2011年09月
2011年09月26日
情報爆発化時代のクロスメディア戦略〜JAGAT大会2011
Tweet
皆様、お久しぶりです。日本印刷技術協会(JAGAT)という中堅の印刷会社が中心に加盟している印刷会社の業界団体があり、もう3ヶ月ほど前にそこで「情報爆発化時代のクロスメディア戦略」と題して、講演しました。
印刷会社の経営者、という、2011年ノいま、なかなかに難しい環境に置かれた方々への語りという文脈にはなっていますが、ここ最近、私が考えていることが、文章としてよくまとまっており、許可も頂いたので、転載して紹介します。
JAGAT大会2011 報告 クロスメディア分科会
情報爆発化時代のクロスメディア戦略
コンデナスト・デジタル
カントリーマネージャー
田端 信太郎 氏
私はリクルートでフリーマガジン『R25』の立ち上げ、ライブドアでポータル、ブログの事業など、紙のビジネスからネットのビジネスまでいろいろと携わってきた。コンデナストではiPad向けやスマートフォン、Webのビジネスに力を入れているが、私はこれらの事業を担当している。
コンデナストは「VOGUE」「GQ」「WIRED」などを発行する雑誌専業の出版社で、アメリカ本国では、「The New Yorker」「Vanity Fair」「Golf Digest」などを発行し、各分野で、部数は少ないが広告単価が高くてステイタス感があるものを作っている。
○紙メディアの周辺で起きている変化
私は雑誌ビジネスを「守る」ためにではなく、新しいメディア価値を創出するためにデジタルに取り組んできる。その辺の取り組みについて紹介する。
私が紙メディアの状況を見て思うことは、テクノロジーはいかに残酷なもので、かつ完膚無きまでに世の中を変えるかということである。このテクノロジーの残酷ということでは、例えば飛行機のチケットを買う場合、かつては旅行会社のカウンターに並んでチケットを買う人がほとんどだったが、今ではあまりいないだろう。インターネットで購入したほうが便利である。
また、「行灯や蝋燭は味わいがあって、ほのかな心温まる光でいい」などと言う。確かに情緒があるが、実際の照明は電気を点けるだろう。例えば、新撰組は幕末に毎日剣術の修行をしていたが、実際に戦場に出て行ったら、もう大砲と鉄砲で戦う時代で、刀は全く役に立たなかった。
印刷に限らず、今、世の中の様々なところでこういうことが、起こっているのではないか。
一方で、坂本龍馬も剣術修行して免許皆伝まで行ったが、彼は剣にこだわらず、さっさと剣を捨てて鉄砲を持つ。このように人間のタイプが2つ分かれる。どちらが良い悪いではなく、いろいろな時点でいろいろな判断がある。150年前に剣術修行している人間を「もう刀の時代ではないのに、ばかだな」と、今から笑うことは簡単だ。ただ当事者は「いや、武士たるもの飛び道具を使うことは卑怯である」「やはり武士道は剣が美しい」と、大まじめに思っていたかもしれない。
出版社にも保守的な人がいて、「出版文化」とはなどの名分を掲げ、「モニターで本を読むというのはそもそもどうなんだ」というところがある。実は、グーテンベルグによって活版印刷が出てきた時も、「紙みたいなもので本を読むなんて」という話があったようだ。当時は羊の皮に書いたり、石に彫ったりしており、「火を付けたら燃えてしまう紙など、あやふやなもの」ということである。
多くのところで、新しいテクノロジーによって取って代わられることに対して、既存のものが抵抗しようとする場面が見られる。ただ、テクノロジーは世の中を変えていくが、変えるのにそれなりに時間がかかることもある。インターネット、ソーシャルメディア、ツイッターは、いずれ世の中を変えていくし、それは印刷産業に限らずいろいろものを変えていくということである。
皆さんは印刷会社の方なので、印刷については始終考えているだろう。しかし、1消費者として考えた時はどうだろうか。旅行会社のカウンターがなくなろうが、そんなことは考えたこともなかっただろう。「携帯ですぐチェックインが空港でできるなら、それでいい」と思うかもしれない。しかし、自分自身のビジネスにも、実はそれと同じような構造が働いていることに常に向き合わないといけない。
新撰組は決してだらけていたわけでも不まじめに考えていたわけでもないだろう。彼らなりのリアリティをまじめに生きたていた。それでも、負け戦の時は負け戦になるということが、テクノロジーの残酷さである。
Tweet

