2008年07月

2008年07月27日

ベサメムーチョ

この頃はジャズが好きっていうと、かなり少数派になりますが、
私の学生時代、1960年代はジャズブームというくらい盛んだった。

アート・ブレイキー モーニン新宿の喫茶店が外へ向けて、アートブレイキーのモーニンなど流してたから、若者は「ジャズメッセンジャー」を知っていた。
いわゆるファンキーといわれるリズムが強烈な黒人ジャズである。

さらに映画は、ヌーベルバーグ(新しい波)というフランス映画が大人気で、「死刑台のエレベーター」ではマイルス・ディビスの音楽が話題になり、
危険な関係」ではリー・モーガンのトランペット、
大運河」ではミルト・ジャクソンのバイブが冒頭から流れるという具合だった。

大学の周りには、ジャズ喫茶が何軒もあり、講義が終わると何時間もその店でねばってた。

その後、ジャズを聴く機会も少なくなりしてたんですが、
還暦を過ぎた頃、深夜のFM放送だと記憶してるが、
咽び泣くように流れるアルトサックスの音を聴いて・・
奏者はアート・ペッパー(Art・Pepper)だと判ると・・
翌日、レコード屋へ直行した。

このベサメムーチョというラテンの名曲をクリックして聴いてみてください。
http://jp.youtube.com/watch?v=yC2T1Yu9InQ

アート・ペッパー Modern Art原メロディーを改装する彼のアドリブはある時は艶やかなブルース感覚であり、
ある時は清々しい気品のあるメロディとリズムセンス。


I Surrender Dear
http://jp.youtube.com/watch?v=Yyt6fm7OZh4&feature=related

一言でいうなら、卑俗さと洗練とが表裏になって出てくるのだ。
ものすごく解りやすいジャズです。
ペッパーの女々しいような艶やかさなんていうのは、
例えば徳永英明が好きな人なら、ペッパーもOKという感じだ。

アート・ペッパーは16歳でSAXの天才という華々しいデビューするのですが、
早くから始まった麻薬依存のために壮絶な人生を送ることになる。
1950年代、30才代は麻薬中毒で、病院の入退院を繰り返し、
そのさなかに、彼の最高傑作を多数吹き込んでる。
50年代のペッパーは不朽の名演奏と評価が高い。

40才代、最初の奥さん、ダイアンまでも麻薬中毒になり、彼女は自殺してしまう。
それから、10数年間、麻薬刑務所で過ごす。

1970年代、50才代、奇跡のカムバックを果たす。
アート・ペッパー Living LegendLiving Legend というアルバムを聴く。
失意のドン底から復帰した後の吹き込みで、
若い頃の美しい流麗なメロディラインは姿を消しているが、
辛酸を舐めた男が力強く生きようとするありのままの人生感を感じる。
彼の音楽に対するあくなき情熱に感嘆する。
http://jp.youtube.com/watch?v=Xe8Awh_ehYg



彼の音楽は彼の人生を映したものだったと
Living Legendを聴いて納得する。

夏の朝 大学病院この夏より、朝6時から1時間、近所を散歩してる。
朝の空気は気持ち良い。そして、静かだ。
気が向いたら、色鉛筆で描いてみる。

 



 

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syobu828 at 06:01|PermalinkComments(16) JAZZ オーディオ 

2008年07月19日

ユトリロのVとは

哀愁に満ちたモンマルトルの風景画を描いた
モーリス・ユトリロの画集を眺めていた。
1998年、大分で開かれたユトリロ展の100点余りの画集である。

ユトリロの画集巻頭の解説で、監修者ジャン・ファブリスは述べている。
「ユトリロの芸術を理解するためには、何よりもまず、
暗い陰がつきまとうユトリロの複雑な出自を探る必要がある」
というのは、絵のサインMourice  Utrillo.  V. 
は、
母親シュザンヌ・ヴァラドンVであり、
彼は若い頃、モーリス・ヴァラドンと母方の姓を名乗っていた。

ブーシバルのダンス  ルノアール作ユトリロの母、シュザンヌ・ヴァラドンは、
薄幸な私生児で生まれたのですが、
16歳で絵のモデルとして見出された。
ルノワールも彼女をモデルにして、「ブージュバルの舞踏会」など名作を残してる。

ロートレックのモデルもして、彼に求婚されたほどだった。
彼女はモデルであると同時に、しばしば愛人になっていた才能ある画家達を見よう見真似で、自らも絵を描きはじめた。
彼女の力強い線画はドガを驚かすほど、デッサンの名手だった。


18才の時に、モーリスを生んだのですが、
誰が父親なのかは明かさなかった。
シュザンヌは美人で、男達を翻弄し続けていた。

シーツを手にした女  シュザンヌ・ヴァラドン作音楽家サティとの熱烈な恋愛、銀行資産家との結婚、
さらに、20歳も若いユッテルという画家と結婚し、
油彩画の名作を残している。
シュザンヌ・ヴェラドンは奔放な女の一生を全うした。

ある時、昔の恋人だったスペイン人のユトリロが、
父親としてモーリスを認知し、モーリス・ユトリロと届け出た。
モーリスは祖母に育てられ、母恋しさをワインでまぎらわし、18才でアルコール中毒になり精神病院に収容される始末だった。

母の愛を求めるモーリスは、
アルコールから遠ざかるために、自己流で絵を始めた。
絵で母に注目されたいという願望の一途で。

ユトリロは誰にも教えられず、習わず、
独自の遠近法モンマルトルの風景画を描き続けた。
他の土地には関心が無かったし、静物画や人物画も無い。
ただいつもワインに酔い、あの白い壁や石畳を描いた。

しかし、モンマルトルの街で母と二人だけで住みたいという
ユトリロの願いは終生かなえられなかった。


彼は50才の時に20才年上の女性と結婚した。
シュザンヌ・ヴァラドンは20才も若いユッテルと暮らしていたのに。

ついに絵画における母親との最終的な競争に彼は勝利する。

その母に、彼は、「女神のように崇拝している聖女だった」という言葉を残してる。

天才の出現には、凡人には計り知れない、
すごいドラマがあるもんだなぁ〜。
果たして、ヴァラドンの Vなくして、
ユトリロ の名作はありえただろうか?

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syobu828 at 06:05|PermalinkComments(6) 絵画 スケッチ 

2008年07月12日

ル・パスタン

「鬼平犯科帳」 「剣客商売」 「仕掛人梅安」は
TVや映画にもなってるから、
小説を読まない人でも、池波正太郎の名は知っている。

「大衆文学の新しいヒーローを創りだし、時代小説の中に男の生き方を活写、
読者の圧倒的支持を得た。」として第36回菊池寛賞を受けた。

かくなる私も何年か前まで、
池波正太郎の時代小説は読んだことがなかったのである。
しかし梅安のTVは観ていた。

ル・パスタン 池波正太郎あるときこの作家のエッセーを何冊か読んで、
小説家としての生き方以上に、
自然で粋な日常の暮らし方に興味を持った。

そのエッセーの代表作というか私のお気に入りが、
「ル・パスタン」である。

「ル・パスタン Le passe-temps」とは、
直訳すれば「過ぎ去ってしまった時」という意味であるが、
「楽しかった時」というふうにとったほうが良いと思う。

ポール・ニューマン池波氏にとって楽しい時というのは・・・・
旨い物を食べて、旨い酒を飲むこと。
東京の下町に生まれ、芝居見物に連れてってもらった子供の頃、
証券会社時代の旨いもの。フランスの旨い物。
この頃行き着けの旨い店・・・食通の人には興味ある内容だ。

それから、映画、芝居、フランス旅行の話。

池波正太郎が読者を楽しい旅に連れてってくれる。

私がこの本を大切にしてるのは、
池波正太郎の水彩、パステル画が挿絵として
一話一話に描かれてるからなのです。

「ル・パスタン」はエッセーというよりも、
「画文集」と言った方が適切であろう。大人の紙芝居である。
作者直筆の絵があると、読者の想像力はさらに広がる。


ポートレイト イン ジャズ 1画文集(エッセーと絵)として、私の気に入りのものがもうひとつある。

それは、「ポートレイト イン ジャズ」という2冊である。、
和田 誠が50人のジャズマンの肖像画を描き、
村上春樹がその絵を見て、エッセーを書いている。

 

 

ポートレイト イン ジャズ 2Jazzが好きな人はもう夢中になって読んでしまうと思うが、
誰が読んでも絵とエッセーの組み合わせを楽しむことができる。
たぶん、Jazzをこんなに美しく書いた文章は今までにないと思いますよ。

私は、「ル・パスタン」と「ポートレイト・・・」を
初めは文庫本で手に入れたんですが、
すぐに、絵が大きくてきれいな単行本で買いなおし、
身近に置いては、時々眺めて楽しんでる。

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syobu828 at 06:30|PermalinkComments(12) 絵画 スケッチ 

2008年07月04日

北ホテル

「冬の木々は、すべての虚飾をはぎ取られて
本来の思想だけで立っているというおもむきがある。
もうちょっと齢取るとああなる、覚悟はいいかと思いながら、
道をまた右に曲がる・・・・」

藤沢周平1927〜1997藤沢周平の文章は時代小説ではあるが、
「本来の思想だけで立っている」なんていう
翻訳小説風な表現をよく使う。

江戸時代城下町の庶民や下級武士の生活を書いてるのですが、
藤沢周平の描く肉親の情愛や男女の愛憎は、
今の我々とそんなにかけ離れてはいないのだ。



三屋清左衛門残日録ご隠居の「三屋清左衛門残日録」なんかは、
会社一筋に勤め上げた企業人の
隠居後の悲喜こもごもの日記と思えば
江戸時代も今も人間の感情はさほど違ってないと思うくらいです。
巧みな文章の美しさと、書きすぎないという連載小説家の技によって、
読み出したら止まらない。

渋いという言葉が一番合ってる作家。
そして、文章が美しく、透明に透き通ってる

そこで、周平のエッセイによつて、彼の創作秘話を知った。
藤沢周平は山形県鶴岡市の生まれ。
鶴岡の中学校の教師を2年間務め、結核の病に倒れ、
東京武蔵野の結核療養所で6年間過ごす。
子供の頃から読書好きであったが、この辛い療養期間に
膨大な量の翻訳本、ミステリーものを読破したと書いてあった。

北ホテルその頃の彼の愛読書は、ウジューネ・ダビの「北ホテル」
チェホフの「谷間」  シュトルムの「聖ユルゲンにて」
カロッサの「ルーマニア日記」と記されてる。
さらに、ポーの「モルグ街の殺人」「アッシャー家の崩壊」
グレアム・グリーンの「ヒューマン・ファクター」



エッフル塔ヘルマン・ヘッセやアンドレ・ジッドを読んだ学生時代が懐かしい。
早速、アマゾンで「北ホテル」を探す。
「北ホテル」に登場する群像、女中のルネ、
遊び人ピエール、無口な馬番・・・
川のように流れるそれぞれの人生を読むしかない。

「北ホテル」と「三屋清左衛門」を並べて読んでみた。
パリの裏町と江戸の市井の暮らしに合い通じるものを
意識しながら・・・・


私は今年66歳になるが、その2倍は132年前、
1876年は明治8年。
江戸時代というと遠い昔のように思っていたけど、
ちょっと前のことだったのだと改めて感じる。

人間の原初的な感情、とくに男女の愛憎なんてものは
現代とさほど異なってはいないのだ・・・・

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syobu828 at 14:21|PermalinkComments(13) 絵画 スケッチ