...旅とリズム...旅の日記 by 栗本斉...

旅人/ライター/選曲家・栗本斉が、旅と音楽とアルゼンチンを中心に綴る日記です。

昨年2月に発売した『「シティポップの基本」がこの100枚でわかる!』。おかげさまで重版を重ねて4刷ロングセラー中ですが、この本に続く著書『「90年代J-POP」の基本がこの100枚でわかる!』が完成しました! 9月20日発売ですので、ぜひご期待ください!

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史上最もCDが売れた10年間、
その奇跡のような時代の楽曲群を凝縮した、J-POP入門書!
星海社新書『「90年代J-POPの基本」がこの100枚でわかる!』
2023年9月20日(水)より発売!
カバーイラスト/gata


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(書誌情報)
星海社新書『「90年代J-POPの基本」がこの100枚でわかる!』
著者:栗本斉(くりもと・ひとし)
ページ数:272ページ
発売日:2023年9月20日(水) *お住まいの地域により発売日は異なります
定価:1250円(税別)
販売サイト:https://www.seikaisha.co.jp/information/2023/09/02-post-273.html

(内容紹介)
聴こうよ、90年代J-POP!
史上最もCDが売れた10年間、その奇跡のような時代の楽曲群を凝縮した、J-POP入門書
縦横無尽のジャンルから厳選したアルバム100枚を精緻にレビュー!!

テレビドラマのタイアップによるミリオンヒットの連発に、小室哲哉によるTKサウンドや、ZARDやB’zなどのビーイン グ系アーティストの大躍進、そしてイカ天、渋谷系、R&Bディーヴァといったムーヴメントに、クラブミュージックやイン ディロックの台頭——あらゆる音楽ジャンルが渾然一体となってヒット作が続出した日本の90年代は、世界でも稀に 見る音楽的な進化を遂げた。

本書は、90年代に誕生した創意工夫に満ちたアルバム群のなかから時代を象徴する 100枚を厳選し、当時のポップミュージックシーンと併走してきた著者が丹念にレビューする。同時代を知っている方 はもちろん、後追い世代の方にも、人類史上最もCDが売れた奇跡の10年間の記録と記憶を堪能してほしい。 カバーイラストは、気鋭のイラストレーター・gataによる本書描き下ろし作品を掲載!

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(著者紹介)
栗本斉(くりもと・ひとし)
音楽と旅のライター、選曲家。1970年生まれ、大阪出身。レコード会社勤務時代より音楽ライターとして執筆活動を 開始。退社後は2年間中南米を放浪し、帰国後はフリーランスで雑誌やウェブでの執筆、ラジオや機内放送の構成 選曲などを行う。開業直後のビルボードライブで約5年間ブッキングマネージャーを務めた後、再びフリーランスで活 動。著書に『ブエノスアイレス 雑貨と文化の旅手帖』(毎日コミュニケーションズ)、『アルゼンチン音楽手帖』(DU BOOKS)、共著に『Light Mellow 和モノ Special』(ラトルズ)などがある。2022年2月に上梓した『「シティポップの基 本」がこの100枚でわかる!』(星海社新書)が話題を呼び、TVやラジオなど各種メディアにも出演している。

Twitter:https://twitter.com/tabirhythm
note:https://note.com/tabirhythm/
Instagram:https://www.instagram.com/tabirhythm

(本書構成)
・著者自らアルバム100枚を選盤し、一枚一枚精緻に綴ったディスクレビュー
 1990〜1999年まで、各年10枚ずつアルバムを選盤
 年間チャートの上位だけでなく、その年を象徴すると思われる作品を厳選

・90年代という時代を様々な視点から考察するコラム
 コラム.1 タイアップとミリオン・ヒット
 コラム.2 ヒット・プロデューサーたち
 コラム.3 オルタナティヴとフェス黎明期

・本書掲載アーティスト
サザンオールスターズ、BUCK-TICK、FLYING KIDS、LINDBERG、東京スカパラダイスオーケストラ、BEGIN、た ま、KAN、JITTERIN'JINN、岡村靖幸、山下達郎、ビブラストーン、フリッパーズ・ギター、ORIGINAL LOVE、HIS、小 泉今日子、槇原敬之、CHAGE&ASKA、B'z、長渕剛、THE BLANKEY JET CITY、小田和正、SING LIKE TALKING 、L⇔R、米米CLUB、X JAPAN、中島みゆき、竹内まりや、DREAMS COME TRUE、森高千里、氷室京介、橘いず み、WANDS、PIZZICATO FIVE、ZARD、玉置浩二、小沢健二、福山雅治、松任谷由実、広瀬香美、trf、藤井フミ ヤ、CARNATION、Mr.Children、テイ・トウワ、LUNA SEA、シャ乱Q、大黒摩季、THE BOOM、JUDY AND MARY、 斉藤和義、LOVE TAMBOURINES、奥田民生、スチャダラパー、SMAP、小島麻由美、スピッツ、古内東子、MY LITTLE LOVER、キングギドラ、ウルフルズ、フィッシュマンズ、GLAY、サニーデイ・サービス、thee michelle gun elephant、globe、安室奈美恵、エレファントカシマシ、UA、久保田利伸、THE YELLOW MONKEY、電気グルーヴ、 Bonnie Pink、山崎まさよし、SPEED、川本真琴、今井美樹、KinKi Kids、スガシカオ、Chara、Buffalo Daughter、 PUFFY、SUPERCAR、Every Little Thing、Cocco、MISIA、モーニング娘。、ゆず、the brilliant green、hide、浜崎あ ゆみ、椎名林檎、Sugar Soul、宇多田ヒカル、くるり、Hi-STANDARD、L'Arc〜en〜Ciel、RHYMESTER、Dragon Ash、clammbon 以上、全100アーティスト

・本書掲載ディスクを集めたプレイリストが3つの音楽サブスクリプションサービスで聴ける!
 読みながら聴ける! 聴きながら読める!
 Spotify、Amazon Music、Apple Musicのプレイリストに飛べるQRコードを巻末掲載! 



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野宮真貴のニュー・アルバム『New Beautiful』のライナーノーツを書かせていただきました。

【参考】
野宮真貴:Official Website
野宮真貴『New Beautiful』:ビクターエンタテインメント

この作品は野宮さんのデビュー40周年を記念して制作されたもので、鈴木慶一、ポータブル・ロック、横山剣、GLIM SPANKY、Night Tempo、Rainychなどなどそのキャリアを網羅するかの如く豪華ゲスト&作家陣が参加しています。詳しくは個々のサイトをぜひ覗いてみてください。



どれも佳曲揃いなのですが、個人的には元ピチカート・ファイヴの高浪敬太郎さんが新曲を提供しているところにグッときました。リアルサウンドにインタビュー記事が掲載されているので、こちらもご参考に。



ビルボードライブでは新作の発売記念ライヴツアーも行われ、非常に盛り上がりました。こちらもリアルサウンドにライヴレポートを書いたので是非お読みください。



インタビューでは過去を振り返るだけでなく現在進行形であることがよく分かったし、ライヴでは「古希までは歌う」と宣言していたので、まだまだ新たな展開はありそう。今後に期待したいと思います。


New Beautiful(初回限定盤:CD+Blu-ray+ブックレット)
野宮真貴
ビクターエンタテインメント
2022-04-20


New Beautiful(通常盤:CD)
野宮真貴
ビクターエンタテインメント
2022-04-20


New Beautiful(アナログ:LP) [Analog]
野宮真貴
ビクターエンタテインメント
2022-05-25



SinesisDuo


シネシス・デュオ(Sinesis Duo)のデビュー・アルバム『オーハス・イ・ルータス・ヌエバス(Hojas y rutas nuevas)』のライナーノーツを書かせていただきました。

【参考】
Inpartment: Sinesis Duo『Hojas y rutas nuevas

シネシス・デュオは、アルゼンチンを代表するギタリストのキケ・シネシ(Quique Sinesi)と、彼の息子であるアウグスト・シネシ(Augusto Sinesi)の2人組ユニット。キケはコンテンポラリー・フォルクローレの代表選手であるカルロス・アギーレや、日本が誇るケーナ奏者の岩川光との共演などで来日経験もあるベテラン。僕も以前インタビュー取材をしたのですが、とてもクレバーながら穏やかで優しい職人気質のミュージシャンといった印象があります。

ただ、彼のテクニックは圧倒的で、通常のギターのみならず、7弦ギターやチャランゴまで弾きこなす上に、アルゼンチンの大自然がまぶたに浮かぶような繊細ながらも雄大な演奏が特徴。一度聴けば誰もが魅了されるギタリストだと思います。

一方のアウグストは、このアルバムで初めて聴きました。ギターのテクニックはまさに父親譲り。さらにはヴォーカリストとしても素晴らしく、カルロス・アギーレやスピネッタに通じるソフトな歌い口がいかにもアルゼンチンらしい。この感性をさらにブラッシュアップすれば、誰もが認める実力派シンガー・ソングライターになるはずです。

今回始めて親子で制作したという『
オーハス・イ・ルータス・ヌエバス』も、どちらかというとアウグストに華を持たせたという印象があり、インストもあるけれど基本はヴォーカル曲がメイン。コロナ禍に自宅で作業したということもあり、アットホームな雰囲気も心地良い作品です。なお、盟友カルロス・アギーレはゲスト参加しているだけでなく、モノクロのモダンなジャケット写真も撮り下ろしたとのこと。どこだろう、ここ?

いずれにせよ、本作は現代アルゼンチン音楽の真髄ともいえる傑作です。ぜひリラックスしながら聴いていただければと思います。


HOJAS Y RUTAS NUEVAS (RCIP-0326)
SINESIS DUO
bar buenos aires
2022-03-11


『アルゼンチン音楽手帖』以来、約9年ぶりとなる栗本斉の著書『「シティポップの基本」がこの100枚でわかる!』が、2022年2月22日に発売になりました。こちらの内容を紹介します。記述しているのは、基本的にプレスリリースと同じ文面ですが、ご参考にしていただければと思います。

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空前のリバイバル!
全世界で鳴り響いている「シティポップ」
その熱狂を凝縮した、入門書にして決定版
星海社新書『「シティポップの基本」がこの100枚でわかる!』
2022年2月22日より発売!
カバー装画:鈴木英人


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(書誌情報)
星海社新書『「シティポップの基本」がこの100枚でわかる!』
著者: 栗本斉(くりもと・ひとし)
ページ数:256ページ
発売日:2022年2月22日(火)*お住まいの地域により発売日は異なります
定価:1000円(税別)

(内容紹介)
空前のリバイバル! 全世界で鳴り響いている「シティポップ」
その熱狂を凝縮した、入門書にして決定版

クリエイティブに富んだ作品群から厳選したアルバム100枚を精緻にレビュー!!全世界で鳴り響く「シティポップ」が厳選アルバム100枚でわかる!ロックやソウルなど洋楽の要素を取り込み、鮮やかな色彩感覚で洗練された都市の情景を描きながら、憂いや哀愁をも含んだ日本独自の音楽ジャンル、「シティポップ」──1970年代から80年代にかけて日本で誕生したこの「都市型ポップス」が2010年代のネットコミュニティの隆盛により、竹内まりや「プラスティック・ラブ」をはじめとした作品の数々が世界に発見され、急拡大した。

本書はシティポップ史に燦然と輝く名盤から、先人の遺伝子を受け継ぎ昇華し続ける次世代盤まで、シティポップを紐解くうえで決して外すことのできない必聴の100枚を厳選し、30年にわたり日本のポップミュージックシーンと併走してきた著者が一枚ずつ丹念にレビューする。時代も国境も軽々と越えた、語り継ぐべき日本の文化遺産に耽溺してほしい。

カバー装画は、鈴木英人によるアートを掲載!

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(著者紹介)
栗本斉(くりもと・ひとし)
音楽と旅のライター、選曲家。1970年生まれ、大阪出身。レコード会社勤務時代より音楽ライターとして執筆活動を開始。退社後は2年間中南米を放浪し、帰国後はフリーランスで雑誌やウェブでの執筆、ラジオや機内放送の構成選曲などを行う。開業直後のビルボードライブで約5年間ブッキングマネージャーを務めた後、再びフリーランスで活動。著書に『ブエノスアイレス雑貨と文化の旅手帖』(毎日コミュニケーションズ)、『アルゼンチン音楽手帖』(DU BOOKS)、共著に『Light Mellow 和モノSpecial』(ラトルズ)などがある。

(本書構成)
・著者自らディスク100枚を選盤し、一枚一枚精緻に綴ったディスクレビュー
<PART.1「黎明期」燦然と輝く名盤20枚>
SUGAR BABE『SONGS』
荒井由実『COBALT HOUR』
鈴木茂『LAGOON』
大貫妙子『SUNSHOWER』
加藤和彦『Gardenia』
南佳孝『SOUTH OF THE BORDER』
松原みき『POCKET PARK』
大滝詠一『A LONG VACATION』
寺尾聰『Reflections』
山下達郎『FOR YOU』
伊藤銀次『BABY BLUE』
佐藤博『awakening』
吉田美奈子『LIGHT’N UP』
杏里『Heaven Beach』
稲垣潤一『SHYLIGHTS』
杉真理『STARGAZER』
角松敏生『ON THE CITY SHORE』
松田聖子『Canary』
杉山清貴&オメガトライブ『RIVER’S ISLAND』
竹内まりや『VARIETY』

<PART.2「最盛期」進化と深化の過程で誕生した必聴盤50枚>
ティン・パン・アレー『キャラメル・ママ』
Char『Char』
ハイ・ファイ・セット『LOVE COLLECTION』
稲村一志と第一巻第百章『Free Flight』
尾崎亜美『MIND DROPS』
佐藤奈々子『Funny Walkin’』
小坂忠『MORNING』
ラジ『HEART to HEART』
笠井紀美子『TOKYO SPECIAL』
惣領智子『City Lights by the Moonlight』
大橋純子&美乃家セントラル・ステイション『CRYSTAL CITY』
やまがたすみこ『emerald shower』
細野晴臣&イエロー・マジック・バンド『はらいそ』
高橋ユキヒロ『Saravah!』
サディスティックス『WE ARE JUST TAKING OFF』
小林泉美 & Flying Mimi Band『Sea Flight』
中原理恵『KILLING ME』
サーカス『NEW HORIZON』
ブレッド&バター『Late Late Summer』
郷ひろみ『SUPER DRIVE』
広谷順子『BLENDY』
五十嵐浩晃『愛は風まかせ/NORTHERN SCENE』
池田典代『DREAM IN THE STREET』
岩崎宏美『Wish』
EPO『GOODIES』
伊勢正三『スモークドガラス越しの景色』
松下誠『FIRST LIGHT』
井上鑑『予言者の夢 –PROPHETIC DREAM–』
佐野元春『SOMEDAY』
東北新幹線『THRU TRAFFIC』
濱田金吾『midnight cruisin’』
黒住憲五『Again』
中原めいこ『2時までのシンデレラ –FRIDAY MAGIC–』
AB’S『AB’S』
八神純子『LONELY GIRL』
須藤薫『PLANETARIUM』
山本達彦『MARTINI HOUR』
村田和人『ひとかけらの夏』
国分友里恵『Relief 72 Hours』
来生たかお『ROMANTIC CINEMATIC』
菊池桃子『OCEAN SIDE』
二名敦子『WINDY ISLAND』
安部恭弘『FRAME OF MIND』
1986オメガトライブ『Navigator』
楠瀬誠志郎『冒険者たち』
飯島真理『Coquettish Blue』
崎谷健次郎『Realism』
鈴木雅之『RADIO DAYS』
木村恵子『STYLE』
SING LIKE TALKING『TRY AND TRY AGAIN』

<PART.3「再興期」受け継いだ遺伝子からさらなる変容を遂げる次世代盤30枚>
今井美樹『Lluvia』
Original Love『結晶 –SOUL LIBERATION–』
小沢健二『LIFE』
GREAT3『Richmondo High』
具島直子『miss.G』
古内東子『Hourglass』
キリンジ『ペイパードライヴァーズミュージック』
比屋定篤子『ささやかれた夢の話』
benzo『DAYS』
NONA REEVES『Friday Night』
paris match『type III』
冨田ラボ『Shipbuilding』
畠山美由紀『Wild and gentle』
流線形『CITY MUSIC』
Lamp『恋人へ』
土岐麻子『TALKIN’』
高田みち子『TOKYO GIRLS TALK』
一十三十一『CITY DIVE』
ジャンク フジヤマ『JUNK SCAPE』
ウワノソラ『ウワノソラ』
シンリズム『NEW RHYTHM』
LUCKY TAPES『Cigarette & Alcohol』
星野みちる『黄道十二宮』
ブルー・ペパーズ『Retroactive』
SPiCYSOL『Mellow Yellow』
never young beach『STORY』
1983『渚にきこえて』
Natsu Summer『HAYAMA NIGHTS』
GOOD BYE APRIL『Xanadu』
Yogee New Waves『WINDORGAN』

シティポップ100枚全ジャケ写

・「シティポップとはなにか」を様々な視点から提示するコラム
コラム.1 編曲家とスタジオ・ミュージシャン
コラム.2 シティポップサウンドのルーツ
コラム.3 国内外のネオ・シティポップ

・本書掲載ディスクを集めたプレイリストが3つの音楽サブスクリプションサービスで聴ける!
読みながら聴ける! 聴きながら読める!
Spotify、Amazon Music、Apple Musicのプレイリストに飛べるQRコードを巻末掲載!

・本書「はじめに」より(一部抜粋)
「本書は、日本で生まれたシティポップの名盤100枚を紹介するディスクガイド本である。1975年に発表されたシュガー・ベイブ唯一のアルバム『SONGS』に始まり、ネオ・シティポップの旗手の一組であるYogee New Wavesの執筆時点における最新作『WINDORGAN』までを取り上げている。基本的には1970年代後半から 80 年代にかけての作品に重きをおいているが、3割程度は90年代以降の作品を取り上げ、全体を読むとシティポップ草創期からネオ・シティポップが盛り上がっている2020年代頭までを俯瞰できるよう心がけた。(中略)「メロウでアーバンでグルーヴを感じられる」という表現は、シティポップを伝える言葉として最適だと考えている。ただ、実際に「メロウ」なサウンドや「グルーヴを感じられる」リズムがどういうものなのかは、聴いてみないとわからないという方も多いだろう。その場合は、ぜひ一曲一曲聴きながら体感していただきたい。それと、こういったサウンドはシティポップの重要な側面でもあるため、アレンジや参加ミュージシャンの記述にかなりの文字数を割いている。主役のシンガーだけでなく、ミュージシャンやアレン ジャーなど周辺のスタッフィングも含めて、シティポップの世界を楽しんでいただければ と思っている」

・著者・栗本斉から読者の皆様へのメッセージ
「シティポップって何?」と聞かれることが多かったのですが、ようやく「これを読んでください」と差し出せる本を作ることができました。初心者の方にも、筋金入りのマニアの方にも楽しんでいただけるよう、心を込めて執筆しました。シティポップの新しい教科書として、数々の名盤を聴きながらお楽しみください。




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カンデ・イ・パウロ(Cande Y Paulo)のデビュー・アルバム『カンデ・イ・パウロ(Cande Y Paulo)』のライナーノーツを書かせていただきました。

【参考】
Cande Y Paulo: Official Website

カンデ・イ・パウロは、ヴォーカル&コントラバスのカンデラリア・ブアッソ(Candelaria Buasso)と、キーボード兼プロデューサーのパウロ・カリッソ(Paulo Carrizo)によるデュオ・グループです。アルゼンチンのサン・フアンという街で結成された彼らは、もともと師弟関係にあったのが、地元の劇場の企画によるコンサートで再会。意気投合してグループ結成に結びついたというわけです。

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これだけであれば、単なるローカル・アーティストで終わっていたのでしょうが、その時の映像をYouTubeにアップしたところ、「美女がコントラバスを弾きながら歌っている!」という物珍しさもあって、再生数があっという間に200万回超え(現在は1300万回超え!)。その話題が巡り巡って名門デッカ・レーベルからオファーがあり、ワールド・デビューにいたったというシンデレラ・ストーリーが今っぽい。下記リンクの記事は、アルバム発表前の3月時点でのコラム記事。

【参考】
BARKS: 現代のシンデレラ・ストーリー、アルゼンチンのカンデ・イ・パウロ



ワールド・デビューにあたって、彼らの音楽的な後見人となったのがラリー・クライン。ジョニ・ミッチェルのパートナーだったことで知られ、マデリン・ペルーやメロディ・ガルドーなどの名作を生み出した名プロデューサーです。しっとりとした味わいのカンデ・イ・パウロだけに相性は抜群。アルバム発表前から先行でシングルが配信されていましたが、最初に話題になったスピネッタ(アルゼンチンの国民的ロックスター)の「Barro Tal Vez」だけでなく、レナード・コーエンの「Treaty」やファイストの「Limite En Tu Amor(Limit To Your Love)」などの選曲センスはさすがという感じです。



そしてデビュー・アルバム『カンデ・イ・パウロ』は、彼らの音楽の全貌が見えてくるような素晴らしい作品になりました。繊細なアコースティック・ナンバーが多いので、全体的には非常にメランコリック。メジャーとなるとアレンジも派手になりがちですが、彼らに関してはそういうことも一切なく、歌の本質を伝えるようなシンプルな作品に仕上がっています。YouTubeには彼らのアコースティック・ライヴの映像がいくつか上がっているのですが、アルバムと比べてもまったく違和感がないですし、まさに等身大のアルバムといってもいいでしょう。



そして日本盤にはなんとサプライズが!ボーナス・トラックに梶芽衣子の「修羅の花」のカヴァーが収められているのですが、これがご本人とのデュエットなんです。なんでも映画『キル・ビル』に使われていたこの曲が大好きだということで、日本でリリースするのならこの曲をカヴァーしたいということがきっかけだったとか。それにしても、時代や国境を超越したこんなデュエットが聴けるとはすごいことですね。ぜひアルバムでチェックしてみてほしいです。


カンデ・イ・パウロは、ワールド・デビューといっても、派手に展開するわけでもないし、本当にいい音楽を作り続けるだけというスタンスなので少し地味に感じるかもしれません。でも、コロナ禍のなかで疲れた私たちには、とても大切な音楽のひとつのように感じます。少しでも癒やされたいと思う方は、ぜひ聴いていただければと思います。


カンデ・イ・パウロ(SHM-CD)
カンデ・イ・パウロ
Universal Music
2021-06-04


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アンカーソング(Anchorsong)のアルバム『ミラージュ(Mirage)』のライナーノーツを書かせていただきました。

【参考】
Anchorsong: Official Website
Beatink: Anchorsong / Mirage

アンカーソングは、ロンドン在住の日本人クリエイター、吉田雅昭のソロ・プロジェクト。もともとロック・バンドを組んでいましたが、メンバーが去っていったこともあり、ひとりで音楽を作り始めたのがアンカーソングの始まり。試行錯誤のうちにMPCというサンプラーやキーボードを使ってパフォーマンスするようになり、それがじわじわと話題を呼んでワールド・デビューに至ったという経緯を持っています。



活動を始めたのが2004年、デビューしたのが2007年ということなので、キャリアも実力も十分。現在はUKのレーベル「Tru Thoughts」と契約し、素晴らしい作品を発表し続けています。初期はかなりとんがったエレクトリック・ミュージックという印象でしたが、ここ数年はワールド・ミュージックを取り入れたユニークな作品が多く、僕も以前から愛聴していました。2016年発表の『Ceremonial』はアフリカ、2018年発表の『Cohesion』はインドとそれぞれテーマを持っていますが、いずれも直接的にその地の音楽を取り入れるのではなく、独自の解釈で再構築されているのが面白く、しかもしっかりとダンス・ミュージックとしても成立しています。





ワールド・シリーズ第三弾ともいえる新作『Mirage』は、特定のエリアに限定はされていません。これまでの集大成とも言えるし、新たな展開の第一歩にも感じられます。ここにはこれまでにテーマとしてきたアフリカやインドに加え、ラテン・パーカッション、ポルトガル語の歌、ガムラン風の音色、モンゴルの馬の蹄をイメージしたというリズム、今どきのUKジャズ風のサックス、そして琴や尺八に似た和の響きをふんだんに盛り込み、無国籍で不思議な世界を作り出しています。



Anchorsongの音楽を聴くだけで、ふわっと異国に行ったような気持ちにさせられるのは、国際的に活躍する彼ならではでしょう。ライナーにも書きましたが、コロナ禍で海外へ旅立つことができない旅人たちにとっては癒やしの一枚になるはず。ぜひ空想の旅のお供にお聴きいただけると嬉しいです。


Mirage [解説書封入 / 国内仕様輸入盤CD] (BRTRU404)
アンカーソング
BEAT RECORDS / TRU THOUGHTS
2021-05-28





Cohesion [解説・ボーナストラック1曲収録 / 国内盤] (BRC582)
アンカーソング
BEAT RECORDS / TRU THOUGHTS
2018-10-26





Ceremonial [帯解説・ボーナストラック2曲収録 / 国内盤] (BRC489)
アンカーソング
BEAT RECORDS / TRU THOUGHTS
2016-01-22

isladecaras_chango

イスラ・デ・カラス(Isla De Caras)のアルバム『シャンゴ(Chango)』のライナーノーツ原稿を書かせていただきました。

【参考】
Isla De Caras: Facebook Page

イスラ・デ・カラスはアルゼンチンのインディ・ポップ・アーティストで、ラウタロ・クーラというマルチ・ミュージシャンによるソロ・プロジェクトです。いわゆるラテン音楽の範疇で語るといよりも、昨今のドリーム・ポップやヴェイパーウェイヴといった新しいポップ・シーンの流れに位置するアーティストといえます。実際、彼はアルゼンチン・ロックだけでなく、ブラッド・オレンジやソフト・ヘアーといった欧米のアーティストからの影響を公言していますし、スペイン語で歌っているということを除けば、十分世界で通用するクオリティを誇ります。



サウンドの特徴はとにかくドリーミーで、どこかトロピカルな感覚が心地良く、聴いていてとても気持ちよくなるものばかり。メロディメイカーとしても素晴らしく、気だるいヴォーカルと相まって独特の世界観を作り出しています。アートワークもアルゼンチン人らしく非常にクリエイティヴで、とてもユニークな感性を持っています。ミュージック・ビデオはなぜかどれも気持ち悪い感じなんですが,,,。ちょっとフアナ・モリーナにも通じる不気味さがありますね。

とはいえ、アルバムは休日にのんびり聴くには最高の内容。インディ・ポップ好きの方にはぜひ聴いてもらいたい一作です。


シャンゴ
イスラ・デ・カラス
Pヴァイン・レコード
2020-01-08





夏真っ盛り!夏・全・開!すっかり真夏になりました。太陽の陽差しが鋭いこの季節になると、やっぱり涼しげな音楽が聴きたくなりますね。というわけで、久々にシティ・ポップを紹介したいと思います。

実は、6年前の2012年に「
真夏のシティ・ポップ名盤 定番10枚」という記事を書いているんですが、いまだに人気記事としてこのブログのアクセス記録を作っているんです。

【参考】
真夏のシティ・ポップ名盤 定番10枚 ...旅とリズム...旅の日記 by 栗本斉...

このときは本当に定番中の定番をセレクトしましたので、今回はほんの少しだけひねりを加えてみました。といっても、シティ・ポップ好きな方にとっては、これまた定番中の定番なので、「定番10枚 PART2」と題しています。

いずれにしても、ここに挙げた10枚は今聴いても新鮮な内容ですし、シティ・ポップのブームに関係なく評価できる作品ばかり。そして、それ以上に、真夏のひとときを素敵に演出してくれるサウンドです。ぜひ、今年の夏のドライブや行楽のお供にいかがでしょうか。

鈴木茂
鈴木茂『LAGOON』(1976)

鈴木茂といえば、はっぴいえんどの傑作群だったり、ソロ第1作目の『BAND WAGON』における和製ローウェル・ジョージ的なスライド・ギターのイメージが強いかもしれないですが、その後のソロ作品にも聴きどころは満載です。とくにお気に入りなのが、2作目のソロとなる本作。全編ハワイで録音されているので、リゾートっぽい空気感がたっぷり詰め込まれています。「LADY PINK PANTHER」や「TOKYO・ハーバー・ライン」といったメロウかつレイジーなヴォーカル・ナンバーはもちろんですが、ファンキーな「BRANDY WINE」でさえも、どこかブリージンで心地よさ抜群。

西岡恭蔵
西岡恭蔵『南米旅行』(1977)

なんといってもタイトルがたまりません。実際にメキシコ、バハマ、ニューオーリンズへ旅した時に作られた楽曲が集められています(あれ?南米ではなく中米ですね)。白眉はなんといってもメロウ・ソウルの傑作「GYPSY SONG」。関西ブルース・シーンの名グループ、ソー・バッド・レビューの面々やスティールパンの名手ロバート・グリニッジなどがバッキングしていることもあって、少しアーシーなところも味わい深い。ボサノヴァ風の「KURO'S SAMBA」やカリビアンな「DOMINICA HOLIDAY」などを聴けば、身も心も弛緩します。

大橋純子
大橋純子&美乃家セントラル・ステイション『沙浪夢 SHALOM』(1978)


全体的にファンキーな楽曲が多い大橋純子ですが、このアルバムその中でももっともテンションの高い楽曲が揃ったといえる一枚。パワフルな歌声はもちろんですが、バックを支える
美乃家セントラル・ステイションのプログレッシヴな演奏能力の高さを思い知らされる作品でもあります。ラテンとファンクを合体させた「季節風便り」や「SPANISH WIND」などのカッコ良さに悶絶させられつつも、ソフトな「SUMMER DREAMIN'」やニュー・ソウルっぽい「JUST FALLIN' IN LOVE」にもグッときます。

伊勢正三
伊勢正三『スモークドガラス越しの景色』(1981)


かぐや姫時代はどうしてもフォーク的なイメージでしたが、ソロになってからの作品はフォークとシティ・ポップが絶妙に融合した独自の世界観を生み出していました。この3作目は、その中でももっとも
アーバンでメロウな一枚。波の音に溶け込むようなコーラスワークが美しい「Sea Side Story」、スローながらもスタイリッシュに決めた「スモークドガラス越しの景色」、西海岸風のアコースティック・チューン「グラフィティの部屋」など、全体的に漂うけだるさも癖になります。

杏里
杏里『Heaven Beach』(1982)


「CAT'S EYE」や「悲しみがとまらない」といった大ヒットを飛ばしまくる前年に発表された隠れた名作。このアルバムで初めて角松敏生をソングライターとして起用。ディスコ風の「二番目のaffair」からメロウな「Last Summer Whisper」へと畳み掛けるような展開で一気に引き込まれます。また、小林武史によるメロウ・ボッサ「Resolusion」、杏里自身によるバラード「Heaven Beach」も聴きどころ。彼女の夏のイメージはここから始まったともいえます。

東北新幹線
東北新幹線『THRU TRAFFIC』(1982)


作編曲家としてよく知られている山川恵津子と、山下達郎バンドにも一時期在籍していたギタリストの鳴海寛によるユニットが、唯一残したアルバムです。いわゆるAOR風のサウンドを取り入れた良質なポップスがてんこ盛りの傑作。山川節炸裂の「Up and Down」のような溌剌としたナンバーもいいのですが、個人的には鳴海寛のセンシティヴな歌声が聴ける「心のままに」や「ストレンジ・ワイン」などがツボにハマりました。コーラス曲やインストも充実していて、夏の海辺でぼんやりとしながら聴きたい一枚です。

村田和人
村田和人『ひとかけらの夏』(1983)


お気に入りのシティ・ポップを挙げていくとどうしてもメロウなものに偏ってしまうのですが、そうではなく暑い季節にテンションを上げていくのならこの作品に限ります。とくに
山下達郎がプロデュースし、マクセルのCMソングとしてヒットした「一本の音楽」は、窓をあけっぱなしにして夏の風を受けながら聴くには最高のドライヴィング・ソング。他にも、「Summer Dream」や「やさしさにGood-bye」、「ニコニコ・ワイン」のようなメロウネスに包まれたキャッチーなナンバーに酔えます。

杉真理
杉真理『MADE IN HEAVEN』(1991)


『ナイアガラ・トライアングルVol.2』参加以降の80年代のアルバムが評価されることが多いですが、ポップ職人として今も変わらず質の高い傑作を作り続けています。なかでも、もっとも夏らしい作品が本作。アコースティック・ギターがざくざくと刻むリズムときらびやかなアレンジに彩られた「未来世紀の恋人へ」から、早くも楽園の音楽が聞こえてきます。続く「青い楽園」はウォール・オブ・サウンドとエキゾチック・サウンドが混じり合うスウィートなポップス。南佳孝にも通じるの穏やかな雰囲気は、リゾートのひとときにぴったりです。

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今井美樹『A PLACE IN THE SUN』(1994)

この人の夏のアルバムといえば、『Be With』や『AQUA』も捨てがたいのですが、1枚選ぶとなるとこのアルバムでしょうか。一般的には布袋寅泰が手がけたバラードの名曲「Miss You」が収められていることで認知されていますが、アルバムのキーマンは坂本龍一。クールなボサノヴァ・ナンバーの「Martiniqueの風」はどことなく大貫妙子にも通じるものがあります。また、上田知華が作曲し、坂本龍一がアレンジしたバラード「海辺にて」もしっとりといい雰囲気。そしてなぜか映画音楽風のインスト「Watermark」で締めるという構成も圧巻です。

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畠山美由紀『Wild and Gentle』(2003)

Port of Notesの名盤群も聴き逃がせませんが、ソロとしてシティ・ポップ度が高いのはこの2枚めのオリジナル・アルバム。4組のプロデューサー兼アレンジャーが参加していて佳曲揃いですが、どうしても冨田恵一が手がけた3曲に耳がいってしまいます。特に極上メロウ・グルーヴの「罌粟」は、いつまでも終わってほしくないと思うほど素晴らしい。切なくも爽快なグルーヴィン・ポップを展開する「海が欲しいのに」や、ミドル・オブ・ザ・ロードのバラード「真夏の湿原」も見事で、真夏はもちろん夏の終わりまでリピートし続けたい一枚です。

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ナツ・サマー『Natsu Summer & Dub Sensation』(2018)

今回もおまけで、最新シティ・ポップの傑作を追加しておきましょう。シティポップ・レゲエというジャンルを打ち出しているナツ・サマーのセカンド・アルバムです。プロデュースは一十三十一でおなじみクニモンド瀧口(流線形)ということもあり、80sへのオマージュと思えるラヴァーズ・ロックが満載。スティールパンの音色を効果的に使ったバンド・サウンドが特徴で、「ロング・ホット・サマー」や「ジャパニーズ・レゲエ・ウーマン」のような清涼感のある声に似合った名曲が目白押しです。今年の夏はこれ一枚でOKといってもいいくらい聴き続けてしまうかも。

lightmellow

最後にちょいと告知です。金澤寿和さんたちと一緒に作った書籍『Light Mellow 和モノSpecial 〜more 160 items〜』が増刷されています。

この本はもともと『Light Mellow和モノ669―Including city pops,J-AOR,Japanese mellow groove and more…』というタイトルで2004年に出版され、その後増補改訂版として現行のものが2013年に出ました。今回の増刷にあたって、16ページの書き下ろし小冊子も付いており、ここには2014〜2018年の作品を付け加えています。すでにお持ちの方もそうでない方も、ぜひお買い求めよろしくお願いします。


LAGOON [UHQCD]
鈴木茂
日本クラウン
2017-03-22


南米旅行
西岡恭蔵
ア-トユニオン
2016-08-17


沙浪夢 SHALOM
大橋純子&美乃家セントラル・ステイション
USMジャパン
2009-06-10


スモークドガラス越しの景色
伊勢正三
ポニーキャニオン
2009-01-21


Heaven Beach(紙ジャケット仕様)
杏里
フォーライフミュージックエンタテインメント
2011-07-27


THRU TRAFFIC
東北新幹線(NARUMIN&ETSU)
ヴィヴィド・サウンド
2017-06-28


ひとかけらの夏
村田和人
FLY HIGH RECORDS
2012-05-23


MADE IN HEAVEN(紙ジャケット仕様)
杉真理
Sony Music Direct
2008-03-19


A PLACE IN THE SUN
今井美樹
フォーライフ ミュージックエンタテイメント
1994-09-02


WILD AND GENTLE
畠山美由紀
フェイスレコーズ
2003-08-06


ナツ・サマー&ダブ・センセーション
ナツ・サマー
Pヴァイン・レコード
2018-07-04




julio

フリオ・イグレシアスの新作アルバム『愛しのメキシコ with フレンズ(Mexico & Amigos)』のライナーノーツを書かせていただきました。

【参考】
Julio Iglesias: Official Website

フリオといえば、泣く子も黙るラテン・ポップ界最大のビッグスターといってもいいでしょう。僕が彼の音楽を聴いた頃は、洋楽そのものに出会った頃とほぼ一致します。おそらく最初に耳にしたのは、1982年に世界的に大ヒットした「ビギン・ザ・ビギン」。その直後にアルバム『黒い瞳のナタリー』を友人から借りた記憶があります。中学1年生だったかな。とにかく、その頃の自分ならまったく想像がつかないでしょうが、当時のフリオの年齢をいつの間にか超え、そして新作の解説を書くなんて世の中不思議なものです。

さて、この『愛しのメキシコ with フレンズ』は、2015年に9年ぶりのアルバムとして発表されたアルバム『愛しのメキシコ(Mexico)』をベースにし、一曲ごとに豪華ゲストを迎えて制作されたデュエット・アルバムです。彼はこれまでにもダイアナ・ロスやウィリー・ネルソンなどとデュエットしてきましたが、アルバム一枚丸ごとというのは今回が初めて。しかも、スペイン語アルバムということで、ラテン界のスターたちが勢ぞろいしているのです。



フアン・ルイス・ゲーラ、タリア、オマーラ・ポルトゥオンドから、テノール歌手のプラシド・ドミンゴまでジャンルや年代も多種多様。いずれも魅力的な声の持ち主ばかりなので、フリオの快活で色気のあるヴォーカルとの絡み具合が聴きどころ。基本的にはメキシコのボレロやランチェーラの名曲がメインなので、メロディアスで親しみやすいため、歌の表情で勝負という印象のアルバムになっています。



フリオ・イグレシアスは、現在御年73歳。その年齢にして、ここまで歌えるのはさすがです。機会があればぜひ、ラテン・ポップの真髄をフリオの歌声で楽しんでいただきたいと思います。


愛しのメキシコ with フレンズ
フリオ・イグレシアス
SMJ
2017-06-21


愛しのメキシコ
フリオ・イグレシアス
SMJ
2015-10-14


Volume 1
フリオ・イグレシアス
SMJ
2012-06-27




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セルジオ・アサドとオダイル・アサドというブラジルの兄弟によるギター・デュオ、アサド兄弟の関連作の再発が行われているのですが、そのうち2作品のライナーノーツを担当させていただきました。これは、ワーナーミュージックが抱えているノンサッチ・レーベルのクラシック系の名盤を再発するというシリーズの一環です。

【参考】
ワーナーミュージック・ジャパン: NONESUCH クラシック・アルバム リイシュー

セルジオ&オダイル・アサドは、日本でもギター・ファン、とくにクラシック・ギターを愛好している人には、熱心なファンが多いと思います。ギター・デュオという編成なのも珍しいですが、彼らの場合はブラジル出身ということもあり、南米の音楽を積極的に取り上げているのが特徴でしょうか。とくに、「ブラジル風バッハ」で知られるヴィラ=ロボスや、タンゴの巨匠アストル・ピアソラなどのナンバーは、二人にとってとても重要なレパートリーだといえます。

今回ライナーを書かせてもらった『ブラジルの魂(Alma Brasileira)』は、まさにそんな南米ならではの作品集。ヴィラ=ロボスはもちろん、エグベルト・ジスモンチやエルメート・パスコアルの楽曲も取り上げているので、クラシック・ファンだけでなく、ジャズやブラジル音楽好きにはぜひとも聞いてもらいたい一枚。ギターのみなので、派手な印象はありませんが、技巧的かつ味わい深い演奏は、聴けば聴くほど発見があるようなスルメのような作品です。

そして、もう一枚ライナーを書かせていただいた『GYPSY(Nadja Salerno-Sonnenberg, Sergio And Odair Assad)』は、ちょっと毛色の違う企画盤。イタリア生まれの女性ヴァイオリニスト、ナージャ・サレルノ=ソネンバーグとの共演作で、タイトル通りジプシー音楽をテーマに選曲。ジャンゴ・ラインハルトの楽曲をアクセントにしつつも、中央ヨーロッパ、スペイン、トルコ、ロシアといった各国の民謡をセルジオ・アサドがアレンジし、ユニークかつ情熱を秘めたアンサンブルが展開されます。なかなか他では聴けない演奏が楽しめる一枚です。

僕は直接関わっていませんが、このシリーズではアサド兄弟関連作以外にも、ピアニストのリチャード・グードやジョージ・ガーシュウィンの発掘音源なども再発。リーズナブルな価格になっているので、この機会にぜひ聴いてもらえると嬉しいです。


セルジオ&オダイル・アサド
ワーナーミュージック・ジャパン
2017-03-22

セルジオ&オダイル・アサド サレルノ=ソネンバーグ(ナージャ)
ワーナーミュージック・ジャパン
2017-03-22

セルジオ&オダイル・アサド
ワーナーミュージック・ジャパン
2017-03-22

セルジオ&オダイル・アサド
ワーナーミュージック・ジャパン
2017-03-22

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