2009年04月25日

ダメ会社の不振事業によく見られる50の症状 @V字回復の経営【書評】

今日は、私にとって「金字塔」かつ「バイブル」的なビジネス書を読み返し、再度、頭にINPUTし直している。

GEのジャック・ウェルチが書いた「ウイニング勝利の経営」も、素晴らしい本なのだが、日本語で書かれたビジネス書の中で、この「V字回復の経営」ほどに「実践的」かつ「実戦的」なものを知らない

とくに危機的な状況に陥った事業の建て直しに取り組む事業責任者の方が、この本を読んでないようでは、それだけで真剣味に疑問符を付けられてもおかしくない、そんな本なのだ。

ちょうど1年ほど前に、この本に出会ったとき、手にとって数ページをめくり、読みだしだけで、興奮にツバをゴクリと飲みこんだものだ。私は、あまり本に書き込みをしながら読む習慣はないのだが、この本については、ラインマーカーが、そこかしこに引かれることとなった。

そして、去年の夏に、ライブドアのメディア事業部の幹部合宿を行った際には、事前の課題図書として、開発エンジニア陣まで含め、この本を配り、各人に「質問アンケート」を渡し、それに答えて貰いつつ、読んでもらうことにまでなった。問題意識を共有し、合宿当日に、深く突っ込んだ議論を高密度で行うために、非常に有用だったことは、言うまでも無い。

V字回復の経営―2年で会社を変えられますか (日経ビジネス人文庫)V字回復の経営―2年で会社を変えられますか (日経ビジネス人文庫)
著者:三枝 匡
販売元:日本経済新聞社
発売日:2006-04
おすすめ度:5.0
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出版社 / 著者からの内容紹介「2年で黒字化できなければ、退任します」――。自ら退路を断つことで社員の甘えを殺し、皆を巻き込む「戦略」で一気呵成に勝ち戦へ転じる。「V字回復」という言葉を流行らせたベストセラーをいよいよ文庫化。

内容(「BOOK」データベースより)
「2年で黒字化できなければ、退任します」―。戦略的なアプローチと覚悟(高い志)を武器に不振事業再建に取り組む黒岩莞太は、社内の甘えを断ち切り、業績を回復させることができるか。実際に行われた組織変革を題材に、迫真のストーリーで企業再生のカギを説いたベストセラー。

著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
三枝 匡
1967年一橋大学経営学部卒業後、三井石油化学を経てボストン・コンサルティング・グループ勤務。75年スタンフォード大学でMBA取得後、30代から経営の実践に転じ、赤字会社再建やベンチャー投資など三社の代表取締役を歴任。86年、株式会社三枝匡事務所を設立。上場会社ないし同等規模の企業を対象に不振の事業部・子会社の再建支援を行うターンアラウンドスペシャリストとして活動する他、数社の社外取締役や監査役なども務めていた。現在、株式会社ミスミグループ本社(東証一部上場)代表取締役・CEO。一橋大学大学院客員教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
その後は、イントラのブログで、全社員に紹介し、『一般社員で「V字回復の経営」を読みたい人は、私がポケットマネーで書籍代を持ちます!!』とまで、言い切って社内に紹介し、実際に何人もの社員が、この本を読んでくれた。

また、その後、ライブドアのメディア事業部で導入されたビジネスユニット制度も、かなり、この本で書かれた事例を意識しつつ、社内で議論し、肉付けしたものだ。

確かに、私は小難しい経営書も大好きだったりする。

しかし、この本は、MBA的な理論・フレームワークの経営書ではなく、百戦錬磨のターンアラウンドコンサルタントである三枝氏が、あくまで実在の事例を昇華させながら書いた迫真のストーリー仕立てになっている。ゆえに、「空疎な抽象論」ではなく現場の社員・マネージャーでも「あぁ、こういうことあるある!」と思い、NHK「プロジェクトX」を見るように、楽しみながら読める本になっている。

しかしながら、単なるエンタメ本や、サルでも分かる式に「シュガーコート」された本では決してない。

・「ビジネス小説としての娯楽性」
・「企業再生ノウハウ本としての実用性」
・「組織論としての普遍性」

これら三つの要素が実に高い次元で融合した奇跡的な名著
である。
ビジネスマンである限り、これから、この本を何回も読み返すことになるのだろうな、と感慨にふけりながら、PC脇にこの本を置いて、ブログ記事を書いている。

巨額の赤字に苦しんでいる電機メーカーを筆頭に、この不況がもたらした苦境からの脱却を狙うビジネスマンには必読書ではないだろうか。

三枝さんの本は3冊あって、「V字回復の経営」以外に、「戦略プロフェッショナル」経営パワーの危機がある。3冊どれも素晴らしいから、時間に余裕のある人は3冊とも全部読んでもいいと思うのだが、あえて一冊だけ上げるとすると、集大成である、この「V字回復」になる。営業マネジメントに興味の有る人には「戦略プロフェッショナル」をオススメする。

「V字回復の経営」ではストーリーが、主人公の黒岩が、一部上場大手メーカーの不振事業の再生に取り組むため、子会社に乗り込むところから始まるのだが、その前半部分では「それまでのアスター事業部がいかにダメ事業だったのか」次々にそのダメぶりがあますところなく描写され、「不振事業によく見られる症状50」としてまとめられる。

この50個の症状リストが、あまりに「あぁ、分かる分かる」と身につまされるリストなので、皆様に紹介させて頂く。

実際の文中では、この50個の症状の見出しごとにちょっとした解説がついていて、これがまた秀逸なのだ。雰囲気を伝えるために、1番の分だけは、さわりを書き写しておく。

私が、これまでの約10年のビジネスマン人生を振り返って、「ああ、あるある!」と膝を打ったものは、太字にしてある。

========「不振事業によく見られる症状50」========

1) 組織内に危機感がない。一般企業の業績悪化と社内の危機感は逆相関の関係である。
⇒業績の悪い会社ほどたるんだ雰囲気であることが多く、業績のよい成長企業のほうがピリピリしている。

2) カンパニー制や執行役員制を導入したが、大した効果をあげていない


3) 経営者は、ただ危機感を煽る言葉を口にしているだけである。

4) 横並びの業界心理が経営陣を支配している

5) リスク戦略の実行能力の低い人材が、改革者として配されている。

6) 経営スキルの低い経営者が、社員の意識を変えるために「意識改革をしよう」と叫んでいる。

7) 多くの社員が「そと者」を心理的に区別している

8) 激しい議論は大人げないと思われている。


9) トップが自らハンズオンの経営スタイルをとっていない

10) 昔の事ばかりを引き合いに出す「語り部」が多い

11) ミドルが問題を他人のせいばかりにしている

12) 組織に「政治性」がはびこっている。

13) 時間だけが経過し、会社の取り得る選択肢が次第に減少している。

14) 会議の出席者がやたらと多い

15) ミドルが機能別のたこつぼに潜りこんでいる。

16) プロダクトマネージャーが社内政治の「掃き溜め」にされている

17) 全部署が全商品群に関与しているため、個々の商品への責任感が薄まっている。

18) 「妥協的態度=決定の先延ばし=時間軸の延長=競争力の低下」のパターン

19) 社内では顧客の視点や競合の話がなく、内向きの話ばかり

20) 「負け戦」をしているという自意識がない

21) 個人として「赤字の痛み」を感じていない。責任を皆で薄めあっている。

22) 商品別の全体戦略が「開発→生産→営業→顧客」の一気通貫で行われていない


23) 商品別損益がボトムラインで語られていない。

24) 原価計算がたくさんの商品を丸めた形で行われている

25) 赤字の原因を個々の「現場」に遡及することが出きない。

26) 関係会社を含めた商品別の連結損益が見えていない。

27) 利益志向の管理システムが途中で切れており、組織末端では旧来の売上高志向から抜け切れていない。

28) トップも社員も表層的な数字ばかりを追いかけ、議論が現場の実態にせまっていない。

29) 開発者がマーケティングや市場での勝ち負けに鈍感になっている。

30) あれもこれもと開発のテーマが多すぎる

31) 開発陣が「顧客メリットの構造」「顧客の購買ロジック」を完全に把握していない。

32) 社員が外部に会社の不満を垂れ流し、会社の看板を背負うことを投げ出している。

33) 過去の戦略不在やふらつきのため、取引先が不信感を抱いている。

34) 組織末端のあちこちに一種の被害者意識が広がっている。


35) 本社の商品戦略が顧客接点まで届いていない。

36) 営業活動のエネルギー配分が管理されていない。

37) 「絞り」「セグメンテーション」の考え方が足りない。


38) 「戦略」が個人レベルまで降りておらず、毎日の「活動管理」のシステムが甘い。

39) ラインの推進力が弱く、スタッフが強い。

40) 代理症候群が広まり、組織の各レベルにミニ大将がはびこっている。

41) 社員は勤勉ではない。とりわけ役員やエリート層が汗を流して働かない。

42) 抜本的に構造を変えるべきものを、個人や狭い職場の改善の話にすり替える人が多い。

43) 組織に感動がない。表情がない。真実を語る事がタブーとなっている。

44) 社員が心を束ねるために共有すべき「攻めの戦略」が提示されていない。

45) 総合的な分析力と経営コンセプトに欠けている。戦略と現場の問題がバラバラに扱われている。

46) 事業全体を貫くストーリーがない。組織の各レベルで戦略が骨抜きにされている。


47) 対処療法的な組織変更や人事異動が頻繁に行われ、既に改革疲れを起こしている。

48) 会社全体で戦略に関する知識技量が低く、戦略の創造性が弱い。

49) 幹部の経営リテラシー(読み書き能力)が不足している。

50) 狭い社内で同じ考え方が伝播し、皆が似たようなことしか言わない。社外のことに鈍感。

V字回復の経営―2年で会社を変えられますか (日経ビジネス人文庫)V字回復の経営―2年で会社を変えられますか (日経ビジネス人文庫)
著者:三枝 匡
販売元:日本経済新聞社
発売日:2006-04
おすすめ度:5.0
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戦略プロフェッショナル―シェア逆転の企業変革ドラマ (日経ビジネス人文庫)戦略プロフェッショナル―シェア逆転の企業変革ドラマ (日経ビジネス人文庫)
著者:三枝 匡
販売元:日本経済新聞社
発売日:2002-09
おすすめ度:5.0
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1. Posted by iPhoner   2009年04月27日 10:58
キャッチコピーの天才かと思いました。

惹かれない理由がないのではw

買ってみて、しっかり勉強します
2. Posted by         2009年05月21日 23:21
まぁ口ではなんとでも言えるさね。それこそ無責任に。いい商売だね

この種のビジネス書を、カネ払って読もうとする人の気が知れない

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