「萌え4コマ」歴史・現状・展望
月の終わりに、萌え4コマの歴史・現状の調査結果と、展望について妄想したものを書いてみた。しかしつらつらと書いていたら、妙に長くて真面目くさくてまとまりがなくて読みにくいものになってしまった。読まれる方はその点を覚悟して下さい。
ここではまず「萌え4コマ」という言葉を無定義のまま用いる。最後の方でその定義について考察し、さらに今後の展望を述べる。出版社は《》、雑誌は『』、作品は「」、作者は()で囲むことがある。参考文献は最後にリストアップした。これらのサイトの皆さまにお礼を申し上げる。
■原点 - 「あずまんが大王」
萌え4コマの歴史は、1999年から2002年にかけて『
電撃大王』《
メディアワークス》で連載されていた「
あずまんが大王」(
あずまきよひこ)までさかのぼることができそうだ。女子高生たちのゆるい日常を描いたこの作品は、単行本全4巻だけでなく、アニメ化などの各種メディアミックスがされた
*1。
■開拓者 - 『まんがタイムきらら』
4コマ誌に限って見れば、2002年5月17日に
芳文社から創刊された『
まんがタイムきらら』が原点だろう
*2。この雑誌では「
トリコロ」(
海藍)が大ヒットとなり、単行本2冊だけでなく、関連商品としてプレミアムファンブック、ドラマCDが出された。同人の世界でも『トリコロ』を始めとする『きらら』作品のパロディが出されたり、
きらきら★とりころ〜るなどのイベントが開かれるなど、『トリコロ』は4コマ界に新たな風を生み出した作品であると言えよう。芳文社は2003年1月18日には『
まんがタイムきららキャラット』を、2004年5月24日には『
まんがタイムきららMAX』を創刊し、萌え4コマ界の開拓者としての地位を確立する。
最近では他誌の看板作家を積極的に呼ぶなどと、さらなる読者獲得に余念がない。しかしその一方で、『きらら』本誌で「トリコロ」の休載が続いたり、『キャラット』が大リニューアルの様子を見せたり、『MAX』の一部の非4コマ作品が不評だったりと、芳しくない一面も見られる。
■高品質 - 『まんがライフMOMO』
そんな『きらら』を追う形で、
竹書房が2003年6月28日に『
まんがライフMOMO』を創刊。その看板作品「
せんせいのお時間」(
ももせたまみ)はアニメ化もされた
*3。『MOMO』は既に萌え4コマ誌ではないとの声もあるが、ももせ氏を始めとする新鋭の4コマ作家を集めて作られたこの雑誌のクオリティは高く、2005年6月28日発売号で通巻第25号、ちょうど2周年を迎えた。今年4月から9月にかけては単行本が毎月2冊ずつ出るなど、編集側の力の入れぶりもうかがえる。
■乱立 - 2004年
そして2004年。この年は萌え4コマ誌が乱立した年であった。先の『まんがタイムきららMAX』に始まり、7月9日に『
もえよん』《
双葉社》が、23日に『
COMICぎゅっと!』《
平和出版》が創刊。12月16日には『
コミックメガミマガジン』《
学習研究社》が創刊、21日には『
まんが学園4年生』《
宙出版》の創刊準備号が出るなど、まさに萌え4コマバブルの年だったと言えよう。
■淘汰 - 2005年
しかしそれにも陰りが見られる。後発4誌のうち『COMICぎゅっと!』は2004年12月9日発売の第3号を最後に休刊。『もえよん』も2005年7月9日発売号で休刊予定
*4。『コミックメガミマガジン』も2005年3月29日発売の第2号を最後に音沙汰がなく、『まんが学園4年生』も今春創刊予定だったが創刊準備号以降全く告知なし。後者2誌は今夏には発行されるようだが、それもいささか怪しい。
これらの雑誌が休刊、またはそれに近い状況に追いやられている理由はいろいろ想像できる。編集の力量と覚悟が足りなかった、出版社に体力がなかった、編集と作家の間で衝突があった、出版社が見切り発車で4コマ企画を通した、など。しかしどれも想像の域を出ない
*5。
■発掘
だが、これらの雑誌が有力な新人と良作を発掘したことは、4コマ業界全体からすれば評価できることだろう。これには『COMICぎゅっと!』で連載されていた「GA」(きゆづきさとこ)、「火星ロボ大決戦!」(
なかま亜咲)、『もえよん』で連載中の「ぽてまよ」(
御形屋はるか)、「男爵校長」(OYSTER
*6)などがあげられるだろう。前者2作品は現在『まんがタイムきららキャラット』で連載中である。御形屋氏も同誌で「ぼくの魔法使い」を連載中であり、OYSTER氏は『まんがタイムきらら』2005年5月号に「ナルハヤでお願い!」がゲスト掲載された。
■萌え4コマ誌以外からも
一方で、4コマ誌以外から良質な萌え4コマが出現しているのも注目だろう。『
コミックブレイド』《
マッグガーデン》の「
スケッチブック」(小箱とたん)、『
コンプティーク』《
角川書店》の「
らき☆すた」(
美水かがみ)、『
花とゆめ』《
白泉社》の「
もうすこしがんばりましょう」(山口舞子)、『
ヤングアニマル』『
ヤングアニマル嵐』《白泉社》の「
まじかるストロベリィ」(まつもと剛志)などがあげられるか。微妙にベクトルが違うものの、個人的には『
ヤングガンガン』《
SQUARE ENIX》の「どきどきパペット」(
浦地コナツ)にも注目している。
普通のストーリー系漫画ばかりが掲載される雑誌の中にある4コマ漫画は、ストーリー系漫画を好む読者たちの目で厳しく評価されるのだろう。その中で生き残り、単行本も出される作品
*7なのだから、良作なのも頷ける。
■道具としての4コマ漫画
また最近では、ゲームの宣伝に4コマ漫画が使われたり、Webで4コマ漫画を連載する同人作家も多いように感じられる。宣伝4コマでは
スカッとゴルフ パンヤ、
シールオンライン、
スクなび!などが挙げられるか。Web4コマについては数が多すぎるのでここではあげないが、この文章を読んでいる方々なら、お気に入りの作家の一人や二人いるのではないか。
宣伝を行ったり萌えを発信する際に、絵だけだと物足りないので、手軽かつ有効なツールとして4コマ漫画が使われているのではないかと考える。
■「萌え4コマ」
さて、「萌え4コマ」を未定義のまま書いてきたが、以下ではこの言葉に触れ、そこから将来の展望を述べる。
Yahoo!辞書、
goo辞書、
はてなダイアリーにはこの言葉の説明がある。これらをまとめると「萌え4コマ」の定義(としてしまってよいかには疑問が残るが)は、(1)萌え要素をもった女の子(猫耳、制服、巫女、魔法使いなど)が登場し、(2)多くの場合、主人公はボケ役であり、(3)オチは必ずしも期待されないような4コマ漫画のことを指すようだ。注目すべきは(3)であり、ここから萌え4コマは従来の4コマ漫画の起承転結に沿わない場合もあると言える。
■成功の根本の理由は
(1)の萌え要素については個人の嗜好が入ってくるので、何が「萌え」かは一概には言えない。しかし(3)についてはそうは思わない。確かに何が「面白い」かも個人の嗜好によるが、その基礎である起承転結に沿わない4コマ漫画は、極端に言ってしまえば、相互の繋がりが弱く(特に1・2・3コマ目と4コマ目)、ただ枠に囲まれた4つの絵(とセリフ)の集合である。そのような作品は絵を見て萌えるかもしれないが、果たして読んで面白いと言えるだろうか。私はそうは思わない。逆にそのつまらなさに、萌えも半減してしまうとさえ思う。
むしろ萌え4コマとして成功した作品は、例外なく4コマ漫画として面白く読める作品である。面白ければそれが確固たる基盤となり、上に乗せられた萌えが生きてくるのだと思う。このことから、たとえ萌え4コマであれど、起承転結をおろそかにすることは致命的であると考える。
■目指すべきは「萌え4コマ漫画」
以上から、目指すべきは萌え4コマではなく、そのサブセット「萌え4コマ
漫画」であると結論付ける。これは萌え4コマの定義(3)を、(3')起承転結に沿って描かれ、4コマ目でちゃんとオチがつけられた4コマ漫画、としたものである。
ここでは「誰が」「どのように」萌え4コマ漫画を目指すかは書かない。というより、私自身「目指す」という言葉を具体的に定義できないので、書けないと言った方が正しい。しかし、読み手・書き手・編集者の全てが何らかの形で萌え4コマ漫画を目指したとき、「あずまんが大王」「トリコロ」に続く新たな星が生まれることは間違いないだろう。
【注記】
*1 : 『きらら』以前にも芳文社は『まんがタイムポップ』『まんがタイムナチュラル』という雑誌を出版していた。しかし『ポップ』は『まんがタイムジャンボ』に吸収されたような形となり、『ナチュラル』もOL向けだったとの説があるため、ここでは『きらら』を萌え4コマ誌の原点とした。
*2 : アニメ版「あずまんが大王」は、原作から入った人間には不評だったようだが、私はその辺りの事情に詳しくない。
*3 : アニメ版「せんせいのお時間」の評判についても、私は詳しくない。
*4 : 『もえよん』休刊後も、いくつかの作品については『
まんがタウンオリジナル』『
コミックハイ!』に移転して連載を続けるようである。しかしどの作品が移転するかは、2005年6月末現在、不明である。
*5 : ただし『コミックメガミマガジン』について言えば、第1号で掲載されたが第2号で掲載されなかった作家の日記を見る限りでは、実際に編集とのいざこざがあったことがうかがえる。
*6 : OYSTER氏の「O」は、正確には「ダイエレシス付きO」(Oの上に横並びの点2つ)である。
*7 : ただし「どきどきパペット」については、2005年6月末日現在、まだ単行本は出ていない。
【参考文献】
・
最後通牒・半分版
・
4コマ漫画 - Wikipedia
・
萌え系4コマ Topics - まんが王倶楽部
・
4コマまんが関連 - gori.sh's
・
4コマが好きっ! - くろだ
・
CG定点観測
Posted by sweetpotato at 02:14
http://blog.livedoor.jp/sweetpotato/archives/26580127.html うわ、力作だなぁ。私はいしいひさいちで4コマにハマって秋月りすの出現に衝撃を受けた4コマ読みであるので「4コマ」から「萌え4コマ」も読むようになりました。もう一方「萌え」から「萌え4コマ」というルート
「萌え4コマ」歴史・現状・展望(4コマ漫画読みのblogより)【dominoの編集後記】at 2005年07月01日 00:00
あずまんが大王ときららの間に
「4コマモンスター ちびどら」という
ミッシングリンク(ていうのか?)もあります
そのラインナップは以下の通りです
http://picnic.to/~gogowest/mailing/publish/msg01929.html
当時、4コマ漫画ファンを自称していた
あかほりさとる仕切りの本だったと記憶しています
内容は……4コマ誌としても萌え誌としても中途半端でした(私感ですが)
きらら創刊当初にあった否定的な雰囲気に
このちびどらの失敗(といっていいでしょう)があったといっても
いいと思います
まあ、知っていた省かれたのかもしれませんが
一応、こういうものもあったよということで
はじめまして(?)。
“オリジナル”萌え4コマの源流が「あずまんが大王」であることに異論は無いのですが、パロディも含めた「萌え4コマ」に定義を広げるとギャルゲーアンソロジーの隆盛が無視できないんじゃないかと。
たぶん1999年に出た「ToHeart 4コマKINGS」(スタジオDNA)あたりがエポックだったような…。それまでもドラクエ4コマから続くゲーパロアンソロジーの歴史はあったんですが、ギャルゲーの商業誌パロはほとんど出てなかったんですよね。それが同人界で一大ジャンルを築いていた葉鍵系の作品が家庭用に移植されだしたのをきっかけに、↑が出て以降はギャルゲーアンソロジーが商業ゲーパロでもメインに取って代わりました。それで2000〜2002年あたりはかなりの点数が出たんですが、その周辺から現れて萌え系4コマ誌や一般漫画誌に活動の場を移していった作家も多いです。
長くなっちゃったので続きです。
「あずまんが大王」は“オリジナルでも売れる”という流れを作った点は大きかったと思いますが、他作家にも影響が見られるほどのヒット作になったのは連載も後期の頃でしたし、萌え系4コマ誌が現在まで至る大きな流れで考えるとギャルゲーアンソロジーも重要な要素だったんじゃないか、というのが私の個人的な見解です。長々とスミマセン(^^;。
>KOWさん
私も「きらら」創刊当時には「ちびどら」の失敗が頭をよぎりましたよ。(w
dominoさん、KOWさん、おろしさん、トラバorコメントありがとうございます。
KOWさん:
『4コマモンスターちびどら』については、私は全く知りませんでした。貴重な情報ありがとうございます。
2001年8月発行ということは、『きらら』が創刊される前の年ですね。
月刊ドラゴンジュニア9月号増刊号らしいですが、巻次が振られていれば
国会図書館にあるかもしれませんね。機会があったら探してみます。
おろしさん:
ギャルゲーアンソロジーの隆盛が無視できないというのは、なるほど確かに、と思いました。
自分はアンソロを読まない人間なので全く頭にありませんでした。補足ありがとうございます。
となると、そのようなアンソロ作家が一般誌や萌え4コマ誌に移っただけでなく、
彼ら/彼女らのファンも一緒に、新たな連載誌に移ったと思われます。
(続く)
dominoさん:
>もう一方「萌え」から「萌え4コマ」というルートもあるんでしょうね。
dominoさんが述べたこのような4コマ読みが、
おろしさんへのコメントで挙げたような4コマ読み手(の一部)なのでしょう。
ちなみに、自分はギャグマンガが好きで、そこから4コマに入った人間です。
ハゲ丸くん→ドラクエ→ガンガン→あずまんが→どきどき姉妹ライフ→MOMO・きららという遍歴です。
>道具としての4コマ漫画
「まほらば」の“作中に萌え4コマを挿入する手法”についても
ここで触れてもいいかな、と思ったりします。
悠々さん、コメントありがとうございます。
作中に萌え4コマを挿入する手法については、私は「道具」という言葉を使うのは行き過ぎかなと思います。
もちろん、「手法」も「道具」も、「目的を達成するために用いる技法もしくは物」であることは共通しています。
しかし、私が上の記事で述べたゲームなどの4コマについては、「漫画ではないもの」を伝えたいために4コマ漫画を使っていますが、
まほらばでは「漫画」を伝えたいために4コマ漫画を使っていると思います。
私は、これが「道具」と「手法」の違いと定義づけています。
まほらばの場合、「梢はこうして、桃乃はああして、朝見は…」というように、複数の人間が同じような行動をとるような場面で4コマが使われることが多いように思います。
これにより漫画のテンポが変わり、読み手をダレさせない効果があると思います。
はじめまして。▼ このエントリーで展開されている内容は,マンガ評論家の伊藤剛さんによる分析 「大阪は「ぼのぼの」やねん。――『あずまんが大王』から見た萌え、四コマ、マンガの現在」(『ユリイカ』2005年2月号(ISBN:4791701305)所収)と,かなりの部分で重なっているように見受けられます。有益な考察だと思いますので,参照されることをお薦めいたします。
おおいしげんさん、コメントありがとうございます。
私の大学の図書館の雑誌コーナーには『ユリイカ』のバックナンバーがあったはずなので探してみます。
貴重な情報ありがとうございます。
一番初めはドラクエ4コマ、ファミコン4コママンガ王国では??
ケインズさん、コメントありがとうございます。
確かに「パロディ4コマの」一番初めは、ドラクエ4コマやファミコン4コママンガ王国にあるでしょう。
しかし「萌え4コマの」一番初めは、ドラクエ4コマではなくギャルゲーアンソロジーだと思います。
ドラクエ4コマは現在のように萌えを最全面に押し出したものではなかったと思いますし、
ドラクエ以外で扱われるゲームも、ギャルゲーなどの萌えるゲームは少なかったと思います。
おろしさんのコメントにもあるとおり、4コマが「萌え4コマ」として意識され出したのは、ギャルゲーアンソロジーが隆盛してきた頃だと思います。
「あずまんが大王」より「せんせいのお時間」の方が連載は先です。
もっというなら、「ももいろシスターズ」の方が古く、
キャラクターの名前からして、これこそ「萌え4コマ」の元祖でしょう。
98年にはアニメ化されてます。
あと、「あずまんが大王」と同じ時期に連載開始の「出たとこファンタジー」も萌え漫画といえるのではないでしょうか?
通りすがりさん、コメントありがとうございます。
「ももシス」を萌え4コマの原点とみなす…、確かにそうかも。ちょっと混乱してきました。
そうなると、原点をあるひとつの作品に定めるのは難しいとも思えてきます。
むしろ、複数の作品が萌え4コマの可能性を開き、そして現在に至る、という考えの方が柔軟な気がします。
その意味では「ももシス」も「あずまんが」も、どちらも萌え4コマ可能性を開いた作品と言えるでしょう。
樹るう氏の作品「出たとこファンタジー」についても、萌え4コマと言えるかもしれません。私も全ての萌え4コマ作品を列挙できるわけではないので、作品の指摘漏れがありますが、その点はご勘弁ください。
90年から別冊少女コミックに連載されていた「×-ペケ-」(著:新井理絵)の存在は、以後の4コマに大きな影響を与えていると思います。
従来の「いかにも4コマ漫画」な画風ではなく、少女漫画チックなタッチで4コマギャグを描くという作風は(当時としては)衝撃的でした。多数のキャラが頻繁に入れ替わるため明確な主人公は存在しませんが、充分に定義を満たす(?)話が各所に見受けられます。お暇な際にでもチェックしてみては如何でしょうか?
※途中から作者さん自身が「壊れて」きていた様子ですので、ちとアレな内容になっていますが(^^;
名無しさん、情報ありがとうございます。
見つけたら読んでみようと思います。