7月1日。サントリーホールディングス(HD)の社長に新浪剛史・ローソン会長が就任することが正式決定した。サプライズ人事の裏にあった当事者たちの思いを聞いた。

「やってみなはれ」を世界に
――新浪剛史 ローソン会長

──なぜ今サントリーに?

 ローソンの社長を12年やって「海外に打って出たい」と思っていた。佐治さんからは長年にわたり、何度も何度も声を掛けていただいた。サントリーはグローバルで闘う夢があり、佐治さんは世界に通じる商品を作りたがっている。日本企業の出身者として、佐治さんと一緒に世界で勝ちたい。55歳になり「これが最後のチャンスだ」と決意した。

──経営のスタイルはこれまでと変わるのか。

 ローソンでは僕が自ら動くスタイルだった。今度は、下の人にうまく使ってもらえるスタイルに変えたい。僕も営業経験が長いので、現場でトラブルがあったとき、トップがちょっと動けば解決することが多いのは知っている。三菱商事時代も、上司だった小島(順彦現会長)さんに、よくお願いして動いてもらった。

 新浪になら頼みやすいという関係を早くみんなと築きたい。(今回買収して傘下に収めた)ビーム サントリーに対しても、いかにマット・シャトックCEOのモチベーションを上げて働いてもらうかを考えるのが僕の仕事。佐々木(幹夫・三菱商事相談役)さんに昔言われた「組織の民意を得ろ」という言葉をとても大切にしている。社長が怖いと思われると、社長を使えなくなり、情報も届かなくなる。信頼され、それに応えられるよう、しっかり勉強する。

 世界に出るということは、多様なものを受け入れ、それをマネジメントするということ。目の色、肌の色の違う人がグループに入ってきて、いろいろな立場の人みんなが物を言いやすい環境を持つのがグローバル企業の姿であるはず。その橋渡しをするのが僕の役割。事業業績を上げるのは、各事業会社の社長ががんがんやっていくだろうが、僕は見えない“バランスシート”をどうするかに注力する。

 新しいことを起こすときは失敗も成功もある。それを乗り切るための胆力を、サントリーも佐治さんも持っている。もちろん、ビジネスだからリターンは求める。それがサントリーに流れている「やってみなはれ」という価値観だと思う。

 それを実践する面白い会社として、サントリーが世界で知られるようになるといい。もともと「やってみなはれ」が面白くて佐治さんとは意気投合したんだよね。「もったいない」と同じように「やってみなはれ」も、世界が知る日本語にしていきたい。

わが社のDNAを持つ人だ
――佐治信忠 サントリーHD会長兼社長

──新浪さんをなぜ社長に選んだのか。

 新浪さんはメーカーと小売りトップ会合で、ずっと昔にお会いして、長い間存じ上げている。出会ったときから、すでに意気投合していた。

 彼のエネルギーや国際感覚、いろんなことに興味を持つ性格や前向きなところは、昔から素晴らしいと思っていた。残念ながらまだ今は、わが社の中で私の後を継げる人材が見つからなかったので、新浪さんに白羽の矢を立てた。

 彼は社外で最も「やってみなはれ」精神を持つ、わが社のDNAを持っている人だ。たまたま今は4代続いて、創業家から社長が出ているが、私はそれが必ずしも正解だと思ってない。一番サントリーの経営をするのにふさわしい人がやればいい。外の人がやって、また創業家に戻ってもいい。それがサントリーのためだし、社員のためだし、もっと大げさに言えば世の中のためになる。

──後継として長年有力視されてきた、鳥井信宏・サントリー食品インターナショナル社長には今回の人事をどう伝えたのか。

 他のボードメンバーと同じタイミングでしか伝えていないが、淡々と受け止めていると思う。彼は上場も果たしたし、頑張っていると思うよ。素質も十分持っている。ただ、年も若く、まだまだ経験もない。今すぐ私の後を継ぐわけにはいかない。

 5年、10年という当面の間、信宏が新浪さんと二人で組むことも選択肢の一つだ。将来に向け新浪さんから教えを請い、成長していってくれればいい。そうして将来的にサントリーの総帥になってくれれば、こんなにうれしいことはないね。

──鳥井社長に何が足りないのか。

 成功体験だね。彼は経営で実績をまだ出していない。これという実績を社内外に示す必要がある。

 例えば国内で日本コカ・コーラを抜くとか、買収したオランジーナ、ライビーナ、ベトナムなどで実績を示すとか。そうすることで新浪さんにも社内にも、そして社会にも認められるはずだ。

──会長職からもいずれは退く?

 ビーム買収に1兆6000億円の投資をするからもうしばらくは(会長を)やるけどね。数年というところかね。

──ビーム統合のために新浪さんを選んだのか。

 統合と社長就任のタイミングが重なったのは単なる偶然。日本の人口はこれ以上伸びない。これから会社を大きくするには海外しかない。その進む方向に新浪さんは最も合った人だ。国際感覚、語学力、年齢も含め、これからサントリーが伸びていく方向に一番適した経営者だと思う。さらに、ローソンを改革し大きく成長させた点で文句のない実績もある。

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