2005年12月

2005年12月23日

「生きがい」がなければ?

前回、老化は「利己的な遺伝子」の戦略だから、ジタバタしたってしょうがない。と書いたら、皆さんからいろいろな感想をいただいた。
私達の体は遺伝子の乗り物で、遺伝子にうまく操られているらしいという話も、それほど違和感はないように感じました。DNAという言葉があちこちで使われてるからなんでしょうか。

生物が何十億年前、地球に誕生して進化してきたのは、過酷な状況の中で他者と競争して生き残ってきたからであり、遺伝子の強烈な利己性がなかったら私達人間も存在していないわけです。
だから、人間も動物も子孫を残すために利己的に振る舞うことが多い。
経済界の自由競争なんていうのも、管理統制された経済よりも競争したほうが成長するからなので、ベルリンの壁が壊れたのは生物学的にも正しいと思うんです。

しかし、私達は時と場合によっては他人や他の個体に協力的に振る舞うこともある。
利己的ではなく利他的に行動するのは何故なのだろう?
野生の雉自分を犠牲にして子供を守る焼け野のキギスの母鳥。
女王の子孫のために食物を運ぶアリや蜂の一生。
集団で生活する人間社会では、譲り合い、助け合いという協力関係が常におこなわれている。

これは、利他的、協力的にしたほうが、自分が生き残っていくのに有利だと判断したとき、遺伝子が人を操ってそのように振る舞わせるのだと考えられます。

そして、愛情、友情、信頼を感じたとき、私達はこれらが遺伝子の戦略などとは全く気づかず、温かな感情として喜びを味わっているのです。
愛も恋も利己的でありながら利他的でもあるというパラドックスは、様々な悲恋物語を生んできた。
人間はいつも試行錯誤して進歩しているように思います。

さて、衣食足りて一生を過ごし、子孫を残せれば生物学的には充分なように思えるんだけれど、人間はそれで満足はしない。これが最大の問題だ。
「いったい私はなんのために生きてるのだろう」という生きがいが必要なのだ。
犬や猫が、なにか意味のある生き方、自分で納得のいく生き方をしたいなんて考えてるだろうか?

この何か良いものを作りたい、良い仕事をしたい、研究や発明、発見、音楽や文学、絵画などの芸術的創造などを一言で言うなら、「文化」ということになるのですが、この文化こそ他の動物にない人間だけの特性なのです。

文化は人間の頭脳から頭脳へとコピーされて、遺伝子のように子孫に伝えられていくものだとドーキンスは言っています。
彼は遺伝子(ジーン)に対比して、この文化を伝える遺伝子的なものをミームと名付けています。

私も何か意味のあることをしたいと思う。
ただ漫然と毎日が過ぎていくだけでは物足りない。

たとえ、小さなことでもそれに生きがいを見つけ、子供達や後世に残せるようなことをしたいなんて
のは生きがいなのか?死にがいなのか?

註―『焼け野のキギス夜の鶴』
キギスは雉のこと。子を思う親の愛情が極めて深いことのたとえ。
雉は巣を営んでいる野を焼かれると、身の危険を忘れて子を救う。
巣ごもる鶴は、霜の降りる寒い夜に子を羽でおおって暖めるという。

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syobu828 at 13:35|PermalinkComments(18)TrackBack(0) エコロジー生物学 

2005年12月16日

怠け者ほど長生きする?

生き物は細胞分裂して自己複製して生き続けるといっても、年とともに体力は弱まり老化し、寿命というものがあって最後には死を迎える。

大昔から人間は長生きや若返りの妙薬を探し続けてきた。
特に現代は高齢化社会と言われるようになって、誰でも元気で若くありたいということで、アンチエイジングという老化防止法がいろいろ宣伝されて、スポーツジムや温泉などの施設は賑わっている。
しかし、何故どんな法則で老化するのか?ということについては、学会でも諸説あって老化のメカニズムはまだはっきり判ってないのです。

ハツカネズミはずみ車のうえではげしく運動するマウス(ハツカネズミ)の寿命はたった2年位、一方、眠ってるようにゆったり動く亀の寿命は150年以上もある。
同じ生き物でどうしてこんなに違うのだろうか?
たしかに、カバや象など体格が大きく、ゆっくりしてる動物の寿命は長いようだ。
これは、生命活動速度理論と言われ、人間の直感の中に長い間信じられてきた老化理論でした。
カバ生命活動とは代謝率ということで、ハツカネズミは象よりも、動き、成長、呼吸、消化、すべてに速い、そして体温も高いというのが理由なのです。
そこで、まじめにイギリスの煙突掃除人と教授や会計士の寿命を比較調査した学者もいたのです。
しかし、他の動物と人間を比べると、人間はかなり代謝率が高いのに長生きです。
鳥類は飛ぶためにエネルギーを使いますがオウムやカラスは50年も生きます。
低温で冬眠させれば寿命を延ばせるとか、怠惰な人ほど長生きなんていう活動速度を遅くするアンチエイジングは今日では全く否定されているのです。
残念ながら。

その後、ホルモン説、タンパク質の変質説、コラーゲンが変成するというクロスリンク説、細胞の酸化というフリーラジカル説など諸説ありますが、どれも完璧に老化を説明できていないようです。

利己的な遺伝子1950年代、遺伝子のDNAが発見され、生物は遺伝子のプログラムによって作られるということが解ってきました。
そして、「利己的な遺伝子というリチャード ドーキンスの説は進化論や生物学に革命を起こしました。
ドーキンスによれば、私達の体は遺伝子の乗り物であって、利己的な遺伝子は自分自身をコピーして子孫を作り、乗り物を乗り換えて進化し、個体は死んでも遺伝子は不死身なのです。
大腸菌や酵母などの単細胞生物は自身が生殖細胞ですから老化せず不死身です。
これに対して、人や動物は多細胞生物ですから、体細胞と生殖細胞があって、
老化して死滅するのは体細胞の集まりである私達の体であり、子孫になれるのは生殖細胞なのです。
そこで私達の命を遺伝子とするならば、それは永遠であり、もし子供がいない人でも兄弟や血族の子供達に遺伝子として生き続けるのです。
命は永遠という宗教の教義は今や分子生物学によって証明されるのですね。

それでは人は何故老化するのか?
利己的遺伝子が子孫を残すために、生殖期が終わった生き物を老化させ、限られた資源や食料を子孫に残すためだと考えられます。
遺伝子が人を老化させたがってるとしたら、これは子孫に対する利他的な働きになるし、体力を弱らせ、シワを増やし、容貌を衰えさせ若い者と競争させないようにするのは遺伝子の戦略なのです。
そうだとすれば、ジタバタしてもしょうがない。
私達の老化も寿命もプログラム済みなのですから。

私のブログの先生、今生師匠は「今の瞬間、瞬間を大切に生きる。だから今生」
と自ら今生を名乗っています。

私も師匠に習って、一日一日を精一杯生きようと、急がずあわてず暮らしています。
明日に事をのばして、怠けていても長生きはできないんだから。

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syobu828 at 14:07|PermalinkComments(16)TrackBack(0) エコロジー生物学 

2005年12月08日

血液型占いの科学的根拠

話が弾んで一段落したところで、
「血液型は何型ですか?」そらそらおいでなすった血液型占い。
「はいっ、A型です。」と言えば、
「そうでしょう。真面目を絵で描いた顔をしてらっしゃるわ」
とズバリ言い当てたと言わんばかりの得意顔。
こんな時、ちょっと斜に構えて、「うん、それがAB型なんだ」なんて言えば、
「本当は個性的でご自分の世界をもってらっしゃるんですね。
何か違うと思ってましたわ。」と感心した様子。
更に、O型は包容力のある頼もしい人。
B型は世話好きで面白い人。
だいたいこんな判定が下るようようです。
ある時、女房もA型なんですと言ったら、
「ウアーッ AとA 悲劇。毎日楽しく暮らしてますか?」
今更三十数年前の決断について言う段ではないのです。

何しろ、血液型の話になると、A型は真面目で几帳面という烙印を
押されてますからどうも良い目をみないようです。
しばしば事態が込み入ってくると、「あの人はB型なんだからしょうがないわよ」
とあっさり納得してしまう女性が多いようです。

果たして、血液型で性格が判ったり、相性が良かったり悪かったりするものだろうか?
A型にも楽天家で面白い奴はいるし、こんなのは迷信か俗説と一笑に付してました。
小さな悪魔の背中の窪みところが、先日「小さな悪魔の背中の窪み」という本を見つけました。
「A型の人は読まない方がいい」という赤い帯までついてるではないか。
著者は才色兼備で人気上昇中の竹内久美子さん。
京都大学動物行動学の専門家がこの迷信俗説に挑戦する楽しみな内容です。

私達の体は60兆個もの細胞の集まりです。
血液も細胞の一種ですが、細胞膜というタンパク質と脂質の膜で内と外が仕切られてます。
この細胞膜の表面は、糖が鎖のように連なって、毛がはえているようにびっしり並んでいるのです。
血液型の違いはこの糖鎖の並び方のちょっとした違いなのです。

血液型はあらゆる臓器や組織の細胞表面や、唾液、胃液、精液等に存在し、
他者と自分を区別する「ABO式の免疫的な旗印」になってるのです。

これは、他の生物でも同じです。
微生物や細菌は、宿主である人間に見破られないようにこの旗印を付けて侵入してくるのです。
この旗印が違えば、免疫の働きで病気になりませんが、同じだと侵入を許してしまうのです。
例えば、梅毒についてはO型はかなり強く、アメリカ大陸では他よりも0型の人がかなり多いのです。
ペスト、コレラ、結核など、各病気に対して血液型によって強い弱いがあるということが学会で認められてるそうです。
血液型には、大昔からの人間と細菌との長い戦いの歴史があるのです。
そこで、A型が日本人に多いというのは、A型は病気全般に対して弱いので、
とにかく用心深く慎重で、勤勉真面目だということになり、
これが幸いして子孫を増やしてきたんだ。
と竹内女史は進化論的に説明しています。

体に病原菌が入ってきたら、白血球やマクロファージという細胞がこれを退治し、その菌の形を覚え、再びその菌が入ってきたら、すぐに退治できる抗体というものをつくる。というのが免疫の仕組みです。
そこで、敵か味方かを知るために先程のABO式の旗印が必要なのです。

もし体が皮膚という袋で覆われていなかったら、外部からの刺激に直接触れて人間は生きていけないでしょう。
体の内部を保護するバリアーとしての役割が皮膚の重要な働きです。
敏感肌、アレルギー、アトピー性という方々の肌は皮膚のバリアーが弱いようです。
その原因として、合成洗剤、石鹸、油性化粧品などの使いすぎ、
いわゆる清潔病という文明病が一因になってると危惧するのです。

この夏、京都大学でお会いした、磯辺善成先生の皮膚は心の砦を今また精読しています。

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syobu828 at 13:09|PermalinkComments(20)TrackBack(0) エコロジー生物学 

2005年12月02日

女が裏で糸を引く文化

最近の新聞やテレビのニュースを見ると、中国や韓国と日本の関係がしっくりといかないようだ。
最も近い国だし、同じアジア人なのに、いったい何が原因なんだろう。
歴史や国際問題は複雑だからとあきらめたとしても、なにか気になってイライラしていた。

先日のブロガー交流会でdancemanさんがこんな話をしてくれた。
 
 「日本人は外国人にたいして警戒しないから、韓国人は喜んで友人になる。
 韓国人にとって親友とは家族同様ということだから、
 他人の家の冷蔵庫をだまって開けてもかまわない。
 ところが普通日本人同志でもそんなことはしない。
 日本人は優しそうで本当は冷たいと韓国人は怒る。
 これは文化の違い。だから両国は合わないんじゃないの。」

日本の瀬戸際―沈没する日本 浮上する日本そして、dancemanさんは呉 善花(お そんふぁ)著 「日本の瀬戸際」という本を紹介してくれた。
著者は韓国人で日本に留学。
10年以上の滞在で、反日意識から日本文化理解へと転じたジャーナリスト。
日本人についての著書が多数ある。

呉 善花さんが日本でつかんだのは、自と他を分離しない世界だったのです。
日本人の自己主張の弱さはなにか心もとないようであるが、
それは主客の調和を生み出すためであって、
他人と仲良く生きることが幸せだという当たり前のことなのだ。
韓国にいる時は、最終的に信頼できるのは家族しかいないという感覚をもっていた。
中国人、ほとんどのアジア人に共通の感覚だといえる。
家族と他人ということで自他の区別がはっきりしている。

一方、西洋人は自立した諸個人がそれぞれのプライバシーを重んじながら、
同時に社会的な約束ごとを守るという社会契約的な考えがある。
西洋人の自己主張の強さは個人の主体と自由を守るためであり、
主客ははっきりと分離されている。

学生時代、私は外国人の家庭に半年ばかり居候をした経験がある。
庭の手入れ、洗濯、子供の世話、など家事手伝いをして、
その家から学校へ通った。
主人はアメリカ人で、奥さんはルクセンブルグ人。
時々どちらも譲らない自己主張して大激論を始める。
喧嘩になるんじゃないかと心配してると、はっきり勝者と敗者に決する。
その後は前のように仲の良い夫婦にもどる。
私は言葉が満足に話せないので、はっきり自分を主張できず、
おまかせしますというやり方をして叱責された。
今となっては愛あるお叱りだったと想う。

とは言うものの、その後ずるずると日本人の得意とする「お任せします」 
「皆様のお陰でなんとかできました」という受身の姿勢で仲良く暮らしてきている。

主体の影が濃すぎれば、全体の調和がなかなか難しくなる。

日本文化は「女が裏で糸を引いて男にやらせる文化」である。
だから、ソフトでしなやか、繊細。
精密技術が発達した理由もここに潜んでいる。
と呉 善花さんは混沌とした国際間の行き詰まりを解決するために
日本文化の果たす役割に期待しているようです。

今週はちょっとむずかしい事を考えてました。
でも、こういう事に無縁だったので、dancemanさんに感謝です。

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syobu828 at 01:41|PermalinkComments(10)TrackBack(0) エコロジー生物学