2021年03月23日

サステナブルファイナンスに関する提言 〜気候変動等が企業の事業継続に壊滅的な影響をもたらすリスクを踏まえた金融システム構築と国際的ルール形成に向けて〜

 「サステナブルファイナンスに関する提言」〜気候変動等が企業の事業継続に壊滅的な影響をもたらすリスクを踏まえた金融システム構築と国際的ルール形成に向けて〜。

 私が財務金融部会長としてメンバーとともに作成を主導してきた提言が、自民党の財務金融部会で3月19日に、政務調査会で3月23日に正式に了承されました。この機会に、今回の提言の趣旨についてここで書かせていただきたいと思います。

 背景としては、.蝓璽泪鵐轡腑奪以降、欧米を中心にそれまでの短期主義、いわゆるQuarterly Capitalismへの批判や反省が生じたこと、2015年以降、特に気候変動に伴う「物理的リスク」と「移行リスク」が企業のビジネスの持続可能性、金融・経済の安定に極めて深刻な影響を与えるとの危機感が高まり国際的にもTCFDなどの場でルールに関する議論が進んできた、という流れがありました。そうした中で、我が国においても菅総理が10月に2050年カーボンニュートラルの実現を目指すと明言され、またアメリカでもバイデン政権の発足に伴い、こうした動きが加速する地合いにあったところです。

 こうした中で、言ってみれば、資本主義、キャピタリズムにおける収益というものが短期に偏りすぎていたものを、長期的収益をベースとしたものに論理的に再構築するといった取り組みが今回の提言の趣旨です。もちろん短期の投資家が多数であることは事実ですが、年金のように長期で運用せざるを得ない巨大なアセットオーナーを中心に、機関投資家もこうした長期の収益を軸とした動きに向かいつつある実態があります。

 その際、長期の投資家が気にすべきは投資先の将来の業績ですが、これまでの財務情報はいわば過去の業績のデータです。そこと将来の業績を橋渡しするのが非財務情報であって、この開示が一つのカギとなるというこれまでの議論の流れがあります。また日本においては間接金融が大きな役割を果たしていますので、金融機関というものに着目した枠組みも必要です。こうした枠組みを整備することで、経済の強靭性、長期的な安定を実現する好循環を創っていくことが重要です。

 これまでも様々な議論がされてきたサステナブルファイナンス、ESGの分野ですが、特に今年は、この一連の流れをある意味で主導してきたマーク・カーニー前イングランド銀行総裁が国連と英国首相のアドバイザーとなり、その英国や欧州がG7、G20、COP26等の国際会議の議長国を務めること、あるいはこれまで林立してきた企業の情報開示についてその収斂を図るべくIFRS財団において議論が始まっていることなど、こうしたルール作りにおいて極めて重要な年であり、かつこれまでルールづくりへの関与の意味では出遅れが目立ってきた日本が国際ルール形成に関与するある意味で最後のチャンスでもあるわけです。そして、国際ルール形成の場で日本が積極的に関与するためには、日本国内においてもしっかりとしたエコシステムが確立されていることが重要です。

 こうした問題意識の下で、私が部会長を務めている財務金融部会として、政府への提言を提出する準備を進めてきたわけです。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
 主な具体的な項目としては、

●企業へのサステナビリティに関する情報開示については、「今般改定が予定されるコーポレートガバナンス・コードにサステナビリティ開示、特に気候変動に関してはTCFDや今後IFRS財団が策定する基準に基づく開示について記載することが望まれる。」とし、今後の方向性として「法廷開示も含めその在り方にさらなる検討を加えることも考えられる」と記載し、取引所の上場基準や法令による手法の可能性に触れています。

●開示の内容については、「当面気候変動情報についての施策を先行させる(Climate First)ことが現実的」としつつ、今後他のESG要素や、例えばウイグルや香港の人権問題を念頭にそうした人権弾圧に関連する企業がサプライチェーンに含まれる場合米国等でのマーケットアクセスが失われる可能性も考慮し、「人権等にかかる法的リスク等、新たな’S’」についても検討が必要と記載しています。

●企業年金等のアセットオーナーにESG投資の推進を推奨するとともに、公的年金資金や政府が間接的に株式保有する金融機関などには、政府としてESG投資へのコミットメントを求めています。同時に実際に運用を行う機関投資家(アセットマネージメント)についても運用におけるサステナビリティ考慮についての情報開示を求めています。

●ESG評価機関ついても市場の混乱を避けるために、評価基準などについての透明性向上を求めるとともに、日本やアジアの情勢に精通する世界に通用する評価機関の育成の必要性を記載しています。

●金融庁に対しては、金融機関への検査監督・ストレステストにおいて、「日本銀行と連携して、今夏を目途に大手金融機関がシナリオ分析を開始できるよう対話を進めるとともに、金融機関の気候変動リスク管理についてのモニタリングの考え方を、21年度中を目途に示すべき」としています。

●日本銀行においても、金融庁同様金融機関に対するモニタリング手法の確立を求めるとともに、グリーンQEの議論が各国でされていることや金融経済への気候変動リスクの認識が共有されていることを踏まえ、金融政策における資産買い入れにおいて対象を拡大しうるかの検討を求めています。

●財務省においてもグリーン国債についての研究を行うこと、金融庁に対してはソーシャルボンドの実務指針の策定を着実に進めること、政府に対して、カーボンプライシングやエネルギーミックスなどの長期政策については市場参加者から長期的に予見可能な打ち出し方をすること、などを求めています。

 こうした点を踏まえて、最後に、日本としての論理的な組み立てをして、国際的なルール作りに戦略的に関与することを求めています。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 アメリカやイギリス、EUなどでかなり先行している現状ですので、わが国としても腹をくくらなければ、他国が創ったルールで日本企業が正当に評価されずに戦うということになりかねません。政府に対してしっかりと申し入れを行っていきたいと思います。

 なお、提言の全文については、私のTwitter及びFacebookに掲載させていただいておりますのでご参照いただければ幸いです。後日自由民主党本部のホームページにも掲載される予定です。


suzuki_keisuke at 22:09 
Profile

suzuki_keisuke

Archives
QRコード
QRコード
  • ライブドアブログ