2013年03月10日

『「高感度な消費者」という言い方は消費者を馬鹿にしている。』〜田端発言録:【パネルディスカッション】2013年の展望 時代をつかむ高感度層はどこに?

先日、伊藤忠ファッションシステムさんが運営されているマーケティングに関する会員制サロン「Marketing Eye」にて「2013年の展望 時代をつかむ高感度層はどこに?」でマガジンハウス・GINZAの中島編集長と、伊藤忠FSの方とパネルディスカッションに参加させて頂きました。

その会員向けの紹介サイトの中から田端の発言部分だけを主に紹介させてもらう許可を頂きましたので転載して紹介します。今回のディスカッションに限らず、色々と面白いイベントを主催されているようですので、ご興味をお持ちになった方は是非、MarketingEyeにご加入くださいませ。

=====

【パネルディスカッション】2013年の展望 時代をつかむ高感度層はどこに?

パネリスト:
NHNJapan 執行役員 広告事業グループ長 田端信太郎氏
マガジンハウス『GINZA』編集長 中島敏子氏

高感度層は、何処にいるのか 

田端信太郎(以下、田端):高感度の「感度」は、感じるということで“アンテナ感度”みたいなニュアンス。あくまでも一般消費者は、感じるだけであって発信はしていない。君の家のアンテナは、テレビの電波をよくキャッチする性能のいいアンテナだ、といった意味であって、「受け手に過ぎない」という、多少見下しているニュアンスがあるのかなと。学校の先生が褒めるような「物わかりの良さ」とか「優等生」みたいな感じが含まれていて、「あなたは、高感度層だ」と言われても嬉しくないんじゃないか。リテラシーの高い人ほどバカにされているのではないかと感じると思う。今は、マーケッタ―側も企業側もブランド側も、一般ユーザーと同じ地平の上にいるので、感度が高いという言い方自体がどうなのか。「我々は答えを知っている」「我々がトレンドを作っている」と過信して、「あなたは、さっさと気づけて賢い」というバカにしたニュアンスを含んでいるので、「高感度層」という言葉がどうなんだろうということが、自分なり腑に落ちた(笑)。 

高感度層というのはどんな人達なのか?

田端: さきほども出ていたスティーブ・ジョブズの黒いタートルにジーンズのファッション。あれは、どうにも変わりようがない。どんなファッションブランドの招待状を送っても来ないだろうと(笑)。もう少し若い世代の人でも、ザッカーバーグはずっとパーカーだ。すごいお金持ちなんだから、もう少しちゃんとした格好をしたらと言っても変わらないだろう。今のパワーユーザ―は、自分に関係のないことをシャットアウトする能力が高い。自信を持って俯瞰していられるほど洗練された消費者で、感度を高めないといけないのは、企業の方なのではないか。今、そんな気がしてきた。 

田端:感度の高い、パワーのある消費者ほど“メディアにのせられてたまるか”というセンサーが常に働いていると思うので、更にツイストした感じでうまくのせていかないといけないのかなと。ネットサービスの先端の中でも、ユーザーがサービス提供者の思っていなかった使い方を発見する。例えば『ニコニコ動画』では、すごくいいシーンで後ろの画が見えなくなるくらい何万人が一気につぶやいたり。LINEのスタンプだけでコミュニケーションするということも、そのひとつだ。そういった遊べる余地を残しておくのも、すごく大事ではないかと思う。

田端: これまでのマーケティングは、このトレンドにのらないとダメ…(たとえばフェイスブックやツイッターなら)フェイスブックやツイッターを始めないと流行に遅れますよ、と言って煽られて、もっときつい言葉でいうと脅迫的なものもあったかと思う。バブルの頃に、「このシティホテルを予約しないとダメ」みたいな、『ポパイ』や『ホットドッグプレス』的な分脈があったように(笑)。今でも、ネット系のマーケティングには多いと思う。「御社も早くツイッターを始めないと、競合にやられますよ」と。マスでLINEを使ってくれている層は、“使いたいから使っているだけ”という自発的な層だ。一部、煽られて使う層もあるかと思うが、長続きはしない。楽しいから、便利だから、長く使う、という層をどれだけ捉えられるかというのが本質だと思うから。メディア自身が大衆を手のひらで操作するという発想自体、今は機能しないと感じている。

田端: 今でこそ、スマートフォン、スマートフォンと誰もが言っているが、iPhone・スマートフォンが出だした頃の日本はフィーチャーフォンの、いわゆるガラケーの文化がものすごく発達していて、iモードで占いや音楽などのあらゆるコンテンツが揃っていた。キーボードを見ないと文字が打てないとか、画面の動作が遅いとかで、「日本の一般の方はスマートフォンを使わない」と言う携帯コンテンツ関連会社の人は多かった。後で言うのは簡単だが、当時シーンのど真ん中にいて儲かっている会社にとっては、新しい波が来た時に変化するのはすごく難しい。実はこのようなことは、世の中ではずっと繰り返されてきたことかなと思う。例えば、1910年代くらいに車が出始め、郊外型のショッピングモールが出き始めた時、(徒歩で買い物できる生活圏内の)商店街のパン屋さんやチーズ屋さんみたいな専門店に一気にお客さんが来なくなって困ったと思う。それまでは徒歩圏内だから確実に買ってくれていたお客さんが、10、20分車で走った所にある大型店舗へ行ってしまう。そんな時、パン屋さんチーズ屋さん自身が車に乗っていなかったら、すぐには気付かない。また、最近ではリアル店舗とネット店の間でも同様で、ファッションでも、リアル店舗に行って商品を試着だけして、実際に購入するのはネット通販だと。さすがにひどい話だと思うけれど、自分でもデジカメやパソコンを買う際に、店頭で実際に商品を見てからネットで価格検索して、お得な価格だったら申し訳ないけれどネット通販を利用する。都心の一等地にフラッグシップストアを持っていると、「最近、前年対比で既存店の売り上げが下がっているなぁ」なんていう時でも、何が起こっているかがわからない。「ドーナツ」というか、常にど真ん中にいすぎないことは大事だと思っている。 





田端: 消費者・ユーザーが、どういう環境に行って、プレッシャーを受けているかというのも大事だと思っている。1ヵ月くらい前、面白い記事があった。『なんでんかんでん』という環七のラーメン屋さんが閉店した。なぜ閉店したかというコメントにハッとさせられた。環七沿いのラーメン屋さんは、今困ってるらしい。なぜかというと、近年とくに飲酒運転の取り締まりが厳しくなっているからと。確かに、飲酒運転はいいことではないが、店にとっては死活問題だった。その他にもガソリン代が上がったり若者の車離れもあるかと思うけれど。そう見ると、本当に世の中つながっていると思う。最近、「若者の車離れを食い止めるいいアイデアを出して」と言われたらどうするだろうと、ずっと考えている。なんで車に乗らないか…スマートフォンが出てきたらますます乗らなくなる、と思った。なぜかというと、同じ能力で同じモチベーションで働いているビジネスマンが2人いるとしたら、車通勤30分の人と電車通勤30分の人では、電車通勤の人の方が30分間にSNSやメール・資料チェックなどで仕事ができる。最近では、地下鉄でも使えるし。車の運転自体が楽しいという人も10人に1人か2人いるかもしれないが、ほとんどはただの移動手段だとしたら、クルマ通勤は時間を無駄に使っていることになる。Googleでは、最近では若い社員はサンフランシスコの街中に住んで、会社が出しているバスで、都心から郊外に通勤するという。バスの中では、みんなネットをやっているらしい(笑)。これも、逆転した面白いトレンドだ。やっぱり時間というものがますます貴重になっている中で、Googleが真面目に(車の)自動運転を研究していることは、僕もすごく解る。アメリカはほとんど車社会で、メディア接触が限られた中で、例えば1日平均1時間車に乗っているとしたら、その時間はラジオくらいしかないわけで。自動で運転できるようになったら、その時間はネットをする、検索数も増える、Googleも儲かると。そしてなぜ車が売れないかを考えると…。100万円の軽自動車も1000万円のSクラスも、渋滞にはまったら一緒だ。そういうことでは、航空会社の方が進んでいると思う。例えばファーストとか上のクラスには、だいたいファストレーンがあったり、ヴァージンではイミグレーションさえファストパスを渡してくれる。飛行機に乗っている間だけが航空会社ではなくて、目的地から最後の目的地まで、家からホテルまで、全体のトータルでいかに快適に過ごしてもらうか。ヴァージンは、アッパークラスになると家まで車が迎えに来て、空港からホテルまで行ってくれる。それを高級車で考えたら、乗り心地とかいうよりも、例えば金に糸目をつけないのであれば、銀座の公共駐車場をトヨタが買収して「レクサス限定の優先駐車場」にするとか。箱根ターンパイクをトーヨータイヤが買収したが、「レクサス・ターンパイク」みたいな、レクサスに乗っている人だけが通れる道路があってもいいわけで(笑)。お金にものを言わせて酷いんだけれど、空港の搭乗口に並んでいるところをヴァージンのアッパークラスの人がすり抜けて行くのと同じじゃないかと思う。服も生活のパーツに過ぎないから、トータルの中でどう提案できるかという意味でいうと、昔はおしゃれな人は全般的に高感度という評価を勝ち得ていたけれど、今や良くも悪くも「いちオタク」のジャンルに過ぎない。とくに男の場合、そうなってしまったような気がする。 

田端: 僕は、有名ブロガーのマネタイズにずっと関わっている。ブログで書いていることは無料で読め、有料メールマガジンだとだいたい月800円くらい、講演会になると3千〜1万円弱くらい。で、ある方が「20名限定 ホテルで夕食会」を3万円で行った。席はすぐに埋まったらしい。夕食会で語っていること自体は、ブログの内容ときっと余り変わらないのだけれど、誰もクレームは言わない(笑)。例えば人に話す時に、ブログにこんなことが書いてあったと言っても誰でも読めるものだから自慢できない。有料メールマガジンなら微妙に自慢になり、講演会に行ったと言えば「ふーん」となる。この前一緒に晩ご飯食べて話を聞いたとなれば同じ話を聞いたとしても「すごい!」となる。銀座のクラブに行って、ウーロン茶や水割りを「原価はいくらだよね」って言うのは無粋なわけで。飲むことのトータルを含めたお金を支払って、いい気分になって帰る。人間が挟まって接客する意味では、水を売っている商売なだけに…(笑)。「エスキモーに氷を売る」って言うけれど、深いなぁと思う。ブロガーの話に戻ると、情報そのものは原価ゼロの無料とも言えるので、それを変換させる。勝間和代さんは、月謝数千円で塾をやっているらしい。メールマガジンだと、数千円は高いけれど、これは頭のための「知」のスポーツクラブだと(笑)。スポーツクラブといえば、数千円の月謝を払うのは普通に感じる。比較の対象を変えてしまう。
 

田端:LINEのスタンプが売れるのも、その文脈で理解できる。“原価は無料なのに170円か。LINE儲けてるな”という意地悪な見方もあるかもしれないけれど、170円で人をクスッと1回笑わせたり喜ばせたりすることができるから、安いじゃんという見方もある。ギフトとして送る機能もあるので、“新しいスタンプをプレゼント”なんて送ったらペットボトルの飲み物1本を奢るよりも、よっぽど喜ばれるかもしれない(笑)。高いとか安いとかとは違う文脈をどう作れるか、比較のポイントを変えられるかが大事だと思う。 

田端:20年くらい前から、高城剛さんを心の師匠と勝手に思っている僕は(笑)、15年くらい前に彼が言っていたことで今もなおそうだなと思っていることがある。女子高生にとっての最強のキラーコンテンツは、100億円かけたハリウッドの新作でもなく、村上春樹の最新作でもなく気になる「彼氏からのメール」だと。コンテンンツの発信者も受け手も、マスメディアが作ったコンテンツも彼氏からのメールも、LINEのトークもスタンプも、すべてフラットに並んでいる。そこで、人ごとでなくて、自分自身にどれくらい響くものになっているかが大事だろう。そんな中で、先ほどのLINEのスタンプはブランドのロゴを拒否しているというところを、ファッション界の方々にはその意味を考えてもらいたい。顔の見えない、あくまでバーチャルな法人でしかないものや概念しかないものというよりは、その向こうに生身の人間がいて笑ったり怒ったりの感情があるかみたいなところこそが、リアリティを担保している。ソーシャルやLINEが出てきて思うのは、ネット自体はテクノロジーで、その向こうの人間がどれくらい本気で思っていることなのかが、生々しく通じる。スマ―トフォンが出てきて、今この瞬間腹が立ったとか美味しい物を食べたとか伝えたいことがあった時、デスクトップのパソコンまで行ってから伝えるのでは薄まってしまう。リアルタイムで伝えられるようになったというのが、スマートフォンの恩恵だ。世の中のインパクトで言うと、車が出てきた時と同じくらいだと思う。車が普及してから、郊外型のベッドタウンやショッピングモール、ドライブスルーが出来るまで30年くらいかかっている。今スマートフォンは、車でいうとまだショッピングモールやドライブスルーがない時代だと思っている。これから、良いか悪いかは別にして、どんどん本屋さんやCDショップなどが少なくなったり、お店の形・会社の立地・家の形まで含めて、いろいろなものが変わっていくのだろう。そんな中で、やはり今一番人間が求めているのは、「承認要求」じゃないだろうか。ソーシャルもLINEも一番強いのは実はそこだと思っている。最後にちょっと挑発的なことを言わせてもらうと、女性が何でファッションやヘアスタイルやコスメを気にするかというと、結局は気持ちの根っこ、ベースには人から誉めてほしいというのがあると思う。8割くらいの人はそうかなと。LINEのスタンプやフェイスブックに「いいね」って押されて嬉しいという気持ちは、昔と違って今は物を買わなくても得られる。たまたま歩いていて見えたきれいな夕日の写真をアップしたら、友達がいいねって押してくれたとか。「物を売る」ということが、今はいろんな意味でハードルが上がっているなと思う。
==============

私の今回の話は尊敬する大先輩である菅付雅信さんの新著「中身化する社会」的な視点からものすごく影響を受けていますので、今回の話(特に前半部分)を読んで面白いと思った方は、是非お読みください!!

中身化する社会 (星海社新書)
中身化する社会 (星海社新書) [新書]
 



このエントリーをこのエントリーを含むはてなブックマークはてなブックマーク - 『「高感度な消費者」という言い方は消費者を馬鹿にしている。』〜田端発言録:【パネルディスカッション】2013年の展望 時代をつかむ高感度層はどこに?

トラックバックURL

コメントする

名前:
URL:
  情報を記憶: 評価:  顔   星
 
 
 
田端信太郎、初の単著が発売 MEDIA MAKERS―社会が動く「影響力」の正体
MEDIA MAKERS
―社会が動く
「影響力」の正体~
メディアに踊らされずに、
メディアで人を踊らせる方法


Tabata Shintaro@facebook
記事検索
私のオススメ本 ベスト集


LDリーダー購読者数推移


ブックマーク数推移グラフ

  • ライブドアブログ