2週間あいてしまいました….前回の続きです.
(この文献,どうして慢性耳下腺炎のあとにウイルス性耳下腺炎という順番になっているんだろう.)

包虫症
・耳下腺の包虫症は極めてまれである.
Echinococcus granulosusの生活環は,一次宿主の犬やジャッカルが包虫のシストを含んだ生の臓物を摂取することで,長続きする.
・とくに流行地域では疑い,臨床検査と超音波で嚢胞性の腫脹を確かめることで診断される.
・単純X線では,変性嚢胞における曲線,リング状,あるいは斑状の壁の石灰化がみられるかもしれない.
・顎下腺や耳下腺を侵す症例は,術中に診断される例がほとんどであり,術前に診断されることはまれである.
・唾液腺切除術の際には,術者は嚢胞を破裂させないように注意すべきである.

アクチノミセス
・頸部顔面のアクチノミセス症は,mycotic originな?特異な肉芽腫性疾患である.
・ヒトにおける第一の病原体はActinomyces israeliiであり,顔面,頸部,口腔底部領域における腫脹で特徴づけられる.
・頻度は低いものの,感染はActinomyces propionicaActinomyces naeslundiiActinomyces viscosusActinomyces odontolyticusによっても起こる.
・すべてはヒトの口腔の片利共生生物である.
・疑われないこと,適切な環境で培養されないこと,偏好性の性質のために,培養での検出率は30%未満である.
・3つの臨床病型がある.
① 急性,迅速進行性で,化膿を伴い,他の急性頸部顔面感染症と臨床的に区別はつかない.
② かなり慢性,緩徐進行性で,際立った硬結と板状の腫脹を伴い,いくつかの症例では特徴的な“sulfur granules”を含んだ膿を排泄する多発した皮膚の腔に発展する.
③ 上記の臨床的な記載には合わず,亜急性の病型で,かすかに圧痛があり,堅固に骨に付着した腫瘤様病変で特徴づけられる.
・唾液腺は歯性起源からの直接進展により侵されうる.
・急性感染の治療は外科的で,明らかな膿貯留があればドレナージする.
・今もなおペニシリンGが好ましい.効果のある代替薬はテトラサイクリン,エリスロマイシン,クリンダマイシン

ウイルス性唾液腺炎
・「ムンプス」という言葉は古典的にはパラミクソウイルスによるウイルス性耳下腺炎を指しているが,広範囲なウイルスが急性ウイルス性唾液腺感染の原因として同定されている.
・ムンプスは世界的に起こっており,高い感染性がある.
・85%は15歳以下小児に起こり,小児期の曝露あるいはMMRワクチンによる免疫により成人での感染はまれである.
・他のさまざまなウイルスが急性ウイルス性耳下腺炎の患者の血液や唾液から培養されている.インフルエンザパラインフルエンザコクサッキーエコーリンパ球性脈絡髄膜炎ウイルスが含まれる.
サイトメガロウイルスアデノウイルスもまた,HIV患者の急性耳下腺炎の原因として報告されている.
HIVの耳下腺病変は,急性ウイルス性耳下腺炎の原因としてはまれであるが,より一般的には慢性嚢胞性耳下腺肥大と関連する.
・(急性ウイルス性耳下腺炎の)最大1/3までの患者が,頭痛,筋痛,関節痛,食欲不振,倦怠感,微熱などの耳下腺炎発症前の前駆症状を経験する.
・耳下腺病変発症の前触れとして,耳痛に続く耳下腺局所の痛み開口障害嚥下障害が起こる.痛みはしばしば,咀嚼食事のあいだの唾液分泌の刺激により悪化する.
・たいてい相対的なリンパ球上昇を伴う白血球減少血清アミラーゼの上昇が起こる.血清アミラーゼは最初の週のあいだにピークとなり,第2~3週までに正常化しうる.
・補体結合抗体はパラミクソウイルスの曝露に続いて出現する.S抗体(ウイルスの核蛋白の可溶性抗原に対する抗体)は,感染の最終週以内に出現し,2週間以内にピークになり,8~9ヶ月以内に消失する.つまり活動性の感染と最近のワクチン接種と関連.V抗体(外表の凝集素に対する抗体)は,S抗体の数週あとから出現し,曝露後約5年間低レベルで持続する.つまり過去の感染,以前のワクチン接種,急性感染の後期と関連する.
(特異性が高いという話もありますが,そもそもあまり用いないと思います.なぜCF法の解説だけ…)
<参照>
名鉄病院:http://www.meitetsu-hospital.jp/kakuka/pdf/yobou_koutaikensa.pdf
ビーエムエル:http://uwb01.bml.co.jp/kensa/conpe.asp?d=110&t=50&k=4908&e=0
・最初のserologyが役立たなければ,非パラミクソウイルスが急性ウイルス性唾液腺感染症を起こしているかもしれない.インフルエンザ,パラインフルエンザ,コクサッキー,エコー,リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルスなどのウイルス抗原に対する抗体価は調べられる.正常から4倍の抗体価上昇が急性感染では診断的である.まれにウイルスは血液,唾液,母乳,脳脊髄液から培養されうる.
・急性耳下腺炎症の原因としての報告があるので,このようなケースではHIV検査もすべきだ.
・ウイルス性唾液腺感染はself-limitingなので,治療は休養と適切な補液といった対症療法が第一である.

HIV
・HIV患者は感染性唾液腺炎発症のリスクがある.
・唾液腺,とくに耳下腺に起きるリンパ性病変が文献にて広く報告されており,HIV患者の耳下腺の嚢胞性病変の発生の増加と関連している.
・日和見病原体にはサイトメガロウイルス,ニューモシスチスカリニ,アデノウイルス,ヒストプラズマがある.
・臨床像はさまざまで,感染あるいは腫瘍が疑われる.
・多くのAIDS患者で唾液腺にCMVを分泌しても,明らかな唾液腺のCMV diseaseはまれである.
・AIDSの乳児にみられる慢性の耳下腺腫脹は急性CMV耳下腺炎によると考えられている.