2022年08月26日

「責任あるサプライチェーンにおける人権尊重のためのガイドライン」

 昨日の党の会議で、「責任あるサプライチェーンにおける人権尊重のためのガイドライン(案)」というものが政府から提示され、説明を受けたのち議論がなされました。

 このガイドラインは、各企業において自主的に、人権方針の策定・公表を行い、それを踏まえて自社や直接取引先及び間接取引先の企業活動に関して人権デュー・デリジェンス(負の影響の特定・評価、負の影響の防止・低減、取組の実効性の評価、説明・情報開示)を繰り返し、人権侵害の予防、適切な解消が出来なかった場合に補償を含めた救済を行うことを求めるものです。

 私も党の会議で指摘いたしましたが、児童労働や強制労働などの人権侵害を企業の活動を通じて無くすための取り組みは極めて重要で大きな方向性としては必要なものですが、中身や建付けについてはいくつか大きな問題をはらんでいると言わざるを得ません。

 このように企業に人権デューデリジェンスを求める背景にあるのは、2010年代以降国際社会において、児童労働や強制労働などへの懸念の高まりから、企業に対してその活動において人権尊重を義務付ける動きが活発化したことがあります。しかしながら、ここ数年、例えばウイグル等における中国の人権弾圧、ロシアのウクライナ侵略など、国際情勢の変化に伴って、企業活動における「人権」リスクの意味するところが変化し多様化した実態があります。

 こうした独裁国家による国家の行為としての人権侵害が、企業活動の人権リスクの主流になってきている状況の中で、このようないわば「マクロの人権侵害」と、伝統的に問題視されてきた児童労働や強制労働といった人権侵害を、その全く異なる事象にもかかわらず、企業の自主的行動を求め政府が前面に出ない今回の同一のガイドラインでカバーしてしまって良いのかという根本的な問題があります。

 そして、「マクロの人権侵害」の場合、企業の責任とは言い切れない状況の変化により、契約を解消せざるを得ない場合、その結果生じる損害や賠償を当該企業にすべて背負わせることが妥当なのか、また国の法律等に基づかない企業の「自主的な」判断を事業廃止等の判断根拠とした場合、経営者のその判断が株主から訴えられないか、という観点も必要です。

 むしろ、今回のガイドラインは児童労働や強制労働といった企業が自らの意識で変えていくことが出来るものに対象を絞り、国際社会や各国の制裁対象となり企業の事業継続に大きな影響を与えうるような「マクロの人権侵害」に関しては、アメリカのウイグル強制労働防止法のように法律に根拠を求め、国の責任の下でより明確な基準と行動を設定する枠組みとするべきではないかと思われます。

 今後国際的な議論の中で、国際会計基準における非財務情報開示において、事業継続リスクの観点から、企業が国際社会の制裁対象となる可能性が高い人権懸念国や安全保障上の懸念国にどの程度サプライチェーンや投資先を有しているかに関するリスクの開示が求められてくる可能性が出てきています。そうした国際金融市場からの懸念・リスク評価に備える観点からも、国が自国企業の行動変容を促す取り組みは極めて重要ですが、その枠組みは合理的なものであることが極めて重要です。

 他にも、このガイドラインについては、日本企業において技能実習生等がどう評価されるか、等々の問題もあります。

 経済産業省をはじめ政府の関係部署においては、こうした党の会議で指摘された様々な論点にきちんと対応できるガイドラインへの修正を求めるとともに、今後とも党として、引き続き政府の動向を注視し、必要な指摘を続けていきたいと思います。

 

suzuki_keisuke at 17:01 
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