2017年09月06日

香味だより163号より おいしさを求めて

工場の進化も亀の歩みのごとく

すや亀の店舗は明治44年に、工場は大正から昭和初期に建てられたもの。
どちらも100年近く歳月経ているため、毎年のように改修工事を続けています。
当店のある市街地の真ん中では工場の新築が認められません。
さりとて郊外に新築移転する勇気も根性も資金もありません。
もちろんこの場所、この建物への愛着も深いので改修を重ねてきました。

最初の工事は昭和54年の床暖房のみそ発酵室。
それまでの4t入る木桶から500圓両ロット仕込への転換でした。
狭い工場内で小さなフォークリフトを走らせるのに苦労しましたが、
仕込んだみそ桶を、肩に担いで大桶に仕込む重労働から解放された蔵人から大いに喜ばれました。

次に漬物用の冷蔵庫を新設し、みそ加工品の作業所を設置。
平成になってから回転式の大豆蒸煮缶、仕込みの半自動化、
そして糀を自動で作る円盤製麹機の導入で一段落しました。

その後、近郊に倉庫を借り、温度帯を5℃、18℃、28℃の3つに分けた熟成管理蔵を設置し、
工場内はだいぶ整備されました。

12年前に品質マネージメントシステムISO9001を取得しましたが、
工場内での製品の流れにクロス箇所がいくつかあり、HACCPの取得には至っておりません。

これまで学生さんやお得意先を除き、一般のお客様の工場見学はお断りしておりましたが、
「みそ」に関心をお持ちの方には、人数や日程によっては見学いただける場合がございますので
お問い合わせください。

むき出しの太い梁、天然仕込みの大桶、創業以来使っている石組みの井戸などに驚かれ、
喜ばれる方が多いようです。
歴史の遺物を思わせる環境と新しい装置のアンバランスが新鮮な感覚を醸し出しているのが人気のようです。


写真でみる「すや亀ビフォーアフター」下の画像をクリックしてご覧ください
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suyakame at 10:41|PermalinkComments(0)

2017年05月18日

香味だより 162号より 昔ながらのおいしさを求めて

百年桶の改修

当店では味噌の仕込みに今も大きな木桶を8本使っています。
といっても全体の仕込み量の約10%。
「究極をめざすみそ」や「コシヒカリみそ」等、高品位のみその仕込みに限って使います。
うち2本は5年前に購入した新品。
日本木槽(にほんもくそう)さんにお願いした木桶で、竹タガの代わりにステンレスのバンドで絞めた、欧米で水槽に使われるタイプ。
2本はちょっと小ぶりの十五石桶で、4年前に大阪堺市のウッドワークさんで竹タガを交換してもらったもの。
同社は私の知る限り日本でただ一軒残る、竹タガを使った桶の製造、補修ができる会社です。

今回は当店で一番古く「明治44年9月20日」の記載がある二十五石桶(直径2.1m、高さ2m、みそ約4.5t仕込み可能)2本の改修をウッドワークさんにお願いしました。
主に、竹タガの交換と、木屑が入らなくするための桶の内側の削りです。
タガに使う長い竹がなかなか手に入らず延び延びになっていましたが、やっと間に合い改修ができました。
しかし、古いだけあって部材にかなりヒビが入っており、そのまま使えたのは底板だけで、側板は3分の2ほども取り替えねばなりませんでした。
ちょうど秋田の酒造メーカーに同じ二十五石の木桶があり、その側板を使い、改修がかないました。

木桶の効用は、そこに住み着いた桶付酵母(桶癖、蔵癖を醸し出す)がみその味、香りに深みを与える点にあります。
また、木桶の厚い板には断熱作用があり、品温の変化を抑え、発酵によい影響を与えるのです。
さらに大事なことは、改修を頼むことで、日本の食文化を支える伝統的な桶職人の大切な技術を途絶えずにつないでいける点です。

逆に、木桶には木肌が劣化して製品に木屑が紛れ異物となってしまう欠点があります。
昨今は桶職人が減り、手入れに手間と費用が掛かる点も課題です。

今回、当店ではあえて手間と大金(?)をかけ、百年桶の改修を行いました。原料や仕込の技術ばかりでなく、食文化の伝承という“みそ造り”に対する「念い(おもい)」の一端を感じていただければ幸いです。

suyakame at 14:52|PermalinkComments(0)

2017年01月14日

香味だより161号より より良い原料を求めて・・・

生産者の方々に学びともに向上をめざして<
私どもは農業に関しては素人ですが、生産者さんとの長年のお付き合いの中で学ばせていただくとともに、前向きに、肯定的に、また積極的に、働いている皆さんと手を携え、一緒に向上していきたいと考えています。

安曇野市
かまくら屋田中さんの大豆
昨秋は大豆収穫期の長雨のため、乾燥が進まず、刈入れは例年より1〜2週間遅れました。
傾斜地に広がる遊休荒廃農地を開墾し直した畑での大豆の収穫は大変です。コンバインを転倒させないよう運転に技術と注意を要すのです。
刈入れの様子を見学中、ヒヤッとする場面もありましたが、収穫した大豆を見て一安心。粒が大きく、なかなかうまそうで、煮あがり、蒸しあがりに期待が持てました。今後、みその出来上がりを見ながら契約を増やしていく予定です。


長野市松代
関川さんの大根
真田氏の城下町、松代は、話題衛及んだNHK大河ドラマ「真田丸」の主人公・信繁の兄、信行が開祖です。お城から西へ2kmの地にある関川さんの大根畑でも、昨秋の長雨で生育が遅れ、収穫時まで心配でした。
ところが、お世話になっている7年のなかで今年は特によいできでした。大きさや収量はもちろん、大根を漬物にするため干して乾燥させる間に、”スの入る(中心部に多くの細い穴が生じること)”率が例年を大きく下回り、20%を切ったのです。いったんスが入ると廃棄するしかありません。一昨年は特に悪く5件の大根農家の平均が50%近くにもなりました。
話を聞いたところ、嫌気発酵堆肥を使い、土壌改良を施したとのこと。微生物の多様性活性値の高い畑地となり、土壌消毒なしでも連作障害が出なくなったそうです。特にトマトでその成果を感じられたそうで、関川さんのさまざまな努力に敬服します。

店主 青木茂人

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2016年10月15日

香味だより160号より より良い原料を求めて・・・

安曇野大豆 生産者の心意気

安曇野での大豆栽培委託を5年ぶりに再開することになりました。
山地の遊休荒廃地を開墾し、そば、大豆を栽培している農業法人「かまくら屋」の田中社長にお願いします。完全無農薬ではないものの、除草剤を使用するのは種まきの後の1回のみです。

大豆はもともと畑地で栽培されますが、最近では米の転作で栽培される大豆がほとんどです。
田中さんは、桑畑や果樹園その他野菜畑だったところが耕作放棄され、荒れ地となっていた土地90任魍墾しました。そのうち大豆は34如∋弔蠅呂修个任后
近年、農家の老齢化に伴い、委託されることが多くなったことから、来春には高校新卒者を5名採用し、作業にあたってもらうそうです。

田中さんの仕事は、農地を守り、国土保全の意味からも意義があり、昨年「耕作放棄地発生防止解消活動」で農林水産大臣賞を受賞されました。
その経営理念は「愛と正義の心をもち、地域の農地活用と良質な農産物の生産、加工販売により、社員と社会を取り巻く人々の喜びと平安を目指します」。すや亀はそこに共感したのです。

田中さんの本業は車のディーラー。
リーマンショックで売り上げが落ち、企業として安定的なもう一本の柱として農業を選びました。しかし、なかなか農地をかしてもらえず、ようやく貸してもらったのが耕作放棄地の荒れ地でした。
それにもめげずに取り組み、次第に認められ農地を広げてきました。
山間地の小さな畑は返却し、平地の畑だけにすれば生産効率は上がります。しかし、土地を愛でる農家の思いに触れ、あえて返却せずに「社会性を重視した農業」を「自分たちのやり方」として取り組んでいます。

田中さんのその心意気に惚れ、多少割高でも田中さんの大豆を「コシヒカリみそ」に使うことを決めました。「究極をめざすみそ」は、しばらくは北海道十勝、北星農場さんの大豆を使用していきます。

店主 青木茂人


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2016年09月05日

香味だより159号より 真味是淡と本店店舗

真味是淡
不易流行(ふえきりゅうこう)とともに当店の社是に掲げているのは真味是淡(しんみこれたん)です。

これは17世紀の中国、明の時代の洪自誠が著した人生の指南書「菜根譚(さいこんたん)」の一節です。「醲肥辛甘(じょうひしんかん)真味にあらず、真味ただ是淡なり。神奇卓異(しんきたくい)は至人(しじん)にあらず、至人はただこれ常なり<濃い酒、こってりしたもの、辛過ぎ、甘過ぎは本物の味ではない。本物の味は淡白なものである。奇抜なふるまい、奇抜な才能を振り回す人は道を究めた人ではない。真の人物というのは平々凡々な尋常な人である>」
《あっさりした飽きのこない味こそ本物》とは、まさに当店のめざす味噌の神髄。ご飯とみそ汁のように毎日食べても飽きない味が大切です。
そして企業としても飽きることなくお客様に親しんでいただける「真味」を目指します。

近年、無添加をうたうダシパックが人気で売り上げを伸ばしています。
表示を見ると無添加ということで確かにグルタミン酸やイノシン酸等、化学調味料は使われていませんが、酵母エキス、蛋白加水分解物、鰹エキス、昆布エキス等が原料として加えられています。
これらは実はビール酵母、植物蛋白、カツオ(魚肉)昆布から、薬品・アルコール・酵素を使って抽出したもの。
個人的には化学調味料と大差ないのではないかと感じます。
ダシとして味が強いので食べ続けると味覚の低下が危惧されます。

H28-追加焼むすひ_

そんな思いから当店では加工品には本物のかつお昆布を煮だした出汁を使っております。
化学調味料に慣れた方には当店の加工品の味、特にフリーズドライ味噌汁「ずくいらず」等には物足りなさを感じるかもしれませんが、「真味是淡」をご理解いただければ幸いです。

自らを振り返りますと、13回目の見合いで結婚した家内と浮気もせず淡々と35年を迎えました。
これぞまさしく「真味是淡」の真髄ではないかと自画自賛しております。




suyakame at 19:02|PermalinkComments(0)TrackBack(0)