsは86%と87%であった.
・胸部X線は10~40%の患者で陽性になりえて,抗酸菌塗沫あるいは培養はHIV陰性患者では少ない割合で陽性になりうる.
・頸部の超音波検査では,リンパ節転移と比較して,周囲の軟部組織の浮腫,均一性,内部の嚢胞性壊死,matting,そして後方増強が結核性リンパ節炎では多い.
・造影CTによる腹腔内リンパ節の評価では,リンパ腫と比較して結核性リンパ節炎では,周囲の増強を伴う多房性変化と不均一な減弱が多い.
M. aviumなどの非結核性抗酸菌による抗酸菌性リンパ節炎は,典型的には先進国のBCG未接種の小児でみられる.治療は外科的で,70%を超えるresolution ratesである.


抗菌薬治療
・IDSAでは薬剤感受性菌によるリンパ節炎では下記の6ヶ月の治療を推奨している.すなわちisoniazid,rifampin,pyrazinamide,ethambutolで2ヶ月,その後isoniazidとrifampinで4ヶ月.6ヶ月の治療は,9ヶ月の治療と治癒率(89~94%)と再発率(3%)に差がなかったことを示す研究で支持されている.


ステロイド治療
・IDSAガイドラインでは結核性リンパ節炎の治療におけるステロイドの使用は推奨していない.


逆説的反応(PUR: Paradoxical Upgrading Reactions)
・報告されたPURの頻度は,部分的には,適応された定義によって異なる.ひとつの定義は少なくとも10日の治療を受けた患者のリンパ節の拡大,新しいリンパ節の出現,新しい排膿瘻孔の出現である.
・HIV陰性患者の20~23%がPURを報告されている.
・ロンドンの研究では発症の中央値は治療後1.5ヶ月(46日,四分位範囲21~139日),持続期間の中央値は2ヶ月(67日,四分位範囲34~111日)であった.カリフォルニアと韓国の報告では,発症は治療開始後平均2~3.5ヶ月で,改善までに平均3.9ヶ月かかった.
・PURの徴候には,32~68%のリンパ節拡大,27~36%の新規リンパ節,12~60%の排膿瘻孔が含まれた.
・さらに治療成功後平均27ヶ月後に9~11%の患者にリンパ節腫脹の増加が報告されている.
・男性(OR 2.60),診断時の局所圧痛の存在(OR 2.90)が独立してPURと関連していた.
・PURに侵されたリンパ節の生検と培養は,典型的には肉芽腫性炎症と培養陰性±塗沫陽性を示す.これらの特徴は抗菌薬治療の開始に伴う結核菌に対する強い免疫反応や抗酸菌抗原の放出に一致している.
・HIV患者のIRISは,通常ARTの少なくとも4~5週(several weeks)後に起こり,90%の症例がART開始後3ヶ月以内に起こる.ART開始時のCD4細胞数が低いほど頻度が高い.
・HIV感染で新しくARTを開始した患者の結核性リンパ節炎の悪化はHIV陰性患者予想されるPURの頻度とIRISの合計を反映しうる.
・ARTを開始した,結核性リンパ節炎を治療しているHIV陽性患者のシリーズの報告では,PUR and/or IRISの頻度は22~60%の範囲である.
・ステロイドはPURにおける強い免疫反応を減らす手段と考えられているが,その使用はcontroversialである.いくつかの著者は有益性を報告しているが,後向き研究ではステロイドはPURを防がないし,PURの期間に対する効果もないということが示されている.


外科的治療
・IDSAガイドラインでは外科的切除は特殊な状況下でだけ推奨されているが,その状況ははっきりとは定義されていない.
・切除+抗菌薬治療と抗菌薬治療単独を比較した比較試験は我々は知らない.
・外科治療のエキスパートがいて,コスメティックな問題がない状況では,とくにPURのリスクが高い(前述のようにベースの圧痛が強い場合など)患者では,次のような場合に抗菌薬治療に加えてより頻繁に早期の切除生検を考慮する.
①薬物治療に反応した患者が最初のリンパ節の不快感が続いており,切除によって改善しうる場合
②PURが多くて不快で,何回もの通院と抗菌薬治療 and/or ステロイドの延長が必要で,切除によってそれらのすべてが潜在的に避けられるかもしれない場合
③耐性菌による場合に抗菌薬治療の補助として
・外科的切除は,PURと治療失敗例と緊張と波動のあるリンパ節で患者が不快な場合に推奨されている.
・後向きのreviewでは,吸引,切開,ドレナージあるいは切除は,PURの期間を短くする傾向があった.
・外科的切除は,小児の非結核性抗酸菌による頸部リンパ節炎の治療で推奨されており,3ヶ月の2剤の抗菌薬治療より良好なアウトカムとなっている.