2018年06月

2018年06月21日

新たなエネルギー基本計画の議論

 先日、党の会議で、エネルギー基本計画の議論がされました。

 日本の今後のエネルギーのあり方に関する基本方針を決める重要な文書です。過去二回の議論には出張で出席することができなかったこともあって、主に石炭発電に関して発言しました。

 この数年間で金融関係も含めて急速に石炭を取り巻く環境は変わってきています。経済性に優れるということが石炭発電の売りだったわけですが、将来的な世界における制度変更、税制、コストなどを考えると、その優位性はほぼ無く、逆にリスクになってきているといっても過言ではありません。

 私はかねがね、正しい規制は正しいマーケットとイノベーションを生み出し、誤った規制や計画は経済に大きなリスクをもたらすと、あちこちで話させていただいています。

 まさに石炭をめぐる環境はこの通りとなっていて、政府がエネルギー基本計画で2030年時点で石炭発電の比率を26%としていることが、様々な混乱を生み出している面は否定できません。

 国際的なトレンドを見れば、2030年度で26%というのはかなり非現実的な数字だと思われます。実際先日の欧州中央銀行総裁会議でも、石炭関連の融資を各銀行がどのくらいしているかのストレステストを行うような話も出てきていますし、G7から金融安定化理事会(FSB)におろされて形成されたTask Force on Climate related Financial Disclosure(TCFD)での議論などを見れば、石炭発電が経済的にはかなり大きなリスクとして見られているのが世界の潮流であることは明らかです。

 にもかかわらず、日本国内では政府がエネルギー基本計画で石炭発電をベースロード電源としてその基軸に位置づけているがゆえに、新電力による石炭発電の新設の計画がこのご時世にいくつも出されるという奇妙な状況となっていました。

 まさにこれは将来に向けた計画が適正なものではなかったために、経済や民間企業に大きなリスクを負わせている、という状況です。

 将来に責任を負う政治家として、また責任ある与党の立場として、この点については正していかねえばならないとの信念のもとで、今回の議論でもいろいろな発言をさせていただきました。

 今後、さらに世界の動きは加速していくと思われますので、気候変動、世界におけるルール作りを主導する視点から、エネルギー源の議論に関して、引き続ききちんとフォローしてまいります。


suzuki_keisuke at 16:43 

2018年06月14日

米朝首脳会談が終わって

 世界中が注目した6月12日の米朝首脳会談ですが、案の定というべきか、北朝鮮の核放棄を確実にするような新たな合意とはなりませんでした。今後の展開を見る必要はありますが、少なくとも現状で楽観的になる材料は一つもありません。

 アメリカが米韓軍事演習の中止をこの段階で表明するということも、中国、北朝鮮という二大軍事独裁国家を抱える東アジアの安全保障環境を考えると極めて憂慮すべきことです。

 北朝鮮が、具体的な内容が無いと言われた板門店合意をベースに非核化に努力する、といくら言われても、そのようなものに期待する方が無理というものであって、我々は今後、米国と連携しながら北朝鮮の行動を厳しく注視していく必要があります。

 そもそも北朝鮮に核を放棄する合理性がないことは以前指摘したとおりですし、具体的なアメリカによる武力行使の可能性といった、金正恩という人間の命が直接の脅威にさらされている状況でない限りは、北朝鮮が核放棄を真剣にするはずがないのも、以前指摘したところです。

 アメリカの関係者と話しても、一部の専門家を除けば、アメリカにおいては依然として北朝鮮よりもシリア情勢のほうが深刻な危機だと受け止められている、という感覚が一般的です。そして現在の北朝鮮の軍事的な能力はアメリカが真剣に危機感を感じるようなレベルにはない、というのも客観的な事実であって、だからこそ、直接的な段違いの脅威にさらされている我々日本がアメリカに常に働きかけをせねば、北朝鮮情勢などというものは一歩も動かないわけです。

 現状から判断するに、正直なところ一年以内に北朝鮮が結局実質的に何の行動もしていないということが露見して、再び朝鮮半島の軍事的緊張が高まるという可能性も否定できません。

 その意味で、米朝会談を終えた今後の地域の地政学的環境の中で、安倍総理とトランプ大統領の個人的な強い関係は北朝鮮の脅威にさらされている日本にとってはこれまで以上に極めて重要な資産となります。与党の一員として引き続き緊張感をもって朝鮮半島情勢をはじめとする東アジア情勢を注視してまいります。

suzuki_keisuke at 18:05 

2018年06月06日

NPO・NGO/コレクティブインパクトに関し、政府へ申し入れ

 以前立ち上げた「NGO・NPOの戦略的あり方を検討する会」の第一弾の提言として、NGO・NPOのあり方について、「コレクティブインパクトによる社会課題解決の流れを加速する」べく、とりまとめをし、茂木国務大臣、菅官房長官に申し入れを行いました。●DSCF3788

 多様化する社会課題と、国及び地方の財政制約が強まっている中で、イギリスをはじめ多くの先進国で、「Small Government Big Society」、つまり従来政府が担ってきた役割をNPOやNGOに担ってもらうことで、政府の役割や国民負担を減らす方向への動きが顕著になっています。

●DSCF3810 その際、従来行政は行政、NGO・NPOはNGO・NPO、企業は企業とそれぞれが有機的に連携していなかったものをそうした縦割りを超えて、共通の社会課題解決という目的の下で連携していく、いわゆるコレクティブインパクトという概念が急速に広まってきています。

 実際欧米では一流大学の出身者がこうしたNGO・NPOのセクターに入ることはかなり一般的です。財務的な基盤もかなり強く、一般企業を上回るような報酬を受け取るケースもかなり多くなっています。一方、日本においてはそのような状況には程遠く、人材や財務面でのキャッチアップが必要です。

 まさに今の日本に求められているのは「ボランティア」とみられがちなNGO・NPOを真のプロフェッショナル集団として社会の中に位置づけることであり、そのための基盤整備を政府としても積極的に支援してくことです。

 こうした観点から、下記のような提言を取りまとめ、申し入れを行いましたので、以下をご覧ください。菅官房長官からも、茂木大臣からも「政府としても積極的に取り組んでいきたい」旨の極めて前向きな回答をもらうことができましたので、今後の政府における取り組みをきちんとフォローしていきたいと思います。DSCF3879

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NGO・NPOの戦略的あり方を検討する会
「NGO・NPOのあり方に関する提言」
〜コレクティブインパクトによる社会課題解決の流れを加速する〜

【背景】
 昨今、様々な社会課題が多く存在する中で、従来のように国家や自治体が主導してその解決にあたるだけではなく、シビルソサエティがさらに積極的に役割を果たすことが求められている。このような時代にあっては、NPO(/NGO)が政府、国際機関、企業と有機的に連携することで社会課題の解決に大きく寄与すると考えられる。

 従来、政府が果たしてきた分野において、NPO(/NGO)、社会起業家、企業、行政/政治の連携による新しい協働(コレクティブインパクト)により社会課題を解決する流れを加速する。また、国民負担を軽減するためにも、コレクティブインパクトを様々な領域で加速することが重要であるが、NPO(/NGO)の人的、財務的基盤の強化とともに、事業における制度的制約を最小限にする必要がある。

 この観点から、当PTにおいて、有識者、NPOよりヒアリングを行い、2回にわたり議論を行ってきた。

第1回5月17日・認定NPO法人フローレンス 代表理事 駒崎 弘樹氏
・認定NPO法人シーズ・市民活動を支える制度をつくる会
  代表理事 関口 宏聡氏
・NPO法人クロスフィールズ  代表理事 小沼 大地氏

第2回5月23日・認定NPO法人日本NPOセンター 事務局長 吉田 建治氏 
・認定NPO法人日本ファンドレイジング協会
  事務局長 鴨崎 貴泰氏 


【検討事項】

1.行政・企業・NPO(/NGO)による協働(コレクティブインパクト)の促進

 近年、行政や企業、住民等とともに、セクターや価値観の壁を越えた新しい連携の手法として、コレクティブインパクト(※行政、企業、NPO(/NGO)が共通のゴールを掲げ、お互いの強みを活かし合いながら社会課題の解決を目指すアプローチ)が注目されている。
 2011年にアメリカでレポート が発表されて以降海外で注目されている手法であるが、従来の下請け的なコスト削減の意味合いでの官民連携とは異なり、より社会的な成果を最大化する仕組みづくりを目指しており、日本でもその必要性が増している。
 しかし、新しいアプローチであるがゆえに事例が一部にとどまっており、行政、企業への認知が十分に広まっていない現状がある。また、協働するうえでの制度的な基盤が十分に整っていない状況があり、制度面での環境整備もより効果的な協働への必要条件となる。
 この観点から、国内でのコレクティブインパクト事例 について、政府としてどのような取組、成果、課題があるか、事例の収集をする必要がある。同時に、行政、企業に対し、コレクティブインパクトの積極的な周知を行い、新しい協働の手法について認知を深めることが重要である。
 またコレクティブインパクトの実現にむけて、中間支援機能が必須であり、推進のためのプラットフォームの形成と支援が求められる。
このために、当会では以下を提案する。

●行政・企業・NPO(NGO)による新しい協働(コレクティプインパクト)の推進
●コレクティブインパクトの国内における取組と課題の把握
●行政と企業に対するコレクティブインパクト手法の周知
●公益につながる企業の行為が意図せざる結果を招いた場合の免責等、コレクティブインパクト推進に必要となる施策の検討・立案
●コレクティブインパクトを推進するプラットフォームの形成と支援



2.行政・企業・NPO(/NGO)セクター間における人材流動性向上への取組

 NPO(/NGO)セクターの存在意義が高まっている一方で、多くのNPO(/NGO)の課題として、専門人材の獲得が挙げられる。今後、行政や企業がNPO(/NGO)と協働して事業を推進することを考えると、職員、社員、幹部間の交流が必要となる。
 副業解禁は企業で広まってきている一方で、公務員の副業は抑制されている。国家公務員のNPO等での副業は、内閣人事局の許可制であり事例も少なく、その判断基準が厳格・不明瞭であり、受け入れ団体側も含め計画的準備・対応が困難である現状がある。
 一方で、地方公務員では兵庫県神戸市や奈良県生駒市 のように、行政内で独自の制度をつくり自主的に副業を解禁している地方公共団体が出てきている。政府レベルでも促進したい。その際には、公益性、適正性、透明性担保が必要であり、本業に影響がなく過度な働き方にならないように配慮する。また対象職員や契約形態、報酬額、相手先団体等に一定制限などを考慮して設定し、個人情報を除く情報は公開して透明性を確保しながら進めていくことが重要である。
 国家公務員は、平成26年の官民人事交流法改正によってNPO(/NGO)や大学に対しての人材交流が可能になったが、高校や大学など教育機関への出向事例はあるが、NPO(/NGO)への事例はまだわずかしかない。行政職員がプロボノや副業・出向や研修等でNPO(/NGO)の活動にかかわりやすくすることで、社会課題の現場により精通した公務員の育成を目指すため、NPO(/NGO)での副業にかかる手続きの簡素化及び許可基準の緩和・明確化とその周知が不可欠である。
 同様に、企業でも経営者や幹部候補がNPO(/NGO)での副業等を行ったり、出向したりすることは、社内のダイバーシティ促進や、企業が社会的な存在になるための現場理解の一環として極めて重要である。
 また、SDGs(持続可能な開発目標)やESG(環境(Environment)・社会(Social)・ガバナンス(Governance))投資の普及などに代表される企業経営の社会性配慮およびダイバーシティ等による収益性向上のエコシステムの一環として、NPO・NGOのリーダーを企業の社外取締役にすることを政府によるガイドライン等に明記するなどして、経営レベルでの人材交流を奨励することが望まれる。
 以上の流れを加速させるために、NPO(/NGO)と企業や公務員人材をつなぐプラットフォーム主体者が存在することが必要であり、プラットフォームに対する支援を行うことが望まれる。


このために、当会では以下を提案する。

●国家公務員のNPO(/NGO)セクターへの副業推進(副業許可の手続きの簡素化・迅速化及び基準の緩和と明確化と周知)
●公務員のNPO(/NGO)セクターへの出向・研修等の推進
●企業の社外取締役へのNPO・NGO関係者任命等、NPO(/NGO)と企業や公務員人材をつなぐプラットフォームの育成

3.ソーシャルファイナンスの促進

昨今、山積する社会課題解決のために、民間の活力をいかした成果報酬型の委託事業であるソーシャル・インパクト・ボンド(SIB)など、社会的インパクト投資の取組が主に地方自治体で広がっている。現状、地⽅⾃治体で債務負担⾏為の実績はあるが、この流れを加速させるためには国の事業も含めて複数年度にわたる事業を実施できる枠組みが必要である。例えば、国庫債務負担⾏為での事業実施の推進及び地方自治体での債務負担行為を促す通知の発出が効果的である。
 また、自治体ごとに成果評価や支払い条件の仕組みづくりを行うことは負担が大きく、自治体ごとのバラつきが生じる懸念があることから、国主導で成果指標、支払い条件のガイドライン及び基準を策定やアウトカムファンド(成果連動支払基金)を創設することが合理的である。そのため、SIB等を省庁横断で推進する担当窓口の設置が望ましい。
 さらに、仕組みづくりの観点から、資産大国である日本での「資産寄付」を促進するため、「みなし譲渡所得課税」の非課税適用拡大など資産寄付税制を抜本的に拡充することも急務である。現状では、個人が譲渡益のある土地や株式を遺贈寄付した場合、相続していない法定相続⼈が納税しなければいけないなどの課題があり、NPO法人等に資産を遺贈・寄付する際の阻害要因となっている。
 NPOの活動を加速させるために、「NPO法人債」の発行をNPO法で規定することも効果的である。NPO等が社会的インパクトの拡⼤のために急速な事業拡大や大規模投資を行う場合、従来の寄付、会費、助成金等では調達コスト、スピード感に課題がある。近年、信用保証制度等により金融機関によるNPO等への融資(間接金融)が急速に拡大しているが、信用保証のさらなる拡充や、金融機関へのNPOの事業性等への理解促進や啓発を図るとともに、各NPOの実情に合った形での資金調達ができるようバリエーションを増やすためにも、NPO等側の資金調達手段として「NPO法人債」の発⾏による「直接金融」の充実が必要である。従来からNPO法人等では一定の条件の下、「擬似私募債」という形での資金調達も行われているが、その実態は個人(支援者)とNPO等との借金の束であり、法的根拠もない中で、その活用や拡大には至っていない。NPO法⼈債のメリットとしては、支援者からの共感に基づく調達が可能であり金融機関からの融資よりハードルが低いこと、利率や償還期間などをNPO等が自由に設定できることがある。

 このために、当会では以下を提案する。

●行政による成果報酬型契約(ソーシャルインパクトボンド)の導入促進
●資産の寄付・遺贈等の促進(みなし譲渡所得課税の非課税適用の拡大)
●NPO法人への投資も含めた資金調達手法の拡大
●ソーシャル・インパクト・ボンドの専門部署の設置あるいは明確化を図ること

以上





suzuki_keisuke at 10:40 
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