構造

2008年05月21日

SE構法のこと

ちょうど打合せとバッティングしていて、
トバッチ設計の「らせん階段のいえ」の構造見学会に行けなかった。
SE構法による木造3階建とのこと。

一般の人にはまだ余り知られていないが、
SE構法は集成材と独自に開発したSE金物でつくる工法で、
立体解析による構造計算を行っているのが大きな特徴である。

構造建築家の播繁(ばん・しげる)氏は
阪神淡路大震災で倒壊した多くの木造住宅の惨状を見て、
構造計算に裏打ちされた安心して住める家の開発に取り組み、
この構法を完成させた。

「伝統工法、在来工法、SE構法」木造住宅の選択肢である。
街なかに建つ「らせん階段のいえ」。
いろんな条件や要望事項の中でSE構法を選んだのだろう。

トバッチ、完成見学会は是非やって下さい。今度は見に行きます。

(S.Tomita)

taa2003 at 00:10|PermalinkComments(4)

2008年05月13日

「在来工法はなぜ生まれたか」

昨日の話の続きになるが、
大仏様の構造上もう一つの大きな特徴は貫(ぬき)の使用である。

鎌倉の初頭に大仏様と共に輸入された貫の歴史は800年あり、
いま我々が使っている筋かいは戦後のものである。

在来工法の問題点を下山眞司教授がブログ
「在来工法はなぜ生まれたか」のタイトルで、
10回に亘って詳しく書かれている。
かなり難しい内容になっているが理解出来るよう努力したい。


●在来工法はなぜ生まれたか

  よく見かける納まり
 ◆「在来」の意味
 ∧簑 「在来工法」の捉え方の実態
  足元まわりの考え方:基礎
 J簑 法令仕様以前の足元まわり
 ぁなぜ基礎へ緊結することになったか?
 な簑 日本の建築と筋かい
 ァ耐力壁に依存する工法の誕生
 ナ簑 耐力壁(筋かい、面材)の挙動
 ナ簑・続 ホールダウン金物の使用規定が示していること


(S.Tomita)

taa2003 at 23:50|PermalinkComments(0)

2008年05月12日

木の架構をすべて現す大仏様

木造建築が最も輝いて見えるのは建前の時である。
連続する柱や梁の奏でるリズムは心地よく、
いつまでも見飽きることはない。
それが仕上がるにつれ段々と覆われて、
ただの四角い部屋に変わっていく。

木造でつくるなら、構造材を出来るだけ隠さずに使いたい。
設計する者ならそう考えるのが自然である。

鎌倉時代、木の架構すべてを現してつくり上げた人(建築家)がいる。
その名は俊乗坊重源(しゅんじょうぼう・ちょうげん)。
焼失した大仏殿再興の大勧進(総責任者)に抜擢されて再建に当たった。
当時、宋(中国)より輸入されたばかりの大仏様と呼ばれる建築様式を駆使して、
前代未聞の大建築に挑戦し成し遂げる。
しかし不幸にも1567年に再び兵火にあって焼失し、
現在の大仏殿は江戸時代に再建されたものである。

大仏様は和様や禅宗様と比べると余りにもアクロバット的である。
軒を深く出すために使う従来の組物=斗栱(ときょう)や桔木(はねぎ)の替わりに、
左右に広がる組物でなく前方へだけ突き出す挿肘木(さしひじき)を
通肘木(とおしひじき)でつないだり、
柱間に遊離尾垂木(ゆうりおだるき)を導入したりしている。
軒の四隅も桔木を使わないので垂木は従来の化粧ではなく、
屋根の荷重を支える構造材としての垂木が必要になる。
そこで考え出されたのが放物線上に出る扇垂木だ。

こうした新しい架構法によって、内部も天井を貼らなくてもよい空間を獲得した。
しかし、余りにも難しい工法だったのか、
現存するものは、東大寺南大門(奈良)と浄土寺浄土堂(兵庫)しかない。
(※いずれも重源作)

浄土寺浄土堂 挿肘木と遊離尾垂木













浄土寺浄土堂内部 架構現し














先日のKimoty House のスライド説明で、
「コルゲートの表面を隠さないプランにこだわった」っていった時、
なぜか漠然と大仏様に挑戦した重源上人のことを思い出していた。

今日の話は Kimoty House とは無縁のものだが、
忘れないうちに書き留めて置くことにした。


(S.Tomita)

taa2003 at 19:06|PermalinkComments(5)

2008年04月28日

岡島さんの建築

今日はJIA徳島地域会の4月例会で、
岡島さんが設計した井戸寺庫裏の木構造を見学させてもらった。

構造様式は伝統工法に近いもので、柱間は筋違いを用いず貫で繋ぎ、
小屋組は丸太材の小屋梁や牛梁で固めていた。
(まだ付いていなかったが軒先も桔木で受けるとのこと)
現実の金物尽くしの在来工法から離れ、
久し振りに懐かしい木造に触れることができた。

建前風景









丸太の小屋組










見学会のあとは現場事務所で、
彼が取り組んできた建築をスライドで説明してくれた。

独立して30年余り、住宅以外に学校、病院、マンション、店舗と、
あらゆるものを手がけてきたバイタリティに圧倒されると同時に、
癒し系の語りにも酔ってしまい、すっかり疲れ果ててしまった。(苦笑)

何でもできる岡島さんだが、やはり真骨頂は和風建築だ。
和のこころを読み取る眼力はかなり早熟だったようで、
若い頃から大層うまかった。
出世作になった金清温泉白鳥荘はもう25年も前の建築というから驚く。
外観は控えめで品の良さを感じるし、
大広間の独立柱の配置と木組のバランスはとても心地良い。

岡島さん、まだまだ頑張ってよ。
白鳥荘を超える建築を期待してます。

(S.Tomita)

taa2003 at 23:16|PermalinkComments(0)

2006年05月24日

桔木の効用

昨日、深い軒を持つ寺社建築には桔木が使われていることを書いたが、
下の図のように、てこの原理を利用して、
野垂木と化粧垂木の間に差し込まれている。
屋根裏部分になるから外からは全く見えないわけだ。

桔木







西本願寺御影堂平成大修復推進事務所だより」に
桔木のことが詳しく書かれているが、
その軒廻りには長さ約8m、直径約40cmの松丸太が90本以上も使われている。
これで何百年も重い瓦屋根を支え、
美しい軒先ラインを維持してきたのだからすごい。
まさに縁の下の力持ちだ。
木造建築は奥が深いなぁ・・・・・

(S.Tomita)

taa2003 at 23:35|PermalinkComments(0)

2006年03月14日

SE構法の木骨住宅

昨日、半年振りにホームページに住宅をUPしたと思ったら、
今日またKさんから別の住宅の竣工写真がメールで送られてきた。
夜景写真がまだとのことだがまた近々UPできそうだ。
この住宅は私にとって2作目のSE構法の家である。

SE構法の家境SE構法の家境






SE構法はあの出雲ドームの構造設計者である播繁さんが開発したもので、
阪神淡路大震災の惨状を見たのがきっかけになっている。
構造計算に裏打ちされた強い木造住宅をつくりたいと考えたそうだ。

普通、木造住宅は構造計算をやらない。
簡便な壁量計算と大工さんの経験や勘に頼るのである。
それは決して悪いこととは思わないが、
技量の差によってバラツキがでるし、
柔軟なしなりが身上の無垢の木にとっては、
筋違いや多用する金物は相性のいいものではない。
筋違いの代わりに貫を使う伝統構法ならうなづけるが、
在来工法には疑問点が多い。

それならば、集成材とオリジナル金物で安定した強度が出せて、
構造計算に則るSE構法が安心である。
木造と考えると少々腹立たしくなるが、
木骨造と考えたらといとおしくも見えてくる。

1999年3月に徳島に初めてSE構法が上陸したときは、
水平に広がる日本的な空間をつくりやすい工法だとは思ったが、
メカ的でロボコップのように見えたから、
多分、自分には縁がないものと思っていた。
あれから時は流れ、いまはすっかり嵌っている。(笑)

初上陸のときに「住宅建築」から取材を受けて、
ワイエム設計室のMさんと対談した。
下がその記事です。笑ってやって下さい。

徳島のSELL・HOUSE展を見て徳島のSELL・HOUSE展を見て














(S.Tomita)

taa2003 at 23:55|PermalinkComments(0)TrackBack(0)

2005年11月30日

伝統工法と在来工法

木造には大きく分けて伝統工法と在来工法があるが、
現在の家のほとんどが在来工法で造られている。
それは昭和25年に建築基準法が制定され、床面積に応じて必要な筋違等を
入れる「壁量規定」の構造基準が定められたためである。

伝統工法は筋違の代わりに貫を使っているが、
貫は鎌倉時代に大陸から仏教建築とともに入ってきた建築様式(=禅宗様)であり、
それまでは貫の代わりとして長押(なげし)で柱間をつないでいた(=和様)。
長押に比べると貫は大層の優れもので地震に強い建築を造れるようになった。
それは筋違のようにがっしりと固める剛構造の考え方ではなく、
柳のようにしなる柔構造であるが、現在の壁量計算では評価は低く扱われているのだ。

古建築や木を知る人からみると腑に落ちない評価であり、
筋違で剛に固める在来工法は木にふさわしい工法ではないという声が多い。
木は生きているから、鉄骨やコンクリートとは違う。
筋違と金物で雁字搦めに固めては木の良さは出ない。
在来工法が伝統工法より本当に強いのか、疑問を抱き続けている。

●こんな内容の文を見つけた→「伝統工法と在来工法

(S.Tomita)

taa2003 at 23:55|PermalinkComments(0)

2005年09月09日

耐震・免震について

建てようネットの追加質問その2、
「耐震・免震についての基本的な考え方を教えてください」
こう答えた。

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耐震は地震のエネルギーに耐えることですから、
構造計算を行い剛構造にすることです。
一方、免震は地震のエネルギーから免れることですから、
エネルギーを直接受けない仕掛けが必要になります。
タイヤのゴムのようなもので建物と地面を切り離し(浮かし)ますから、
極端に太い部材にしなくてもいいわけです。
しかし、一般の木造在来工法は構造計算を行わず、
簡便な必要壁量計算で耐力壁を配置する方法ですから、
確かな数値の裏づけがありません。
どうしても数値で安心を得たい人は、木造では大臣認定を取得している
SE構法(木骨ラーメン構造)ということになってきます。
今の在来工法は筋違いで固めるという剛構造の考え方ですが、
昔ながらの伝統構法は基礎の石の上に柱を立て
柱間をでつないだ柔構造の考え方で建てています。
耐える限度を超えた時は、
すぐに崩壊するのではなく傾いて持ちこたえますから、
屋外に逃げる時間が生まれてきます。
また、基礎と建物を固定していないので、
基礎石からずれて地震力から免れるなど、
原始的ですが究極の免震構造になっています。
鉄骨やコンクリートと違って生身の木を使う木造は、
剛構造より柔構造が合っているという声が、
最近よく聞かれるようになりました。
傾いてもなかなか倒れない貫方式による構造が、
私も木造には似つかわしく思っています。

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(S.Tomita)


taa2003 at 13:21|PermalinkComments(0)TrackBack(0)

2005年08月07日

建物の構造

土・日曜の両日は今春完成した「透き影の家」の2回目の内覧会だった。
日曜はこの家を拠点にして、30歳前後の若い4組のご夫婦と一緒に、
以前設計した2件の住宅を見に行った。
一つ目は8年前に竣工した木造在来工法による2階建て住宅で、
地場杉をふんだんに使った温かい木の住まい。
もう一つは昨秋完成した鉄骨3階建ての事務所併用住宅で、
鉄骨の軽やかさを活かしたワンルーム空間のシンプルな住まいである。
まったく違う二つの構造。
透き影の家は大別すると木造になるが、
集成材と金物を使って組み上げる特殊な工法(SE構法)である。
ちょうど木造と鉄骨造の間の「木骨造」とでも呼びたくなる構造で、
木の持つ温かさや住みやすさと
鉄骨のスレンダーで軽やかな雰囲気を併せ持っている。
建物の構造には大きく分けて、
木造、鉄骨造、鉄筋コンクリート造と三つの選択肢があるが、
それぞれ特徴があり良さも違う。
その良さをどう引き出すかが設計者の役割であり、力の見せ所でもある。

P.S)Kさん、Sさん、住宅を見学させていただきありがとうございました。

(S.Tomita)


taa2003 at 23:20|PermalinkComments(0)TrackBack(0)