2015年06月

2015年06月23日

党内が大紛糾した日本郵政の限度額引き上げ問題

 今朝自民党本部で郵政事業に関する特命委員会が開催されました。焦点となったのは、ゆうちょ銀行、かんぽ生命の預け入れ・契約限度額の引き上げ問題。会議の場でも反対論が相次ぎ、まさに大荒れ、しかも反対論が半数を占めていたにもかかわらず、幹部による強引な一任取り付けもあり、非常にもめた会議となりました。

 そもそものこの限度額問題の流れをここに書けば、話は10年前の郵政民営化に遡ります。

 平成17年の郵政民営化法で郵政の金融子会社である今のゆうちょ銀行・かんぽ生命(当時は郵便貯金銀行・郵便保険会社)について、日本郵政株式会社は平成29年9月30日までに全部を処分することと定められていました。国が日本郵政の株は3分の1以上保有することが定められていますから、この金融子会社2社の完全民営化によりはじめて国をバックとした信用であったり国の関与は間接的にもなくなる、という法設計でした。

 その後民主党・国民新党の連立政権となり、その民営化の流れが大きく変容しました。平成24年に成立した改正郵政民営化法においては、改正前に平成29年9月と明記されていた完全民営化の期限が削除され、「日本郵政株式会社が保有する郵便貯金銀行及び郵便保険会社の株式は、その全部を処分することを目指し、郵便貯金銀行及び郵便保険会社の経営状況、次条に規定する責務の履行への影響等を勘案しつつ、できる限り早期に、処分するものとする。」(第7条2項)という記述に変更され、完全民営化は努力義務に後退してしまいました。

 わかりやすい銀行の方の限度額の例で説明するとすれば、この状況下にあっては、例えば地方の信用金庫・信用組合・地方銀行などは、金融危機に際し破綻する例も実際に存在する一方で、そもそもの規模が圧倒的に大きい上に国が間接的に株式を保有しているゆうちょ銀行には破綻のリスクは普通に考えれば無いわけで、預金者とすればその違いは大きく、官民のイコールフッティング(同条件での公正な競争)が確保されているとは言えない状況となっています。

 万一の破綻の際には預金保険において民間金融機関への預金の場合には1000万円までが保障されており、そことのバランスを考える中で、事実上の政府保証があるようにも見られる、ゆうちょ銀行への預金についても法律の中で事実上1000万円までと規定されてきたところです。

 ゆうちょ銀行・かんぽ生命の完全民営化を骨抜きとすることで郵政民営化・改革を大幅に後退させた民主党・国民新党政権下の平成24年の改正民営化法の議論においてすら、その附帯決議において限度額は当面引き上げないと明確に記すことでかろうじて官業による民業圧迫と見られかねない事態を避けて来たところでした。

 それが今回唐突に、その限度額を完全民営化とリンクさせない形で、ゆうちょ銀行にあっては今年9月までに2000万円、2年後までに3000万円、近い将来完全撤廃、かんぽ生命にあっては今年9月までに2000万円に引き上げを行うことを政府に求めるという提言が、自民党の今朝の会議で示されたところです。

 今朝の会合では、一時間半に及ぶ議論の中で執行部を除けば20人前後が発言し、主に民間とのイコールフッティングの観点から9名が明確に反対、明確に賛成が7名、他にもいろいろな観点から懸念を示す声が複数と、賛否両論が拮抗する状況となりました。私も限度額の引き上げについては完全民営化後でなければ筋が通らず本提言には反対の旨明言したところです。

 普通の自民党の会議であればここまで紛糾すると一回の議論で終わらせることはなく、議論を尽くし最終的な結論を出すまでじっくり論議を尽くすにもかかわらず、今朝の会議にあってはそのままの取りまとめに反対の声が強かったにもかかわらず、強引に執行部一任という流れとなってしまいました。

 自民党の常識からすれば、ここまで賛否が拮抗した問題であれば、今後の党内プロセスにおいて反対意見も踏まえた修正が行われるのが通例ですので、今後の展開を見守りたいと思います。


suzuki_keisuke at 10:34トラックバック(0) 

2015年06月17日

財政再建の本質とは何か

 財政健全化を巡る議論が「骨太の方針」の策定に向け本格化しています。

 やや気になるのが、歳出削減と経済成長が両立しないトレードオフであるかのような議論が一部に出ていること。日本経済の大半は民間企業の設備投資と個人消費であり、歳出による公的需要が経済の循環を左右するというのは全くの詭弁です。むしろ経済の好循環を考えるのであれば、予算という形で経済への政府の関与を強めるのではなく、戦略的な減税により民間が使える資金を増やすことの方が効果的です。

 歳出削減が経済成長を阻害するという議論は、安倍政権の経済政策「3本の矢」について、2本目の矢にばかり視線が集中する旧い体質の政治家の感覚に近いと言わざるを得ない。公需は日本経済を支えるほどパワフルではあり得ないのです。まずはこの認識が必要です。

 今の財政に関する議論については、ポイントはかなり明らかで、基本的には社会保障経費や防衛、教育、社会資本整備のうちの最低限必要なものを政府の支出でカバーする、それに加えて、緊急時に限って一時的な呼び水としての需要創出を行うことはあり得る、これが歳出の大原則です。

 そして、それを賄うための歳入の議論がついてくるわけです。ただし、今の日本にあっては、過去の借金もあり、また経済的にも過去のトレンドから考えても平均で50兆円台後半の税収というのが目一杯の歳入レベル、この相場観の下で、歳出についても当然それなりのキャップが必要になってくる、これが財政の議論です。

 国が今始まるわけではなく、過去との連続の中で存在する以上、財政問題は現実論でなくてはなりません。国内外の市場関係者、経済界、海外の政治リーダーと話していて指摘される話があります。今の財政状況にあって、道は三つしかない。歳出削減、増税、将来世代へのツケの先送り。日本はそうも最もやってはならない3番目の道に堕ちていくのではないか、という見方です。

 おそらくこれは全く正しい。よく言われる経済成長による税収増には限界があります。バブル期のピークを遥かに上回る税収が毎年あげられるという内閣府の試算はごまかしの極みとしか言いようがない。根拠のない経済成長による税収増を歳出改革や必要最小限の増税を先送りする口実としてはなりません。なぜなら、改革が遅れれば遅れるほど、将来の我々の時代の負担は限りなく大きくなってしまうからです。

 特に改革の必要が言われながら手を付けられていない社会保障費、例えば医療費の実態は医療機関への公金の投入です。医療への予算が増えることは必ずしも医療の質の向上を意味しない。むしろ先端医療の研究や大病院の臨床ではなく、開業医への税金投入に直結するケースが極めて多い。診療報酬を引き上げればその分だけ、国民負担も患者の窓口負担も増える。国民全体も患者も負担が増えるだけで、喜ぶのは医者だけというのが医療費増加の構図です。

 医者や自己負担のない公費丸抱えの患者の利益代表の発言力ばかりが大きく、国民・患者の声を代弁する代表が不在の状況が続いています。まさに旧来型の「バラマキ公共事業」と化した医療費の必要な改革すら医師会の圧力で出来ない今の状況は極めて異常です。医療費の抑制が医療レベルの低下を招くという偽りのイメージ戦略が検証されることもなく受け入れられてしまっているのが今の状況です。

 こうした財政の問題に限らず、現実的ではない、ただし一瞬「楽」な、第三の選択肢に逃げ込むような議論が、石炭偏重のエネルギー問題、県外移設という非現実的な主張が幅を利かせる沖縄問題のように、あちこちで見られます。こうした状況をきちんと改め、国民のみなさまに正しい現実的な選択肢を提示し意見を聞きながら正しい決断を下すこと、これが改革、そして政治の真髄のはずです。

 金融緩和の結果、一部において弛みが生じているとすら見える、改革への覚悟、財政への危機感。将来に禍根を残さないよう、微力ではありますが、全力で頑張ってまいります。

 

suzuki_keisuke at 16:07トラックバック(0) 

2015年06月09日

中国の軍事行動がエスカレートする南シナ海

 シャングリラ会合やサミット、様々なところで問題となっている中国軍の南シナ海での行動。埋め立てもかなり進んでおり、かつ軍幹部もそれらについて軍事目的の行動であるような発言をちらほら行っていて、極めて憂慮すべき状況になっています。

 日本にとっても、南シナ海で起こっていることは次には東シナ海で起こる可能性が高いわけで、注視しておく必要があります。

 具体的に注視すべきは、既成事実化に向けた中国の手口とアメリカの具体的な対応、そしてそれに対する中国の反応です。これはある意味で中国問題であると同時にアメリカの安全保障・外交の問題でもあります。

 中国が本気でリスクを恐れずに様々な形で既成事実を作りに来た状況で、アメリカがメッセージだけではなく行動でどこまで対応できるか。そしてその根底にあるのは、アメリカが場合によっては軍事行動も辞さないという覚悟を、アジア地域における覇権をめざす中国の行動に対して持てるか否かということでもあります。

 同時にこのことはアメリカを東アジアにつなぎ止めておくことが出来るか、そのための環境整備に向けた最大限の努力を日本が行えるかという、我々が現実的に突きつけられた課題でもあります。集団的自衛権の問題をはじめとした法的な整理、そして沖縄の基地をはじめとした地域の公共財としてのアメリカ軍をバックアップすることをはじめとして、進めるべきものが多くあります。

 南シナ海・東シナ海での中国軍の行動・軍備増強を客観的に分析すれば、中国はもはや本気でアメリカの軍事的影響力を西太平洋から排除しにきているとしか考えられません。今後数年間のアメリカの行動が東アジア地域の将来像を左右すると言っても過言ではありません。

 少し前、中国が防空識別圏(ADIZ)を設定したとき、アメリカ軍はその直後B52をその空域に飛ばし、これを認めない姿勢を行動で明確にしました。初期段階でこの様な意思表示をしたからこそ、中国もそれ以上の軍事的なエスカレーションを控えた。もしアメリカが何のアクションもとっていなければ、中国はさらに挑発行為のレベルを上げて、実際の軍事衝突を伴いかねない状況になっていた可能性もあります。周辺国やアメリカの不作為が中国の行動を助長し、そのことで緊張が取り返しのつかないレベルにまで上がっていく、このような悪循環は明確に拒まねばなりません。

 アメリカではこれから大統領選も本格化します。東アジアの安定・平和にどの程度真剣にコミットするか、そのことがアメリカの国益にとってもどのくらい死活的なことなのか。こうした点も含めて、日本や他のアジア諸国からアメリカへの働きかけを行うことも重要です。

 日本としても、東アジアの安全のため、他のアジア諸国と連携を強化して、アジア全体で中国の軍事的野心とその危険の芽を早い段階で摘み取る枠組みを作るべく努力せねばなりません。


 

suzuki_keisuke at 18:17トラックバック(0) 
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