2016年09月

2016年09月27日

臨時国会スタートにあたりTPPの意義を今一度。

 昨日から臨時国会がスタートしました。昨日の総理の所信表明演説、財務大臣の財政演説に続き、今日明日と代表質問が衆議院で行われる見込みです。

 経済対策、消費税率引き上げの延期法案やIR推進法案など、懸案が多くある今国会ですが、最大の懸案の一つと言われているのが、前国会で先送りされたTPP協定と関連法案です。

 通常国会ではTPP特別委員会の理事として最前線でかかわり、総理とも与党の質疑者としてやり取りした身としては、当時の民主党のやり方にはそもそも中身を審議するという国益の観点から大いに疑問が残るところでもありましたし、新体制となった野党にはぜひ建設的な議論を行っていただきたいと望むところであります。

 TPPについては、日本のみならずアメリカにも言えるところですが、今一度その意義を思い起こす必要があると思われます。

 まず一つには、人口減少が最大の課題と言われる今後の日本にあって、その影響をダイレクトに受けるマーケット、労働力の二つの側面のうち、マーケットの部分を補う最大の切り札という点です。

 そもそも、日本が広域の自由貿易圏を志向するときに、現実問題として日本が圧倒的な指導力と影響力を発揮できる貿易圏をアジア・太平洋で作るのは極めて難しい。現実的には、アメリカか中国の影響力を受けざるを得ません。その中で、日本の社会、法体系、ビジネス環境を考えたとき、アメリカと中国とどちらが日本の現状に親和性があるかといえば、明らかにアメリカと言わざるを得ません。

 知的財産権、紛争処理、法的予見可能性等々を考えれば明らかです。

 日本の国内の法体系やビジネス環境に近いマーケットを日米が主導して作るということは、日本の今後の経済成長の観点から極めて重要なことです。

 そして、もう一点は、戦略的な意義です。

 いずれ中国も含むアジア太平洋の自由貿易圏ができる可能性はかなり高いと思われます。その時に、日本やアメリカのルールに近い共通ルール、さらには法の支配や人権といった共通の価値がそのベースにあることが日本の国益、地域の安定の意味から極めて重要です。そしてその感覚は実は多くのアジアの国々で共有されています。

 中国の一方的な覇権主義的な押し付けに辟易としている多くのアジアの国々からすれば、日米が主導したTPPに参加することは戦略的にも大きな意味を持ちます。さらに、TPPを梃子にして、アジア太平洋地域が、法の支配、人権、自由、民主主義といった価値を長期的に共有し、中国がその前提の下でそこに参加してくるという流れが、アジアや太平洋の地域の安定にとっても最善のシナリオです。

 こうした多くの意義があるのがTPPです。もちろん、通商交渉という面もありますから、関税など貿易面で日本が100%すべてを勝ち取れるということはありません。50−50をどう上回れるかというギリギリの交渉を経済構造が異なる各国がするわけですから、痛みが出る部分もあるのは事実です。しかし、そうした部分への対策をきちんと国内法で担保する、そして、それを補って余りある長期的なメリットが外交面、戦略面、経済面であるのだという原点を我々は再確認することが必要です。

 前の国会でも20時間以上にわたって様々な点の議論が衆議院の特別委員会で行われました。中身に関する論点は相当出尽くした感があったのも事実です。その議論の上で、この意義を確認したうえで、さらなる論点があればそれを議論し、出尽くしたところで結論を出す。そんな建設的な審議を今国会では進めていくことが、日本の国益を考えるうえでは最も大事だと思われます。

suzuki_keisuke at 10:42トラックバック(0) 

2016年09月11日

9月11日〜何が変わり、何が変わらなかったのか〜

 9月11日。あの日から15年が経ちました。

 当時ワシントンのジョージタウン大学の外交大学院においてVisiting Fellowであった私は、ペンタゴンのすぐ横のペンタゴンシティという町に住んでいました。アメリカを襲った同時多発テロ、その後の世界にも大きな影響を与えたあのテロから15年、非常に感慨深いものがあります。

 テロの数日後にジョージタウン大学で講演をしたビル・クリントン元大統領が、目の前でこんなことを言っていたのが私の印象に強く残っています。

 「9月10日を忘れてはならない」。

 当時アラブ系への攻撃的な動きが米国内でも見られ、そのような国内の断絶はあってはならない、という意味も含まれていますが、その主な論点は、国際政治的な文脈だったと記憶しています。

 9月10日、テロの前日の世界では何が起こっていたのか。ベオグラードの中国大使館をアメリカが誤爆したことから米中対立が中国側の挑発で一気にエスカレートし、海南島においてアメリカの偵察機に中国軍の航空機が体当たりするといった事件まで発生していました。一歩間違えれば戦争になりかねない一触即発の事態といってもいい状況でした。

 まさに世界の国際政治の注目は米中関係、エスカレートする中国の軍事的行動に注がれていました。9.11の映像を見てどこかのコンファレンスルームで中国の記者団が大歓声を上げたといった噂がアメリカ人の間で真実味をもって広く受け取られていたのはその一つの象徴かもしれません。

 国際政治的に9.11テロは大きな分岐点であったのは事実です。イスラム過激派テログループはそれ以降の国際政治においてカギを握る存在となりました。その代表格であった、アルカイーダのウサマ・ビン・ラディンが殺害された後も、その分子が収拾がつかないほど世界中に広がり、体系的な指揮下ではなく、それぞれが独自に活動し緩やかに連携するなかで、世界中でテロを引き起こしてきました。最近ではHome Grownのようにさらに収拾がつかない状況となっています。

 しかし、一方で、9月10日の状況が続いているというのも国際政治におけるもう一つの現実です。特に東アジアにおいては、その流れのほうが強い。北朝鮮、中国、ロシア、こうした軍事大国が力による現状変更を虎視眈々と狙いアメリカの下での世界秩序に挑戦しパワーゲームを繰り広げています。

 北朝鮮の核問題においても、国連の制裁における主眼が、長い間、第三者・第三国への北朝鮮の核弾頭の流出を防ぐことにあった一方、日本の立場からすれば、北朝鮮の核保有自体が、そして中国の核軍拡自体が、地域の安定を著しく損なう脅威に他なりません。様々な交渉などの場においても、9.11以降の非伝統的脅威に注目が行きがちな国際社会と、9.11以前の伝統的脅威にさらされる北東アジアに位置する日本との間での認識ギャップに苦しめられてきたもの事実です。

 ようやくクリミアにおけるロシアの行動、南シナ海における中国の行動と、伝統的脅威への警戒感が国際社会においても高まってきたわけですが、我が国としては、アメリカに対しても、この伝統的、非伝統的、両方の脅威が極めて深刻であることを主張しながら、我が国としての外交戦略を進めていかねばなりません。

 15年を迎えた9月11日。今後ますます不透明感が高まる国際情勢の中で日本の外交戦略もまた正念場を迎えています。

  

suzuki_keisuke at 16:36トラックバック(0) 

2016年09月09日

東シナ海・南シナ海で起きていることの意味

 ここ数年、アジアの国々の政府高官などと意見交換すると、中国の脅威についての言及が先方からあることが非常に増えてきました。

 南シナ海、あるいは東シナ海での中国の軍事的な挑発行為を含む様々な行動はアジアの地域の平和安定に極めて大きな脅威です。力による現状変更を少しでも認めるようなことがあれば、国境、境界の確定が常に不安定になってしまいます。

 特に中国の東シナ海での現在の主張は資源が見つかったころから始まり、実際の行動がエスカレートしだしたのは中国の軍事力が強まってからのことです。まさに何の根拠もない典型的な「力による現状変更」であり、断じて容認するわけにはいきません。

 ひとたびこのようなことが容認されれば、今後未来永劫、その時々の軍事力のバランスの変化に応じて境界紛争が絶えないことになりかねません。

 クリミアにおけるロシアの行動、東シナ海・南シナ海における中国の行動が共に国際社会にあって容認され得ないのは、第二次世界大戦以降、それまでの度重なる戦争の惨禍を繰り返さないために主要国の間では少なくともその時点での境界を尊重するといういわばコンセンサスの中で維持されてきた平和な均衡を一気に崩しかねないからです。

 もちろん、一方で国際政治にあっては力のバランスという現実に目を向けねばならないのも事実です。国際法は力の前には無力です。だからこそ、現在の秩序や国際的なルールは現実的にはアメリカの軍事力がその実効性を担保しているといっていい。その意味で、アメリカが大統領選挙を経て、対外的な関与をどのように変化させていくのかに国際的な注目が集まっています。

 それは今の秩序、国際ルールがアメリカの軍事力という担保の下に維持されているからに他なりません。

 日本としては、アメリカの国際社会への関与を同盟国として働きかけつつ、今世界的に軍事力と切り離された中でも各国の国民レベルで広がりつつある、国際ルールの尊重という基本的価値の共有と尊重が、長期的に自分たちの利益を最大化するという共通認識に働きかけて、中国の力による現状変更を断じて容認しない環境をアジアの地域に作っていくこと、このことが何よりも重要です。

suzuki_keisuke at 17:32トラックバック(0) 
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