音楽業界に身をおいていただけに、ブラジルでもつい「このアーティストはこんなプロモーションしてるんだあ」とか考えてしまう。ここリオで現在最大級の宣伝をしているのが、マリア・ベターニア(Maria Bethania)がヴィニシウス・ヂ・モラエス作品を歌ったニュー・アルバム。街中にはマリアとヴィニシウスの2ショット写真の看板やポスターが溢れ、CDショップに入ればずっと店頭演奏されている。リオで生活していてこの作品の存在を知らない人は皆無じゃないだろうか。

20050225そんなタイミングで、彼女のコンサートが4日連続で行われた。当日、会場のCanecaoに行ってみると、チケットは売り切れ寸前でぎりぎりセーフ。会場内はすべてテーブル席になっており、観客もめかしこんだ大人が多く、タンクトップを着ていった僕は思わずシャツを羽織った。そしてこのショウがとんでもなく素晴らしいものだった。ステージ左側にピアノやギターなどアコースティック・セット、右側にパーカッションやエレクトリック系のバンド・セットを配し、楽曲によって絶妙なアンサンブルで演奏していく。マリアの時に芝居がかった歌声もどっしりとした存在感があり、ひしひしと心に染み渡ってくる。歌や演奏だけでなく、歌の途中で詩の朗読をしたり、曲によって照明やセットが変わるなど、実によく計算されている。ほとんどMCもないため常に緊張感があり、バックのバンドもタイミングよく楽曲をつないでいくなど、ここまで完璧に演出されたショウはブラジルに来て初めて。まさに重鎮の貫禄と威厳を観てしまった。

mariabethania最新のマリア・ベターニアを聴く1枚。

Maria Bethania『Que Falta Voce Me Faz』(2005)

これがそのニュー・アルバム。ヴィニシウスの歌詞にトム・ジョビンやカルロス・リラなどが曲を書いた名曲群を、マリアが渋く歌い上げている。彼女の歌はいわゆるボサノヴァやMPBのシンガーと比べると相当情感豊かで、どちらかといえばシャンソンを聴いている気分になる。ドラマティックな歌とは対照的に、アレンジは非常にシンプルで、とにかく詩と旋律を聴かせることに最大限に気を使った作品。