November 08, 2011
能力の正体
「ああ、探偵さん。お食事はお済で」
「はい。…あのお願いがあるんだけど」
「何でしょうか?」
「俺の時間をもう一度戻してくれないか?」
「ほう。なにをお考えで?」
「5分でいいんだ。
寿命なんていくらでもあげるから」
「…いいえ。できません」
「何で?」
「これ以上時間を戻せば貴方は死んでしまいますよ?」
「そんなに俺の寿命は迫っているのか?」
「はい。なのでお勧めできませんね」
「わかりました。あ、もうすぐ10時だ」
ボーン、ボーン…
「あ〜。もううるさいなぁ!」
「早くお慣れになってくださいね。
謎が解けない限り貴方は
この家にいることになりますから」
「夜もこの音が鳴るんだろ?
寝られるのかなぁ〜。
あ、そうだ。本格的な調査は明日からにします。
今日はちょっと疲れました」
「はい。結構です。お休みなさいませ」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「愛宕屋さん」
「おお、戻ってきたか。時間は戻してもらったかい?」
「いいや。戻してもらえなかった」
「ほぉ。じゃあ、ますます怪しいなぁ」
「時間を戻す能力は一回しか使えないんだろうなぁ。
だから、一度時間を戻した人物は
もう一度時間を戻させないためにすぐ殺されてしまう。
俺の時間を戻せない理由はこれ以上戻すと
寿命がなくなってしまうくらい死期が迫っているから
と言っていたよ。作戦失敗だな」
「なるほど、そういうことか。じゃあ、次やるこたぁ決まったなぁ」
「え?何?」
「おめえさん、探偵なのに頭働かねぇなぁ。
…違う奴呼んでくりゃいいんだろ?
そうすりゃ、あいつが時間を戻す過程を俺が
見れるって寸法だ」
「まぁ、そうだけど」
「なんでい、なんか不満か?」
「そうなるとさ、俺たちの知り合いに頼むしかなくなるだろ?
いくら頼んだって、寿命が縮むかもしれない
危険があることがわかってたら、
そんなのやってくれるわけ無いだろ?」
「はぁ?何でそんなんで悩む必要があるんだい?
事情を知ってる奴が駄目だったら、
知らない奴に頼みゃいいだろ?」
「そんなことできるの?」
「ああ、おいらならな。じゃ、いい奴呼んでくっから。またな」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「と、いうことだ。刑事さん。行ってきていいか?」
「なるほどな…でも駄目だ」
「何でだよ!いい考えだと思うぜ?」
「これ以上市民を危険な目にに遭わせる訳にはいかん」
「大丈夫だって!おい、おい、犬飼。何とか言ってくれって」
「まぁ、関心はしませんね。寿命を操るという魔術が
いかさまであると証明されたわけでもありませんし」
「…ええ…ちょっと予想外だ。じゃあ、他にいい案はあるのか?」
「ありませんけど!無実な人を騙すことは良心に反します」
「ほっほー。じゃあ、無実じゃねぇ人ならいいって訳だ」
「そ、そうと捉えられますけど」
「犬飼。おいらはぴったりな人を思いついたぜ。
公では裁けなかった罪をもった奴をなぁ」
「…あ〜。あの人ならいいでしょう」
「だろ?しかも、あいつはきっと時間を戻したい理由がある」
「愛宕屋」
「はい。なんでしょう。刑事さん」
「…許可する」
「あ、ありがとうございやす!じゃあ、行ってくるわ」
「キャラメルたくさん持って行って下さい!
途中で効果が切れたら大変だ!」
「おう!ありがとな!」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「よっと。ここら辺で良いかなぁ。
じゃ、キャラメルを食べましてっと。
…おい」
「…」
「おい」
「ん?何ですか?誰か呼びましたか」
「お?目覚めたか?室岡」
「私の名前を呼び捨てで呼ぶとは。
どういう教育を受けた方かな。
秘書に言って追い出してもらいましょう」
「さぁて、追い出せるかな?こんな場所にいる私を」
「ど、ど、どこにいるというのですか?」
「窓の外だ。覗いても何も見えないと思うがな」
「…ふふーん。わかりましたよ。
貴方は取立て屋ですね?幽霊のふりをして
私をここから追い出した隙に
家を差し押さえようとしているのでしょう?
全部お見通しですよ?室岡、頭良いんで」
「そう思いたければそう思っていなさい。
折角救いの手を差し伸べようとしたというのに。
もう、あなたには用は無い」
「す、救い?ちょっと、待ってくれないか?」
「お前は代議士、いや、もうすぐ元代議士となる身だな。
提案した多額の税金をかけた事業が失敗し、
今やお前を支持する者は誰一人として居なくなった」
「それは、事実ですから、どうにもなりませんね」
「後悔してはいないか?」
「後悔?後悔なんてとんでもない!
室岡、良いことはどんなにお金が懸かっても
やるべきだと考えていますから」
「じゃあ、私は去る」
「ちょ、ちょっと。一応ですが、そのあなたの用意した
救いの内容を知りたいのですが」
「後悔していない奴に救いを施す必要は無いだろう」
「言い方を間違えました。
政治では後悔はしておりません。
しかし、私生活では後悔しております。
支持を集めるために身内に吐いた嘘が
今私にどんどんと跳ね返ってきていますからね」
「…まぁ私の期待した答えではなかったが、
後悔しているというのなら、救いを与えよう。
お前は、時間を戻したくはないか?」
「時間を…戻す?」
「事業が失敗する前はもちろん、
代議士になって間もないころにだって戻すことができる」
「ほぅ。それはいいですね。しかし、代償はあるんですよね?」
「もう一度聞く。時間を戻したくはないか?」
「うんー。戻したいか戻したくないかでいえば、
戻したいですね」
「わかった。では、明日の朝、山に面した赤レンガの家に行け。
いいか?必ず行くんだぞ」
「…さっきから、私は自然に会話をしておりますが、
幽霊さん。あなたは一体誰なんですか?」
「私の名前か。お前に名前を潰された男だ」
「ふふん。私がそんなに罪深いことはしておりません。
室岡、心綺麗なんで」
「では、知る必要は無い。では」
「…一応聞いときましょうかね」
「蟻賀周蔵だ」
「なるほど。では、幽霊さん。さようなら
…ありがしゅうぞう?はて?誰でしたっけね?」
「はい。…あのお願いがあるんだけど」
「何でしょうか?」
「俺の時間をもう一度戻してくれないか?」
「ほう。なにをお考えで?」
「5分でいいんだ。
寿命なんていくらでもあげるから」
「…いいえ。できません」
「何で?」
「これ以上時間を戻せば貴方は死んでしまいますよ?」
「そんなに俺の寿命は迫っているのか?」
「はい。なのでお勧めできませんね」
「わかりました。あ、もうすぐ10時だ」
ボーン、ボーン…
「あ〜。もううるさいなぁ!」
「早くお慣れになってくださいね。
謎が解けない限り貴方は
この家にいることになりますから」
「夜もこの音が鳴るんだろ?
寝られるのかなぁ〜。
あ、そうだ。本格的な調査は明日からにします。
今日はちょっと疲れました」
「はい。結構です。お休みなさいませ」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「愛宕屋さん」
「おお、戻ってきたか。時間は戻してもらったかい?」
「いいや。戻してもらえなかった」
「ほぉ。じゃあ、ますます怪しいなぁ」
「時間を戻す能力は一回しか使えないんだろうなぁ。
だから、一度時間を戻した人物は
もう一度時間を戻させないためにすぐ殺されてしまう。
俺の時間を戻せない理由はこれ以上戻すと
寿命がなくなってしまうくらい死期が迫っているから
と言っていたよ。作戦失敗だな」
「なるほど、そういうことか。じゃあ、次やるこたぁ決まったなぁ」
「え?何?」
「おめえさん、探偵なのに頭働かねぇなぁ。
…違う奴呼んでくりゃいいんだろ?
そうすりゃ、あいつが時間を戻す過程を俺が
見れるって寸法だ」
「まぁ、そうだけど」
「なんでい、なんか不満か?」
「そうなるとさ、俺たちの知り合いに頼むしかなくなるだろ?
いくら頼んだって、寿命が縮むかもしれない
危険があることがわかってたら、
そんなのやってくれるわけ無いだろ?」
「はぁ?何でそんなんで悩む必要があるんだい?
事情を知ってる奴が駄目だったら、
知らない奴に頼みゃいいだろ?」
「そんなことできるの?」
「ああ、おいらならな。じゃ、いい奴呼んでくっから。またな」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「と、いうことだ。刑事さん。行ってきていいか?」
「なるほどな…でも駄目だ」
「何でだよ!いい考えだと思うぜ?」
「これ以上市民を危険な目にに遭わせる訳にはいかん」
「大丈夫だって!おい、おい、犬飼。何とか言ってくれって」
「まぁ、関心はしませんね。寿命を操るという魔術が
いかさまであると証明されたわけでもありませんし」
「…ええ…ちょっと予想外だ。じゃあ、他にいい案はあるのか?」
「ありませんけど!無実な人を騙すことは良心に反します」
「ほっほー。じゃあ、無実じゃねぇ人ならいいって訳だ」
「そ、そうと捉えられますけど」
「犬飼。おいらはぴったりな人を思いついたぜ。
公では裁けなかった罪をもった奴をなぁ」
「…あ〜。あの人ならいいでしょう」
「だろ?しかも、あいつはきっと時間を戻したい理由がある」
「愛宕屋」
「はい。なんでしょう。刑事さん」
「…許可する」
「あ、ありがとうございやす!じゃあ、行ってくるわ」
「キャラメルたくさん持って行って下さい!
途中で効果が切れたら大変だ!」
「おう!ありがとな!」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「よっと。ここら辺で良いかなぁ。
じゃ、キャラメルを食べましてっと。
…おい」
「…」
「おい」
「ん?何ですか?誰か呼びましたか」
「お?目覚めたか?室岡」
「私の名前を呼び捨てで呼ぶとは。
どういう教育を受けた方かな。
秘書に言って追い出してもらいましょう」
「さぁて、追い出せるかな?こんな場所にいる私を」
「ど、ど、どこにいるというのですか?」
「窓の外だ。覗いても何も見えないと思うがな」
「…ふふーん。わかりましたよ。
貴方は取立て屋ですね?幽霊のふりをして
私をここから追い出した隙に
家を差し押さえようとしているのでしょう?
全部お見通しですよ?室岡、頭良いんで」
「そう思いたければそう思っていなさい。
折角救いの手を差し伸べようとしたというのに。
もう、あなたには用は無い」
「す、救い?ちょっと、待ってくれないか?」
「お前は代議士、いや、もうすぐ元代議士となる身だな。
提案した多額の税金をかけた事業が失敗し、
今やお前を支持する者は誰一人として居なくなった」
「それは、事実ですから、どうにもなりませんね」
「後悔してはいないか?」
「後悔?後悔なんてとんでもない!
室岡、良いことはどんなにお金が懸かっても
やるべきだと考えていますから」
「じゃあ、私は去る」
「ちょ、ちょっと。一応ですが、そのあなたの用意した
救いの内容を知りたいのですが」
「後悔していない奴に救いを施す必要は無いだろう」
「言い方を間違えました。
政治では後悔はしておりません。
しかし、私生活では後悔しております。
支持を集めるために身内に吐いた嘘が
今私にどんどんと跳ね返ってきていますからね」
「…まぁ私の期待した答えではなかったが、
後悔しているというのなら、救いを与えよう。
お前は、時間を戻したくはないか?」
「時間を…戻す?」
「事業が失敗する前はもちろん、
代議士になって間もないころにだって戻すことができる」
「ほぅ。それはいいですね。しかし、代償はあるんですよね?」
「もう一度聞く。時間を戻したくはないか?」
「うんー。戻したいか戻したくないかでいえば、
戻したいですね」
「わかった。では、明日の朝、山に面した赤レンガの家に行け。
いいか?必ず行くんだぞ」
「…さっきから、私は自然に会話をしておりますが、
幽霊さん。あなたは一体誰なんですか?」
「私の名前か。お前に名前を潰された男だ」
「ふふん。私がそんなに罪深いことはしておりません。
室岡、心綺麗なんで」
「では、知る必要は無い。では」
「…一応聞いときましょうかね」
「蟻賀周蔵だ」
「なるほど。では、幽霊さん。さようなら
…ありがしゅうぞう?はて?誰でしたっけね?」
September 20, 2011
お願い
「まぁ、そこにお掛けください」
「はぁ」
「どうです?部屋の居心地は」
「そりゃ、すごくいいですけど」
「ほう、それは良かった」
「言っときますけど、居心地が良くても
俺はここに留まらないからな」
「ええ、どうぞ。但し、寿命は私が預かっています。
それでいいのならいくらでも」
「あ〜あ。やっぱりそうかぁ〜」
「しかしですね、あることをしていただければ
寿命をお返しいたしましょう」
「え?」
「貴方をここに留めたのはそのためです。
探偵さんならできることかと」
「ちょっと待て。なぜ俺が探偵だと知っている?」
「少し周辺を調べさせていただきました」
「…」
「では本題に。
私は数年前この家を見つけました。
そして、内装の素晴らしさ
付属していた物の数々に惚れ迷わず購入いたしました。
しかし、一つ困ったことがあったのです。
この家の一番奥の部屋。山側にある鉄の扉が
どうしても開かないのです」
「ほぉ」
「それを貴方に開けて頂きたいのです」
「そんなこと…鍵師に頼めばいいじゃないか。
探偵が鍵を開けるなんてお門違いだろう」
「いいえ。鍵師には開けられないのです。
鍵師に頼んだこともありますが、
鍵を開ける途中で皆逃げてしまうのです」
「逃げる?」
「はい。何でも鍵を開けるための道具が
すぐに溶けてしまうそうなんです」
「はぁ?」
「あの扉には様々な仕掛けが施されているようでして
無理に開けようとしてはならないのです」
「体当たりは?」
「試しました。体格の大きな男2人に頼んだのですが、
扉にぶつかった瞬間に上からびしゃっと」
「水が?」
「いいえ、薬品のようでした。彼らは火傷を」
「怖いなぁ」
「鍵穴はあれど鍵が見当たらない。
そこで、貴方に鍵を見つけていただきたいのです」
「何故そこまでしてあの扉を開けたいんだ?」
「私はこの家の主です。なのに家の中に知らない部分が
あるなんて許しがたいことですよ」
「…ふーん。でも、お金と寿命を操る能力があれば
そんな開かない扉のことなんて考えなくても
生活できるじゃないか」
「研究者はわからないことを放っておけないんですよ。
例え全く利益がないことでもね。
どうですか?やっていただけませんか?」
「…まぁ、やってもいいけど」
「いいんですね?」
「報酬を…」
「報酬はいくらでも。もちろん寿命もお返しいたします」
「あと、一つお願いしたい」
「なんでしょうか」
「俺がもし扉を開けたら、これ以上人の寿命を操るのは
やめてほしい」
「約束しましょう」
「…いいの?」
「ええ。問題ございません」
「わかった。では、捜査を始める。
あ、その前に部屋に戻って食事をしてもいいか?」
「ええ、結構でございます」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
(部屋で食事をする天城。幽霊の愛宕屋が様子を見ている)
「…いい食事だなぁ」
「うん」
「なぁ、ちょいと分けてくれよ」
「嫌だよ。というかお前幽霊だから食べられないだろ?」
「ちぇっ…ん?待てよ。おいらここに来た時
花瓶の水飲んだよな。
じゃあ、これも食べられるんじゃねぇのか?」
「やってみなよ」
「…あ、あれ?掴めねぇな」
「やっぱり駄目じゃん」
「おっかしいなぁ。何で水は飲めるんだ?」
「その問題は置いといて、どうしようかなぁ」
「そうだなぁ」
「あれ?聞いてたの?」
「当たり前よぉ。相手に見えねぇんだったら、
話盗み聞きし放題だからな」
「愛宕屋さんはどう思う?」
「おいらはこう思ったね。
扉は絶対に開けちゃならねぇ」
「俺もそう思った」
「扉開けたら何でもくれてやるなんて
そんな気前のいい奴いるか?
あの扉の中にあるのは金じゃねぇな。
なんか、こうもっとおっかねぇ物が
あるんじゃねぇのか?」
「時間や寿命を操る以上のものか」
「時間ねぇ。ちょっと、そこが引っかかって
仕方ねぇんだなぁ」
「なに?」
「あいつの能力。本物なのか?時間を操るなんて」
「俺も操られた。間違いないよ」
「…もう一回操られてくんねぇか?」
「え?嫌だよ!時間を戻しただけ寿命が縮んじゃうんだよ!」
「寿命なんてそんなに早く来るもんじゃねぇよ。
何かあったらおいらが教えてやっから。
な?お前さんが時間を操られているところを
おいらが見れば本当のことが分かっから。
もし、いかさまだってわかったら、
ここに留まっている必要はなくなるんだぜ?
どうでい?」
「…わかった」
「はぁ」
「どうです?部屋の居心地は」
「そりゃ、すごくいいですけど」
「ほう、それは良かった」
「言っときますけど、居心地が良くても
俺はここに留まらないからな」
「ええ、どうぞ。但し、寿命は私が預かっています。
それでいいのならいくらでも」
「あ〜あ。やっぱりそうかぁ〜」
「しかしですね、あることをしていただければ
寿命をお返しいたしましょう」
「え?」
「貴方をここに留めたのはそのためです。
探偵さんならできることかと」
「ちょっと待て。なぜ俺が探偵だと知っている?」
「少し周辺を調べさせていただきました」
「…」
「では本題に。
私は数年前この家を見つけました。
そして、内装の素晴らしさ
付属していた物の数々に惚れ迷わず購入いたしました。
しかし、一つ困ったことがあったのです。
この家の一番奥の部屋。山側にある鉄の扉が
どうしても開かないのです」
「ほぉ」
「それを貴方に開けて頂きたいのです」
「そんなこと…鍵師に頼めばいいじゃないか。
探偵が鍵を開けるなんてお門違いだろう」
「いいえ。鍵師には開けられないのです。
鍵師に頼んだこともありますが、
鍵を開ける途中で皆逃げてしまうのです」
「逃げる?」
「はい。何でも鍵を開けるための道具が
すぐに溶けてしまうそうなんです」
「はぁ?」
「あの扉には様々な仕掛けが施されているようでして
無理に開けようとしてはならないのです」
「体当たりは?」
「試しました。体格の大きな男2人に頼んだのですが、
扉にぶつかった瞬間に上からびしゃっと」
「水が?」
「いいえ、薬品のようでした。彼らは火傷を」
「怖いなぁ」
「鍵穴はあれど鍵が見当たらない。
そこで、貴方に鍵を見つけていただきたいのです」
「何故そこまでしてあの扉を開けたいんだ?」
「私はこの家の主です。なのに家の中に知らない部分が
あるなんて許しがたいことですよ」
「…ふーん。でも、お金と寿命を操る能力があれば
そんな開かない扉のことなんて考えなくても
生活できるじゃないか」
「研究者はわからないことを放っておけないんですよ。
例え全く利益がないことでもね。
どうですか?やっていただけませんか?」
「…まぁ、やってもいいけど」
「いいんですね?」
「報酬を…」
「報酬はいくらでも。もちろん寿命もお返しいたします」
「あと、一つお願いしたい」
「なんでしょうか」
「俺がもし扉を開けたら、これ以上人の寿命を操るのは
やめてほしい」
「約束しましょう」
「…いいの?」
「ええ。問題ございません」
「わかった。では、捜査を始める。
あ、その前に部屋に戻って食事をしてもいいか?」
「ええ、結構でございます」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
(部屋で食事をする天城。幽霊の愛宕屋が様子を見ている)
「…いい食事だなぁ」
「うん」
「なぁ、ちょいと分けてくれよ」
「嫌だよ。というかお前幽霊だから食べられないだろ?」
「ちぇっ…ん?待てよ。おいらここに来た時
花瓶の水飲んだよな。
じゃあ、これも食べられるんじゃねぇのか?」
「やってみなよ」
「…あ、あれ?掴めねぇな」
「やっぱり駄目じゃん」
「おっかしいなぁ。何で水は飲めるんだ?」
「その問題は置いといて、どうしようかなぁ」
「そうだなぁ」
「あれ?聞いてたの?」
「当たり前よぉ。相手に見えねぇんだったら、
話盗み聞きし放題だからな」
「愛宕屋さんはどう思う?」
「おいらはこう思ったね。
扉は絶対に開けちゃならねぇ」
「俺もそう思った」
「扉開けたら何でもくれてやるなんて
そんな気前のいい奴いるか?
あの扉の中にあるのは金じゃねぇな。
なんか、こうもっとおっかねぇ物が
あるんじゃねぇのか?」
「時間や寿命を操る以上のものか」
「時間ねぇ。ちょっと、そこが引っかかって
仕方ねぇんだなぁ」
「なに?」
「あいつの能力。本物なのか?時間を操るなんて」
「俺も操られた。間違いないよ」
「…もう一回操られてくんねぇか?」
「え?嫌だよ!時間を戻しただけ寿命が縮んじゃうんだよ!」
「寿命なんてそんなに早く来るもんじゃねぇよ。
何かあったらおいらが教えてやっから。
な?お前さんが時間を操られているところを
おいらが見れば本当のことが分かっから。
もし、いかさまだってわかったら、
ここに留まっている必要はなくなるんだぜ?
どうでい?」
「…わかった」