2020年05月

2020年05月31日

スペースX「クルードラゴン」有人発射成功が開けた扉

 日本時間の今日未明、アメリカ・フロリダ州のケネディ宇宙センターから、スペースX社が開発した民間宇宙船「クルードラゴン」が有人での打ち上げに成功しました。人類の宇宙探査・開発が新たなステージに突入した非常に象徴的な日となりました。

 従来から言われてきたことですが、今後ISS(国際宇宙ステーション)に代表され、多くの衛星が飛び交う地球に近い宇宙空間は、主に地上でのビジネスに活用されることが今後ますます主流となっていくと思われます。まさにそこは地上でのビジネスに不可欠なデータや通信などを司る空間ということで、地球圏の延長とも言えます。打ち上げのコストという意味でも、技術的な意味でも今後ますます民間が中心の空間となっていくことが予想されますし、マネタイズしていくべき宇宙空間です。

 一方で、これまで宇宙関連技術の中心だった「国家プロジェクトとしての宇宙」は、その中心を月や月近傍拠点をベースにした火星、そしてそれよりも遠いより深い宇宙の探査に明確にシフトしていく。近年どんどん強まってきていたその潮流が、まさに見える形となったのが今朝の打ち上げのシーンだったのではないでしょうか。

 そして、このような流れは何も宇宙だけにとどまりません。我々が当たり前のように「国がやるもの」、「政府がやるもの」と思ってきた領域が、今後急速に民間の多様なプレーヤーによって担われる、そんな時代がやってくることもまた明らかです。

 「国民の税金を使ってプロの公務員が行う」ことにこだわらねばならない領域は意外に少ないものです。インフラ整備や医療、あるいは様々な行政サービス、そして途上国支援などについても、民間の技術やノウハウ、資金を活用できる部分については、その活用を積極的に行っていかなければ、今後、本当に政府が税金を使って取り組まねばならない分野に十分な資金や人材などのリソースを回せないことになりかねません。

 感染症や戦争などの有事に際しては、歴史を振り返っても、どこの国でも政府や行政の役割が一時的に拡大する傾向があります。しかし、経済や暮らしへの政府の過度な介入は、短期的にはその時の国民の不安を解消するために必要なものであっても、長期的には社会の活力を失わせてしまうものです。それを緊急事態に応じた一時的なものとせねば、行政や政府の肥大化と国民負担の増大、社会全体の非効率化という過去の失敗の轍を踏むことになりかねません。

 日本においては少なくともこれまでのところ、その宇宙政策の中で、比較的地球に近い宇宙空間については、民間セクターの領域・役割を可能な限り大きくしていこうという明確な方向性を示せないでいます。もちろん、軍事的な、あるいはサイバーセキュリティの観点、ルールメイキングの観点から、政府や国際機関が関与すべき部分は確実に残りますが、民間への開放、民間の自由競争によるイノベーションを主役にという観点からは世界のトレンドから取り残されがちです。

 そして、この点は宇宙だけではなく、政府の役割一般でみても、私自身、これまで政治家として様々な改革を進めようと頑張ってきたつもりですが、その中で、様々な分野において、従来の公的領域の再定義を行って民間の企業やNPO・NGOにも積極的な役割を担ってもらう、いわゆるコレクティブインパクトを最大化していこうという発想が政治全体でまだまだ弱い印象を受けています。むしろ、民間領域においても、自由な競争や他者との差別化よりもなれ合いを好み、変化に対応した適切なリスクテイクを厭う風潮すら散見される現実があります。

 宇宙だけではなく、政府のあり方、社会のあり方についても、新時代の幕開けを目指してシステムとして前向きなイノベーションを起こしていくことが必要です。


suzuki_keisuke at 21:35 

2020年05月21日

WHO総会そして台湾の総統就任式

 今週はWHO総会(5/18)、総統就任式(5/20)と、台湾に関する出来事が続いています。

 台湾という自由な社会において、民主的な選挙の結果、蔡英文総統・頼清徳副総統が選出され、就任されたことに、改めて敬意と祝意を表させていただきたいと思います。

 台湾は安倍総理も明言されているように、我が国にとって「基本的な価値観を共有する重要なパートナーであり、大切な友人」です。さらに言えば、災害時の双方向の様々なレベルでの支援や人の往来、経済的な結びつきの強さに見られるように、日台双方がきわめて強い親近感を抱いていると同時に、隣り合って位置し、かつ挑発行為を続ける中国という強大な軍事独裁国家の脅威に共に直面しており、まさにお互いが生命線という意味で一蓮托生といってもいい関係でもあります。

 世界でも稀に見る非常に厳しい安全保障環境に直面している我が国にとって、国益という観点からも、隣に台湾が存在していることの意義は計り知れないものがあります。今、我々が再認識しなくてはならないのは、台湾の安全と日台関係の強化は、感情的・情緒的(emotional)な意味だけではなく、むしろ現実的(realistic/pragmatic)な観点からも我が国とって非常に重要であるということです。

 今週総会があり、今回の中国で発生した新型コロナウィルスにより多くの方が知ることとなった「WHO」のみならず、国際航空を司る「ICAO」など他の国際機関に於いても、台湾が参加するステータスを中国によって妨害されていることは、我が国のみならず国際的な平和や安全にとって実質的な大きなリスクです。

 WHOに関していえば、我々が再三にわたって行動し主張してきたように、今回の総会において、中国で発生した新型コロナウィルス感染症の収束を行った好事例として台湾の教訓や経験を世界が共有することができれば、それは極めて重要な意義を世界の人々の生命や健康にもたらしたはずです。2000万人以上の人口を擁する民主主義の社会であり、かつ中国と隣接しながら、早期に封じ込めに成功した台湾の教訓を世界で共有できなかったことは、将にWHOが事務局を含め共産党一党独裁の軍事大国である中国の政治的思惑に振り回された結果であり、この点については科学的アプローチが求められる専門機関でありながら、人命や健康、科学よりも特定国の政治的思惑を重視したと言われてもやむを得ない振る舞いであり、猛省を促すことが必要です。

 ICAOについてもそうですが、2000万人以上の人口を擁する台湾に隣接する我が国は、将に中国の政治意図により作られた地理的空白の様々なリスクに直面する当事者であり、最も被害を受ける立場でもあるわけで、我が国の国民や我が国に滞在する方々の安全や安心という人道的見地からも中国の横暴と国際機関の事務局の無作為を容認することは出来ません。

 また、安全保障面についても、新型コロナの影響で航空母艦など米軍のオペレーションが影響を受けていると報道もされている状況下において、東シナ海や台湾海峡、南シナ海の平和的な安定は我が国の安全保障上極めて重要です。そのことは、中国軍が我が国の尖閣において領海侵犯を繰り返し、宮古水道や台湾周辺などでの軍事的な挑発行動を繰り返していることからも逆説的に明らかです。

 島国であり、経済や日常生活において貿易に頼らざるを得ない我が国の構造を考えれば、まさに台湾との関係は我が国の安全保障上も生命線と言っても過言ではありません。

 このような台湾において、民主主義的な選挙が何度も安定的に行われ、平和裏に政権交代が繰り返されていること、そして社会として自由、民主主義、人権、法の支配、航行の自由等の価値を共有しているということは日本にとっても何物にも代え難い財産です。少なくとも日本としてはこのような自由な社会に暮らす人々が、共産党一党独裁の軍事大国に蹂躙されるようなことは断じて許容することは出来ません。

 こうした認識のもと、外務副大臣として、我が国の国益を守ることをその責務とする外交の一端を預かる者として、その責務を認識して今後とも厳しい環境の中で我が国の国益を守るべく全力で頑張ってまいります。

suzuki_keisuke at 20:37 

2020年05月10日

経済のダイナミズムと安全保障 〜外為法改正に思う〜

 二日続けて中国の公船が日本の領海に侵入しました。五月に入っても中国の軍事的挑発が引き続き続いています。

 中国で発生した新型コロナウィルス感染症の広がりと、その結果としてヒトとモノが止まってしまっている現在の状況、欧米の先進国が非常に大変な状況になっているために輸出を中心に構造不況となりかねない今後の状況への対応など、政治が取り組むべき課題は山積していますが、以前から述べているとおり、中国や北朝鮮、ロシアといった潜在的脅威に囲まれている我が国としては安全保障環境も注視せねばならない状況が続いています。

 そして、中国等が狙っているのは領土や領海だけではありません。我が国の技術や情報を入手すべく、表からも裏からも虎視眈々と狙っているということも忘れる訳にはいきません。このような経済的な安全保障の観点からも、先日8日に施行になった改正外為法はきわめて重要な一歩です。

 しかしながら、この外為法に代表されるような経済安全保障はきわめて重要ですが、同時に今のグローバルな経済において、外国からのヒトやカネの流れ、またコーポレートガバナンスの要素が、生産性や競争力の観点から我が国の成長にとって欠かせないものであることも忘れてはなりません。海外からの人材や資金のフローなくしては、我が国の経済のダイナミズムも成長もあり得ません。

 こうした点を踏まえれば、安全保障との名目で投資家や外部からの経営への適切なプレッシャーを弱め経営の緊張感がなくなってしまうようなことがあってはなりません。実際、これまでの多くの日本企業は、内部留保や終身雇用にみられるように、人材や資金を有効に活用できず、結果的に競争力の低下が顕著だったために、安倍政権ではコーポレートガバナンス改革を積極的に進めてきた経緯もあります。

 今回のコア業種のリストについては、一部でもコア業種の事業を行っていれば銘柄として対象となること、どの事業が該当するかの判断基準が明確になっていないこともあって、必要以上に対象の銘柄が広いのではないか等々、様々な議論があることも事実です。安全保障上の懸念以外の要素が少しでも入り込んで恣意的な指定がされることがないように、我々としても注視していくことが必要です。

 実質的には一般的な外国投資家については、コア業種の銘柄であっても、役員を出すといったケース、もしくは安全保障上の懸念に該当する事業に関する重要な提案を行うということでなければ、従来と同様10%までは事前報告は不要となっていますので、基本的には問題はないと思われますが、一部に安全保障に乗じて外部のガバナンスを弱めたいとの動きがあったともいわれており、安全保障上の懸念が実際にあるのかどうか、予見可能な形で適切な運用が行われるようにウォッチしていく必要があります。外国投資家が投資しにくいというイメージは、我が国の経済の将来を考えれば、決して好ましいものではありません。

 また逆に、実際に安全保障上の懸念がある投資は様々な迂回によって、表面上は極めて安全な投資であるかのように見えているケースが大半であって、今回の規制でそうしたものを阻むことができるかといえば、そこには疑問が残ります。本来阻止していかねばならない動きを実務的に見抜いていくことも極めて重要です。

 何れにしても、今回の法改正が施行されればそれで大丈夫なわけではないので、本来、日本経済に必要な投資が行われず、逆に安全保障上の問題があるものが姿を変えて行われてしまうといった事態がないよう、今後とも実態的な運用をしっかりと見ていく必要があります。

※今回の法改正の詳細につきましては、以下の資料をご参照下さい。
https://www.mof.go.jp/international_policy/gaitame_kawase/press_release/kanrenshiryou_20200325.pdf
(なお、パブリックコメントをふまえ下記がこの資料の後に変更となっていますのでご注意下さい。)
https://www.mof.go.jp/international_policy/gaitame_kawase/press_release/kanrenshiryou02_20200424.pdf


suzuki_keisuke at 23:35 
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