前回の続きです.
今回は慢性唾液腺炎を中心とした内容です.

Chronic Sialadenitis
・消散していない急性耳下腺炎の結果として起こるかもしれない.またたいてい持続的な唾液の流れの減少に付随する.
・顎下腺の慢性唾液腺炎が比較的commonで,たいてい唾石による導管閉塞の結果である.
・最初は分泌物の貯留による再発性の腫脹が特徴的だが,慢性感染が続発すると,唾液腺が炎症を起こし,最終的には線維化し,堅固な腫瘍様の腫瘤を形成する:Kuttners tumor
・唾液腺造影では導管拡張や腺房成分の萎縮が示されるかもしれない.しかし拡張の程度は,病理組織学的な程度や患者の表現する症状よりも,より重度かもしれない.
・時として疼痛(典型的には食事中の)を伴うことがあるが,一つ以上の唾液腺の再発性の腫脹の病歴で診断がつく.
・触診では,腫脹し,硬結性の,軽度の圧痛のある唾液腺である.指診では唾液の流量の減少と膿様粘液が示される.
治療は保存的であるべき.レモンやチューインガムのような唾液分泌促進薬が唾液の流出と導管の灌漑を刺激する.患者による侵された唾液腺の定期的なマッサージもまた助けとなるかもしれない.
急性増悪は急性化膿性唾液腺炎として治療されるべきである.
・サリチル酸は疼痛のコントロールに役立つかもしれないし,水分補給は重要である.
・導管の探査は狭窄や結石の可能性を評価するために推奨されているが,急性期には推奨されない.
・外科的治療は根治のために行われており,導管開口部の周期的な拡張,導管の結紮,唾液腺全体の放射線照射,側頭下窩の耳介側頭神経の剥離が含まれる.鼓室神経切断術は化膿のない慢性再発性耳下腺炎の治療に推奨される.
・もし長期の入念な保存的管理が失敗すれば,手術(表在的または全耳下腺摘出術あるいは顎下腺切除)が唯一効果的な手段である.

慢性唾液管拡張
・慢性唾液管拡張は慢性再発性唾液腺炎の末期を表しているのかもしれない.
・重症な炎症性のウイルス性 or 細菌性感染のあとに起きるかもしれない.
・患者の最も一般的な主訴は,片側の耳下腺のびまん性腫脹で,数カ月~数年かけて徐々に増大しうる.
・鑑別には良性リンパ上皮性病変と悪性腫瘍が挙がる.
・組織学的には,間質へのリンパ球浸潤と筋上皮成分の萎縮を伴った導管と腺房成分の小嚢形成がみられる.腺の他の部分には線維化と萎縮がみられるかもしれない.

唾石症
・唾石症は慢性再発性唾液腺炎の原因でも結果でもあり,それに加えてしばしば急性化膿性唾液腺炎の原因でもある.
・唾石症は耳下腺よりも顎下腺により一般的で(10%に対して83%),残りは小唾液腺または舌下腺である.
・顎下腺は唾液腺よりも次のような理由で結石をつくりやすいといわれている.
1) より長くより大径の導管で流量がゆっくりである
2) 重力に拮抗した唾液の流れ
3) よりアルカリ性の唾液
4) ムチンとカルシウムの含有量の高い唾液
・これにより粘液の濃縮が起こる,とくに脱水や発熱の際に.
・小さな結石は導管から自然に排出され,それあと濁った唾液が湧き出るかもしれない.
・導管内の結石はたいてい繰り返す導管閉塞と腫脹のエビソードを引き起こす.
・急性の膿瘍が続発しない限り,最終的に唾液腺は萎縮し線維化する.
・唾石の治療は症状と結石の位置によって決まる.結石は口腔内で,あるいはワイヤーバスケットを使って除去できる.体外衝撃波結石破砕(ESWL)の使用も報告されているが,現在のところ特殊施設でしか利用できない.

動物(猫)ひっかき病
・Animal scratch diseaseは直接は唾液腺を侵さないが,耳下腺と顎下三角のリンパ節を侵すかもしれない;回りまわって隣接する広がりによって唾液腺も侵されるかもしれない.
・猫ひっかき病はそのうちのひとつで,主として小児と若年成人を侵す.
動物との接触の病歴,たいてい猫または子猫(猫によるひっかき,咬傷,あるいはなめるだけでも),が報告症例の67~90%で引き出されている.
・この疾患の真の発端はBartonella henselaeが関係あるとされている.
・PCRでBartonellaのDNAを検出することで病原体を同定できる.
・猫ひっかき病患者の血清検査ではB. henselae抗体が少なくとも1:64のtitersを示している.
・抗菌薬は疾患の経過を短縮する効果は示されていないので治療は支持療法からなる.
・リンパ節腫脹はたいてい2~3ヶ月以内に合併症なく消失する.

肉芽腫性唾液腺炎
・肉芽腫性唾液腺炎は慢性唾液腺炎の一型で,多くの潜在的な原因がある.
結石や腫瘍に続発する導管の閉塞が最も一般的な原因である.
・まれに唾液腺は,結核梅毒淋菌,またはアクチノミセスのような,特定の炎症性疾患に侵されるかもしれない.
・これらのなかでは結核が最も一般的で,耳下腺内リンパ節病変の結果として,しばしば耳下腺を侵す.
・特定の感染症ばかりでなく,サルコイドーシス患者の5%までが耳下腺を侵されうる.通常の全身性の徴候に加えて,無痛性で,堅固な結節性の耳下腺腫脹が起こり,典型的な非乾酪性肉芽腫を含んでいる.口蓋や口唇の小唾液腺も侵されるかもしれない.
ウェゲナー肉芽腫症では,片側性の腫瘍状の腫脹がとくに耳下腺においてみられる.肉芽腫性反応には,巨細胞,壊死,そして壊死性血管炎という特徴がある.

結核
・耳下腺のマイコバクテリアリンパ節炎が唾液腺を侵すマイコバクテリア感染の最も一般的なかたちである.
・結核と非結核性抗酸菌の両方の感染が起こる.
・実質の感染はまれ
・口腔や咽頭の感染から腺の導管系のリンパ液ドレナージの結果,耳下腺内と傍耳下腺のリンパ節が感染する.
・プレゼンテーションの違いと年齢が診断のカギになるかもしれないが,身体所見ではたいてい報いが得られない(…)ので,最終的な診断は特別な検査に依存している.
・現在,最も価値ある検査はfine needle aspiration biopsyのようだ.高頻度で診断を確かめることができ,切除手術の後遺症を避けられる.
・FNABの役割は,ひとつには,悪性疾患の可能性の除外にある.肉芽腫性疾患であることがわかれば,他疾患の過程で血清学的な除外は必要であるが(Fig.2),外科的手術を恐らく避けられるという意味で有益である.
・病変の画像検査は,最初は超音波で行い,充実性か嚢胞性か区別する.
・結核の管理においてもこの病変が腫瘍であっても,切開生検は非難される
・もしFNABではっきりしなければ,最も確実な組織診断は外科的な切除に基づく.
・結核の内科的治療は,イソニアジド,リファンピシン,ピラジナミド(エタンブトールもでしょう).
・非結核性抗酸菌では化学療法は普通は効果がないが,suboptimal surgeryには寄与するかもしれない.

サルコイドーシス
・サルコイドーシスにおける唾液腺病変はしばしばみられ,さまざまな臨床パターンをとる.
・最も一般的には,両側の耳下腺腫脹がある.
口腔乾燥症はしばしば存在する.
Heerfordt症候群ブドウ膜耳下腺熱)は,ブドウ膜の炎症,両側の耳下腺腫脹,脳神経病変(顔面神経麻痺ですね)の三徴がある.
・急性期患者の多くで,耳下腺の流れとアミラーゼ・カリクレインという酵素が有意に減少する.
・さまざまな診断的耳下腺生検の部位が提案されている.正常にみえる口蓋唾液腺の生検で,サルコイドーシス患者の38%は陽性となる.口唇生検の36~58%が陽性となる.耳下腺は93%で陽性で,組織学的な確認のためには最も信頼できる部位である.
・サルコイドーシスの治療開始のためのガイドラインはほとんど存在しない.疾患の徴候が多彩であるため(例えば,多くの症例が治療なしで自然回復し,従来の治療(ステロイド)では重要な副作用が起こる),標準ガイドラインの制定は複雑である.

次回に残りの内容(包虫症,アクチノミセス,ウイルス)を.