...旅とリズム...旅の日記 by 栗本斉...

旅人/ライター/選曲家・栗本斉が、旅と音楽とアルゼンチンを中心に綴る日記です。

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カンデ・イ・パウロ(Cande Y Paulo)のデビュー・アルバム『カンデ・イ・パウロ(Cande Y Paulo)』のライナーノーツを書かせていただきました。

【参考】
Cande Y Paulo: Official Website

カンデ・イ・パウロは、ヴォーカル&コントラバスのカンデラリア・ブアッソ(Candelaria Buasso)と、キーボード兼プロデューサーのパウロ・カリッソ(Paulo Carrizo)によるデュオ・グループです。アルゼンチンのサン・フアンという街で結成された彼らは、もともと師弟関係にあったのが、地元の劇場の企画によるコンサートで再会。意気投合してグループ結成に結びついたというわけです。

candeypaulo

これだけであれば、単なるローカル・アーティストで終わっていたのでしょうが、その時の映像をYouTubeにアップしたところ、「美女がコントラバスを弾きながら歌っている!」という物珍しさもあって、再生数があっという間に200万回超え(現在は1300万回超え!)。その話題が巡り巡って名門デッカ・レーベルからオファーがあり、ワールド・デビューにいたったというシンデレラ・ストーリーが今っぽい。下記リンクの記事は、アルバム発表前の3月時点でのコラム記事。

【参考】
BARKS: 現代のシンデレラ・ストーリー、アルゼンチンのカンデ・イ・パウロ



ワールド・デビューにあたって、彼らの音楽的な後見人となったのがラリー・クライン。ジョニ・ミッチェルのパートナーだったことで知られ、マデリン・ペルーやメロディ・ガルドーなどの名作を生み出した名プロデューサーです。しっとりとした味わいのカンデ・イ・パウロだけに相性は抜群。アルバム発表前から先行でシングルが配信されていましたが、最初に話題になったスピネッタ(アルゼンチンの国民的ロックスター)の「Barro Tal Vez」だけでなく、レナード・コーエンの「Treaty」やファイストの「Limite En Tu Amor(Limit To Your Love)」などの選曲センスはさすがという感じです。



そしてデビュー・アルバム『カンデ・イ・パウロ』は、彼らの音楽の全貌が見えてくるような素晴らしい作品になりました。繊細なアコースティック・ナンバーが多いので、全体的には非常にメランコリック。メジャーとなるとアレンジも派手になりがちですが、彼らに関してはそういうことも一切なく、歌の本質を伝えるようなシンプルな作品に仕上がっています。YouTubeには彼らのアコースティック・ライヴの映像がいくつか上がっているのですが、アルバムと比べてもまったく違和感がないですし、まさに等身大のアルバムといってもいいでしょう。



そして日本盤にはなんとサプライズが!ボーナス・トラックに梶芽衣子の「修羅の花」のカヴァーが収められているのですが、これがご本人とのデュエットなんです。なんでも映画『キル・ビル』に使われていたこの曲が大好きだということで、日本でリリースするのならこの曲をカヴァーしたいということがきっかけだったとか。それにしても、時代や国境を超越したこんなデュエットが聴けるとはすごいことですね。ぜひアルバムでチェックしてみてほしいです。


カンデ・イ・パウロは、ワールド・デビューといっても、派手に展開するわけでもないし、本当にいい音楽を作り続けるだけというスタンスなので少し地味に感じるかもしれません。でも、コロナ禍のなかで疲れた私たちには、とても大切な音楽のひとつのように感じます。少しでも癒やされたいと思う方は、ぜひ聴いていただければと思います。


カンデ・イ・パウロ(SHM-CD)
カンデ・イ・パウロ
Universal Music
2021-06-04


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アンカーソング(Anchorsong)のアルバム『ミラージュ(Mirage)』のライナーノーツを書かせていただきました。

【参考】
Anchorsong: Official Website
Beatink: Anchorsong / Mirage

アンカーソングは、ロンドン在住の日本人クリエイター、吉田雅昭のソロ・プロジェクト。もともとロック・バンドを組んでいましたが、メンバーが去っていったこともあり、ひとりで音楽を作り始めたのがアンカーソングの始まり。試行錯誤のうちにMPCというサンプラーやキーボードを使ってパフォーマンスするようになり、それがじわじわと話題を呼んでワールド・デビューに至ったという経緯を持っています。



活動を始めたのが2004年、デビューしたのが2007年ということなので、キャリアも実力も十分。現在はUKのレーベル「Tru Thoughts」と契約し、素晴らしい作品を発表し続けています。初期はかなりとんがったエレクトリック・ミュージックという印象でしたが、ここ数年はワールド・ミュージックを取り入れたユニークな作品が多く、僕も以前から愛聴していました。2016年発表の『Ceremonial』はアフリカ、2018年発表の『Cohesion』はインドとそれぞれテーマを持っていますが、いずれも直接的にその地の音楽を取り入れるのではなく、独自の解釈で再構築されているのが面白く、しかもしっかりとダンス・ミュージックとしても成立しています。





ワールド・シリーズ第三弾ともいえる新作『Mirage』は、特定のエリアに限定はされていません。これまでの集大成とも言えるし、新たな展開の第一歩にも感じられます。ここにはこれまでにテーマとしてきたアフリカやインドに加え、ラテン・パーカッション、ポルトガル語の歌、ガムラン風の音色、モンゴルの馬の蹄をイメージしたというリズム、今どきのUKジャズ風のサックス、そして琴や尺八に似た和の響きをふんだんに盛り込み、無国籍で不思議な世界を作り出しています。



Anchorsongの音楽を聴くだけで、ふわっと異国に行ったような気持ちにさせられるのは、国際的に活躍する彼ならではでしょう。ライナーにも書きましたが、コロナ禍で海外へ旅立つことができない旅人たちにとっては癒やしの一枚になるはず。ぜひ空想の旅のお供にお聴きいただけると嬉しいです。


Mirage [解説書封入 / 国内仕様輸入盤CD] (BRTRU404)
アンカーソング
BEAT RECORDS / TRU THOUGHTS
2021-05-28





Cohesion [解説・ボーナストラック1曲収録 / 国内盤] (BRC582)
アンカーソング
BEAT RECORDS / TRU THOUGHTS
2018-10-26





Ceremonial [帯解説・ボーナストラック2曲収録 / 国内盤] (BRC489)
アンカーソング
BEAT RECORDS / TRU THOUGHTS
2016-01-22

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イスラ・デ・カラス(Isla De Caras)のアルバム『シャンゴ(Chango)』のライナーノーツ原稿を書かせていただきました。

【参考】
Isla De Caras: Facebook Page

イスラ・デ・カラスはアルゼンチンのインディ・ポップ・アーティストで、ラウタロ・クーラというマルチ・ミュージシャンによるソロ・プロジェクトです。いわゆるラテン音楽の範疇で語るといよりも、昨今のドリーム・ポップやヴェイパーウェイヴといった新しいポップ・シーンの流れに位置するアーティストといえます。実際、彼はアルゼンチン・ロックだけでなく、ブラッド・オレンジやソフト・ヘアーといった欧米のアーティストからの影響を公言していますし、スペイン語で歌っているということを除けば、十分世界で通用するクオリティを誇ります。



サウンドの特徴はとにかくドリーミーで、どこかトロピカルな感覚が心地良く、聴いていてとても気持ちよくなるものばかり。メロディメイカーとしても素晴らしく、気だるいヴォーカルと相まって独特の世界観を作り出しています。アートワークもアルゼンチン人らしく非常にクリエイティヴで、とてもユニークな感性を持っています。ミュージック・ビデオはなぜかどれも気持ち悪い感じなんですが,,,。ちょっとフアナ・モリーナにも通じる不気味さがありますね。

とはいえ、アルバムは休日にのんびり聴くには最高の内容。インディ・ポップ好きの方にはぜひ聴いてもらいたい一作です。


シャンゴ
イスラ・デ・カラス
Pヴァイン・レコード
2020-01-08





夏真っ盛り!夏・全・開!すっかり真夏になりました。太陽の陽差しが鋭いこの季節になると、やっぱり涼しげな音楽が聴きたくなりますね。というわけで、久々にシティ・ポップを紹介したいと思います。

実は、6年前の2012年に「
真夏のシティ・ポップ名盤 定番10枚」という記事を書いているんですが、いまだに人気記事としてこのブログのアクセス記録を作っているんです。

【参考】
真夏のシティ・ポップ名盤 定番10枚 ...旅とリズム...旅の日記 by 栗本斉...

このときは本当に定番中の定番をセレクトしましたので、今回はほんの少しだけひねりを加えてみました。といっても、シティ・ポップ好きな方にとっては、これまた定番中の定番なので、「定番10枚 PART2」と題しています。

いずれにしても、ここに挙げた10枚は今聴いても新鮮な内容ですし、シティ・ポップのブームに関係なく評価できる作品ばかり。そして、それ以上に、真夏のひとときを素敵に演出してくれるサウンドです。ぜひ、今年の夏のドライブや行楽のお供にいかがでしょうか。

鈴木茂
鈴木茂『LAGOON』(1976)

鈴木茂といえば、はっぴいえんどの傑作群だったり、ソロ第1作目の『BAND WAGON』における和製ローウェル・ジョージ的なスライド・ギターのイメージが強いかもしれないですが、その後のソロ作品にも聴きどころは満載です。とくにお気に入りなのが、2作目のソロとなる本作。全編ハワイで録音されているので、リゾートっぽい空気感がたっぷり詰め込まれています。「LADY PINK PANTHER」や「TOKYO・ハーバー・ライン」といったメロウかつレイジーなヴォーカル・ナンバーはもちろんですが、ファンキーな「BRANDY WINE」でさえも、どこかブリージンで心地よさ抜群。

西岡恭蔵
西岡恭蔵『南米旅行』(1977)

なんといってもタイトルがたまりません。実際にメキシコ、バハマ、ニューオーリンズへ旅した時に作られた楽曲が集められています(あれ?南米ではなく中米ですね)。白眉はなんといってもメロウ・ソウルの傑作「GYPSY SONG」。関西ブルース・シーンの名グループ、ソー・バッド・レビューの面々やスティールパンの名手ロバート・グリニッジなどがバッキングしていることもあって、少しアーシーなところも味わい深い。ボサノヴァ風の「KURO'S SAMBA」やカリビアンな「DOMINICA HOLIDAY」などを聴けば、身も心も弛緩します。

大橋純子
大橋純子&美乃家セントラル・ステイション『沙浪夢 SHALOM』(1978)


全体的にファンキーな楽曲が多い大橋純子ですが、このアルバムその中でももっともテンションの高い楽曲が揃ったといえる一枚。パワフルな歌声はもちろんですが、バックを支える
美乃家セントラル・ステイションのプログレッシヴな演奏能力の高さを思い知らされる作品でもあります。ラテンとファンクを合体させた「季節風便り」や「SPANISH WIND」などのカッコ良さに悶絶させられつつも、ソフトな「SUMMER DREAMIN'」やニュー・ソウルっぽい「JUST FALLIN' IN LOVE」にもグッときます。

伊勢正三
伊勢正三『スモークドガラス越しの景色』(1981)


かぐや姫時代はどうしてもフォーク的なイメージでしたが、ソロになってからの作品はフォークとシティ・ポップが絶妙に融合した独自の世界観を生み出していました。この3作目は、その中でももっとも
アーバンでメロウな一枚。波の音に溶け込むようなコーラスワークが美しい「Sea Side Story」、スローながらもスタイリッシュに決めた「スモークドガラス越しの景色」、西海岸風のアコースティック・チューン「グラフィティの部屋」など、全体的に漂うけだるさも癖になります。

杏里
杏里『Heaven Beach』(1982)


「CAT'S EYE」や「悲しみがとまらない」といった大ヒットを飛ばしまくる前年に発表された隠れた名作。このアルバムで初めて角松敏生をソングライターとして起用。ディスコ風の「二番目のaffair」からメロウな「Last Summer Whisper」へと畳み掛けるような展開で一気に引き込まれます。また、小林武史によるメロウ・ボッサ「Resolusion」、杏里自身によるバラード「Heaven Beach」も聴きどころ。彼女の夏のイメージはここから始まったともいえます。

東北新幹線
東北新幹線『THRU TRAFFIC』(1982)


作編曲家としてよく知られている山川恵津子と、山下達郎バンドにも一時期在籍していたギタリストの鳴海寛によるユニットが、唯一残したアルバムです。いわゆるAOR風のサウンドを取り入れた良質なポップスがてんこ盛りの傑作。山川節炸裂の「Up and Down」のような溌剌としたナンバーもいいのですが、個人的には鳴海寛のセンシティヴな歌声が聴ける「心のままに」や「ストレンジ・ワイン」などがツボにハマりました。コーラス曲やインストも充実していて、夏の海辺でぼんやりとしながら聴きたい一枚です。

村田和人
村田和人『ひとかけらの夏』(1983)


お気に入りのシティ・ポップを挙げていくとどうしてもメロウなものに偏ってしまうのですが、そうではなく暑い季節にテンションを上げていくのならこの作品に限ります。とくに
山下達郎がプロデュースし、マクセルのCMソングとしてヒットした「一本の音楽」は、窓をあけっぱなしにして夏の風を受けながら聴くには最高のドライヴィング・ソング。他にも、「Summer Dream」や「やさしさにGood-bye」、「ニコニコ・ワイン」のようなメロウネスに包まれたキャッチーなナンバーに酔えます。

杉真理
杉真理『MADE IN HEAVEN』(1991)


『ナイアガラ・トライアングルVol.2』参加以降の80年代のアルバムが評価されることが多いですが、ポップ職人として今も変わらず質の高い傑作を作り続けています。なかでも、もっとも夏らしい作品が本作。アコースティック・ギターがざくざくと刻むリズムときらびやかなアレンジに彩られた「未来世紀の恋人へ」から、早くも楽園の音楽が聞こえてきます。続く「青い楽園」はウォール・オブ・サウンドとエキゾチック・サウンドが混じり合うスウィートなポップス。南佳孝にも通じるの穏やかな雰囲気は、リゾートのひとときにぴったりです。

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今井美樹『A PLACE IN THE SUN』(1994)

この人の夏のアルバムといえば、『Be With』や『AQUA』も捨てがたいのですが、1枚選ぶとなるとこのアルバムでしょうか。一般的には布袋寅泰が手がけたバラードの名曲「Miss You」が収められていることで認知されていますが、アルバムのキーマンは坂本龍一。クールなボサノヴァ・ナンバーの「Martiniqueの風」はどことなく大貫妙子にも通じるものがあります。また、上田知華が作曲し、坂本龍一がアレンジしたバラード「海辺にて」もしっとりといい雰囲気。そしてなぜか映画音楽風のインスト「Watermark」で締めるという構成も圧巻です。

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畠山美由紀『Wild and Gentle』(2003)

Port of Notesの名盤群も聴き逃がせませんが、ソロとしてシティ・ポップ度が高いのはこの2枚めのオリジナル・アルバム。4組のプロデューサー兼アレンジャーが参加していて佳曲揃いですが、どうしても冨田恵一が手がけた3曲に耳がいってしまいます。特に極上メロウ・グルーヴの「罌粟」は、いつまでも終わってほしくないと思うほど素晴らしい。切なくも爽快なグルーヴィン・ポップを展開する「海が欲しいのに」や、ミドル・オブ・ザ・ロードのバラード「真夏の湿原」も見事で、真夏はもちろん夏の終わりまでリピートし続けたい一枚です。

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ナツ・サマー『Natsu Summer & Dub Sensation』(2018)

今回もおまけで、最新シティ・ポップの傑作を追加しておきましょう。シティポップ・レゲエというジャンルを打ち出しているナツ・サマーのセカンド・アルバムです。プロデュースは一十三十一でおなじみクニモンド瀧口(流線形)ということもあり、80sへのオマージュと思えるラヴァーズ・ロックが満載。スティールパンの音色を効果的に使ったバンド・サウンドが特徴で、「ロング・ホット・サマー」や「ジャパニーズ・レゲエ・ウーマン」のような清涼感のある声に似合った名曲が目白押しです。今年の夏はこれ一枚でOKといってもいいくらい聴き続けてしまうかも。

lightmellow

最後にちょいと告知です。金澤寿和さんたちと一緒に作った書籍『Light Mellow 和モノSpecial 〜more 160 items〜』が増刷されています。

この本はもともと『Light Mellow和モノ669―Including city pops,J-AOR,Japanese mellow groove and more…』というタイトルで2004年に出版され、その後増補改訂版として現行のものが2013年に出ました。今回の増刷にあたって、16ページの書き下ろし小冊子も付いており、ここには2014〜2018年の作品を付け加えています。すでにお持ちの方もそうでない方も、ぜひお買い求めよろしくお願いします。


LAGOON [UHQCD]
鈴木茂
日本クラウン
2017-03-22


南米旅行
西岡恭蔵
ア-トユニオン
2016-08-17


沙浪夢 SHALOM
大橋純子&美乃家セントラル・ステイション
USMジャパン
2009-06-10


スモークドガラス越しの景色
伊勢正三
ポニーキャニオン
2009-01-21


Heaven Beach(紙ジャケット仕様)
杏里
フォーライフミュージックエンタテインメント
2011-07-27


THRU TRAFFIC
東北新幹線(NARUMIN&ETSU)
ヴィヴィド・サウンド
2017-06-28


ひとかけらの夏
村田和人
FLY HIGH RECORDS
2012-05-23


MADE IN HEAVEN(紙ジャケット仕様)
杉真理
Sony Music Direct
2008-03-19


A PLACE IN THE SUN
今井美樹
フォーライフ ミュージックエンタテイメント
1994-09-02


WILD AND GENTLE
畠山美由紀
フェイスレコーズ
2003-08-06


ナツ・サマー&ダブ・センセーション
ナツ・サマー
Pヴァイン・レコード
2018-07-04




julio

フリオ・イグレシアスの新作アルバム『愛しのメキシコ with フレンズ(Mexico & Amigos)』のライナーノーツを書かせていただきました。

【参考】
Julio Iglesias: Official Website

フリオといえば、泣く子も黙るラテン・ポップ界最大のビッグスターといってもいいでしょう。僕が彼の音楽を聴いた頃は、洋楽そのものに出会った頃とほぼ一致します。おそらく最初に耳にしたのは、1982年に世界的に大ヒットした「ビギン・ザ・ビギン」。その直後にアルバム『黒い瞳のナタリー』を友人から借りた記憶があります。中学1年生だったかな。とにかく、その頃の自分ならまったく想像がつかないでしょうが、当時のフリオの年齢をいつの間にか超え、そして新作の解説を書くなんて世の中不思議なものです。

さて、この『愛しのメキシコ with フレンズ』は、2015年に9年ぶりのアルバムとして発表されたアルバム『愛しのメキシコ(Mexico)』をベースにし、一曲ごとに豪華ゲストを迎えて制作されたデュエット・アルバムです。彼はこれまでにもダイアナ・ロスやウィリー・ネルソンなどとデュエットしてきましたが、アルバム一枚丸ごとというのは今回が初めて。しかも、スペイン語アルバムということで、ラテン界のスターたちが勢ぞろいしているのです。



フアン・ルイス・ゲーラ、タリア、オマーラ・ポルトゥオンドから、テノール歌手のプラシド・ドミンゴまでジャンルや年代も多種多様。いずれも魅力的な声の持ち主ばかりなので、フリオの快活で色気のあるヴォーカルとの絡み具合が聴きどころ。基本的にはメキシコのボレロやランチェーラの名曲がメインなので、メロディアスで親しみやすいため、歌の表情で勝負という印象のアルバムになっています。



フリオ・イグレシアスは、現在御年73歳。その年齢にして、ここまで歌えるのはさすがです。機会があればぜひ、ラテン・ポップの真髄をフリオの歌声で楽しんでいただきたいと思います。


愛しのメキシコ with フレンズ
フリオ・イグレシアス
SMJ
2017-06-21


愛しのメキシコ
フリオ・イグレシアス
SMJ
2015-10-14


Volume 1
フリオ・イグレシアス
SMJ
2012-06-27




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セルジオ・アサドとオダイル・アサドというブラジルの兄弟によるギター・デュオ、アサド兄弟の関連作の再発が行われているのですが、そのうち2作品のライナーノーツを担当させていただきました。これは、ワーナーミュージックが抱えているノンサッチ・レーベルのクラシック系の名盤を再発するというシリーズの一環です。

【参考】
ワーナーミュージック・ジャパン: NONESUCH クラシック・アルバム リイシュー

セルジオ&オダイル・アサドは、日本でもギター・ファン、とくにクラシック・ギターを愛好している人には、熱心なファンが多いと思います。ギター・デュオという編成なのも珍しいですが、彼らの場合はブラジル出身ということもあり、南米の音楽を積極的に取り上げているのが特徴でしょうか。とくに、「ブラジル風バッハ」で知られるヴィラ=ロボスや、タンゴの巨匠アストル・ピアソラなどのナンバーは、二人にとってとても重要なレパートリーだといえます。

今回ライナーを書かせてもらった『ブラジルの魂(Alma Brasileira)』は、まさにそんな南米ならではの作品集。ヴィラ=ロボスはもちろん、エグベルト・ジスモンチやエルメート・パスコアルの楽曲も取り上げているので、クラシック・ファンだけでなく、ジャズやブラジル音楽好きにはぜひとも聞いてもらいたい一枚。ギターのみなので、派手な印象はありませんが、技巧的かつ味わい深い演奏は、聴けば聴くほど発見があるようなスルメのような作品です。

そして、もう一枚ライナーを書かせていただいた『GYPSY(Nadja Salerno-Sonnenberg, Sergio And Odair Assad)』は、ちょっと毛色の違う企画盤。イタリア生まれの女性ヴァイオリニスト、ナージャ・サレルノ=ソネンバーグとの共演作で、タイトル通りジプシー音楽をテーマに選曲。ジャンゴ・ラインハルトの楽曲をアクセントにしつつも、中央ヨーロッパ、スペイン、トルコ、ロシアといった各国の民謡をセルジオ・アサドがアレンジし、ユニークかつ情熱を秘めたアンサンブルが展開されます。なかなか他では聴けない演奏が楽しめる一枚です。

僕は直接関わっていませんが、このシリーズではアサド兄弟関連作以外にも、ピアニストのリチャード・グードやジョージ・ガーシュウィンの発掘音源なども再発。リーズナブルな価格になっているので、この機会にぜひ聴いてもらえると嬉しいです。


セルジオ&オダイル・アサド
ワーナーミュージック・ジャパン
2017-03-22

セルジオ&オダイル・アサド サレルノ=ソネンバーグ(ナージャ)
ワーナーミュージック・ジャパン
2017-03-22

セルジオ&オダイル・アサド
ワーナーミュージック・ジャパン
2017-03-22

セルジオ&オダイル・アサド
ワーナーミュージック・ジャパン
2017-03-22

unspecified

ダイメ・アロセナ(Dayme Arocena)のセカンド・アルバム『キューバフォニア(Cubafonia)』のライナーノーツを書かせていただきました。彼女は英国のDJジャイルス・ピーターソンに見初められたことをきっかけに世に知られることになったキューバのヴォーカリスト。まだ20代前半の若さでありながら才能がほとばしるような作品を作っています。

【参考】
Dayme Arocena: Official Website
BEATINK Official Website: Dayme Arocena

実は、彼女のライナーノーツは、2015年のデビュー作『ヌエバ・エラ(Nueva Era)』に続いて2度目。ただ、このデビュー作はシンプルなバッキングでジャジーに歌うしっとりとした作品だったのですが、新作の『キューバフォニア』は、冒頭からビッグ・バンド編成で派手な展開で驚かされます。

【参考】
...旅とリズム...旅の日記 by 栗本斉...: ダイメ・アロセナ『ヌエバ・エラ』のライナーノーツを書きました。

もちろん、前作でもアフロ・キューバンを取り入れたりしてキューバ色はしっかりと打ち出していましたが、今作ではその特色がさらに強調され、キューバならではの躍動感に満ちた作品になりました。マンボ、ルンバ、ボレロ、そしてチャングイというキューバの古典的なリズムを取り入れたサウンドとともに歌う姿は、かつてのセリア・クルースなどを彷彿とさせる瞬間もあります。

とはいえ、懐古趣味ではなく、若手ミュージシャンを中心としたセッションによって、新しい感覚はきっちりとアピール。特に、J・ディラやフライング・ロータスあたりとの共演で知られるミゲル・アトウッド・ファーガソンがストリングス・アレンジに参加しているのも話題です。



キューバ音楽自体は、今ものすごい勢いで進化しているのですが、なかなかその雰囲気は日本に伝わってきていません。ダイメ・アロセナの歌声を聴いて、少しでもその面白さを感じてもらえればと思います。






One Takes
Dayme Arocena
Brownswood
2016-05-20



 

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日々の忙しさにかまけて、すっかりブログ更新を怠っていました。というのも、10月から沖縄の出版社に籍を置いて、いろいろと仕事をさせていただいているからです。企業や自治体が絡んだ印刷物の編集やコピーライティングなどもあるのですが、一般的に流通するものとしては、雑誌「おきなわいちば」に関わらせていただくことになりました。

【参考】
おきなわいちば:オフィシャルサイト

季刊で年4回発行というこの雑誌は、沖縄に来たことがあればコンビニなどで見る機会も多いと思います。基本的には食を中心に、暮らしにまつわる様々なものごとを紹介する雑誌。でも、最新刊は「People」という特集を組み、普段スポットを当てているの食べ物や手作り雑貨や工芸品などではなく、それらを手がける人そのものにクローズアップしています。

僕は今回初めて編集に関わりましたが、いきなり表紙&メイン記事となるCoccoを担当。なかなか面白いインタビューができました。Coccoって来年デビュー20周年なんですよね。あまりの時の流れの速さに驚きました。他には、写真集『空の名前』などの編集者である三枝克之さんや、夫婦というカタチに焦点を絞った「Couples」企画、巻頭の沖縄県産牛についてのコラムなどで関わらせていただいております。

これまでもたくさんの雑誌や編集者の方々とお仕事させていただいてきましたが、自分自身が編集者の立場として仕事をするのは実質初めて。いろいろと勉強をしつつ1号作ってなんとなく全体が見えてきました。さっそく次号の制作が楽しみです。機会があれば、ぜひお手にとっていただきたいです。

なお、「おきなわいちば」は、沖縄県内では書店やコンビニで簡単に購入できますが、県外ではちょっと入手困難気味。東京都内だと、吉祥寺のジュンク堂や銀座のわしたショップなどで買えます。あと、「おきなわいちば」の通販ページもあるので、こちらもご活用いただければと思います。


アダンバレエ (初回限定盤)
Cocco
ビクターエンタテインメント
2016-08-24


ベスト+裏ベスト+未発表曲集
Cocco
ビクターエンタテインメント
2001-09-05

 
空の名前
高橋 健司
角川書店
1999-12-10
 

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カリプソ・ローズ(Calypso Rose)のニュー・アルバム『ファー・フロム・ホーム(Far From Home)』のライナーノーツを書きました。カリブの島国トリニダード・トバゴ出身の、名前の通りカリプソの女王として知られる大御所シンガー。御年76歳ではありますが、現役バリバリの新鮮なアルバムです。

【参考】
Calypso Rose: Official Website

1963年に初めてレコーディングして以来、珍しい女性カリプソニアンとして人気を得てきた彼女は、本国だけでなく他のカリブ諸国や欧米でも確固たる地位を築いています。僕は前作『Carypso Rose』(2008年)で初めてじっくり聴いたのですが、侘び寂びの効いたヴォーカルとポジティヴなオーラにノックアウトされました。

そして、待望の新作『ファー・フロム・ホーム』は、なんと全面的にマヌ・チャオとコラボレーション。マヌ・チャオは、
ミクスチャー・ロック界のカリスマとして知られるスペイン系フランス人で、日本でもフジロックなどにも出演するなど人気が高いアーティストのひとり。それだけに、たんなるオールド・スタイルのカリプソではなく、スカ、アフロ、ソカなどのテイストをミックスし、絶妙なバランスでラテン・テイストを演出。何よりも、朗々と明快に歌うカリプソ・ローズの歌声が耳に残る傑作です。



こういう音楽を聴くといつも思うのが、また狂乱のカーニヴァルに身を置いてみたいなあということ。あの感覚はいくら音や映像を視聴してもわからない。でも、彼女の声を聴くと、ふっと当時の記憶がパキッと蘇ってくるのです。とにかく、少しでもカリブ周辺の音楽に興味があるのなら、聴き応えのある本作を手に取っていただきたいと思います。

ファー・フロム・ホーム
カリプソ・ローズ
Pヴァイン・レコード
2016-09-21


カリプソ・ローズ
カリプソ・ローズ
Pヴァイン・レコード
2009-06-17

 




Soca Diva
Calypso Rose
Ice
1994-02-21

 


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西岡恭蔵『南米旅行』のライナーノーツを書かせていただきました。これは、1977年に発表された日本のフォーク/ロック・シーンの異色作であり超名作です。この当時の音楽が好きな方には、すでにおなじみかもしれません。

70年代初頭に活躍したザ・ディランIIというグループのメンバーでもあった西岡恭蔵は、1972年にアルバム『ディランにて』でソロ・デビュー。彼のことを知らなくても、本作に収録され、様々なシンガーにカヴァーされている「プカプカ」という楽曲は聴いたことがあるんじゃないでしょうか。そして、『南米旅行』は、彼の4作目のオリジナル・アルバムとなります。



西岡恭蔵という人は、シンガー・ソングライターとしてももちろん人気はあるのですが、それ以上に矢沢永吉の初期作品である『I LOVE YOU,OK』や『A DAY』に歌詞を提供して評価を得ました。そのときの印税を使って旅に出て作ったのが、この『南米旅行』というアルバムなのです。

“南米旅行”とは銘打たれてますが、実は中米・カリブあたりまでで、南米大陸の歌は出てきません。実際、この時の彼の旅はメキシコ、バハマ、ニューオーリンズあたりで終わり、その時の印象を元にアルバム制作には入っています。しかし、そんなことはともかく、とにかく旅気分に浸れる作品なのです。冒頭の「ジプシー・ソング」をきけば、誰しも納得でしょう。



アルバムには、関西のファンク・シーンを盛り上げたソー・バッド・レビューのメンバーが参加していて、レゲエやボサノヴァ、カリビアンなどのエッセンスが加えられえいて素晴らしい。なかでも、ヴァン・ダイク・パークスとの共演でおなじみのロバート・グリニッジも、スティールパンで参加しているのがスペシャル。とにかくピースフルな雰囲気がそこかしこに漂う傑作なのです。

それにしても、“南米旅行” というアルバム・タイトルには、それだけで胸をキュンキュンさせられますね。すべての旅人に、まったりとリラックスしながら聴いてもらいたい、日本の名作アルバムです。


南米旅行
西岡恭蔵
ア-トユニオン
2016-08-17


ディランにて
西岡恭蔵
キングレコード
2012-10-03


街行き村行き
西岡恭蔵
キングレコード
2012-10-03


ろっかばいまいべいびい
西岡恭蔵
徳間ジャパンコミュニケーションズ
2003-01-22


Yoh-Sollo
西岡恭蔵
ミディ
1998-02-01


New York to Jam
西岡恭蔵
ミディ
1998-02-01


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