2016年06月

2016年06月29日

イギリスのEU離脱について

 イギリスの国民投票でのEU離脱という結果が、世界中で衝撃をもって受け止められ、ようやく市場も落ち着いてきたとはいえ、依然として大きな混乱を呼んでいます。

 そんな中、昨日、自民党本部で当面の対策を議論する会議が開催され、様々な議論がなされました。当面の短期の対策と、長期的な対応の両面からの議論がなされたところです。

 国内への影響という意味では、今のところは主に為替のルートからの影響が大きい状況で、流動性の確保や急激な変動への対応を引き続きしっかりと行っていくということに尽きると思われます。

 リーマンショックのようにどこに地雷が埋まっているかわからず、信用が急速に収縮するといった事態は今のところ起きそうにありませんので、何かあった時に速やかに対応できる備えは万全にしておかねばなりませんが、冷静さをもって対応してくことが重要です。

 そして、重要なのは中長期的な議論です。いったい何が変わり何が変わらないのか。離脱に向けたプロセス、離脱後のイギリスとEUの関係がどのようなものとなるのか、不透明の部分が大きいですが、現段階できちんとした分析と準備を行っておく必要があります。

 まず、イギリスの側の問題です。報道でもいろいろ指摘されていますが、実際どの程度の変化が生じるのかは不透明です。

 そもそも、EUとヨーロッパは同一ではなく、スイスやノルウェーなど、EUに加盟していない国があり、それぞれの枠組みが混在している集合がヨーロッパであるという認識が必要です。もともと、イギリスはヨーロッパ第二の経済大国である一方で、EUの中でもユーロも採用せず、シェンゲン協定の枠外でもあり、EU的には中央ではなく周辺という存在でした。今回EUから離脱ということですが、実際にはどの程度の影響があるのか、日本で報道されているほどではない可能性もあります。

 例えば、ロンドンが地盤沈下するという議論。様々なEUサイドの規制がどうなるかという点は注目しなければなりませんが、そもそもユーロ圏ではなく、かつリサーチなどグローバル本社機能をロンドンに置いている世界的な金融機関が数多くあるということからも、ロンドンはEUビジネスの拠点としてだけで評価されてきたわけではありません。ニューヨークとの間で毎日20便が飛ぶロンドンと、5便のダブリン、4便しかないフランクフルトの差は想像以上に大きいという実態もあり、欧州ビジネスの機能を別拠点に移す動きはあっても、金融センターとしての機能自体が大陸に移る可能性は限られていると思われます。

 むしろ、もっと可能性が高いのが、EU側の問題です。

 戦後二度とドイツとフランスが戦争をしないためという政治的な目的でスタートした欧州の連合ですが、統一ドイツとなってからは、ドイツの遠慮が弱まり、欧州危機以降完全になくなった状況に各国の不満が高まっていました。第二の経済大国でドイツをけん制できたイギリスが抜けることで、ドイツの存在感が今まで以上に大きくなります。このことがどう作用するのかは極めて不透明です。

 またギリシア危機で露呈した、「金融政策と財政政策のねじれ」というユーロ圏の致命的な構造問題は全く解決されないまま先送りされてしまっています。事実上の政治統合に向かうのか、ばらばらに戻るのかの二択しかないこの問題は、実は極めて深刻です。

 また一般的な傾向として自由や規制緩和を主張してきたイギリスが抜けることで、EUにおける様々な議論が規制強化の方向に振れることもビジネスとしては大きなリスクです。

 日本経済への影響を最小限に抑えるためには、こうした多くの可能性につき、きちんと検証し、対応を誤らないことが必要です。国内の経済政策がどうあるべきかも含め、参議院選挙後に徹底した議論が必要です。

そして、もう一点、実は日本の安全保障の観点から懸念されるのが、対中国武器禁輸問題です。対中国武器輸出に前のめりなフランス、ドイツを日米の意向を踏まえて抑えてきたイギリスが離脱すれば、EUは対中国武器輸出の解禁に舵を切る可能性が高い。こうした安全保障面での変化についても、日本として、きちんと動きを注視していかねばなりません。

suzuki_keisuke at 18:11トラックバック(0) 

2016年06月23日

2016年参議院選挙がスタート

 昨日、参議院選挙が公示されました。私も従前から神奈川県を中心に、あちこちの地方にも伺いながら、自民党の各候補の必勝に向けて全力で応援させていただいているところですが、いよいよ本番ということで、一層力を入れて頑張っていきたいと思います。

 今回の選挙、安倍政権、というよりも日本の将来にとって極めて重要な選挙です。全国的には多くのところで、自民党・公明党VS民進党・共産党の構図となっているわけですが、この結果次第で、日本の景気・経済そして外交・安全保障に大きな影響を与えかねません。

 イギリスにおけるEUの国民投票、アメリカの大統領選挙、欧州や中国の経済状況と多くの不透明なファクターが存在するここのところの世界経済です。日本としては、少なくとも国内における不安定要素を最小限にしていかねばなりません。

 安倍政権がスタートして3年半が経過しようとしている中で、もちろんまだ十分なレベルではありませんが、雇用や企業収益を中心に改善の兆しは少しづつ出てきています。いわゆる三本目の矢と言われる構造改革、経済の基礎的な成長力強化の施策のペースをもっと速くしなくてはならないといった課題もあります。改めるべきを改めることはもちろん怠るべきではありません。そして金融政策の状況や財政の状況などを考えれば、残された時間は限られているわけで、われわれは危機感を持って必要な改革を断行せねばならないのは当然です。

 しかし、金融政策を転換し、財政についてもバラマキでない形での需要喚起をし、その時間の中で構造改革を断行する、この政策パッケージを推し進めていくより他に選択がないのも事実です。実際対案を明確に示せている政党がないことからもそのことは明らかです。

 また外交や安全保障についても、中国や北朝鮮の動向を考えれば、アメリカとの同盟関係を強化し、オーストラリアや台湾、韓国、ベトナムなどと連携しながらアメリカの軍事的プレゼンスを北東アジアに維持できるよう日本としても主体的に動いていく必要があります。

 このほかにも多くの問題課題が山積しているこの日本です。そして、特に様々なもののスピードが速くなり物量的にも圧倒的に増加している現代の世界にあっては、一つの失政が命取りとなりかねません。菅政権、鳩山政権のころの日本にもう一度戻してしまうのか、あるいは、この3年半の流れをさらにスピードアップ、ブラッシュアップさせて進めていくのか、まさにこの判断を有権者の方々にいただくのが今回の参議院選挙です。

 神奈川県では自民党として、公認候補に全国比例区から今回神奈川県選挙区に鞍替えしてきた「三原じゅん子」候補、そして推薦候補に、米系投資銀行の幹部として国際金融の最前線で活躍し、経済・金融政策に精通した無所属の「中西けんじ」候補と、材料工学の研究で世界的にも評価され防衛大学で准教授をつとめてきた公明党の「三浦のぶひろ」候補の3名を擁立しています。

 県民の有権者のみなさまに、日本の「これから」をしっかりと創っていくために与党として今後の政策をどうしていくべきなのかをご理解いただき、3名全員を神奈川県から当選させていただけるよう、私も微力ではありますが全力で頑張ってまいります。よろしくお願いいたします!

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2016年06月09日

極めて深刻な尖閣諸島接続水域侵入事案

 中国海軍とロシア海軍の艦艇が、我が国の尖閣諸島の接続水域に侵入したということです。領海内ではないとはいえ、極めて憂慮すべき事態であり、厳重な警戒が必要です。

 これは当然のことながら偶然やミスではなく、意図的な行動と考えなければなりません。米軍機への中国軍機の異常接近なども発生していたことを考えれば、考えられる背景としては次のようなものかと思われます。

 まず第一に、アメリカにおいて大統領選挙の構図が固まる中で、またいわゆる「トランプ現象」で明確となったアメリカ国民の間で強まりつつある孤立主義的傾向というトレンドの中で、アメリカのアジアへのコミットメント、日米同盟へのコミットメントを試す動きというものです。

 中国にとっても、ロシアにとっても、アメリカが東アジアで軍事的な影響力を維持することは、非常に邪魔なことです。アメリカとそのアジアにおける最大の同盟国日本の関係を揺さぶり、またアメリカの地域における影響力を長期的に低下させることが、中国、ロシアにとっては最も望ましいシナリオです。

 その一番のテストケースが尖閣諸島であり、またおそらく台湾海峡の問題ということになります。

 中国とロシアが連携しているのか否かはわかりませんが、少なくとも中ロ両国が、「共通の利害」を持っているということは客観的に見て妥当な分析だと思われます。

 そして、第二に、南シナ海については「航行の自由」などの観点から、伊勢志摩サミットでも大きな議題となり、その他の国際会議でも議論され、国際社会全体として、問題認識を共有してきているますが、一方で東シナ海の問題がその陰に隠れてしまって国際社会での問題認識の共有ということでは一歩遅れを取ってしまっているという点があるのではないかと思われます。

 国際法的には南シナ海以上に東シナ海の状況のほうが明確で、日本の中間線の主張に100%理があるが故に、そして実効支配を日本がしているが故に、日本は国際社会で問題が存在していないという立場を取り続けています。実際、日本政府として国際社会に対しても、南シナ海の問題に言及することのほうが多いかもしれません。

 その結果として、私も最近いくつかの国の高官・トップリーダーと話す機会がありましたが、日本以外の国においては、南シナ海の問題のほうが東シナ海の問題よりもはるかに認識されていて、「東シナ海については、日本もあまり一生懸命主張していないので問題が深刻ではないのだろう」といった誤解が生じてしまっている現実があります。

 その間隙をついて、中国やロシアが今回の行動を起こした可能性が高いと思われます。

 このような背景で引き起こされた今回の事案ですから、おそらくこれから、中国やロシアはさらに挑発行為をエスカレートさせていく可能性が高いと言わざるを得ません。

 中国の艦艇が領海内に侵入する、あるいは民間人が尖閣に上陸するといった挑発行為が今後起こる可能性が高まっているという認識の下で、日本としても、あらゆる可能性に対応できるよう、自衛隊・米軍の警戒レベルを上げ万一の時の対応ができる体制を作っておくというハード面、万一の場合に対応できる法的整備と世論形成、トップリーダーの覚悟といったソフト面、その両面での備えを強化することが必要です。

 「太平の眠りを覚ます蒸気船」ではありませんが、米国の動向も世界的に注目される中で、国際社会との連携強化とともに、われわれ日本人が日本の国を海外の侵略的行動から護るということを真剣に考えるきっかけにせねばならないくらい深刻な事態、それが今回の中国海軍の艦艇の初の尖閣諸島接続水域侵入事案なのではないでしょうか。

suzuki_keisuke at 12:37トラックバック(0) 
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