2011年10月

2011年10月26日

尊王攘夷では未来は拓けない

 TPP(環太平洋パートナーシップ協定)について業界団体を中心に反対派の工作が進んでいます。協定に反対する議員も350名を越えたようです(http://www.zenchu-ja.or.jp/release/pdf/1319543828.pdf)。

 仔細に見てみると実際の検討対象になっているもの、それにもなっていないもの、様々なものが反対の理由とされているようですが、一度冷静に少し離れたところから見てみる必要があるのではないでしょうか。

 もちろんこの手の貿易自由化交渉、ただで儲かるはなしではありません。チャンスが広がるかわりに自己変革努力も求められます。要はリスクをとってチャンスを拡大する勇気があるか否か、そして政治家という観点からは日本の産業の力を信じているか否か、日本人の底力を信じているか否かが参加の可否の判断を分けるポイントです。

 手術の決断をするのに、もう手遅れだと思えばいたずらに体力を消耗させないために手術はしない、しかしまだ回復可能だと患者の生きる力を信じていれば痛みを伴うものであろうとも手術をする。今まさに我が国はそんな瀬戸際にたたされています。

 そして現実的な問題を指摘すれば、国益を最大限守るためには、事前交渉により協定の中に我が国のスタンスを反映させられるか否かが死活的に重要です。アメリカ議会の90日ルール等を考えれば決断を先送りする時間的余裕はありません。

 やらない理由はいくらでも探すことはできます。しかしやらなければこれまで通りの未来のない展望しか開けません。輸出競争力を我が国が失えば経済的にもずるずるといきかねない。「尊王攘夷」の道は今の我が国がとるべき道ではありません。

 またあたかも農家がすべて反対しているかの様な論調もありますが、この問題だけではなく、改革を進めるときには、例えば医療制度改革などにおいてもそうですが、業界団体の主張が現場とかけ離れているケースが多く見られます。実際現場でお話を伺う中で今回もそのことを痛感しています。業界団体自身が自らの既得権の保護のために動いているのかその産業の未来のために動いているのかの見極めも必要です。

 自由化なくして成長なし、成長なくして福祉なし。政治家には、既得権益を守ろうとする圧力団体におもねらずに、今おかれている現状を直視し必要な改革を進める勇気が求められるのではないでしょうか。


suzuki_keisuke at 13:20トラックバック(0) 

売られ続ける日本

 ここのところ、日本の株式マーケットの出遅れが目立っています。債務危機を抱えるヨーロッパ諸国やその影響を受けやすいといわれているアメリカよりも、そして近隣のアジアの国々と比べてもその低迷ぶりが目立ってしまっています。

 そもそも長期トレンドを見てみても、2009年の夏以降我が国だけがリーマンショックからの回復に取り残される状況が続いていましたが、この様な状況はやがて実体経済にも様々な形で影響を与えていくことにもなりかねません。

 いろいろな背景の説明は可能ですが、それらは後付けでしかありません。簡単にいえば「悪い材料を探す」市場のムードになってしまっているということです。ヨーロッパ以上に日本経済の先行きに不安がある訳ではないにもかかわらず欧州並みかそれ以上に売られてしまっているという事実は認識しておく必要があります。

 円高という問題についても、今年の上半期には過去二番目の大きさの貿易赤字を計上していることからも明らかなように、必ずしも今の日本の状況で対ドルの円高の問題が決定的なマイナスになるかといえばそうとも言えない状況です。にもかかわらず、円高=悪い材料という思い込みで市場が動いてしまっている。

 これはマーケットだけではなく、社会全体についていえることかもしれませんが、リスクを取りにくい、取りづらい雰囲気、非常に弱気なムードが特にここ何年か日本社会で強まっている様な気がしてなりません。

 最近の経済は、実態がどうかよりも、「どのように市場参加者が受け止めるか」により市場が動き、やがてそれが実体経済に反映されるというself reflected的な性格が強くなってきています。

 そんな中ではリスクを取りづらい雰囲気、慎重な論調が大勢を占める雰囲気そのもの自体が経済のリスク要因にもなってしまいます。

 そうした観点からも、またこれからますます厳しくなる国際競争に勝ち抜ける様な底力をつけるためにも、これからは、リスクをとるヒトやマネーがきちんと評価され社会を活性化できるような、ダイナミックな社会への転換を押し進められる様な政策を明確に打ち出していくことが、今まで以上に求められているのではないでしょうか。

suzuki_keisuke at 01:19トラックバック(0) 

2011年10月19日

二つの「流出事件」〜ビデオ騒動に消された国益〜

 約一年前、二つの流出事件が世の中をにぎわしていたことをご記憶の方も多いかと思います。

 一つは尖閣の体当たり事件のビデオの件。もう一つは警察の国際テロ捜査情報が流出したとの件。

 当時もこのブログで書かせていただきましたが、民主党のダメージという意味ではビデオの方が深刻かもしれませんが、我が国の安全保障、今後の国際社会での信用という意味では圧倒的に警察の情報漏れの方が深刻な問題でした。海外の捜査機関から提供された情報や情報源も流出したと一部では報道されていました。この一件を徹底究明しなければ、今後海外の機関からの情報の提供がされない可能性もあり、我が国のテロ対策や安全保障に与えるダメージには計り知れないものがあります。

 本当であれば政権与党という国を担う組織の判断としては、対処すべき優先順位は「与党として」「国として」の双方でずれないはずなのですが、残念ながら結果としてはそうはならなかったようです。

 その後の経緯はご存知の通り、民主党政権が(記者会見などでも発信しているように)最優先で徹底的に威信を賭けて捜査したのは、正義感から中国の尖閣や東シナ海での行動の実態を明らかにするためにビデオを流出させた人間の犯人探しのほうで、前者の方については、国際的な捜査協力を依頼したのも捜査を進めようとしたのも時間がかなり経ってから、当然インターネット上での追跡は時間が経てばたつほど困難になる訳で、結果、未だに犯人を特定することもできていません。

 ビデオよりも国益へのダメージが大きい国際テロ情報流出の方を優先順位を高くして徹底捜査していれば、真相の究明ができた可能性は極めて高かったはずです。

 内部犯行(内部スパイ)の仕業なのか、あるいは外国の勢力による犯行なのか、いずれにせよ、ビデオ事件と全く違って我が国の安全に対する挑戦であったはずのこの事件が、民主党政権の意向により事実上葬り去られてしまっている。このことは明らかに異常な事態です。またこの致命的な問題点をほとんど報道していないメディアのあり方にも疑問を持たざるを得ません。

 我が国はもっと「国益」「公益」という感覚を厳しく持つべきでしょうし、政治に関わる人間にはそのことがもっと厳しく求められねばならないのではないでしょうか?組織防衛を国益に優先させる様な政治家は国政に関わるべきではない、私はそう考えます。まもなく一年が経過します。あえて書かせていただいた次第です。

suzuki_keisuke at 14:15トラックバック(0) 

2011年10月13日

米韓FTAとわが国のTPP議論

 米韓FTAがアメリカの議会で承認されました。実際に発効すればわが国の産業は、今の円高(ウォンとの比較で)、税制に加えて関税という新たなハンデを韓国の競合企業に対して負うことになります。

 今行われているTPPの議論、日本の政治は未だに明確な方向性を見出すことが出来ていません。

 しかし、鎖国に戻って永久に自給自足の貧しい暮らしをする覚悟であるなら別ですが、今のグローバル経済の中でわが国が勝ち残っていくためには、いずれ米国との自由貿易協定も含めた貿易自由化を進めていかざるを得ないことを「現実」として我々はそろそろ認識せねばなりません。

 そしてそうであるならば、よりわが国の力・立場が強いうちに、そして、ルールのたたき台が決まる前に交渉を始め結論を得ることがわが国の国益という観点からは最善の策のはずです。将来的に追い込まれて買い手市場になってから交渉してもいたずらに足元を見られてわが国の国益をいたずらに損なう不利な条件を押し付けられるだけです。

 また、TPPよりも二国間FTAの方がいいという議論も事実認識が誤っているといわざるを得ない。これまでの事例で見ても、多国間のマルチの交渉の方が、アメリカとの二国間のギリギリとした交渉よりも関税自由化の除外項目の交渉においても有利な結果となることは明白です。二国間であれば99%近い自由化を求められるケースが多い一方で多国間であれば各国の利害もあり、また一体となって中国と向き合うという性質からも、96−97%程度の自由化で済む可能性も高いわけです。ましてや、わが国が安全保障上の死活的な同盟国であるアメリカと貿易の問題でガンガンやりあうことは現実的にもなかなか厳しいという点も忘れるわけにはいきません。

 そもそもの自由化に反対かどうかという感情的な神学論争をそろそろ終え、自由化せねばならないという現実を直視して、その中でどのくらいわが国として守るべきものを守れるかという、現実的な国益の議論を始めなければ、わが国だけが再び国際社会で「お人よし」として損をするということにもなりかねません。

 国益を最大限まもる、また農業分野等の痛みを最小限にするためにも、一刻も早いTPP交渉への参加をわが国の政治は決断すべきなのではないでしょうか。

suzuki_keisuke at 13:05トラックバック(0) 

2011年10月10日

中国人民元の為替操作に対抗措置を

 ここのところアメリカの上院で議論されている法案の一つに、中国の為替操作に対して米国政府に対抗措置をとらせる旨のものがあります。ここ数年毎年のように提案されているもので、「確かに中国が不当に為替レートを低く抑えていることは事実だが、米中の貿易戦争を引き起こすようなことはすべきでない」、あるいは「国際的にアメリカだけがこのような措置をとれば孤立するのではないか」など、いろいろと議論を呼んでいます。

 しかし、実は韓国や中国の為替操作によりもっとも被害を受けているのは間違いなく我が国の企業であり我が国の経済です。円高に対してあらゆる措置を検討するというのであれば、以前から指摘しているように、国内向けの言い訳くらいの意味しか事実上持たない無意味な介入を繰り返すのではなく、金融政策のあり方に加えて、中国や韓国の為替操作をどのようにして国際的に止めさせられるかの具体的な検討を多国間の協議で開始すべきではないでしょうか。

 韓国や中国の不当な為替操作とその影響をどのように定義し、WTOのルール内でそれに対するどのような対抗措置を講ずることが各国に可能なのか、そのような研究を少なくとも開始すべき時期に来ていると私は思います。口先だけで韓国や中国に抗議するだけでは、それらの国の為替政策を変えることはできないでしょうし、それではいつまでたっても今の円高という日本企業への逆風は和らぐことはありません。しかも、一番そのマイナスの影響を受けている日本がその議論をリードしなければ、世界的な流れを作ることは到底できません。

 かつてのように円のマーケットで介入によりある程度の効果を得られた時代はすでに終わっています。また今後欧米の景気が当分は厳しい局面を迎えることを考えれば、欧米の金融当局は緩和的な金融政策を続ける可能性が高く、金利差も含めて我が国と欧米との金融政策環境の違いを打ち出すことは当面はできません。であるとすれば、今の円高による国内の産業への逆風を考えれば、そして産業の空洞化がこれ以上進むことが我が国の将来にとって致命的であることを考えれば、そろそろそのような発想の大胆な転換、政策の転換を図らねばならないのではないでしょうか。

suzuki_keisuke at 20:24トラックバック(0) 

2011年10月06日

ジョブズ氏の訃報に思う

 アップルのスティーブ・ジョブズ氏の訃報が今朝飛び込んできました。イノベーション、そしてベンチャーという意味で非常に稀有な存在だった氏の訃報にはいろいろな意味で多くの方が様々な思いを抱いたかと思います。心より氏のご冥福をお祈りいたします。

 まさに我々が思い描く、自由なアメリカならではの成功例の象徴的な存在がアップルであり、ジョブズ氏ではなかったでしょうか。

 一方の日本、今日の大きなニュースは小沢一郎氏の裁判でした。こちらはまさに政治とカネ、規制と業界談合といったダイナミズムの対極にある「旧い政治」の象徴のような話で、ある意味では我が国が断ち切っていかねばならないモノそのものといってもいい問題です。

 もちろんこれが日米それぞれを象徴しているというのは適当ではありませんが、しかしそうはいっても、潜在成長力にここまで差が出てしまっている現状、国としての将来見通しにここまで差が出てきてしまっている現状を考えたとき、我々に何かを問いかけている様な気がしてなりません。

 今の欧州危機、あるいはリーマンショックと金融危機が問題になるたびに、自由な競争や市場というものに疑問が投げかけられ、原則を曲げる様な対策・規制がとられてきました。しかし、実はこれらの金融危機を惹起したのはむしろ市場の歪みとそれに乗じて適正なリスク管理を怠ったプレーヤーの動きにあるという見方が実はおそらく正しい。このことは規制と自由競争の議論でも同様です。

 もちろん過当競争を抑制することは必要ですし、独占も適正な競争のためには抑えねばなりません。しかし規制の方が自由よりも新たなイノベーションを生み出すかといえば、それはおそらく逆です。社会が全体として豊かになっていくために技術的にも知的にもイノベーションは今後ますます必要です。それをきちんと後押しできる様なダイナミズムを持った社会を政治も含めて今後築いていくこと、今日のニュースを見て、そしてMacbook Airでこのブログをうちながら、そのことの重要性を改めて感じています。


suzuki_keisuke at 18:10トラックバック(0) 
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