2021年11月17日

石炭発電についての所感

 COP26が閉幕しました。

 議論となった石炭発電について思うところを書かせていただきたいと思います。

 この約15年、様々な立場で国内での議論に携わってきましたが、事実に基づかない先入観により議論がゆがめられてしまっている印象は否定できません。

 まず「高効率の石炭発電はCO2の排出量が低い」という点。CO2排出量は、今、経済産業省が高効率と称している超々臨界(USC)で710g/kWh、まだ実証段階のIGCCで650g/kWh、実用化が2030年過ぎといわれているIGFCでも590g/kWhとなっていて、すでに実用化されている天然ガス発電であるガスタービン複合炉の340g/kWh、IGFCより早く実用化が見込まれるGTFCの280g/kWhと比べれば、どんな最先端のものでも天然ガスの二倍近いCO2を排出するというのが事実です。確かに日本の石炭発電技術は硫化化合物や窒化化合物の排出は限りなく少なく抑えられるため、公害という観点からは非常に優れていますが、気候変動の観点からは優れているとは言えない、これが現実です。

 次に、「日本の技術が非常に優れている」という点。正確には石炭発電に関連する分野についていえば、「優れていた」というのが現実です。現場のエンジニアの方々の話によれば、少なくとも最先端のUSCについては、カタログ値も実際の数値も熱効率等は中国の二段再熱USCにかなわないという状況になってしまっているとのことです。またIGCCやIGFCについても10年以上前から間もなく出来るといわれていたものがずれ込んでいる状況にあります。同様のことは二酸化炭素の貯留技術のCCSについても言えて、この10年の進捗は予想されていたスピードでは進んでいない。まさに、10年前には最先端だった日本の技術が今では後れを取ってしまっているという現実があります。

 この点については、政府の将来に向けた的確な方針と適切な規制により、適切なマーケットが生まれ、民間のイノベーションが良い資金循環の中で進む、というエコシステムをエネルギー基本計画をめぐる政府の不作為により実現できなかったことに大きな問題があると思われます。今の利害調整に終始し、20年後の進むべき方向性をリスクを取って示すことが出来てこなかった実態を我々は直視せねばなりません。私自身も様々な場で問題提起しながら実現できなかった自分の非力を恥じるのみです。

 そして「石炭が安価なエネルギー」という点。一つには再生可能エネルギー、特に洋上風力や地熱発電に正面から本気で向き合ってこなかったために、市場も形成できず技術的なブレークスルーを促せなかったことを背景に、日本は産炭国でもないにもかかわらず世界でも数少ない再生可能エネルギーの方が石炭発電よりも高い国になってしまっています。また東日本大震災以降、政府が石炭になぜか注力したために、以前検討していたパイプラインやイギリスのNBPのような天然ガスのハブを形成するような天然ガスに関する調達戦略をおざなりにした結果として、天然ガス価格が諸外国よりも高い状況を維持してしまっています。それに加えて、日本においては税制が相対的に石炭発電に有利な設計となっている点にも注意が必要です。

 こうした日本のエネルギー戦略の歪みは、まさに何故か石炭発電に固執してきた経済産業省や経団連が創り出した人為的な過失と言っても過言ではありません。

 確かに今後のデータ駆動型社会においては電力の安定的かつ安価な供給は最重要課題の一つです。そのために多様な調達元を維持することが重要なことは私も認識しています。原子力発電や化石燃料による発電が過渡的に必要であることも理解しています。

 しかしながら、そのことを口実にして、目の前のエネルギーミックスを維持し、将来に向けた方向性を明確に示さずに来てしまった結果として、「やらない理由」の議論に終始し、高い再生可能エネルギー価格、高い天然ガス価格、という状況を招き、その帰結として先進国の中で最後まで石炭に拘り続ける、という今の状況は明らかにおかしいと言わざるを得ません。正確な事実認識に基づき、かつ民間のイノベーション力を信じて、政府がリスクを取りながら目指すべき未来からバックキャストして中期的(今であれば2040年)な具体的目標・計画を示すことでしか、現状を打破できる方法はありません。与党内にあって、未来の可能性を切り拓くエネルギー戦略を実現すべく、今後とも全力を尽くしてまいります。


suzuki_keisuke at 16:56 
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