2016年10月

2016年10月28日

ストップ!児童労働

 先日、私の知人が子どもの権利を守るNPO(ACE)の代表を務めている関係で、「ストップ!児童労働」の署名の柴山総理補佐官への提出に立ち合いました。

 「児童労働」。あまりなじみがない方もいるかと思いますが、実は我が国としても、関係がない問題ではありません。我が国の中でも完全にゼロとは言えない問題であることに加え、世界の各地で依然として行われている児童労働により作られた製品を知らずに購入している日本企業もあるといった問題が実際にあり、他人事ではないトピックです。

 我が国が途上国に供与しているODAや、環境や社会的な課題に積極的に取り組む企業への投資を機関投資家に促すESG投資の枠組みなど、政府が世界的な児童労働の撲滅に積極的に貢献する方法はまだまだたくさんあります。さらに、今国会で議論されているTPP協定においても、児童労働の実効的な禁止を各国が国内法において担保すること、さらには児童の強制労働により作られた製品の貿易を禁止する規定が取り入れられているなど、世界的にも関心がもたれている問題でもあります。

 日本政府としても、TPPのような国際的な枠組み、ODAのような資金供与を梃子にした関与、企業行動に間接的に影響することで実効的な取り組みを進める、このいずれのルートによっても、取り組みを進めていく必要があります。

 特に、企業行動に働きかけるいわば「間接的な規制」は社会貢献などの政府の直接関与になじまない分野の促進には、今後ますます大きな意味を持ってくると思われます。従来のような、税制や予算、法律による直接規制ではなく、例えば女性活躍や気候変動対策、今回の児童労働問題などのイシューにおいては、民間のプレーヤーである企業の意識の変化を促すことが極めて重要です。そしてそのためには投資家のスチュワードシップを活用し企業への働きかけを行うことが非常に効果的です。いわば「21世紀型の政府の新たなアプローチ」といってもいいものです。

 環境、社会、ガバナンスに配慮したESG投資のプラットフォームを国連主導で確立した責任投資原則(PRI)にGPIFが署名するなど、こうした問題に配慮する企業はリスクが少ないということで投資を呼び込む傾向もありますし、このような問題への取り組みを主体とした投資インデックスづくりを政府が主導することも今後さらに必要になってきます。いずれにしても、企業の社会的取り組みの促進は今後注目すべきトピックの一つです。

 

suzuki_keisuke at 11:58トラックバック(0) 

2016年10月13日

日本の将来を死活的に左右する「日ロ交渉」

 12月の日露首脳会談に関連して、北方領土、日ロ関係に関する報道が盛んにされています。

 極めて重要な問題ですので、様々な観点から、また後世から見ても日本の国益にとってベストな判断が求められます。

 日本の国益から考えれば、二島返還で平和条約締結などという事態だけはあってはなりません。

 他の二島は継続して交渉すればよいという意見もあるようですが、ロシアが公式な二国間条約すら平気で破棄するという歴史的教訓は日本が身をもって体験していることです。まさに千島列島・北方領土・樺太は一方的な条約破棄によるソ連侵攻の象徴だったはずです。

 日ソ中立宣言を一方的に破棄し千島列島、北方領土に8月15日以降に侵攻し占領し、多くの日本人が戦争が終わっているにもかかわらず犠牲となった事実を日本の政治家として忘れるわけにはいかない。戦争状態でない中で日常生活を送っていた罪もない国民が、一方的に他の国家により命を奪われ、またシベリアに連行され抑留されたという事実は、そして一方的に領土を奪われ占領され続けているという事実は、現在クリミアで起こっていること、北朝鮮による拉致と同じ国家による犯罪行為です。

 だからこそ、第二次世界大戦以降に起こった「力による現状変更」の象徴である北方領土について、二島返還のみで幕引きがされるようなことがあってはなりません。「法の支配」という共通の価値を世界に主張する日本だからこそ、ここで押し切られて妥協することはあってはなりません。

 そもそも、平和条約締結後に歯舞諸島・色丹島を日本に返還することは1956年の日ソ共同宣言に明記(※)されているものであって、二島返還をもって平和条約を締結することは、これまで日本が認めてこなかったソ連時代からのロシアの主張のラインを認めることになってしまいます。

※(略)ソヴィエト社会主義共和国連邦は、日本国の要望にこたえかつ日本国の利益を考慮して、歯舞群島及び色丹島を日本国に引き渡すことに同意する。ただし、これらの諸島は、日本国とソヴィエト社会主義共和国連邦との間の平和条約が締結された後に現実に引き渡されるものとする。

 現実路線として段階的に進めていくにしても、1956年の二島というラインから日本側の主張に近づいたものでなければ、一切容認するべきではありません。領土問題が、60年経ちソ連がロシアになっても実質的に一ミリも前進していない状況で平和条約を締結してしまえば、それは日本がソ連の「法の支配」を無視した力による現状変更を是認したことにもなりかねないのです。

 私も多くの方々と様々な機会にお話をしますが、その経験からすれば、二島返還で平和条約を締結することを是認する声は国民の間にはほぼ無いと言っていいと思います。

 加えて、日ロ交渉の行方は、国際政治全体の流れ、中国問題にも大きな影響をもたらしかねません。

 二島返還、経済支援、そして平和条約締結。そのようなことを、クリミア問題で欧米から中国以上に非難され制裁を受けて孤立しているロシア相手に万一にでも進めてしまえば、「日本は力による現状変更を認めた」「法の支配といっているのはご都合主義だ」という認識が一気に欧米に広がることになってしまいます。実際そのような声を海外の専門家、政治家からしばしば耳にします。

 ロシアとの安易な交渉妥結は、結果として、日本が東シナ海、南シナ海での中国の動きを「法の支配」の観点から批判し、国際世論がそれに理解を示しはじめたこれまでの蓄積が一気に崩れることにもなりかねませんし、日本が国際社会で孤立することにもなりかねません。そして日本の主張の正当性、国際政治における立場が一気に崩れることともなりかねない。日本は中国の傍若無人な行動を抑え込むにあたっての国際世論の支持を失うことになる。日露交渉の結果次第では、そのような事態が現実に起こりうるという認識を持つことが必要です。

 そもそも、ロシアが中国・北朝鮮の関係で日米の側に立つことは地政学的にも歴史的にもあり得ず、ロシアと握ることのリスクのほうがはるかに大きい。

 もちろん外交交渉は両国間の国内情勢などのタイミングを見計らって国益を最大化できるところで一気に進めるべきものです。しかし、日露交渉は、今後の世界の中での日本の立場、国際政治におけるプレゼンスを大きく左右しうる死活的に重要なものです。政府にはそのような認識で交渉をしっかりと進めていただきたいと思います。

suzuki_keisuke at 18:49トラックバック(0) 
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