漂流船ル・パスタン

2008年07月04日

北ホテル

「冬の木々は、すべての虚飾をはぎ取られて
本来の思想だけで立っているというおもむきがある。
もうちょっと齢取るとああなる、覚悟はいいかと思いながら、
道をまた右に曲がる・・・・」

藤沢周平1927〜1997藤沢周平の文章は時代小説ではあるが、
「本来の思想だけで立っている」なんていう
翻訳小説風な表現をよく使う。

江戸時代城下町の庶民や下級武士の生活を書いてるのですが、
藤沢周平の描く肉親の情愛や男女の愛憎は、
今の我々とそんなにかけ離れてはいないのだ。



三屋清左衛門残日録ご隠居の「三屋清左衛門残日録」なんかは、
会社一筋に勤め上げた企業人の
隠居後の悲喜こもごもの日記と思えば
江戸時代も今も人間の感情はさほど違ってないと思うくらいです。
巧みな文章の美しさと、書きすぎないという連載小説家の技によって、
読み出したら止まらない。

渋いという言葉が一番合ってる作家。
そして、文章が美しく、透明に透き通ってる

そこで、周平のエッセイによつて、彼の創作秘話を知った。
藤沢周平は山形県鶴岡市の生まれ。
鶴岡の中学校の教師を2年間務め、結核の病に倒れ、
東京武蔵野の結核療養所で6年間過ごす。
子供の頃から読書好きであったが、この辛い療養期間に
膨大な量の翻訳本、ミステリーものを読破したと書いてあった。

北ホテルその頃の彼の愛読書は、ウジューネ・ダビの「北ホテル」
チェホフの「谷間」  シュトルムの「聖ユルゲンにて」
カロッサの「ルーマニア日記」と記されてる。
さらに、ポーの「モルグ街の殺人」「アッシャー家の崩壊」
グレアム・グリーンの「ヒューマン・ファクター」



エッフル塔ヘルマン・ヘッセやアンドレ・ジッドを読んだ学生時代が懐かしい。
早速、アマゾンで「北ホテル」を探す。
「北ホテル」に登場する群像、女中のルネ、
遊び人ピエール、無口な馬番・・・
川のように流れるそれぞれの人生を読むしかない。

「北ホテル」と「三屋清左衛門」を並べて読んでみた。
パリの裏町と江戸の市井の暮らしに合い通じるものを
意識しながら・・・・


私は今年66歳になるが、その2倍は132年前、
1876年は明治8年。
江戸時代というと遠い昔のように思っていたけど、
ちょっと前のことだったのだと改めて感じる。

人間の原初的な感情、とくに男女の愛憎なんてものは
現代とさほど異なってはいないのだ・・・・

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syobu828 at 14:21│Comments(13) 絵画 スケッチ 

この記事へのコメント

13. Posted by 505の住人 yanase    2008年07月10日 13:05
カオリン様

やはりおわかりいただけましたね。
皆様ご健在でなによりです。
私は兼続が来年大河になるのは最近になって知りました。
率直な感想としては地味で玄人好みのドラマになるのかなという感じです。
個人的には兼続よりもその主君上杉景勝を誰が演じるのか
楽しみではあります。何せ生涯笑うことのなかったハードボイルドな御人ですから。
若い俳優さんに演じきれるか、期待したいところです。

さて「密謀」の作中の主題は関ヶ原です。
天下分け目の戦に際しての武人のふるまいは男としてどうあるべきかを考えさせられます。
カオリン様、関ヶ原を前に何を思いますか。

昼休みの会社より





12. Posted by カオリン   2008年07月10日 08:40
505の住人 yanase さん

お懐かしうございます。柳瀬殿ではござりませぬか。
その節はお世話になり申した。
風情ある505の棲家も皆々健在でございまする。

うむむ。直江兼続は戦国の武将として興味ある人物であると、小生も同感でありまする。
丁度、「天地人」という火坂雅志氏の小説を読み終わったばかりであった。
来年のNHKの連ドラになるらしいから、直江兼続は有名になるであろう。
我々周平贔屓としては、「密謀」が本命と言いたい所であるがのう。
11. Posted by 505の住人 yanase   2008年07月09日 22:05
カオリンおじさん こんばんは。
はじめて投稿します。505の住人 yanaseです。
私も藤沢周平さんの作品が好きでよく読んでます。
なかでも、「密謀」がお勧めです。
関が原合戦へ至るまでの緊迫した時代を
上杉家家老 直江兼続の視点を通して描いた力作です。
作中のちょっとした文章表現がとてもいいんですよ。
今から10年位前に発売されたものですが、カオリンおじさんは
読まれましたか。
  
 
10. Posted by カオリン   2008年07月07日 10:17
福岡笑顔整体 健康の知恵袋:院長さま

この頃、齢のせいだろうと思うんだけど、
大昔と思ってた幕末の時代が、小生の年齢の倍くらい前なんだと気づいて、すごく親しみがでちゃいましてね。
物語って不思議ですね。
竜馬と話してるような気がしちゃいますよ・・笑
9. Posted by カオリン   2008年07月07日 10:12
福岡笑顔整体 副院長さま

小説は今までめったに読まなかったのですよ。
たまたま、時間ができましたので、楽しんでますが・・・
昔も今も人の気持ちなんてのは変わらないように思いますね。
8. Posted by カオリン   2008年07月07日 10:07
ミセスケイト かさっち さん

かさっち殿のお年頃で、藤沢周平氏をご存知の方は少ないと思いますが・・・
周平氏はかなり活動写真にも取り上げられておるんですな。
江戸時代と申しても、そんなに大昔ではございませぬ。ぜひ時代小説もお楽しみあれ。
早いもので梅雨もあがり、今宵は七夕じゃのう。
7. Posted by カオリン   2008年07月07日 09:54
今生さん

この10年くらい、小説を読むなんてことなかったです。
やはり、ノンフィクションや生物学のほうが優先してしまって・・・・
しかし、読み物は物語が楽しいですわ。
これも、時間の余裕ができたからでしょうね。
6. Posted by カオリン   2008年07月07日 09:42
タルタニさん

ご主人の藤沢周平への見識、何年か前に
お話を伺いまして、さすがと思いましたね。

ご主人の日頃の生活も、三屋清左衛門に近いものがありますよ。
渋いユーモアもあるし・・・・
今度ゆっくり「周平談義」を伺いたいですね。
5. Posted by http://blog.livedoor.jp/tarutani2/   2008年07月06日 12:38
カオリンさん こんにちは 久し振りのコメントです。
硬軟織り交ぜてのいろんなジャンルの本を楽しまれるのですね。
うちのダンナさんは相変わらずの時代小説一本やり。
最近ではよく、諸田鈴子(?)司馬遼太郎著作品を
よく目にします。先日も藤沢周平原作「山桜」の映画を
見に行って来たようです。「周平の世界」にどっぷり浸かった
ままです。年末には“周平さん”で盛り上がればいいですね。
4. Posted by 今生   2008年07月06日 11:35
カオリンおじさん こんにちは 
パリの裏町と江戸の暮らしの合い通じるものを意識しながら
読書を楽しむ、最近は静かな生活をされている雰囲気が
漂っていますね とてもいい感じでホットしております
こんなゆっくり流れる時間で生活するのも
久ぶりじゃないですか・・・? あっ!それから
私の大好きな明太子も届き感謝しております
秋の京都でゆっくりかたりあいましようね
3. Posted by ミセスケイト かさっち   2008年07月05日 11:24
藤沢周平さんといえば、
『蝉しぐれ』と『たそがれ清兵衛』
くらいしか知りませんでした。
しかも、本ではなく映画(DVD)で
みましたので今度本も読んでみます。

まずは、先日オススメ頂いた
吉村 昭さんの「わたしの流儀」から
手を付けたいと思います。

2. Posted by 福岡笑顔整体 健康の知恵袋:副院長^^   2008年07月04日 23:30
小説をたくさん読んでおられるようですね^^
人っていつの時代もそんなに変わらないもの
なのかもしれませんね。

春になって新人社員がはいってくるころになると
「最近の若い者は…」なんていう声がきこえますが
古代の西洋の書物にはもうそんなぼやきが
書いてあったそうですよ^^;

なんだか昔の人たちに
親近感が沸いてきました^^
ぽち
1. Posted by 福岡笑顔整体 健康の知恵袋:院長   2008年07月04日 21:40
引き込まれる小説の世界があるんでしょうね。

しかも改めて時代を振り返ると、
ほんと少し前にあった
実際の出来事って気づかされますよね。

そういう時代があったからこその今の時代ですよね。

応援くりっく!ぽちっ

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