2015年10月

2015年10月28日

極めて大きな意味のある米海軍艦船の南シナ海での行動

 アメリカがようやく南シナ海での具体的な行動を断行したようです。現地時間の26日の夜、米海軍のイージス駆逐艦が、中国が領有権を一方的に主張し滑走路の建設を行っているスービ環礁から12海里内の海域を航行し哨戒活動を行ったとのことです。

 地域の安定に資する具体的な行動として強く支持し歓迎したいと思います。

 ベトナムや台湾、韓国の政治リーダーとの意見交換の中で、そしておそらくフィリピンやその他の関係各国においてもそうだと思いますが、中国の軍事的経済的圧力は我々が考える以上に凄まじいものがあることを私自身感じてきました。

 四方を海に囲まれ、それなりの距離があり、しかも経済的に非常に強い日本と比べたとき、これらの国の中国への脆弱性は、我々が想像する以上です。常に脅威を感じている。さらに言えば、日本やアメリカが中国としっかりと対抗し、地域の中でのバランスを保ち、かつそれぞれの国にしっかりと継続的にコミットしてくれるか否かを各国はそれぞれの生存に関わる死活問題として注視しています。

 私はかねがねあちこちで申し上げてきましたが、もしも日本やアメリカの東アジア・東南アジアへの継続的なコミットメントが疑われるような事態となれば、軍事的脅威にさらされ経済的には高度に依存せざるを得ないアジアの各国は、生存のために好むと好まざるとにかかわらず、中国に一歩近づかざるを得ない。この現実を我々は忘れるわけにはいきません。

 そしてそのためには何よりも口先だけのコメントではなく行動が必要です。

 以前ADIZを中国が一方的に設定したとき、間髪空けずアメリカはB52爆撃機を当該空域で通過させました。今回の航行も同様で、この様な具体的な行動こそが、「財政や世論の支持の厳しい中で、アメリカがいつまでアジアに関与を続けられるのか。どこまで本気なのか」というアジア各国の疑心暗鬼を解消する切り札であることは明白です。そしてそのことが、各国が中国との距離を一定程度保つ現状を維持することとなり、結果的にアジア地域の安定に寄与することともなります。

 今後アメリカで大統領選が行われ、政権の行方も気になるところですが、どの政権になろうともアジアにおける安全保障政策は大きくは変わらないと言われています。そのような中で、必要なときには言動ではなく行動で示すということがその言葉にも重みを与えるという現実を認識しながら、日本としても、日米連携の中で、両国間の意思疎通をより緊密にし地域の安定にアメリカとともに可能な範囲でコミットしていくことが極めて重要です。

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2015年10月12日

中国共産党政治局常務委員の北朝鮮訪問が意味するもの

 東アジアの国際政治の中で最も注目すべき点の一つが、中国と北朝鮮の関係が本当のところ、一体どうなっているのかという点です。日本、アメリカ、韓国にとっては極めてクリティカルなポイントです。

 これまでも中国は北朝鮮に影響を与えられていないとか、北朝鮮との関係を弱めようとしているなどの「発信」が中国側からしばしばなされてきました。しかし、⑴中朝友好協力相互援助条約が、第三国からどちらかの国への攻撃があった場合には共同して闘わねばならない旨定めている条項も含めて2001年に更新されており、その後も様々な核・ミサイル実験などの挑発行為などにも関わらず見直しの話が出ていないこと、⑵現在も北朝鮮の生命線とも言うべき原油については中国からの供給が続いており、その明確な減少が見られないこと、などから判断すれば、中国は北朝鮮の地政学的な戦略的価値を極めて重視しており、事実上中国共産党の体制が変わらない限りその意義が変わることはない、というのが正確なところではないかと思われます。

 そんな中、専門家が注目していたのが、北朝鮮の創建70周年にあわせて可能性が指摘されていたミサイル実験等の行動を北朝鮮が行うのか否か。特に軍部との関係や長老との関係、腐敗問題や爆発・暴動など、内政的に習近平体制が安定していない状況、かつ経済的にも不安定さが増しているこの状況下で、北朝鮮がどのような行動に出るのかは大きく注目されていました。

 結果として、このタイミングでの挑発行為はなく、しかも中国は金正恩体制になってから最も高いランクの首脳であるチャイナセブンの一人、劉雲山常務委員を北朝鮮に派遣したところです。この事実は様々なことを示唆していると考えられます。

 ここから判断できることは、北朝鮮は中国にとって依然として最重要な戦略的同盟国であるということ、そして、様々な可能性を考えつつも、金正恩主席を当面は北朝鮮のリーダーとして認めある程度バックアップする、という判断を中国がしたとみるのが妥当だろうということです。もちろん劉雲山氏の習近平主席との関係なども含め幅を持ってみることは重要だとは思われますが。

 そして、おそらく今回の一連の流れを見て、韓国は日本、アメリカ、中国との関係を多少見直してくる可能性が高いと思われます。今後、日本にとって死活的な重要性を持つ東アジアの国際政治は水面下で非常にダイナミックに動きかねず、日本外交にとっても非常に大事な時期を迎えるといってよさそうです。


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2015年10月09日

国土交通大臣政務官・内閣府政務官退任にあたって

 本日付けで国土交通大臣政務官・内閣府大臣政務官を退任いたしました。昨年末から10ヶ月弱の期間でありましたが、多くの方々に支えられて任務を全うすることが出来ました。心から感謝いたします。

 特に国土交通分野は、いくつか以前から関与していた分野もありましたが、私にとってはじめての分野も多く非常に貴重な経験をさせていただくことが出来ました。また災害対策など真に緊迫した局面での対応を迫られることもあり、こうした経験を含め、きちんと今後に活かしていきたいと考えています。そして、何よりもそれぞれの担当の方々の真摯な想いに刺激を受けながら仕事を出来たことが何よりの財産ではないかと思っています。

 多くのインフラが更新の時期を迎える一方で、例えば気候変動に伴う激しい降雨の増加などの環境変化を考えれば、単純更新とはいかない部分もあります。そして厳しい財政のもとでどのようにして効率的にそうしたメンテナンスを行っていくことが出来るか、まさに優先順位の見直しもしていかねばならない時期に差しかかっています。

 同時に、建設分野においても、ストック効果、すなわち景気対策としての需要創出ということではなく、生産性向上に真に資するインフラか否かを判断しての投資ということを徹底するという大転換を行っているところでもあります。B/Cのあり方なども、より実態にあったやり方に変えていかねばなりません。

 さらには、鉄道などもそうですが、インフラの輸出に当たっては、中国との価格競争に巻き込まれないための国際標準化や、日本が比較優位を持つ技術、工法、オペレーション等についての知財戦略の強化など、「攻め」に転ずるにあたっての政府支援の戦略化高度化も重要です。こうしたことについて私もいささかなりとも貢献が出来たかとは思っています。

 そして、観光の分野も急速に増加する外国人旅行者に対応するためにはシェアリングの発想を活用せざるを得ないところでもあり、発想の転換が必要とされたところです。特に観光関連産業は成長する主要産業として国の政策の中でも位置づけられ始めたところであり、スピーディーな展開が必要です。

 また交通・物流ネットワークについても、島国日本を世界とつなぐ役割を担う国益に直結する戦略産業である国際航空・国際物流と生活インフラである国内のネットワークを担う国内交通・物流は競争政策の観点でも位置づけは異なるわけで、それぞれに適切な方向性を打ちださねばなりません。この点については、任期が短かったこともあり、また担当の分野か否か(私は基本的には土地・建設産業、鉄道、自動車、観光及び気象を担当)といった問題もあり、あまり貢献は出来なかったのが実態であり、今後党側から様々なかたちで関わっていければと思っています。

 いずれにしても、どの分野についても、必要不可欠かつ転機にあるものばかりであり、この10ヶ月弱の経験を活かし、これからも様々な観点から貢献していきたいと考えています。

 今後の役割はまだ判りませんが、政府で政務官として担った役割については一区切りということで、ご指導いただいた全ての方々に感謝しながら、ここに書かせていただいた次第です。有難うございました。そして今後ともよろしくお願いいたします。

suzuki_keisuke at 16:13トラックバック(0) 

2015年10月08日

ようやくまとまったTPP交渉

 TPPの交渉がようやく妥結しました。

 人口が減少し、国内においては、マーケットの大きさ、労働力の双方が縮小する可能性が高い日本にあっては極めて大きな一歩を踏み出すことが出来たと思います。このことを歓迎したいと思いますし、国益を守るということで、奮闘されてきた関係者の方々には敬意を表するところです。

 いろいろな議論はありますが、日本の持つ様々な優位性を考えれば、TPPをピンチではなくチャンスに転化していくことは充分可能だと思います。そして、今後、中国等を含む環太平洋の自由貿易圏、FTAAPへと発展していく可能性が極めて高いことを考えれば、中国等が加入する前にきちんとそのスタンダードとなるような国際ルールを、それぞれの分野できちんと構築していくことが極めて重要になってきます。

 それぞれの国内事情も当然考えねばなりませんが、地域の経済全体が豊かになるための自由貿易圏ですので、長期的な視点も欠かせません。

 我が国も、自由化の恩恵がある一方で、競争環境が厳しくなる産業・業界もありますので、そうした産業の競争力強化を進めていく必要があります。予算規模を追求するような補助金中心ではなく、国際競争の中できちんと勝ち残っていけるような、規模や効率性にメスを入れていく改革を進めることが重要です。今為すべきTPP対策は、当面の痛みの緩和というよりも抜本的な競争力強化をこの残された数年できちんとする、というものでなければなりません。

 今度の党人事でどのような仕事を任されるかは判りませんが、一人の政治家として、今後とも日本の競争力強化のため、全力で頑張ってまいります。

suzuki_keisuke at 16:38トラックバック(0) 

2015年10月01日

戻りつつある世界の中での日本のプレゼンス

 今年の通常国会が27日に閉会しました。それとは関係なく国会議員として、あるいは大臣政務官としての仕事は山積しています。

 そんな中、今週は月曜からウズベキスタンに一泊三日で出張し首都タシケントで行われた日本ウズベキスタン都市インフラ会議に主催者として出席、そして同国ナンバー3のアジモフ第一副首相、ガニエフ対外経済大臣、タシケント市長との会談を行い、日本に帰国した後、地球環境国際議員連盟が主催したアジア太平洋地域の議員会議で大気汚染問題について講演、そしてそのままアメリカに出張し、災害における日米協力に関するシンポジウムでパネリストを務める他、ワシントンで日米関係についての意見交換を対日関係者と行うなど、慌ただしく過ごしています。

 テーマは多岐にわたりますが、安全保障、経済、インフラ問題、地球環境問題と、その分野においても国際社会の中での日本の果たすべき役割、そして各国からの期待は極めて大きく、そのためにも他国との連携は極めて重要です。

 ウズベキスタン政府要人との会談の中でも、安倍総理の中央アジア訪問も取り沙汰されている中で、詳細に触れるわけにはいきませんが、ロシア、中国の狭間できわどいバランスの中での国家運営を行っている環境の中で、日本に対する期待は当然都市インフラのみにとどまらず、外交や国づくりの様々な分野・次元で拡がっていることは疑い様の無い事実であることが確認できました。

 日本としても国際環境や経済環境の変化の中で、対外的に積極外交に転ずる必要があるわけですが、中国・北朝鮮を除く殆どの国は日本の積極的な世界への貢献・関与を求めている地合にあります。まさにその双方の方向性が合致するのが客観的な現在の情勢であり、より効果的な形で日本が世界に貢献していくことが出来るよう、私も微力ながら全力で頑張っていきたいと思います。

 安倍政権が発足して間もなく3年、我々ですらふと忘れがちでもありますが、外国のメディア・新聞などでも日本がポジティブな意味で連日のように取り上げられる、例えば国際情勢の風刺画の中でも安倍総理や日本が主要国の一つとして取り上げられる環境、そして日本の政治家が名前で一般的に取り上げられる環境は数年前には考えられなかったことでした。もちろん、内政・外交ともにまだまだ課題は山積していますが、相互にいい循環の中でプレゼンスが拡大していることは間違いなく日本の国益にとってプラスです。国際経済の意味でも、そして国際政治的にも日本が復活しつつあるこの流れを確固たるものと出来るよう政策づくりや対外関係の中でしっかりと取り組んでまいります。

suzuki_keisuke at 22:43トラックバック(0) 
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