マーケティング
2013年03月10日
『「高感度な消費者」という言い方は消費者を馬鹿にしている。』〜田端発言録:【パネルディスカッション】2013年の展望 時代をつかむ高感度層はどこに? Tweet
先日、伊藤忠ファッションシステムさんが運営されているマーケティングに関する会員制サロン「Marketing Eye」にて「2013年の展望 時代をつかむ高感度層はどこに?」でマガジンハウス・GINZAの中島編集長と、伊藤忠FSの方とパネルディスカッションに参加させて頂きました。
その会員向けの紹介サイトの中から田端の発言部分だけを主に紹介させてもらう許可を頂きましたので転載して紹介します。今回のディスカッションに限らず、色々と面白いイベントを主催されているようですので、ご興味をお持ちになった方は是非、MarketingEyeにご加入くださいませ。
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【パネルディスカッション】2013年の展望 時代をつかむ高感度層はどこに?
田端:感度の高い、パワーのある消費者ほど“メディアにのせられてたまるか”というセンサーが常に働いていると思うので、更にツイストした感じでうまくのせていかないといけないのかなと。ネットサービスの先端の中でも、ユーザーがサービス提供者の思っていなかった使い方を発見する。例えば『ニコニコ動画』では、すごくいいシーンで後ろの画が見えなくなるくらい何万人が一気につぶやいたり。LINEのスタンプだけでコミュニケーションするということも、そのひとつだ。そういった遊べる余地を残しておくのも、すごく大事ではないかと思う。
田端: これまでのマーケティングは、このトレンドにのらないとダメ…(たとえばフェイスブックやツイッターなら)フェイスブックやツイッターを始めないと流行に遅れますよ、と言って煽られて、もっときつい言葉でいうと脅迫的なものもあったかと思う。バブルの頃に、「このシティホテルを予約しないとダメ」みたいな、『ポパイ』や『ホットドッグプレス』的な分脈があったように(笑)。今でも、ネット系のマーケティングには多いと思う。「御社も早くツイッターを始めないと、競合にやられますよ」と。マスでLINEを使ってくれている層は、“使いたいから使っているだけ”という自発的な層だ。一部、煽られて使う層もあるかと思うが、長続きはしない。楽しいから、便利だから、長く使う、という層をどれだけ捉えられるかというのが本質だと思うから。メディア自身が大衆を手のひらで操作するという発想自体、今は機能しないと感じている。
田端: 今でこそ、スマートフォン、スマートフォンと誰もが言っているが、iPhone・スマートフォンが出だした頃の日本はフィーチャーフォンの、いわゆるガラケーの文化がものすごく発達していて、iモードで占いや音楽などのあらゆるコンテンツが揃っていた。キーボードを見ないと文字が打てないとか、画面の動作が遅いとかで、「日本の一般の方はスマートフォンを使わない」と言う携帯コンテンツ関連会社の人は多かった。後で言うのは簡単だが、当時シーンのど真ん中にいて儲かっている会社にとっては、新しい波が来た時に変化するのはすごく難しい。実はこのようなことは、世の中ではずっと繰り返されてきたことかなと思う。例えば、1910年代くらいに車が出始め、郊外型のショッピングモールが出き始めた時、(徒歩で買い物できる生活圏内の)商店街のパン屋さんやチーズ屋さんみたいな専門店に一気にお客さんが来なくなって困ったと思う。それまでは徒歩圏内だから確実に買ってくれていたお客さんが、10、20分車で走った所にある大型店舗へ行ってしまう。そんな時、パン屋さんチーズ屋さん自身が車に乗っていなかったら、すぐには気付かない。また、最近ではリアル店舗とネット店の間でも同様で、ファッションでも、リアル店舗に行って商品を試着だけして、実際に購入するのはネット通販だと。さすがにひどい話だと思うけれど、自分でもデジカメやパソコンを買う際に、店頭で実際に商品を見てからネットで価格検索して、お得な価格だったら申し訳ないけれどネット通販を利用する。都心の一等地にフラッグシップストアを持っていると、「最近、前年対比で既存店の売り上げが下がっているなぁ」なんていう時でも、何が起こっているかがわからない。「ドーナツ」というか、常にど真ん中にいすぎないことは大事だと思っている。
その会員向けの紹介サイトの中から田端の発言部分だけを主に紹介させてもらう許可を頂きましたので転載して紹介します。今回のディスカッションに限らず、色々と面白いイベントを主催されているようですので、ご興味をお持ちになった方は是非、MarketingEyeにご加入くださいませ。
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【パネルディスカッション】2013年の展望 時代をつかむ高感度層はどこに?
■パネリスト:
NHNJapan 執行役員 広告事業グループ長 田端信太郎氏
マガジンハウス『GINZA』編集長 中島敏子氏
高感度層は、何処にいるのか
田端信太郎(以下、田端):高感度の「感度」は、感じるということで“アンテナ感度”みたいなニュアンス。あくまでも一般消費者は、感じるだけであって発信はしていない。君の家のアンテナは、テレビの電波をよくキャッチする性能のいいアンテナだ、といった意味であって、「受け手に過ぎない」という、多少見下しているニュアンスがあるのかなと。学校の先生が褒めるような「物わかりの良さ」とか「優等生」みたいな感じが含まれていて、「あなたは、高感度層だ」と言われても嬉しくないんじゃないか。リテラシーの高い人ほどバカにされているのではないかと感じると思う。今は、マーケッタ―側も企業側もブランド側も、一般ユーザーと同じ地平の上にいるので、感度が高いという言い方自体がどうなのか。「我々は答えを知っている」「我々がトレンドを作っている」と過信して、「あなたは、さっさと気づけて賢い」というバカにしたニュアンスを含んでいるので、「高感度層」という言葉がどうなんだろうということが、自分なり腑に落ちた(笑)。高感度層というのはどんな人達なのか?
田端: さきほども出ていたスティーブ・ジョブズの黒いタートルにジーンズのファッション。あれは、どうにも変わりようがない。どんなファッションブランドの招待状を送っても来ないだろうと(笑)。もう少し若い世代の人でも、ザッカーバーグはずっとパーカーだ。すごいお金持ちなんだから、もう少しちゃんとした格好をしたらと言っても変わらないだろう。今のパワーユーザ―は、自分に関係のないことをシャットアウトする能力が高い。自信を持って俯瞰していられるほど洗練された消費者で、感度を高めないといけないのは、企業の方なのではないか。今、そんな気がしてきた。田端:感度の高い、パワーのある消費者ほど“メディアにのせられてたまるか”というセンサーが常に働いていると思うので、更にツイストした感じでうまくのせていかないといけないのかなと。ネットサービスの先端の中でも、ユーザーがサービス提供者の思っていなかった使い方を発見する。例えば『ニコニコ動画』では、すごくいいシーンで後ろの画が見えなくなるくらい何万人が一気につぶやいたり。LINEのスタンプだけでコミュニケーションするということも、そのひとつだ。そういった遊べる余地を残しておくのも、すごく大事ではないかと思う。
田端: これまでのマーケティングは、このトレンドにのらないとダメ…(たとえばフェイスブックやツイッターなら)フェイスブックやツイッターを始めないと流行に遅れますよ、と言って煽られて、もっときつい言葉でいうと脅迫的なものもあったかと思う。バブルの頃に、「このシティホテルを予約しないとダメ」みたいな、『ポパイ』や『ホットドッグプレス』的な分脈があったように(笑)。今でも、ネット系のマーケティングには多いと思う。「御社も早くツイッターを始めないと、競合にやられますよ」と。マスでLINEを使ってくれている層は、“使いたいから使っているだけ”という自発的な層だ。一部、煽られて使う層もあるかと思うが、長続きはしない。楽しいから、便利だから、長く使う、という層をどれだけ捉えられるかというのが本質だと思うから。メディア自身が大衆を手のひらで操作するという発想自体、今は機能しないと感じている。
田端: 今でこそ、スマートフォン、スマートフォンと誰もが言っているが、iPhone・スマートフォンが出だした頃の日本はフィーチャーフォンの、いわゆるガラケーの文化がものすごく発達していて、iモードで占いや音楽などのあらゆるコンテンツが揃っていた。キーボードを見ないと文字が打てないとか、画面の動作が遅いとかで、「日本の一般の方はスマートフォンを使わない」と言う携帯コンテンツ関連会社の人は多かった。後で言うのは簡単だが、当時シーンのど真ん中にいて儲かっている会社にとっては、新しい波が来た時に変化するのはすごく難しい。実はこのようなことは、世の中ではずっと繰り返されてきたことかなと思う。例えば、1910年代くらいに車が出始め、郊外型のショッピングモールが出き始めた時、(徒歩で買い物できる生活圏内の)商店街のパン屋さんやチーズ屋さんみたいな専門店に一気にお客さんが来なくなって困ったと思う。それまでは徒歩圏内だから確実に買ってくれていたお客さんが、10、20分車で走った所にある大型店舗へ行ってしまう。そんな時、パン屋さんチーズ屋さん自身が車に乗っていなかったら、すぐには気付かない。また、最近ではリアル店舗とネット店の間でも同様で、ファッションでも、リアル店舗に行って商品を試着だけして、実際に購入するのはネット通販だと。さすがにひどい話だと思うけれど、自分でもデジカメやパソコンを買う際に、店頭で実際に商品を見てからネットで価格検索して、お得な価格だったら申し訳ないけれどネット通販を利用する。都心の一等地にフラッグシップストアを持っていると、「最近、前年対比で既存店の売り上げが下がっているなぁ」なんていう時でも、何が起こっているかがわからない。「ドーナツ」というか、常にど真ん中にいすぎないことは大事だと思っている。
Tweet
2009年07月11日
2009年04月09日
ネットサービスのコンセプトを「そもそも論」で点検する12の質問 Tweet
ライブドアでは、様々なコンテンツ、ネットサービス、メディアが運営されています。
しかし、競合も、ユーザーも、マネタイズの手段も、どんどん変化していくネットの業界では、少しでも、気を抜くと、すぐに「そもそもでいうと、このコンテンツって、何をやりたかったんだっけ?」と、サービス立ち上げ当初の仮説からいつの間にか離れてしまい、コンセプトがボンヤリして、マンネリ運営になってしまう危険が常にあります。
それを防ぐためには、How(どうやるか?)ばかりでなく、What(何をやるか?)やWhy(なぜ、やるのか?)といった青臭い話を、キチっと正面から向き合って話すメカニズムを、埋め込むことが必要です
そこで、重要サービスに対して、「骨太のコンセプト」を再確認して、マネジメントと現場が、お互いに同じ思いを共有するために、そもそも論から、じっくり話す「インテンシブMtg」を、事業部長が招集者になって定期的に始めました。
言うなれば、サービスコンセプトの観点から、全プロダクトを「たな卸し」するのです。
そのMtgで、手ぶらでやってきて、「そもそもどうよ?」という話をするのも、かなり効率が悪そうだな、と思い、Mtgのガイドラインとして、各コンテンツの責任者に、事前に宿題として投げておいた質問項目が12個ほどあります。
ネットサービスやメディアの価値を点検する上で、汎用的に使えると思いましたので、今日はそれを紹介させてもらいます。
例えば、新規サービスを立ち上げる時など、下記の問いに対して、考え抜かれた答えをスラスラと言えるようであれば、コンセプト(WhatとWhyについては)第一段階は、「合格」という感じではないでしょうか。
逆に、この質問に明確に答えられないようであれば、「儲かる/儲からない」は別にして、そもそも、自分たち自身でも「何をやりたいのか」がよく分かってない?ということになります。
上記の質問は、私が、これまで、新規事業やサービスを企画するときに、いろんな意志決定者から、私自身が問い詰められてきたことの集大成的なものになります。
しかし、競合も、ユーザーも、マネタイズの手段も、どんどん変化していくネットの業界では、少しでも、気を抜くと、すぐに「そもそもでいうと、このコンテンツって、何をやりたかったんだっけ?」と、サービス立ち上げ当初の仮説からいつの間にか離れてしまい、コンセプトがボンヤリして、マンネリ運営になってしまう危険が常にあります。
それを防ぐためには、How(どうやるか?)ばかりでなく、What(何をやるか?)やWhy(なぜ、やるのか?)といった青臭い話を、キチっと正面から向き合って話すメカニズムを、埋め込むことが必要です
そこで、重要サービスに対して、「骨太のコンセプト」を再確認して、マネジメントと現場が、お互いに同じ思いを共有するために、そもそも論から、じっくり話す「インテンシブMtg」を、事業部長が招集者になって定期的に始めました。
言うなれば、サービスコンセプトの観点から、全プロダクトを「たな卸し」するのです。
そのMtgで、手ぶらでやってきて、「そもそもどうよ?」という話をするのも、かなり効率が悪そうだな、と思い、Mtgのガイドラインとして、各コンテンツの責任者に、事前に宿題として投げておいた質問項目が12個ほどあります。
ネットサービスやメディアの価値を点検する上で、汎用的に使えると思いましたので、今日はそれを紹介させてもらいます。
例えば、新規サービスを立ち上げる時など、下記の問いに対して、考え抜かれた答えをスラスラと言えるようであれば、コンセプト(WhatとWhyについては)第一段階は、「合格」という感じではないでしょうか。
逆に、この質問に明確に答えられないようであれば、「儲かる/儲からない」は別にして、そもそも、自分たち自身でも「何をやりたいのか」がよく分かってない?ということになります。
そもそも論から、ネットサービスの価値を点検するための12の質問
・現在、あなたのサービスは、どういうターゲット・ユーザーに、どういう「提供価値・便利さ・喜び」を提供していますか?
・将来では、あなたのサービスは、ネット上において、どういう「ビジョン・夢・世界観」を訴えていきたいですか?
・あなたのサービスが、存在することで、解消されるターゲットユーザーの「悩み・不便・悲しみ」は何ですか?
・あなたのサービスの競合は、何ですか? (思いつくだけ、あげてください。ウェブサイト以外でも、可)
・ターゲットユーザーが、競合ではなく、あえて、あなたのサービスを利用する「必然性・動機・理由」は何だと思いますか?
・競合サイトになくて、あなたのサービスだけにある 「強み・優位性」は何ですか?
・その「強み・優位性」は、ターゲット・ユーザーからみて、どういう点が、どのように、魅力的なのでしょうか?
・あなたのサービスだけにある「強み・優位性」は、ターゲット・ユーザー層の中で、どの程度、認識されていますか?
・あなたのサービスだけにある「強み・優位性」をターゲットユーザーに、より明確に認識してもらうには、どのような活動が必要ですか?
・もし、いま、あなたのサービスがネット上から、消滅したら、どういうユーザーが、最も、悲しんだり、困ったりすると思いますか?ただ単に、現状ユーザーは競合サービスに移行して、何事もなかったように、時がながれていくのでしょうか?
(上記のベン図は、「あたらしい戦略の教科書の65Pより孫引き引用」:原典は"Can you say what your strategy is?"@Harvard Business Review April 2008 とのこと)
・現状のサービス範囲で、上の図でいうところ 「4」にあたる部分は、ありませんか?あるとすれば、どの部分ですか? (もしあれば、止めちゃったほうがいい。)
・現状のサービス領域で、上の図でいう「3」にあたるものは。何だと思いますか? (そこに一番注力すべき!)
上記の質問は、私が、これまで、新規事業やサービスを企画するときに、いろんな意志決定者から、私自身が問い詰められてきたことの集大成的なものになります。
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2009年03月14日
ハーレーの社員に自分は「バイクを作っている」と思っているバカは一人もいない Tweet
あなたは、ホームセンターの工具売り場に勤めています。
とある中年男性が、電動ドリルを買いに来ました。
あなたは、レジで代金を受け取り、その中年男性は、電動ドリルを持って帰っていきました。
あなたは、何を売っていると思いますか? あるいは、その中年男性は、何を欲しがっていたのでしょうか。
「そんなの『電動ドリル』に決まってるじゃないか」という人は、下記の文章を読んで、もっと考え直したほうがいいかもしれません。
とある中年男性が、電動ドリルを買いに来ました。
あなたは、レジで代金を受け取り、その中年男性は、電動ドリルを持って帰っていきました。
あなたは、何を売っていると思いますか? あるいは、その中年男性は、何を欲しがっていたのでしょうか。
「そんなの『電動ドリル』に決まってるじゃないか」という人は、下記の文章を読んで、もっと考え直したほうがいいかもしれません。
kojiroby.tumblrより-
大勢の人たちがハーレーダビッドソンで働いている。耳寄りな事実を紹介しよう。彼らの中には、自分は「モーターサイクルをつくっている」と思っているバカはひとりもいない。
もし「モーターサイクル」でないと言うなら、それは何だ?
「経験」ではどうだ?
”ハーレーの大物ボス”はこんな説明をする。
「われわれが売っているのは、43歳の会計士が黒いレザーのライダースーツに身を包み、小さな町々を走り抜け、周りの人たちに恐怖を与える、そんな力だ」
何だって?
「経験」だよ「経験」、わからずや!
もっと具体的に言えば、ハーレーが「反逆のライフスタイル」と表現している経験のことだ。
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