椎体炎や骨髄炎などの骨感染症.頻度としてはやはり黄色ブドウ球菌が多いのですが,このしつこい菌が骨についてしまうと治療も長丁場となりやすいです。シンプルな症例なら静注抗菌薬を6~8週くらい投与して治療終了できることもあるかと思いますが,なんだかんだが内服抗菌薬にスイッチして赤沈をみながらというのが多い.ということで骨感染症の内服抗菌薬について.

N Engl J Med. 2010 Mar 18;362(11):1022-9.
Clinical practice. Vertebral osteomyelitis.
PMID: 20237348
をみると

oral bactericidal drugs with excellent bioavailability, such as fluoroquinolones, allow for the possibility of an early switch to the oral route (e.g., the combination of a fluoroquinolone and rifampin for the treatment of staphylococcal osteomyelitis).
In a randomized trial involving patients in Europe with deep-seated or bacteremic staphylococcal infection, including patients with acute bone or joint infection, the combination of an oral fluoroquinolone and rifampin resulted in cure rates that were similar to those with the standard intravenous therapy.
Clindamycin has good bioavailability but is bacteriostatic only against staphylococci. It is adequate for long-term treatment of chronic S. aureus osteomyelitis, but data from trials of clindamycin for the treatment of acute S. aureus osteomyelitis in adults are lacking. β-Lactam antibiotics should not be given orally for the treatment of osteomyelitis because of their low bioavailability.

とあります.
まず骨感染症ではβラクタムはどうも…という考え方もあるんだということがわかります.キノロンは骨への移行はとてもよいようですが,長期使うとなるとやはり気がひけます.clindamycinは骨への移行も期待でき,長期に用いることにもあまり抵抗は感じません.
でもMSSA感染症の静注にはcefazolinを使っているわけだしcephalexinならbioavailabilityもよいはずだからよいのかなあと自分は思うわけです.

まず
Int J Infect Dis. 2005 May;9(3):127-38.
Antibiotic treatment of osteomyelitis: what have we learned from 30 years of clinical trials?
PMID:15840453
には

Cephalosporins were used in many of the osteomyelitis studies and were generally found to be effective.
Most of the studies used intravenous cephalosporins, although oral agents, e.g., cephalexin, are often used clinically.

とあります.
そこで見つけたのが下記の文献.

J R Coll Surg Edinb. 1981 Nov;26(6):335-9.
Cephalexin in chronic osteomyelitis.
PMID:7320969

古い文献で,慢性骨髄炎でのはなし.明らかにunder-powerでしょうが.
でも「ステロイドの入った関節リウマチ患者の骨髄炎以外ならセファレキシンでいいんじゃない?」という内容です.

【Abstract】
慢性的に排膿のある骨感染症の患者14例をセファレキシン500mg 4回/日 6ヶ月間という内容を含む単一レジメンで治療し,平均3.75年フォローアップした.
臨床的なアウトカムは,感染の起こったコンディションと関係しているようだった.
ステロイドの入った関節リウマチ患者では,不満足に(感染は)進行したが,変形性関節症,外傷,あるいは急性血行性骨髄炎に合併した慢性感染の患者では,利用した管理方法によく反応した.

【背景】
・骨の慢性感染は除菌が難しいことでよく知られている.
・かつては(っていつの話や!)慢性骨髄炎は,小児の急性血行性骨髄炎の合併症として一般的であったが,これらの小児の管理の改善によって,部分的には現代の(っていつの話や!)抗菌化学療法によって,急性骨髄炎の発症率は低下した.
・一方で,複雑骨折後の直接感染や隣接した軟部組織病巣からの波及による感染は明らかに増えている.
・慢性骨髄炎の自然史は,長引く経過で,不規則な間隔で,ときには何年も離れて,再燃する.
・それゆえ,特定の治療が治癒に結びついたか確かめるのは難しいし,さまざまな量で,さまざまな期間の抗菌薬が処方されている.たいていは短い期間.
・適切な抗菌薬治療の長期的なコースを内容とした治療指針を開発すべきようだ.
・ブドウ球菌への活性がよく,他の一般的なグラム陽性菌やグラム陰性菌の多くもカバーするので,今回の目的にはセファレキシンを選択した.副作用も少ないし,忍容性良好.
・この文献では,様々な原因で起こった慢性骨感染症の患者をこの抗菌薬で治療した結果を発表する.

【患者と方法】
・14例(9例が女性,5例が男性)の慢性骨髄炎患者.32~81歳(平均59歳).
・セファレキシン1g 4回/日 2週間投与の後,500mg 4回/日とし,合計6ヶ月.
・フォローアップ期間は2~5年.平均3.75年.
・感染部位,有症期間,以前の治療,痛みの程度,炎症の存在,関節が侵されていれば,可動域を記録.排膿があれば洗浄し,吸引培養.ESR,白血球分画,X線をチェック.
・1ヶ月毎にフォロー.
・創部がhealthで,排膿と痛みがなく,可動が回復していれば,感染が除去できていると考えた.
・3人の患者で,セファレキシンの血中濃度と膿への排出量を測定した.(結果は原文参照:あまりたいした内容ではない).

【結果】
・排膿のある場合,多くは菌が同定された.表皮ブドウ球菌7例,黄色ブドウ球菌3例,大腸菌1例,プロテウス1例.
・多くの患者は,少なくとも1年前から感染があり,1例は15年ものであった.
・基礎背景によって2群に分けて考える

(1)骨折後あるいは急性血行性骨髄炎後の慢性骨髄炎(Table1)
・このグループは5例.3例は菌が同定された.3例は外傷後,2例は15年前と8年前の急性血行性骨髄炎後であった.
・2例は骨折した脛骨に内固定が行われており,金属は除去され,腐骨は切除され,創部はしっかり洗浄された.
・3例は治療2ヶ月後に排膿はなくなり,他の2例は3カ月後と4カ月後に排膿がなくなった.
・すべての患者がフォローアップ期間中は感染の除去は維持され,創部は治癒した.

(2)関節全置換後の慢性骨髄炎(Table2)
・このグループは9例.4例は変形性関節症,1例は大腿骨頸部骨折後のオースチンムーア型単純人工骨頭.4例は関節リウマチ.
・変形性関節症の2例は数年前に人工物除去されている.
・1例はセファレキシンのみで感染は除去.他は外科的な洗浄と3週間のcefuroximeの追加が必要だった.
・ステロイドの入った関節リウマチ患者は3例すべて,セファレキシンには反応せず.排膿は衰えず持続した.
・それに対して,3例の変形性関節症と大腿骨頸部骨折の半関節形成術例は,人工物の除去なしに6ヶ月間の治療で治癒した.

【考察】
・全マネージエントは以下からなる:微生物の同定への一致した試み,創洗浄の徹底,可能なときは腐骨と金属の除去,そしてセファレキシンの6ヶ月投与.
・外傷後や急性血行性骨髄炎後の慢性骨髄炎,変形性関節症の関節置換後の早期感染も,このレジメンによく反応したようであった.
・以前に人工物を除去し,その後持続的に排膿していた症例でさえ利益を得た.
・しかし,関節置換後の感染を来たしたリウマチ患者では低迷し,抗菌薬では改善しないことが明らかとなった.
・関節リウマチ患者では一度慢性感染が起きると,適切な抗菌薬を適切な量,数ヶ月間投与しても,疼痛や他の症状が持続する.たぶん関節リウマチ患者は,ある免疫不全により感染の除去が妨げられるのであろう.
・変形性関節症よりも関節リウマチ患者の方が,関節置換後の感染が高率であるようだという報告がある.
・慢性感染の患者に次のような指針を提案する.
①可能であれば微生物を同定する
②すべての壊死物質を除去する
③抗菌薬を長期間,高容量使用する.
・我々の限られた経験では,これは,慢性骨髄炎で約2~4ヶ月,関節全置換後の感染で3~6ヶ月で効果を生む.
・ステロイドの入っていない非リウマチ患者の人工物の早期感染では,人工物の除去は必要ないかもしれない(強気ですね).

そもそも症例数が少ない.
とくにS. aureusも3例しかない.
文献が古い.
などいろいろ問題はありそうですが,静注薬を十分使用したあとの内服へのスイッチとしては(どちらかというとchronic suppressionのような意味で)適応を気をつければ使えるのではないかと思っています.