私は、長年インドに住んでいたせいで、インド料理が食べたくなる時があって、
自分でも自己流にアレンジをして、よく作ります。
日本のカレーを作る時も、スパイスを足したりもします。
そこで良く使う、スパイスにクミン、クミンシード、コリアンダー、ガラムマサラ、マスタードシードなどがありますが、
そのほかに日本では、ウコンと呼ばれる、ターメリックを結構使います。
お酒を飲むときに飲む「ウコンの力」に入っているあれです。
日本のスーパーなどで売っている瓶入りのはすぐになくなってしまうし、
結構値段も高いので、どこかにたくさん手に入れられる所はないかな~と、
インターネットで探して見つけたのが、
東京都江戸川区西葛西(にしかさい)にある
Swagat Indian Bazaar.
(スワガット インディアン バザール)
江戸川区西葛西5-11-11 司ビル2階 (東西線西葛西駅北口から徒歩五分)
(携帯)0803123-2290
(tel/fax)03-3680-9490
インドの食材や、日用品を少し扱っているお店を見つけました。
西葛西と言えば、日本のインド人街と呼ばれ、インド人が2000人ほど住んでいて、
デイワリ(10月に行われるインドのお正月とも言われる最大のお祭り)のときには、
町中がインドのお祭りのように賑わうと聞いていました。
そんな、素敵なところに是非行ってみたいと、インド好きな主人と私は、
前からチャンスがあればと思っていました。
ターメリックを買いに行きたいとの私のリクエストに二つ返事で、主人は賛成してくれて、行ってきました。
そこにはとってもいい出会いがあったのです。
東西線西葛西駅北口を降りたら、そこにはインド人がいっぱい歩いていました・・・
と書きたかったのですが、一人もインド人どころか、インドの雰囲気を醸し出すものはなく、全く普通の街。
じゃあ、少し歩くとそんな風景が・・・ ありません。
この、食材店はどこにあるのでしょうと探したら、
東横インホテルの隣に小さいビルがあってそこの二階に看板が!
入り口には、こんな小さなポスターが貼ってありました。
横の階段を上ると、ドアにこんなポスターが・・・
恐る恐るドアを開けたら、そこは思ったより明るいお店で、小柄な
人の良さそうなインド人のおじさんが、私たちを迎えてくれました。
彼の名前は、Binesh Prasad さん。
ここのオーナーです。
ここのお店は、全くインドのお店の雰囲気そのままで私も主人も懐かしくって思わず、あちこち懐かしい懐かしいといいながら、興奮状態になっていました。
チャイの紅茶用のアッサムティ-、スパイス類が並んでいます。
値段も安い!!
もう嬉しくなって、写真も撮らせてもらいました。
これらは、ダルや、ひよこ豆などの豆類です。
マンゴーピクルスや、ナッツ類など、きれいに清潔に並べられています。
これは、スナック類。
これは、食事の前に良く出て来る、Papad(パーパドゥ)
オーブントースターで軽く焼いて簡単に食べられます。一度食べるとやみつきになるお味です。
お米です。 ここには、タイ米も売られていました。
タイ米は、インド料理によく合い、インドのバスマティライスより安いからだと思います。
サンバー(日本の味噌汁みたいなスープでちょっぴりピリ辛の野菜スープです。)
ドーサ(南インドのクレープのようなスナックで、サンバーや、ココナッツチャツネをつけていただきます。)
のインスタント食品です。
私たちが、こんな風に懐かしがっている間に、プラサッドさんがチャイを作って下さいました。
やっぱり美味しいチャイでした。
インドでは、お店に行くとこんな風に美味しいチャイや、ソフトドリンクを入れてくれるところが多く、
何も買わなくても、人懐っこくニコニコして色々しゃべりかけてきます。
大概の日本人は、こういうシチュエーションに慣れなくて、当たり障りのない会話を交わして、
買うとすぐ帰ってしまうのですが、私たちは、このひと時が大好きで、
特に私は、インドにいるときも、一人であちこち訪れて、お茶をいただきながら、
何も買わないよと言いながら、いろんな話をしたものです。
インド人は、相手のプライベートなことも遠慮なく立ち入って聞いて来たりする代わりに、
自分のことも聞いたら全部話してくれるので、なんだか初めてでもすごく仲良くなれるのです。
この時も、私たちが長年インドに住んでいたことを知ると、色々話しが弾み、
プラサッドさんが色々自分のことを話してくれました。
プラサッドさんは、4年前デリーから来て、故郷は、ガンジス河で有名なベナレスの出身。
デリー出身の友人がお店を三軒持っていて、西葛西のお店をを手伝ってほしいと頼まれて
来日したのがきっかけ。
友人は、正直で、まじめで良く働くプラサッドさんを見込んだようです。
彼は、良く働き、最初は給料もなく、食べること、寝泊まりするところだけを与えてもらい、
夜は、九時から自転車でデリバリーをしながら頑張ったそうです。
おかげで、友人のお店も、IT関係の仕事で多くのインド人が
日本に来るようになったので忙しくなりました。
彼が来た時、このお店は、オーナーである友人がお店の中で友人を呼んで食事をしたり、
お酒を飲んだりして、虫が湧いたり、汚かったのだそうです。
売り上げもいま一つだったのを、プラサッドさんが、お店を任され、綺麗にして、
日中はお店にいて、夜九時になってお店を閉めてから、自転車で重い米や、粉類など
デリバリーをして、帰ってから、自分で食事を作って食べる・・・
そして一日も休みも取らず頑張ったそうです。
そうしたら、西葛西にあるインド人がやっているお店の中で、一番の売り上げになりました。
でも、その儲けたお金をオーナーの社長が遊びに使ってしまい、無くなってしまい、お店を手放し、
インドに帰ってしまったそうです。
西葛西には、インド人が2000人も住んでいると言われていますが、
みんな IT関係のお仕事で家族を連れてきているので、インド人の奥さんたちが、
ここでインド料理を家で作るのに必要な食材を買っていたので、
みんな本当に困ってしまい、もう一度お店を開いて欲しいと
周りのインド人たちに頼まれたプラサッドさんは、
もう一度一から、前のコネの人たちに連絡を取って、作りなおしたそうです。
やはり、夜に九時になると、自転車でデリバリーも続けています。
今、このお店のオーナーは、このプラサッドさんです。
ところが、この時も数人のインド人男性が買いに来ただけで、そんなに忙しそうではなかったのです。
なぜなら、この度の地震でほとんどのインド人が故郷に帰ってしまったのだそうで、
地震前までの賑わいはなくなってしまったと言っていました。
それで、私たちがこの町を訪れても 全然インド人を見掛けなかったし、
インドらしいお店やインド料理のお店も不思議となかった訳がわかりました。
今、少しずつ、インド人も仕事があるので戻ってきていますが、
みんな単身赴任で、家族は戻ってきていないそうです。
なので、売れるものが前と変わって来たそうで、レトルト食品や、手軽に使えるスパイスのミックスしたもの、
冷凍のチャパティー、サモサ、冷凍肉、などの需要が増えたそうです。
夜遅くまで働いて帰る、IT関係に従事するインド人たちにとって、
作る時間を短縮できるものが売れるようです。
インド人は、自分の家で作るインド料理が一番好きで、男性でも自分でお弁当を作って持ってきたりします。
それは、家庭料理が、一番安全で、フレッシュで野菜がたくさんとれるからだそうです。
食べるものは違っても、全く日本人と同じ考え方で家でお母さんが作る家庭料理が一番いいらしいのです。
私たちもインドでいた時、インドのレストランで食べるより、インド人のお宅に呼ばれていただくインド料理は、
絶品で美味しく、お腹にも優しかったです。
やはりインド人も高級レストランでなければ油が古いとか、不衛生だとかあまり信用していないようです。
私たちが、外国で住んだ時、やはり日本食が食べたくなり、
日本食のお店が一軒でもあると、日本人みんながそこに行き、
醤油や、みそ、鰹節や、まず調味料を求めます。
そこが一軒あるだけで、心にも安心感が出来、
そこに行けば、日本の香りがありホッとすると言ったような存在であったりもするのですが、
プラサッドさんのお店が、まさに遠くインドから来て、
慣れない日本で暮らすインド人の家族にとって
インド料理の食材があるここは、落ち着く場所なんではないでしょうか。
私たちでさえ、懐かしさで嬉しくなって、ほのぼのとした気分になりました。
私が購入したもの。
左上から、moong dal (これはイエローダルのスナックで、食べたらやめられなくなります。) その下は、ターメリック、真ん中は、野菜カレーとチキンテイッカのスパイスミックス。 その下は、きゅうりの石鹸(インドにはこのようなハーバルな優しい石鹸が多いのです。)
右のは、ひよこ豆や、米などのスナックで、プラサッドさんからプレゼントされました。
でも、プラサッドさん自身は、もう二年もインドに帰っていなくて、
地震以降は、ちょっと心細い、淋しい気持ちでいたんだそうです。
ベナレスにいる家族とは、インターネットも繋がらない地域なので、
メールも出来ないし、たまに電話で話をするくらいで、家族に会いたいと言っていました。
そんな時、私たちが訪れて、いろんな話をして、今までこんな日本人のお客さんは、初めてだったと
とても喜んでくれました。
そして、今度来るときには、前の日に電話を入れてくれたら、準備をしておくから、
自分の家で一緒にランチを食べようと誘ってくれました。
インドでは、本当に騙されたり嫌な経験をしたこともたくさんあって、インドは二度と行きたくない!
インド人は、大嫌いだ!と言う人がたくさんいます。
私たちもそんな経験いっぱいしました。
でも、インド人同士でも同じで、インド人は信用できない人がたくさんいるそうです。
彼も、お店を任せてインドに帰るのは心配らしく、一人ですべてやっているそうです。
彼のように本当にいい人たちもたくさんいて、
今、インドにまた行っても会いたい人たちがいっぱいいます。
帰る時、プラサッドさんは、前で手を合わせて涙を浮かべて私たちを見送ってくれました。
本当に良い出会いでした。
元気で頑張ってほしいと思います。
地震前は、テレビの取材や、雑誌の取材に頼んでもないのに来てくれたんだと嬉しそうに話してくれました。
またそんな前のような活気が早く、訪れますように!