2005年08月28日

結局「萌え4コマ」とは何だったのか

(追記:8/29 1:56)

これまでに二度考察してきた萌え4コマ論ですが、今回は「萌え4コマとは何だったのか」という問いに対して一定の結論を与えて、ひとつの区切りをつけたいと思います。

今回は萌え4コマ誌編集側のコメントを元に考察し、「萌え4コマ」の特性(定義にあらず)を与えました。そして最終的には、あなたが萌え4コマと思うものが萌え4コマである、という単純かつ当然の結論に行き着きました。
きっかけは、8月27日に発売した『まんがタイムきらら』で連載中の作品の単行本「かわいいや」(竹本泉)の後書きです。三笠どら氏のブログには、この後書きが書かれています。
今度また 新しい雑誌を 立ち上げようと 思って――
いえ なんだか まんがタイムって 毎年読者層の 平均年齢が 一歳ずつ 上がっていっていてー
ちょっと 読者の年齢層が 下の雑誌を 作りたいなーと思って
で 即売会とか 同人誌系の 作家の人を 集めてですね
ここから分かることは、萌え4コマ誌と思われていた『きらら』は、若者をその読者層として想定することから始まった雑誌であり、決して萌えを意識することからスタートした雑誌ではない、ということです。さらに言えば、萌えは若者を対象とした結果として取り入れられたに過ぎないということです。

『きらら』の成功の要因はここにあると思われます。つまり、読者層の確固たる想定に基づいた、萌えの4コマへの導入です。さらに言うならば、初期の『きらら』における、既存の『まんがタイム』系雑誌からの作者の起用による高い質の漫画の提供も忘れてはなりません。逆に言えば、『COMICぎゅっと!』や『もえよん』といった休刊に追い込まれてしまった萌え4コマ誌は、萌えばかりが先行してしまい、対象とする読者層があいまいで、かつ掲載される漫画の質が省みられないまま作られてしまった雑誌だったのではないでしょうか。

しかし若者を対象とした『きらら』は、なぜ萌えを導入したのでしょう。これについてはあくまで推測の域を出ませんが、編集部も「若者のうち、特に漫画を買ってくれそうなのはオタクだ→オタクの間では萌えが流行している→じゃあ萌えを導入して雑誌を作ろう」という単純かつ漠然とした思考の流れしか無かったのではないでしょうか。ただいずれにしよ、『きらら』がある程度の成功を収めたことは事実です。

では結局、「萌え4コマ」とは何なのでしょうか。この問いに対して、私はdouble-AX氏と三笠どら氏のそれぞれの言葉と考察を借りて結論づけようと思います。

double-AX氏は、最近の4コマ漫画について、4コマ同士の横のつながりに注目した調査を行い、連載内で一つの話を作るタイプが多いという結果を示されています。そして、ライトノベルの定義に基づいて「ライトコミック」という言葉を定義し、「萌え4コマ」は「ライトコミック」であると考察されています。
☆萌え系4コマ漫画は”ライトコミック”である?!
 ライトコミック
 〔(和製) light+comics〕
 10 代の若者を主な読者層に想定した気軽に読める漫画の総称。
 複数4コマの使用やアニメ-タッチの絵などが特徴。
一方で三笠氏は、上で挙げた「かわいいや」後書きと、『きらら』創刊直前の海藍氏と芳文社編集部のやりとりとを元に、編集部側の萌え4コマの定義を述べられています。
萌え4コマとは「若者向けに同人誌系の作家の人を集め、アニメとかゲーム好きな人たち(特に男性)が大好きっぽい可愛い女の子をメインに出した4コマ漫画」である。
私はこれらの定義を融合して修正を加え、「萌え4コマ」の特性を以下のように与えたいと思います。

【萌え4コマ】
若者を主な読者層に想定した4コマ漫画。複数4コマの使用によるエピソードの描写、アニメタッチの絵の使用、萌え要素を持ったキャラクターの登場などが特徴。


若者(特に男性、さらに言えばオタク)を読者層に想定しているのは、彼らが「萌え」というものを感覚的に理解しているからです。複数4コマの使用がキャラクターのエピソードを描く手法として効果的であることは、伊藤剛氏が「大阪は「ぼのぼの」やねん。」(ユリイカ2005年2月号)の中で示されています。アニメタッチの絵や萌え要素は、読者を効率的に萌えさせるための手法です。

これらのような手法を用いてキャラクターを描き、最終的には読者を萌えさせる4コマ漫画、それが「萌え4コマ」であると結論づけたいと思います。

ここで「定義」ではなく「特性」としたのは、どんなキャラ(あるいは萌え要素)に萌えるかが人によって異なる以上、万人に共通した萌え4コマの基準=定義を与えることはできないからです。

したがって、どの作品が萌え4コマであり、どの作品が萌え4コマでないかという論も、ほとんど意味を成さなくなります。「あずまんが大王」のように萌え要素がふんだんに含まれた*14コマ漫画でも、「らいか・デイズ」のように一見萌え要素が含まれていなさそうに見える*24コマ漫画でも、読者がその作品のキャラに萌えるのであれば、それは萌え4コマです*3

結局、あなたが萌え4コマと思うものが萌え4コマである、という単純かつ当然の結論に至るまでに、回り道の回り道を長々として難しく考えすぎたということでした。しかし、やはりこの単純かつ当然な結論が、やはり本質なのではないかと思いました。

(追記:8/29 1:56)

以下、今回の考察の言い訳です。

結局、全ての評論や考察は自分が知っている範囲、経験した範囲でしか語ることができないので、多くのことを語りたいのなら多くのことを知り、経験していなければなりません。

今回再三展開した萌え4コマ論ではありますが、自分には4コマ史に関する知識が不足しているがために、4コマ史に詳しい方々には「的外れな論だ」と受け止められてしまっているなあと感じています。

知識はどうにでもなります。過去の作品を読み、文献資料を調べればいいのですから。しかし問題は経験です。経験は知識よりも強力に論の正当性を支えます。数々の名作4コマを読んだ経験を、自分が生きた歴史の中に織り込んでおられる方々が本当にうらやましいです。

そういうわけなので、あとは他力本願。4コマ史と萌えの両者に詳しい方々、是非ともより深い高い萌え4コマ論を語ってください。私ではこれが限界です。

願わくばこの考察が、さらなる萌え4コマ論の叩き台とならんことを。

*1 : 自分が勝手にそう思っているだけなので、異論や反論があっても生温かく見過ごして下さい。
*2 : *1に同じ。
*3 : ただここで、萌える萌えないという基準と、面白いつまらないという基準が全くの別物であるということだけは誤解しないでいただきたいと思います。

【関連記事】
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http://blog.livedoor.jp/sweetpotato/archives/30765705.html 「萌え4コマ」論、一つの結論。これからも「萌え4コマ」続いていくといえるので、今後の動きも楽しみです。
結局「萌え4コマ」とは何だったのか(4コマ漫画読みのblogより)【dominoの編集後記】at 2005年08月28日 08:30
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