カテゴリ: カナダ横断鉄道の旅

この旅行記は、2006年に乗った「カナダ横断鉄道」の想い出を、2020年8月の
時点で、20回に分けて書いてきた。

最終回まで数回を残すだけとなった時、Radio Canada International のニュースレター
は、カナダ・ブリティッシュコロンビア州で大きな山火事が発生したことを伝えてきた
ので、ビックリした。

ブリティッシュコロンビア州にあり、カナダ横断鉄道の終着駅があるバンクーバー
の町に火は迫っていないだろうか、横断鉄道は正常に運行されているのだろうかと
気にしながら記事を読んでいくと、山火事が発生した地点は、われわれの乗車した
列車が通ってきた「カムループス」という駅の南方に位置する山岳地帯であること
が分かった。
https://www.rcinet.ca/en/2020/08/21/firefighters-face-new-challenges-in-battle-to-control-b-c-blazes/

今から14年前、横断列車は、カナダ東部の町トロントを出発した後、西へ西へと向かい、
ウィニペッグ、エドモントン、ジャスパーを経て、カムループスには3日目の深夜3時頃に
到着し、1時間ほど停車していたと思うが、もしこれが日中だったら、車窓からは、今回
山火事に見舞われた山々が見えていたかも知れない。緑に映える姿を望むことができていた
かも知れない。今は、その緑も焼けてしまい、黒くなってしまったかも知れないと思うと、
悲しい気持ちになる。あと半日で、終点バンクーバーに到着するという地点である。
0001 山火事地図_page-0001C
RCIの伝えるところによれば、山火事の起きた地域は57年ぶりの猛暑を記録したことに
加え、地上からの消火活動はゴツゴツした岩と急斜面に阻まれて困難を極めているという。

このニュースを読んでから数日後、この山火事は消防隊の懸命の消火活動によって鎮火に
向かっているものの、なお予断を許さない状況だと報じられた。
https://www.rcinet.ca/en/2020/08/24/wildfire-near-penticton-b-c-appears-to-ease-but-officials-remain-cautious/

一日も早く鎮火することを願うばかりである。

◆ 2006年8月の「カナダ横断鉄道の旅」は、今回で終了です。
  最後までご覧くださった皆さん、そして、沢山の Like ボタン、
  拍手ボタンを押してくださった皆さん、有難うございました。

大陸横断鉄道の終着駅、バンクーバーに到着するのは大幅に遅れるのではないかと
予想していたが、実際は、それほどでもなかったようだ。途中でスピードを上げ、
遅れを挽回したのだろうと思われた。あるいは対向列車との待ち合わせ駅を移動して
調整したのかも知れない。

午前9時半が過ぎたころ、バンクーバー郊外に住宅が建ち並ぶ風景が目に入ってきた。
だんだんと町の中心部に近づくにつれて、フレーザー川に架かる鉄橋が見えてきた。
このまま順調に走れば、10時過ぎにはバンクーバーに到着するものと思われ、臨時の
ランチはサービスされそうもない。
IMGP0129 (2)
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2006年8月15日、午前10時10分、カナダ大陸横断鉄道「カナディアン号」は
無事にバンクーバー駅(Pacific Central Station)に到着した。定刻より、2時間20分
の遅れである。
カナダ東部のトロントから4,466km、3泊4日の夢のような旅は終わった。
スーツケースを牽いて、長いプラットホームを歩き、駅舎の正面ホールに着くと、天井
から吊り下げられている大きなクラシック時計が目に入った。
駅舎は1919年に完成したということで、内装も重厚な感じがする。
IMGP0146
駅舎の外に出て、振り向くと、改めて駅舎の威容に驚いた。
駅舎の全体像はカメラに納まらないので、Googleマップから引用させてもらった。
0001 バンクーバー駅-B

われわれを担当している乗務員のヴェロニクさんが、「バンクーバーに近づいて
きましたよ」と案内に来た。乗務員は途中の駅で交代する場合が多いらしいが、
彼女は3泊4日の長時間を勤め通したことになる。

記念の「乗車証明書」を作成してほしいとお願いすると、快く応じて、間もなく
届けてくれた。20×16cmの大きさで、われわれの名前、乗務員の名前も記入
された証明書である。鉄道旅の良い想い出となる。
004 VIA乗車証明書
それにしても、楽しい旅だった。
美味しい料理とワインとビール、美しいカナディアンロッキー、いろいろな人たち
との出会い、忘れ難い「カナダ横断鉄道」3泊4日の旅であった。

そんな想いに耽っていたが、「はっ!」と、あることが気になり出した。
この列車は、タイムテーブルよりも数時間遅れで走っているが、バンクーバーには
いったい何時に到着するのだろうか。もし、到着がお昼過ぎになるならば、臨時の
ランチは提供されるのだろうか。朝食が済んだばかりなのに、そんな欲張りな想いが
よぎった。それも、良い想い出となるのだが…。

(注:これは2006年8月の「カナダ横断鉄道の旅」です)

「3泊4日カナダ横断鉄道の旅」も、遂に最終日の朝を迎えた。
6時半頃に目を覚まし、展望車に向かった。カナダの大自然の見納めである。

7時30分。朝食の時間である。
タイムテーブルによれば、この時刻は、間もなくバンクーバーに到着する時刻
である。かなりの遅れが発生している模様だ。

再び、香港生まれの若夫婦と子供の家族連れと相席になった。
われわれは、コンチネンタルブレックファストを頼んだ。
今回の鉄道旅で最後となる食事は、いろいろなことを想い出しながら、ゆっくりと
食べた。彼らが「食事が済んだら、あなたの座席を訪ねても良いか」というので、
「もちろん」と答えて、座席の番号をメモ書きして渡した。

横断鉄道の乗客は、われわれのようなシニア世代の人が多いこともあって、
この小さな男の子は、レストランでも、サロンカーでも、展望車でも、
車内ではどこへ行っても、乗客から大もてである。
われわれは、帰国後も、車内で撮った写真を交換するなど、文通を続けていたが、
いつしか、それも途絶えてしまった。残念である。
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(注:これは2006年8月の「カナダ横断鉄道の旅」です)

3日目の夕食は、寝台列車で通路を挟み隣りの席となっているトム夫妻と同席
することになった。

私は、初日の夕食と同じバイソンのステーキ、連れ合いは鯛のローストを頼んだ。
これにサラダ、クラムチャウダー、アップルパイ、コーヒーと言った具合である。
グラスワインをもらって、乾杯した。

トム夫妻とは、座席では、ときどき言葉を交わしていたが、お互いに立ち入った
ことを話すことはなかった。しかし、この時の夕食の席は、横断列車では最後の
ものとなったこともあり、さまざまな話題が飛び出し、楽しいひと時を過ごすこと
が出来た。
トムは、物静かな感じで、自分の席に座っている時も、サロンカーでお茶を飲む時も、
いつも一人で本を読んていたので、彼は大学教授かなと想像していたが、実はお医者
さんで、70歳だと話してくれた。われわれより10歳も上だが、その割には若く
見えた。

食事が済んだ頃、車内アナウンスがあり、われわれは早口のアナウンスで理解だきな
かったが、彼はもちろん理解できていて、「間もなく滝が見えてくるよ」とゆっくりと
丁寧に教えてくれた。

やがて、横断列車はスピードを落とし、ゆっくりと走るようになってきた。
車窓に大きな滝が見えてきた。三角形の頂点・滝口から流れ落ちる水量は相当なもので、
それが左右に数本のスジとなって分かれ、滝壺に落ちていく。水しぶきが車窓を覆う。
その名も「ピラミッド・フォールズ」と言うのだそうだ。
乗客は総立ちとなって、窓から滝を眺めている。
ピラミッド・フォールズを通過したのは夕刻だったため、レストランの照明がガラス窓に
反射してしまったのが、残念である。
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0001 ピラミッドB
(注:これは2006年8月の「カナダ横断鉄道の旅」です)

ジャスパーを発車した横断鉄道の列車は、ロッキー山脈の懐を縫うように走って
いく。最後尾車両のサロンカーに行って、走ってきた線路を眺めていると、線路
が少しカーブしながら直線コースに入り、遥か向こうに山々が見え始めた。
思わず「さよなら」と言いたくなるような風景である。
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間もなく、サロンカーでは、ウエルカムシャンパンパーティが始まった。
ジャスパーから乗ってきた客へのサービスなのであろう。ジャスパーで何人
くらいの乗客が乗り降りしたかわからないが、われわれが車内のレストランで
一緒した客の中にもジャスパーで降りるという夫婦がいたし、バンクーバー
からジャスパーまで観光にきて帰る客も多いらしいので、ここで乗り降りする
お客は多いのかも知れない。
われわれは、トロントで乗車した時にウエルカムシャンパンパーティを経験した
ので、ここはジャスパーで乗車した人々に席を譲ることにした。

自分の席に戻って車窓に目をやると、霧雨が降っていて、湖の遥か向こうに二重に
弧を描く、七色の虹が浮かんで見えた。
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ところが、間もなくすると、空は晴れ上がり、先ほどの湖とは別の湖の向こうの山々
の頂には少しだけ雪をかぶっているのが見えた。否、雪ではなく、岩肌が白く光って
見えたのかも知れない。
正に、ロッキー山脈を越えつつあることを実感させる光景である。
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それから暫く走ると、先ほどの湖の上流であろうか、下流であろうか、流れを見ただけ
では判別は難しいが、川が流れている、いかにもカナダらしい風景に出会った。
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そして、車窓に迫る緑の針葉樹と、一本だけ枯れ始めたのであろうか、それとも紅葉が
始まったのであろうか、赤くなった樹の向こうに連なる山々、青い空、白い雲、何とも
言えないコントラスト、息をのむような風景である。
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(注:これは2006年8月の「カナダ横断鉄道の旅」です)

旅行開始から3日目の午後4時、横断鉄道の列車はジャスパーに到着した。
午後2時15分に到着予定だったから、約2時間遅れの到着である。
1時間停車するというアナウンスがあったので、他の乗客と一緒に列車を
降りた。
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列車を降りた途端、周りの風景に圧倒されそうになった。
それまで車窓から眺めてきた風景とは全く違って、ロッキーの山々がわが身に
迫ってくるように思われた。
観光ガイドブックなどに載っている写真で知っている風景ではあるが、実際の
迫力は想像を絶する凄さである。もちろん、ここに載せてある私の下手な写真
では表現しきれない。
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駅前通りに出てみると、お土産物屋さんが並んでいたが、それほどの賑わいで
もない。この辺は、夏よりも冬の方が観光客が多いのであろうか。案外、春と
秋の自然が人々の人気を得ているのかも知れない。
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0001 バンクーバー
出発時刻が迫ってきたので、列車に乗ろうと思い、駅に戻ってくると、線路の
向こうから別の車両が近づいてくるのが見えた。ここから、増結されるらしい。
午後5時、横断列車はジャスパーの駅を出発した。
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(注:これは2006年8月の「カナダ横断鉄道の旅」です)

エドモントンを出発して1時間ほどすると、第3日目のランチの時間となった。
スタッフに案内されたテーブルには先客がいて、相席となった。
若い夫婦と1歳か2歳くらいの男の子、3人の家族旅行である。

われわれは、クラムチャウダー、サンドイッチ、サラダ、果物を頼んだ。
そして、ケーキとコーヒーである。

この家族連れとは、これが縁となって、すっかり仲良しになった。
夫婦とも香港生まれらしいが、新しい赴任先のバンクーバーに向かっている
ところで、ブリティシュコロンビア大学で研究に従事するのだという。

ランチから戻り、シャワーを浴びた。
家では、就寝前にお風呂に入るのは常であったから、昼の時間帯にシャワーを
浴びることができ、何か優雅な気分になった。

すっきり爽快になったところで、再び、展望車に上がって、車窓からの風景を
楽しむことにした。
次の停車駅ジャスパーが近づくにつれて、高い山々が目に入るようになってきた。
カナディアン・ロッキー山脈に連なる山岳地帯に入っていく感じである。
われわれの旅は夏、これが冬だったら、この山々は雪に包まれ、一層素晴らしい
風景を見ることが出来るだろうなあと思われた。
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(注:これは2006年8月の「カナダ横断鉄道の旅」です)

午前10時半、エドモントンに到着した。
30分ほど停車するというので、多くの乗客は列車を降りて、歩き出した。
列車のホームからは、遠くにエドモントンの町のビル群が見え、乗客たちは、
その風景を写真に収めている。
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列車は11時ちょうどに出発した。
最後尾車両のサロンカーに行って、コーヒーを飲むことにした。
サロンの入り口には、6つの時刻を示す「時計」が備え付けられている。
カナダ国内には、ニューファンドランド標準時、大西洋標準時、東部標準時、
中部標準時、山岳部標準時、太平洋標準時の6つの時間帯があるので、それ
ぞれの地域の時刻を示している。
ただし、われわれが乗っている横断列車は、東部標準時、中部標準時、山岳部
標準時、太平洋標準時の4つの時間帯を通過する。
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(注:これは2006年8月の「カナダ横断鉄道の旅」です)

3日目の朝は、5時半に目が覚めた。
連れ合いは既に起きて、身支度をして展望車に上り、日の出を待っていたらしい。
間もなく陽が上がるという時刻に、私を迎えに戻ってきた。私も一緒に展望車に
上がった。
先客が数人いたが、展望車はガラガラだったので、好きな席に座って、好きな角度
から様々な風景写真を撮ることが出来た。

われわれが乗った横断鉄道は、カナダ東部のトロントから西海岸のバークーバーに
向かって、西へ西へと走っていく。朝陽は進行方向とは逆の東の空に昇ってくるが、
展望車の座席は進行方向に向いているので、身体を後ろ向きにして日の出を撮ること
になる。
午前6時を過ぎたころ、太陽が昇り始めた。素晴らしい眺めである。
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目を進行方向に移すと、列車の屋根の向こうに霧が立ち込めているのが見えてきた。
雲海というほどではないが、幻想的な風景である。
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その霧の中を通り抜けると、左右の窓越しには山合を川が流れていて、川のほとり
には霧が発生して、雲のように浮かんでいるのが見えてきた。
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朝食の予約時刻を6時半で申し込んでいたので、一旦、階下に降りて、食堂車に
向かった。第1日目のランチの時に同席した老夫婦と、再び、同じテーブルで
出会った。彼らは、次の停車駅エドモントンで降りて、その先は、バスに乗って
山越えの旅行が始まるのだという。
私は、ソーセージ、スクランブルエッグ、ハッシュドポテトを、連れ合いは、パン
ケーキ、ソーセージ、サラダを、それぞれ頼んだ。

朝食から座席に戻ると、車窓からは、ハイウェーの向こうに街並みが見えるように
なってきた。
間もなく、エドモントンに到着する。
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(注:これは2006年8月の「カナダ横断鉄道の旅」です)

2日目の夕食では、ドイツのデュッセルドルフ近郊のエッセンと言う町から来た
という夫婦と同席になった。彼らも、われわれと同様に英語が苦手のようなので、
メモを交換してお互いの家族の話などをした。
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エッセンという町については、2014年にドイツを旅行した際に、事前勉強を
したお陰げで知ることになったが、この横断鉄道に乗った2006年には知識が
なく、話を繋ぐことが出来ず、今にして思えば、残念なことだった。
エッセンは、19世紀から20世紀中盤まで、炭鉱を中心とした工業都市として
栄えた町だという。

トマトスープに続いて、マスを焼いた料理と豚肉のグリルを頼んだ。もちろん、
サラダもついてくる。デザートはプリンである。
料理の写真を撮るのを忘れてしまった。と言うよりも、向かいの席に座る初対面
の人を前にして、パチパチと写真を撮るのは迷惑かも知れないし、「お上りさん」
的で、どことなく恥ずかしい想いもする。
記念に、食後のコーヒーの袋を持ち帰った。
IMG_20200810_0002-Dコーヒーを飲みながら周りを見渡していると、斜め
向かいのテーブルのお客がスタッフを呼んで、飲み
残したワインボトルを翌日の晩までキープしてくれる
ように頼んでいる。「そう言うアイデアがあったのか」
と思ったが、われわれは翌日の晩にワインをボトルで
頼んでも、飲み残した場合、その翌日にはバンクーバー
に到着してしまうので、このアイデアを真似することは出来ない。残念である。
われわれの旅は、「残念」と「失敗」の連続である。

(注:これは2006年8月の「カナダ横断鉄道の旅」です)

2日目の午後6時、ウィニペグ駅に到着した。
トロントから1943km、全行程のちょうど半分を走ってきたことになる。
0001 (4)
列車を降りて、駅の待合室に進んだが、照明が少なく、うす暗い感じである。
大勢のお客が休息のため降りてきたので、待合室はすぐに一杯になった。
そこで、われわれは駅舎の外に出て、駅前通りを散歩することにした。
外から眺めると、駅舎は昔風の堅固な建物である。
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駅の待合室に戻ってきたが、発車時刻まで少し時間があるので、売店でアイスバー
を買って食べたが、ちょっと甘過ぎる感じがする。
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この町は、カナダの国土の中部平原地帯に位置し、マニトバ州の州都である。
19世紀初頭に毛皮取引所として拓かれた町で、1881年に大陸横断鉄道が
ウィニペグまで開通した後、中部平原の穀物の集積地として発展してきたのだ
という。
発車して、間もなく、ウィニペグの街並みが見えてきたが、マニトバ州の州都
と言うだけあって、かなり大きな町のように見えた。
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(注:これは2006年8月の「カナダ横断鉄道の旅」です)

2日目のランチの時間となった。
決して食欲がなくなったわけではないが、この旅は列車に乗っているだけで、
途中駅で停車する時に、息抜きで下車して散歩することはあるものの、運動
不足は否めない。そして、3度の食事はヘビー過ぎる。

そこで、この日のランチは、「ハーフサイズ」の考えの下、サンドイッチを1個
だけ頼んで、夫婦で分けて食べた。フランスパンのサンドイッチで、サーモンと
トマトとレタスなどが挟んである。食後は、ケーキとコーヒーを頼んだ。
次の画像は、リーフレットに載っている食堂車のイメージ画像である。
0001-17_page-0001 (1)A
ランチの後は、展望車に上がって、車窓からの眺めを楽しむことにした。
前方の席が眺めは良いのだが、後方の席しか空いていなかったので、そこに
座ろうとすると、その席の近くの席に日本人と思われる青年が座っていた。
「日本の方ですか」と尋ねると、日本の電機メーカーの香港駐在員で、仕事の
関係でカナダに来たのだが、幸い時間に余裕ができたので、横断列車に乗って
終点バンクーバーに向かい、そこから香港に戻るのだと話してくれた。
3泊4日の横断鉄道に乗っているところを見ると、彼は物静かな青年だったが、
どうやら鉄道大好きの「鉄っちゃん」のように思われた。
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展望車には、ときどき食堂車のスタッフが御用聞きに上がってくる。
われわれも、コーヒーを頼んだのがキッカケで、男性スタッフと話すことになった。
「お国はどちらですか」と英語で尋ねてきたので、「日本です」と答えると、彼は
直ぐに日本語で「私の奥さんは、ゆ・き・こ、さんです」と、自分の奥さんの名前
を「さん」付けで紹介してくれた。
きっと、奥さんは日本人か日系人なのだろうと思われ、日本語での会話は長続きし
なかったが、日本語の単語は幾つか知っている感じだった。こういう仕事は、会話
能力も然ることながら、笑顔とサービス精神が最も大切で、その点では彼は素晴ら
しい能力を持っている。
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(注:これは2006年8月の「カナダ横断鉄道の旅」です)

2日目の午前10時過ぎ、Sioux Lookout 駅に到着した。
車内アナウンスを聴いていると、「スー・ルックアウト」と発音するようだ。
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時刻表では9時05分に到着することになっているから、約1時間遅れとなって
いる。トロントからここまでは1537km、全行程4466kmのうち、ほぼ
1/3を走ってきたことになる。
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他の乗客にならって、列車の外に出てみた。
北緯50度、曇っていたこともあり、寒いくらいである。
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駅の構内を出てみると、そこは「カナダの田舎町」と言った感じで、駅前には
スーパーマーケットやレストラン、映画館などもあったが、歩く人の姿は少なく、
広い道路を走る車もまばらである。
IMGPD0510
列車は、9時25分に発車予定のところ、実際は10時30分に発車した。
これから、どんどん遅れていく予感がしてきた。

(注:これは2006年8月の「カナダ横断鉄道の旅」です)

2日目の朝は、6時過ぎに目が覚めた。
列車は、やはり少しの揺れは感じたものの、身体全体をふんわりと包み込んで
くれるような、快適なベッドのお陰げで、よく眠ることが出来た。
着替えをして、洗顔を済ませ、しばし車窓見学である。穀倉地帯を走っている
ようだ。

7時半、朝食の開始である。
今度は、アメリカで農場を経営しているという老夫婦と同席することになった。
孫が10人もいるというので、驚いてしまった。われわれも、当時は孫が2人
だけだったので、この年に生まれた女の子と、前年に生まれた男の子の写真を
見せるなどして、お互いの家族の話をしているうちに、食事が運ばれてきた。

コンチネンタルブレックファストの大・中・小、フレンチトースト、オムレツの
5種類から選ぶことができ、「コンチネンタルブレックファスト」にも魅力を感じ
たが、メニューの解説を読むと食べ切れないほどの量と思われ、食べ残すのも勿体
ないので、われわれはオムレツを頼んだ。
オレンジジュースに続いて、オムレツにはハッシュドポテトが添えられ、トースト
かマフィン、そして、フルーツサラダが付いてくる。
味は最高、ボリュームも腹八分目で、満足!満足! である。
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朝食が済んで、座席に戻ると、上下のベッドが折り畳んで収納され、向かい合った
2人席に戻っていた。

(注:これは2006年8月の「カナダ横断鉄道の旅」です)

夕食を済ませて、座席に戻ると、座席はベッドメーキングされて、上段と
下段のベッドに整えられていた。
下段のベッドの上で、二人向かい合って胡坐をかき、車窓を眺めていたが、
上段のベッドもセットされているので、高さが窮屈に感じられた。
次の画像は、リーフレットに載っているイメージ画像である。
0001 VIAベッド
そこで、午後9時過ぎ、星空を眺めようと思い、展望車に上ってみたが、
日没直前で空はまだ明るく、星空とはなっていなかった。
それでも、どこまでも続く森林の向こうに沈む輝く夕陽を臨むことができ、
幸せな気分になった。記憶に残る素晴らしいサンセットである。
やがて、車窓には、薄暮の空が広がった。
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一旦、座席に戻り、シャワーを浴びた。
われわれは「個室」ではないので、共用のトイレとシャワーを使うことに
なる。シャワー室は広く、前室の着替えスペースも十分に確保されている。
湯量も豊富で、寝台列車で、こんな贅沢なシャワーを浴びることができると
は思わなかった。
次の画像も、リーフレットに載っているイメージ画像である。
0001 VIAシャワー
シャワーで汗を流し、身体が乾くのを待って、再び展望車に上って行くと、
今度はきれいな星空を見上げることができた。残念ながら、強化ガラスの展望窓
越しにカメラを向けても、素人では綺麗に写すことが出来ず、しっかりと自分の
目に焼き付けることにした。今でも、あの星空を想い出す。

しかし、その星空にも次第に雲がかかり始め、外は雨模様となり、やがて強化
ガラスの展望窓に大雨が降りかかってきた。
反対方向の鉄路の遥か向こうに一点の灯りが見えたと思ったら、徐々に近づいて
きた。長距離の貨物列車をけん引するディーゼル機関車のヘッドライトだった。
われわれの列車も、反対方向の貨物列車も、かなりのスピードで走行しているので、
貨物列車の車両数を数えることは出来なかったが、少なく見積もっても、50両を
下らなかったのではないかと思う、長い車両編成だった。1時間後くらいには、再び、
同様の貨物列車と行き交った。
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夜11時過ぎ、ベッドに入った。
高速で走る鉄路ゆえ、多少の揺れはあるものの、却って心地よいほどである。
車輪の音も聞こえてくるが、気になるほどではない。ゆりかごに乗って、
子守歌を聴いているようにも感じられる。
兎に角、ベッドの堅さが心地よく、シーツと毛布の木綿カバーが上質で
「衣擦れ」の音を感じない。こんな快適なベッドで眠るのは初めてのこと
であった。
第一日目の夜は、旅の疲れもあり、ぐっすりと寝込んでしまった。

(注:これは2006年8月の「カナダ横断鉄道の旅」です)


横断鉄道の旅は、ひたすら外の景色を眺めているだけである。
しかし、カナダの広大で、雄大な大自然の姿は見飽きることがない。
ラジオを聴こうと思っても、車内は雑音が多くて、ダメである。否、
正確に言えば、短波はダメでも、ローカルのFM局は聞こえることも
あるが、横断鉄道の車窓は、「音なし」で静かに眺めるに限ると思う。
連れ合いは、ひとりで文庫本を読んでいる。鉄路の音はするがリズミ
カルであり、鉄路が広軌で直線の部分が多いせいか、揺れは大きくない
ので、本を読んでいても、目は疲れない模様である。
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夕方の5時半、ディナーの時間である。
明るいうちに食堂車からの眺めを楽しみたいと思い、ディナーの時刻は第1回目のグループを頼んだ。入口で予約カードを渡すと、係員が席に案内してくれた。
005 VIA食事予約カード (1)-B
スープは、連れ合いは Atlantic Fish Chowder、私は Soup of the Day を、メインディッシュは、私は肉料理でアルバータ州産バイソンのステーキ、連れ合いは魚料理で赤鯛のパンフライを頼んだ。

飲み物は「ワイン」とおしゃれにいきたいところだが、旅行第1日目はスーツケースを牽いて、ホテルから駅へ、駅の待合室から列車へと動き回り、のどが渇いていたので、ビールで乾杯することにした。ブランド名は分からなかったが、おそらくカナダのビールであろう。身体全体に浸み渡って行った。


Atlantic Fish Chowder のスープは、クラムチャウダーに似たもので、様々な魚介類が入っていて、美味であった。Soup of the Day は、どのような味だったか記憶が定かでなく、記録もしていなかったが、今、写真を見ると、オニオンのようなものが入っているようだ。
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メインディッシュは、両方とも大きな皿に盛られて出てきた。見ただけで
お腹がいっぱいになりそうである。
それにしても、動物園で観た、あの巨大なバイソンの肉を、ここで食べる
ことができるなどとは、思ってもみなかったことで、貴重な食体験となった。
アルバータ州の雄大な自然の中で、良質な餌を食べて育ったバイソンの肉は
臭みがなく、また、脂肪分も少なく、とてもヘルシーな感じがする。
ローズマリーがのっていて、その香りが食欲をそそる。
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赤鯛は、スープに入っていた魚介類と同じように、カナダの東、大西洋で獲れた
ものであろうか。柑橘類を含む様々な野菜が添えてある。
日本では、鯛は焼くか煮るのが一般的と思われるが、ここではフライパンで焦げ
目を付けたものが提供される。
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バイソンも、赤鯛も、「日本人向きの味」というわけではないが、「外国料理の
大まかな味」でもなく、非常に繊細な味に調理されていて、本当に美味しかった。
デザートのブルーベリー・ショートケーキも程好い甘さで、食べ切ってしまった。
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食事代金は運賃に含まれているが、「飲み物」は別支払いである。
ビールは、大きめのグラス一杯が4.75カナダドル(約400円)である。
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(注:これは2006年8月の「カナダ横断鉄道の旅」です)

ランチから座席に戻り、車窓を眺めていると、満腹感も手伝って、眠気を覚えてきた。
座席の幅は1m以上あるので、窓側に寄りかかって足を伸ばしても、ゆったり感があり、
1時間ほどウトウトしながら昼寝をしてしまった。
連れ合いが、こっそりと寝姿を写していた。
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午後3時過ぎ、初めての停車駅 Sudbury に到着した。
正式には Sudbury Junction Station と言う。
カナダ各地を結ぶ鉄道が通る交差点になっていることから、このような名称に
なっているらしい。サドバリーは大きな町だが、駅自体は郊外にあるようで、
タイムテーブルには、「Sudbury Jct.は、サドバリーの町から10km離れた
ところにあるが、町と駅を結ぶ連絡バスはないので注意すること」と記されて
いる。

1時間ほど停車して、列車は動き出したが、わずか20分ほど走ると、次の
停車駅 Capreol に到着した。
IMGP0461
ここで30分ほど停車するという車内アナウンスが流れたからか、乗客たちは列車を
降りて、周りを散策し始めている。われわれもカメラを持って、列車の外に出てみた。
友だち同士で記念撮影をする姿は、万国共通のようだ。
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(注:これは2006年8月の「カナダ横断鉄道の旅」です)

車窓を眺めながらウトウトしていると、乗務員が昼食の希望の時間帯を尋ねて
きたので、第1回目のグループ「11時半」を予約した。

11時半前に、食堂車に行って、入口で、スタッフに予約カードを渡すと、席に
案内してくれた。テーブルは4人席で、先に座っていた夫婦連れと相席となった。
軽く会釈をして、席に着き、メニューを見た。
鉄道料金には毎回の食事料金が含まれているので、メニューには料理の価格が記載
されておらず、それを気にすることなく、好きな料理を注文することができる。

待ちに待った「横断鉄道の食事」である。
第1日目のランチは、サーモンとアスパラガスのキッシュを注文した。
先ず、スープが出てきた。
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デザートはアイスクリーム。
そして、コーヒーが出てくる。
高級レストランの食事のようで、見た目も、味も最高なのだが、大陸横断鉄道の
レストランは初めての経験で、初対面の外国人夫婦と向かい合って緊張したこと
もあり、食べ切れないほどのボリュームに感じられた。
しかし、ゆっくりと味わいながら、結局、きれいに食べ切ってしまった。
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満腹になった後、問題は「チップ」である。
向かい側に座っている夫婦に、そっと「チップは幾ら渡したら良いだろうか」と
尋ねてみた。「一人2ドルくらいかなぁ」と教えてくれたので、われわれも2人分
で4ドルをテーブルにおいて、席を離れた。他の乗客を見ていると、チップを置か
ない人も見られたが、「気は心」である。

(注:これは2006年8月の「カナダ横断鉄道の旅」です)

寝台列車の利用客は、専用の待合室に入ることができる。
地下1階にある待合室は多数の乗客で埋まっていたが、空いている席を見つけて
座り、コーヒーを飲みながら、乗車開始のアナウンスが流れるのを待った。

いよいよ、乗車開始のアナウンスが聞こえた。
乗車開始と言っても、改札口があるわけではなく、地下の待合室から地上ホームに
続く緩やかなスロープをスーツケースを曳いて上って行くと、車掌が待っていて、
一人ひとりの乗車券を点検して、乗車する車両を指差して教えてくれる。
18両編成の列車で、われわれの席は16号車の「2下」と「2上」である。

16号車の入口を入ると、両側に共用の洗面所とトイレがあり、更に進むとわれわれの
座席である。個室ではなく、日中は二人向かい合った座席、夜間は上下の寝台となり、
カーテンが閉まるようになっている。われわれの席の後ろ側に共用のシャワー室がある。
通路を挟んで、われわれの席の反対側と斜向かいが、同じように上下2段の寝台で、何れ
も夫婦連れのお客である。通路を更に奥に進むと、1人用、2人用の個室となっている。
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横断鉄道「カナディアン号」は、午前9時、定刻に発車した。
ほどなくして、女性乗務員が回ってきた。「私の名前は、ヴェロニク。よろしく」と
言って、歓迎のあいさつをした後、検札を済ませて、車内の様子やルールをいろいろ
説明してくれた。
そして、「間もなく最後尾車両の「サロンカー」でウェルカムシャンパンのサービスが
ありますよ」と誘ってくれた。

「サロンカー」に行ってみると、重厚な感じのソファが10人分ほどあり、立っている人も
含めて20人ほどがシャンパングラスを傾けながら、談笑している。
われわれも入口でシャンパンとチーズクラッカーをもらって中に入ったが、ほとんどは団体
旅行のグループと思われた。われわれは、知り合いがいるわけではなく、話が進まないので、10分間ほどいただけで、その場を離れて入口に戻り、テーブルに載っているコーヒーとドーナッツをもらって2階に上り、カフェのテーブル席に座って、夫婦だけで一息入れることにした。

ラウンジから座席に戻ると、"VIA Rail Canada" のロゴ入り袋が置いてあり、開けてみると
アメニティグッズとバスタオルが入っていた。ちょっと驚いたと言うか、「なるほど」と
思ったのは、耳栓が入っていたことである。おそらく、夜間の睡眠時に鉄路の音が気になる
人が使うのだろうと思われたが、あるいは、ロッキー山脈を越えて横断するので、標高の
高い地帯で、気圧の変化を感じたときに使うのかも知れない。
何れにしても、私は、バンクーバーに到着するまで、この耳栓を使うことはなかった。
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通路を挟んだ反対側の席にいる客も夫婦連れで、われわれよりも年上と見えたが、向こう
から先に「名前は、トムとキャッシーと言います。よろしく」と、笑顔で声を掛けてきて
くれた。0001 名前メモ外国人と初めて会った時、最初にどんな言葉を交わすか、この微妙なタイミングを捉えるのが、われわれは苦手である。名前がちょっと聞き取れなかったので聞き返すと、ご主人が紙に文字を書いてくれた。これで、正しい名前を呼び合うことができる。

彼は物静かな人で、言葉が少なく、分厚い本を手に、読書をしていることが多かった。一方、奥さんは性格が対照的のようで、時々われわれに話しかけてきて、「マサーオ! 上段のベッドにのせてあるバッグを下ろしてくれないかな。バッグの中に薬が入っているの」などと、頼みごとを言ってくるほどに、親しく接してくれた。

ある時などは、彼女が何かを尋ねてきたが、聞き取れないので聞き返すと、簡単なメモを書いてくれた。私が、風景写真をパチパチ撮り続けるのを見ていて、カメラマンだと勘違いしたのか、あるいは、単に自分の撮った写真のアルバムを沢山持っているのかと、社交辞令的に尋ねたのかも知れない。
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(注:これは2006年8月の「カナダ横断鉄道の旅」です)

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