2021年01月23日
第6話 磐梯山サービスエリアでトイレ休憩
貴子は久々のドライブであり長旅と言うことで年甲斐もなく上機嫌ではしゃいでいた。
今回の旅は和弘にとって妻を労うのが一番の趣旨ではあったが、同時に貴子にも同じような気持ちを持っていたので貴子がここまで喜んでくれるとは思ってもみなかった。
新潟県に入る手前でガソリンのメーターを見ると、かなり減っていた。
以前、新潟市内までの途中にガソリンスタンドの少なさを感じていたので磐梯山サービスエリアで給油する為に停車しトイレ休憩を取った。
和弘が妻に声を掛けると「車内で入って良い?」と言われたので「じゃぁ、用意するから待って」と言って後部ドアを開け簡易トイレの蓋を開けておき、妻に「入れる用意ができたから俺たちは外のトイレでしてくるから」と言って起こした。
そして和弘と貴子はサービスエリアのトイレに向かう前に車を降り隣の車の間で軽く唇を合わせた。
その後、二人で並んでトイレに向かい「終わったら車で待っているから」と言うと貴子は頷いた。
用を足して車に戻ると妻はまたベッドに寝ていた。
和弘は妻に「具合はどうなの?」と訊いた。
「下痢は治ったみたい」と言ったので安心した。
買い込んでいたペットボトルの水をマグカップに入れて、正露丸糖衣を瓶から出して妻に渡すと「ありがとう」と言った。
トイレから帰って来た貴子が「和くんは優しいのね」と言った。
和弘は「こんな時は誰だって優しくなるんじゃないですか?生前の先輩も優しかったでしょ?」と。
貴子は「私の具合が悪い時にそんな事をされた覚えがないな」と寂しそうに言った。
和弘「そんな事はなかったように思いますけどね、泊りに行った時のラブラブと言ったら見てられなかったですけどね」
貴子は「そうだったっけ?」と言って舌を出して笑った。
妻もその姿を見て笑った。
妻がだいぶ元気になって来たみたいだったが今後の長旅の事を考えると今日は早めに宿泊先に行こうと思い車を出し、ガソリンスタンドで給油し新潟市内のホテル日本新潟を目指した。
このホテルを自宅にいる時から予約をしていた、その時はツインルームだったが、貴子も同行する事が確定したので、
那須高原サービスエリアでトイレ休憩の際に男子トイレからフロントに電話をして、ツインからロイヤルスイートに変更してもらっていた。
本来は2名の使用だったが、この部屋しか空いてないとの事だったので我儘なお願いし追加料金を支払う事にし3人で利用させてもらった。
部屋には2台のベッドを付けて並べてもらい貴子だけ別の部屋では可愛そうだったので、この部屋で、川の字になって寝ることにしたのだ。
最上階から望む、新潟の夜景と日本海を見る事ができるので和弘は一日目は贅沢にさせてあげようと思っていた。
更にこちらの中国料理の料理長が、とても腕が良いと漁協で組合長からの紹介だった。
和弘が経営していた店でもこの漁協から天然の真鯛や寒ブリを仕入れていたからだった。
つづく