2007年01月12日

第8話:ターゲットはキリスト 其の五

「次はデメリットをご説明しますから、わかりづらい点は完全にご理解下さいね。やはり、こう言った資産運用は投資と言われて手数料やリスクはつきものですから…。高山先生は信者さん方から大切なお金を預かっている訳ですから、失敗はダメですからね」
「あ〜、そうですね。うまくやらないとイエス様に怒られますからね」
「そうです。神様もメリット、デメリットを理解された先生であれば、きっと応援してくれる筈です。だから、キチッといきましょう」
「キチッといきましょう?何ですか?キチッといきましょう?」
「すいません。完全に理解していきましょうと言う意味です」
「あ〜、理解ね。わかります理解。」
「よかったです。では、まず手数料ですが…1圓龍發稜磴い版笋蠅鮃腓錣擦董合計ですね、13,200円掛かります。1圓噺世事は?1g、1,964円の1,000倍ですから…」
「1,964,000円ですか?」
「凄い、先生。その通りです。よくパッと出て来ますね」
(また、やった)
「よくパッと出て来ます?どう言う意味ですか?パッと出て来ます?」
「凄いスピードで計算できますねっ、と言う意味です」
「私、凄い?」
「先生は凄いです」
「あ〜、私、凄いですね」と、満面の笑み。
「では、先生。手数料は安いですか?高いですか?どう思われます?」
「約0,65%。買って売って0,65%…安いですね」
「凄いです先生。13,200円と聞くと高いと言う人が多いんですが、買って売っての往復で私共の手数料は0,65%…私達も生活があります。そこを、ご理解出来ない情けない人は、高いって言うんですね」
「あ〜、情けない人、いっぱい、いますね。嫌ですね」
「そうです。嫌な人達です。では、続いて上がり下がりのリスクですが…その前に売買単位…売り買いのシステムですね。それをご説明しながらリスクの話しをしましょう」
「酒井さんの言うこと、わかりやすくていいですね」
「ありがとうございます。ただ、資産運用を行っていくのは先生ですから、頑張っていきましょう。私はあくまで先生のオブザーバーみたいな者ですからね」
「あ〜、そうですね。頑張っていきましょう」
「ではと、このお取引は先ほど申しましたように…現物をすぐ買う訳ではありませんから、買い付ける為の証拠金、わかりやすくて言えば手付け金でお取引できる訳ですが…その単位を1枚と言います」
「1枚?」
「そうです、1枚です。そしてこの1枚の中に金1,000g、1圓任垢諭これが売買単位として入っているんです。宜しいですか?」
「1枚の中に1,000g、200万近くが入っている」
「はい、その通りです。そして、その1,000g、1kgを買い付ける手付け金、専門用語で委託証拠金と言いますが、その運用資金は、たったの110,000円なんです」
「あ〜、110,000円で、200万円の金を買えるんですか?」
「そうですね。ちょっとニュアンスが違いますが・・・、200万円の金を買ったことと同じ効力を持つことが出来ると解釈して頂いた方がいいですかね。ちょっと、ここまでを紙に書きながら復習しましょう」
「あ〜、そうですね。予習復習すること、いいことですね」
 私は、ここまでの内容をレポート用紙に書き記しながら再度の説明を行った。

「それでは、先生。ここからが、一番肝心な・・・、失礼しました。一番大切なリスクとメリットのお話になりますので、よ〜く、ご理解下さいね」と言いながら、私はここまで書いたレポートを切り取り先生に差し出した。そして、新しいページにリスクと書き説明を始める。

 ・・・約1時間後「あ〜でもない、こ〜でもない」と、言ったやり取りをしながらも先生は、デメリットである【追加証拠金・略称:追証】や損失、メリットである利益に付いて、ほぼ完璧に理解を示した・・・

「先生は凄いです。完全に理解されましたね?」
「あ〜、理解しました。酒井さんの説明、上手ですからね。しかし、この資産運用はなかなかいいですね。勿論、リスクありますけど、面白いですね」と、目が輝く。
「今日、私とお会い出来てよかったでしょ、先生?」
「あ〜、そうですね。出会いは大切ですからね。それで、これは幾らから出来るんですか?運用は?」
 真剣な眼差しの先生に、口調を真似て「あ〜、そうですね。先生が決めることですから・・・」と、私はニッコリ微笑む。
「酒井さん、貴方は面白いですね。ふちゅうは、どれぐらい皆さんやるんですか?」
「チャンス次第です、先生。チャンスには小さいチャンスも有れば大きいチャンスも有ります。小さいチャンスに大きく運用することはお薦め出来ませんし、大きなチャンスに小さく運用することもお薦めできません。小さなチャンスは小さな資金を、大きなチャンスには大きな資金を運用するのがポイントだと思うんです」
「あ〜、成る程。酒井さん言うこと、正しいですね。小さいチャンス少なく、大きいチャンス大きくですね?」
「そうです。では、先生。小さいチャンスの時は、どれぐらい運用します?」
「あ〜、そうですね。小さいチャンスでしたら・・・100万円位ですか?」
「賢明です、失礼しました。正しいご判断です」(と言うことは、大きなチャンスで1,000万は動くな)
「あ〜、酒井さん。賢明わかりますよ。賢いことですね。それで、酒井さん。今、金チャンス有りますか?」
「今ですか?」と、私は小首を傾げ残念そうに首を横に振った。
 高山先生は残念そうな顔をして「今、チャンスないんですか?」と、あ〜無しで呟く。
「先生。チャンスは必ず来ます。大きなチャンスなのか小さなチャンスなのかは別にして、必ず。・・・その時ですよ、悩むのは。それに、今日の今日お会いしたばっかりじゃないですか」と、少し落ち込んだ高山先生を励ますように私は返した。
「あ〜、そうですね。チャンス来たら教えて貰えますか?」
 私は右手で高山先生の左腕を握り、上目遣いに「勿論です。それまで、2人で待ちましょう。ねっ、先生」と、微笑む。

 ・・・約3時間にも及んだ商談は終わりを迎えた・・・
 先生にお別れの挨拶をして、時代がかった重厚なドアを閉め教会の門へ向かって歩く。
 私は背中から聞こえてきた音に思わず足を止め振り向いた。
「歌声?」
 それは、聖歌隊の乙女達が練習する「賛美歌」の音だった。


syougo924 at 19:23│Comments(2)TrackBack(0)clip!小説 | 商品先物

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この記事へのコメント

1. Posted by 集英社の者です   2007年01月13日 15:47
5 わかりやすくて、面白い。結末はいったいどうなっていくのでしょうか?
2. Posted by 作者より   2007年01月13日 23:21
コメント有難うございます。
久しぶりのコメント、感激です。
結末は・・・・・・「ブログをお読み下さい」としか言えません。

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