IMG_20181129_145838


 一通の封筒がある。
 昭和22年に、愛媛県今治市桜井から、福岡県の須崎裏町(現存せず)に出された封筒である。

 宛名は、南条和蔵、とある。
 愛媛県の経済史にも名前が登場するこの人物は、須崎正太郎の高祖父にあたる。

 封筒を僕が持っているのは、そういうわけだ。

 昨年のブログ記事でも既にお知らせしていたのだが、去年、僕は、自分の先祖のことを調べに愛媛県に行ってきた。その先祖とは和蔵のことだ。

IMG_20181129_145346


IMG_20181129_145742


 愛媛県今治市桜井にある綱敷天満神社。
 その境内には、石碑が建てられている。
 月賦販売発祥記念の碑、とあるように、この町、桜井は、月賦(クレジット)制度の始まりとされている場所なのだ。


IMG_20181129_145800


 その初期貢献者の名前が、石碑の裏に掘られている。
 和蔵の名前はここにある。我が家に伝わっている伝説として、和蔵は貧しい出身で、小学校もろくに出ないまま働きに出て、やがて漆器と呉服の販売によって財を成した、とされている。その販売方法が月賦だったので、石碑に名が刻まれたのだ。




 月賦制度の創始者は、この石碑の筆頭に名が刻まれている、田坂善四郎とされている。
 桜井出身の田坂は、この桜井の名産品である桜井漆器を月賦で売ることを思いついた。そして、それは成功した。


IMG_20181129_183221



 田坂から始まった漆器の月賦売りは、やがて和蔵をはじめとする桜井出身の商人によって日本中に広まり、やがて月賦制度そのものも広まっていった。

 その流れの中には、丸井グループの青井忠治もいる。月賦初期貢献者のひとり、村上市太郎の作った月賦会社『丸二』に就職した青井は、頭角をあらわし、やがて独立して丸井を作り、最後は月賦制度をカードにするという活躍を見せる。……クレジットカードの誕生である。



 かくして月賦制度はクレジットと名を変え、日本に定着した。
 その歴史に、田坂善四郎はもちろん、私の先祖である南条和蔵もいさかかの貢献をしたのだと思っている。



 昨年から、私は和蔵、田坂、そして月賦制度について調査を続けていた。
 純粋に、自分の先祖がどんな活躍をしたのか知りたいと思ったからだ。

 しかし調査は難航した。仮にも我が国の月賦制度の先駆者たちの歴史だというのに、その資料や逸話をどれほど調べてもなかなか出てこない。
 愛媛県の図書館でさえ、田坂や和蔵のことを記した書物はなかなか出てこなかった。ネットでも、田坂たちの情報はなかなか出てこない。なにせウィキペディアに項目さえないありさまだ。



 この状態について、理由はいくつかあるのだが、究極的にいえば、田坂たちはそのほとんどがその事業の後継者を設けることができなかったからだと思う。和蔵もそうだが、この月賦先駆者たちは、戦前から終戦直後においてほとんどの人物が事業をやめてしまっており、その経歴を後世に伝えるひともあまりいなかったのだ。



 それでも私は調査を続け、桜井で聞き込みをしたり、実家の中から手紙を見つけたり、愛媛や福岡の図書館にも足を運んで職員の方と協力しあった。その結果、ようやっと、調査にある程度のメドがついてきた。田坂や南条、当時の月賦制度について、多少の知識を得ることができた。調査にこころよく協力してくださった各所の方々には、心より御礼申し上げたい。



 さて、調査のメドがついたところで、私は、やはり田坂や和蔵、そして当時の先駆者たちの記録をまとめて、世に出したいという気持ちが強くなってきた。……そこでこれから、また半年か1年はかかると思うが、調査結果をひとつの作品としてまとめたい。小説ではなく、ノンフィクションとして、田坂や和蔵のことを本にしてみたいのだ。



 これは月賦制度の先駆者たちの記録として、世に残しておくべきものだと思う。これまでに私が調べた田坂たちの行動記録はもちろん、世界でもはや私しか所有していない、南条和蔵の手紙などを掲載して、彼らの人生を後世に伝える一冊になればと思っている。



IMG_20190903_0001

 須崎正太郎所有、南条和蔵写真。撮影時期、ならびに撮影者不明。



 このように、自分しか持っていないものも出した本にしたい。



 ……しかし、こう偉そうにいったところで、これはいまのところ、出版社から出すアテのあるものではない。おそらくだが、自費出版+電子書籍になると思う。だが、それでもいい。利益にならない事業でも、やるべき価値のある仕事ならばやってみるものだ。そう信じている。






 そういうわけで、南条和蔵の子孫、須崎正太郎、月賦制度の先駆者たちの記録をまとめる仕事に入ります。



 ライトノベルなど、これまで手がけていた仕事も、むろん続けますが、こちらもやっていこうと思います。夢というか、一生ものの仕事、自分にしかできない作品だと思っています。ライトノベルやライト文芸と合わせて、こちらの事業も応援していただければ幸いです。よろしくお願いします。



 最後になりましたが、読者の皆様にもご協力をお願いします。
 田坂善四郎や南条和蔵、さらに桜井の月賦制度について、なにかご存知の方は、ぜひご教示くださいませ。



okinoshimachikage-20150325★yahoo.co.jp



 メールアドレスは以上です。★マークを@に変えて送ってください。



 また、今後の調査の過程については、ピクシブファンボックスでお知らせします。ファンボックスでは須崎正太郎のライトノベルを連載もしています。こちらも、今後ともよろしくお願いいたします。