こんにちわ転枝です。人の作品にあれこれいってしまう例のアレです。
一発目の犠牲者()は、このブログを作る切っ掛けになったお人、ひざのうらはやおさんです。
ひざのうらはやおさんです!
「ごうがふかいな」という独自のモットー? 信念? 概念? を掲げて長い間活動をされている方のようなのですが、ご自身で仰っているようになかなかその作風を言語化するのが難しいタイプの小説を書いておられます。ただ、嵌ればどこまでも潜れるような深みを持っていることは確かで、小説の執筆だけでなくブログにて同人誌批評(通称「まんまる批評」)をされたりもしていて、その文章全てにひざのうらはやお感が出ている不思議な方です。(リンク貼りたいくらいなんですけど、許可貰ってないので気になる方は検索をば)とにかく独自、独特、読んだ感覚としては少しライトな、でもシニカルさが抜けることはない雰囲気を保たれている文章です。読めば分かるから読め、というのも無責任な話ですが、カクヨムなどにも投稿をされているそうなので是非。
で、そのような方が今年の五月、文学フリマ東京にて出された当時の新刊『V ~requiem~』(以下『V』)について喋ります。どうぞよろしくお願いします。
舞台は未来の日本、人類はドラゴンの出現によって絶滅寸前まで追い詰められており環境の変化やドラゴンの脅威から逃れるために地下で暮らしていました。ドラゴンに対抗するために造られた、身体にドラゴンの遺伝子を埋め込まれた、「V」と呼ばれる戦士達、その主力部隊の隊長をつとめているハルカが今作の主人公です。歴戦の戦士であるハルカと、「零式」という最大種のドラゴンとの因縁を巡る話となっていますが、魅力的なのはやはり設定でしょう。「V」とは人にドラゴンの翼が生えたような状態で、近接武器(剣やらメイスやら)を持ってドラゴンと戦うわけです。混合人間である彼女達はそれはそれは人並みはずれた能力でドラゴンと戦います。その部隊長ともなれば、さぞ強力な能力や常識外れの強さを持っているかと思いきや、実はこの主人公、スペック的には大したことない扱いをされていますし、確かに特殊能力もあることにはあるにせよ、外部から来た人間には軽く見られるような描写もあります。けれど判断能力や、とっさの身のこなしがとても優れているというあたりが、戦闘という現象を多角的に捉えた結果ハルカを部隊長に据えているということも分かります。この与えられた称号とは若干ずれたスペックを持っている主人公という図式が、後半良く活きてきます。この作品を読むにあたって主人公が周りとズレた存在であるということは何度も強調されてきます。主人公の意識としてもそうなのですが、このズレがこの世界を俯瞰できる要因にもなるし、シニカルな語りとも整合してくるのでしょう。SF的な設定も工夫がこなされています。人が地下に対比している理由として「地表に降り注ぐ放射線」が描写されます。根本的に僕たちが生きている世界とはまるで違う世界観なのに、舞台は東京という近さ、そしてドラゴンというある種ファンタジーが混ざるという「全乗せ」感たっぷりなのに、ここはさらりと入ってくる読書感は本当に不思議。シリアスにこれが頭の中に入れられる文体、テンポは彼にしか書けないんじゃないだろうかと思います。
後半に事態が一気にひっくり返り、情報量過多ともいえるラストへと怒涛の勢いで進んでいく様は圧巻です。SFにはありがちですが、前提として敷かれた世界観は、大抵ひっくり返ってしまうものなのです。
まだ頒布されていたらお手に取ってみてくださいね。中二っぽいのにどこまでも冷笑的な話運びは癖になります。これを読むと次読む小説に変な違和感を覚えるくらいに特殊な書き味です。文体についてはいつかしっかりと考えてみたいのですが、今回はこのくらいで。きっとまた彼の作品については書きます。普通人間は、良く分からない小説に出会ったら、何も考えられないままそれを置いてしまうものですが、彼の作品にその対応ができないのは何故なのか。同人誌というものを考える上で、この尖り方は考察するに値するものかと。
以上になります。なれてなさ杉内な感じの文章で申し訳ないです。こんな感じ、いやもうちょっとクオリティあげて感想あげていくのでよろしくお願いします。
一発目の犠牲者()は、このブログを作る切っ掛けになったお人、ひざのうらはやおさんです。
ひざのうらはやおさんです!
「ごうがふかいな」という独自のモットー? 信念? 概念? を掲げて長い間活動をされている方のようなのですが、ご自身で仰っているようになかなかその作風を言語化するのが難しいタイプの小説を書いておられます。ただ、嵌ればどこまでも潜れるような深みを持っていることは確かで、小説の執筆だけでなくブログにて同人誌批評(通称「まんまる批評」)をされたりもしていて、その文章全てにひざのうらはやお感が出ている不思議な方です。(リンク貼りたいくらいなんですけど、許可貰ってないので気になる方は検索をば)とにかく独自、独特、読んだ感覚としては少しライトな、でもシニカルさが抜けることはない雰囲気を保たれている文章です。読めば分かるから読め、というのも無責任な話ですが、カクヨムなどにも投稿をされているそうなので是非。
で、そのような方が今年の五月、文学フリマ東京にて出された当時の新刊『V ~requiem~』(以下『V』)について喋ります。どうぞよろしくお願いします。
舞台は未来の日本、人類はドラゴンの出現によって絶滅寸前まで追い詰められており環境の変化やドラゴンの脅威から逃れるために地下で暮らしていました。ドラゴンに対抗するために造られた、身体にドラゴンの遺伝子を埋め込まれた、「V」と呼ばれる戦士達、その主力部隊の隊長をつとめているハルカが今作の主人公です。歴戦の戦士であるハルカと、「零式」という最大種のドラゴンとの因縁を巡る話となっていますが、魅力的なのはやはり設定でしょう。「V」とは人にドラゴンの翼が生えたような状態で、近接武器(剣やらメイスやら)を持ってドラゴンと戦うわけです。混合人間である彼女達はそれはそれは人並みはずれた能力でドラゴンと戦います。その部隊長ともなれば、さぞ強力な能力や常識外れの強さを持っているかと思いきや、実はこの主人公、スペック的には大したことない扱いをされていますし、確かに特殊能力もあることにはあるにせよ、外部から来た人間には軽く見られるような描写もあります。けれど判断能力や、とっさの身のこなしがとても優れているというあたりが、戦闘という現象を多角的に捉えた結果ハルカを部隊長に据えているということも分かります。この与えられた称号とは若干ずれたスペックを持っている主人公という図式が、後半良く活きてきます。この作品を読むにあたって主人公が周りとズレた存在であるということは何度も強調されてきます。主人公の意識としてもそうなのですが、このズレがこの世界を俯瞰できる要因にもなるし、シニカルな語りとも整合してくるのでしょう。SF的な設定も工夫がこなされています。人が地下に対比している理由として「地表に降り注ぐ放射線」が描写されます。根本的に僕たちが生きている世界とはまるで違う世界観なのに、舞台は東京という近さ、そしてドラゴンというある種ファンタジーが混ざるという「全乗せ」感たっぷりなのに、ここはさらりと入ってくる読書感は本当に不思議。シリアスにこれが頭の中に入れられる文体、テンポは彼にしか書けないんじゃないだろうかと思います。
後半に事態が一気にひっくり返り、情報量過多ともいえるラストへと怒涛の勢いで進んでいく様は圧巻です。SFにはありがちですが、前提として敷かれた世界観は、大抵ひっくり返ってしまうものなのです。
まだ頒布されていたらお手に取ってみてくださいね。中二っぽいのにどこまでも冷笑的な話運びは癖になります。これを読むと次読む小説に変な違和感を覚えるくらいに特殊な書き味です。文体についてはいつかしっかりと考えてみたいのですが、今回はこのくらいで。きっとまた彼の作品については書きます。普通人間は、良く分からない小説に出会ったら、何も考えられないままそれを置いてしまうものですが、彼の作品にその対応ができないのは何故なのか。同人誌というものを考える上で、この尖り方は考察するに値するものかと。
以上になります。なれてなさ杉内な感じの文章で申し訳ないです。こんな感じ、いやもうちょっとクオリティあげて感想あげていくのでよろしくお願いします。
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