個別企業から全体相場、果ては政治経済・文化まで、相場観測をするブログです。
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ただし、投資顧問ではないので、個別の運用相談はできません。銘柄を淡々と「観測」して参ります。しかし、それは他のブログやメールマガジンは勿論、アナリストレポート等の追随を許さないものだと自負しています。

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よろしくお願いいたします!

私事ですが、引越しをしました。
引っ越し後はひたすら本の執筆に励んでいますが、ようやくネットもつながり、執筆の一環ともなるので、久々に個別銘柄のコメントをしてみます。 
今は執筆に追われているため、基礎的な説明はあまりせず、端的に書かせてもらいます。

さて、なぜニコンか?というと、たまたま今朝以下のようなニュースを見たからで、特段の理由はありません。
ニコン 7年ぶりに最終赤字 人員削減などで特別損失 | NHKニュース
精密機器大手 5社が円高で営業減益 ニコンは7年ぶりの最終赤字 - SankeiBiz(サンケイビズ)
ニコンの17年3月期、最終赤字71億円 構造改革費用重く  :日本経済新聞
ニコン、7年ぶり赤字転落 デジカメ不振でリストラ進む:朝日新聞デジタル

ツイッターでもツイートしましたが、各社すべて「最終赤字」を見出しに持ってきていますが、営業利益ベースでは増益であり、キャッシュからみても特段今期がどうこうということはなく、構造改革(参照)費用で赤字になった(した)だけのことですので、最終赤字は本質的な意味はありません。それをどうこういうのはミスリードではないかと思います。
むしろ営業利益ベースで増益にもかかわらず、営業利益ベースでみても、低い利益率であることが本質的な問題です。

では、ニコンの現状について簡潔に観ていきます。
続きを読む

 
「マクロ的な見解をまとめたり、他人のマクロ経済やマーケットの予想に耳を傾けたりするのは時間の無駄です。実際、これは本当に重要な事実に対する見方を曇らせる可能性もある危険なことです。」
バフェットからの手紙 第四版 p168 
「マクロ的な見解」とは、政治・経済・社会・技術等々の社会の大きな動きに対する見解の事でしょう。
「マクロ経済予想」というのは、今年のGDP成長率だとか経済指標の先行きだとか、産業の収益予想だとか、政策の経済への影響だとか諸々を指すでしょう。
「マーケットの予想」というのは、日経平均はいつ2万円になるか?とか、年内にドル円は何円になる可能性がある!とか、明日の市場はどうなるか?とか、そういうものでしょう。

証券会社やシンクタンクのレポートから新聞、テレビ、情報会社、ニュースサイト、個人ブログ、ツイッターに至るまで、こういった予想情報に満ち溢れていて、市場予想ビジネスには明らかな需要があるのでしょうが、バフェットに言わせれば、「時間の無駄」だというわけです。むしろ、「重要な事実に対する見方」を曇らせる可能性すらあると言います。

          ○

おそらく多くの個人投資家は、むしろ勉強熱心な人ほどに、上記のような様々な情報を集めているのではないでしょうか?

かくいう私も、かつて日経新聞を切り取って、マクロ的な見解を一生懸命にまとめ、考え、様々な人の経済予想やマーケット予想を読みふけっていたものです。
今ではほとんど予想の類は読んでいませんし、それで困ってもいません。読むにしても流し読みする程度です。
なぜか?言葉にするなら、バフェットと同様「時間の無駄」だからです。時間は究極のトレードオフ(あっちを立てればこっちが立たない)をもたらします。何かをするという事は、他にできた何かをしない事になります。マクロ経済やマーケットについての誰かの「タラレバ」な予想を読む時間があるのなら、他にやるべき事があるのです(例えば、猫と遊ぶとか、自作ラーメンを作るとか、読書や企業分析をする…などです)。

そもそも予想が本質的に意味を持たない事は、「ブラックスワン」や「まぐれ」といった優れた書籍でも論じられていますが、一言で言うならば、「誰も先の事は分からない」という話です。

実は当ブログが相場予測ではなく、「相場観測」というタイトルなのも、これです。無駄な予測・予想に溢れた様々な情報とは違い、当ブログでは「観測」して、その結果を共有します…という志をタイトルにしたものです。ブログを始めた当時は今ほど投資を理解してはいませんでしたが、この考えは当時よりも深まっています。

ところで、バフェットは、名著「投資で一番大切な20の教え」の帯で、「ハワード・マークスからの"顧客向けレター"が届くと、私は何をおいても必ず真っ先に読むことにしている」と述べています(ネットでもこちら(参照)でご覧いただけます)。
では、なぜマークスの顧客向けレターは「時間の無駄」では無いのでしょうか?
私の印象としては、マークスが深く投資について理解した上で、「予測」ではなく、「観測の人」だからだと私は思います。

          ○

最後に、ここで色々なものを「読むな」などと主張するつもりはありません。要不要は、自分自身が体験していく中で掴んでいくものだからです。
ただ、株式投資の勉強や実践を積む中で、必要なものは読み、不必要と思うものは読まず、より優先順位の高い事に時間を使いましょう、というスタンスは重要なことだと思います。



仕事、ファッション、食事、芸術…等々に至るまで、およそ人間社会で生きる以上付きまとう問題があります。
なにか?(他人からの)「評価」の問題です。

良い仕事を目指すのか?誰かに評価される仕事をするのか?
自分が満足できる服を着るのか?人に良いとされるものを着るのか?
芸術の完成を目指すのか?人に喜ばれる作品を作るのか?

厳密にこれらが常にトレードオフ(あちらを立てればこちらが立たぬ)の関係であるとは限りませんが、この評価の問題が我々に付きまとっていることは間違いないでしょう。

2千円で売っていても見向きもしないのに、同じ服を2万円なら買ってしまう人がいるのです。ここに人間の妙といいますか、愚かさとかわいさがあるように思います。同じ服でも2千円なら恥ずかしいが、2万円なら堂々と着ていける人がいるのです。

「プロが運用する」と称する株式ファンドでも、「何円以下の銘柄は買わない」というところもあります。実は服の値段と株価は根本的に異なります。株価が低いから市場の評価が低いとは必ずしも言えません。例えば、トヨタでも株式数を増やせば(時価総額は同じでも)100円になるのです。にもかかわらず、「安いもの(?)は買いたくない」という「プロ」もいるのです。
また、10年近く200円台の株価をうろついていた銘柄が2.3か月で急騰して1000円を超えてきたところで、過去最大の出来高で大商いとなるようなケースもザラにあります。2.3か月前に200円では見向きもしなかったものを、1000円なら買いが殺到するのです。

           ○

さて、バフェットからの手紙に戻りましょう。

「二つの小さな投資について、私はそこからどれだけのインカムゲインが得られるかのみに注目し、日々の資産価格の変動については考えませんでした。
試合で勝利するのは、プレーに集中した人であり、スコアボードばかり見ている人ではありません。
週末を株価を見ずに楽しめる人は、平日も試してみてください。」
(バフェットからの手紙、第四版p168より) 

引き続き、バフェットがほとんど内容も知らない農場とニューヨークの不動産に投資した話です。それにより年間10%のリターンを上げ続けています。

「二つの小さな投資について、私はそこからどれだけのインカムゲインが得られるかのみに注目し、日々の資産価格の変動については考えませんでした。」とありますが、不動産や農場を所有することでどれだけ実際に収入を得られるかだけを気にしていたということです。
これを株式投資で考えれば、企業の上げる利益と配当のみに注目していた、ということになります。
日々の株価の変動は、市場の「評価」であって、年間10%のリターンが変わらなくてもこの「評価」は時々刻々と変わります。

そして、
「試合で勝利するのは、プレーに集中した人であり、スコアボードばかり見ている人ではありません。」と言います。

ここでの試合の勝利とは、年間10%のリターンという実利です。1億円の案件であれば、年間1000万円の収益が得られればそれで満足なわけです。年間1000万円の収益があげられるかを分析するのが「プレー」です。株式で言えば、企業分析、企業価値評価こそが「プレー」です。

一方、スコアボード(資産価格・株式なら株価)ばかり見ている人は何を見ているのでしょうか?年間10%を上げられる不動産・農場・企業に対する、人々の「評価」の動きを見ているのです。そして、「評価の動きにはクセがある!」ということに夢中になっているわけです。
極端に言えば、マークシート式の試験で、問題を解くのではなく、マークシートの変化のクセを見ているようなものです。
「評価」の根源ではなく、表面・結果としてのスコアボード(株価)やマークシートの解答の動きをいくら見ても、肝心の「価値」や「解き方」については何も分からないままです。
スコアボードばかり見ている人のモットモ重大な問題は、それで儲かるかとか、試験に合格するかという事ではなく、価値の出し方や問題の解き方に結び付かない点です。

そして、この結びが秀逸です。
「週末を株価を見ずに楽しめる人は、平日も試してみてください。」


結びで、株価を見ないことを推奨しています。
「なぜ株価を見ない方が良いのか?」については、その5以降に続くのですが、ここで一点非常に重要な事があります。
スコアボード(株価や時々刻々と流れてくるとりとめもないニュース)を見ているその時間に、「プレー」を続けたり、読書などで理論の研究をしている人たちとは、徐々に差が開きつつある、ということです。そして、その積み重ねは想像を絶するほどの差になっていく、ということは強調してもしすぎることはありません。

私自身かつてはまさに一日中スコアボードを見ている側だったから痛感していますが、朝からモーニングサテライトをみて、日経新聞を読んで、市場のスコアボードをみて、スコアボードの動きに対して考えたり、後付けの解釈をブルームバーグやらCNBCで聞いたり、色々探したりしていたら、もう夕方…と、それはそれで大変に忙しい生活です。ところが、はて、今日は何を得たか?というと、大概が目先の株価に影響を与える材料や目先のトレンドの話で終わっているのです。つまりは「評価」に振り回されているに過ぎません。
実際、ツイッターなどをみても、プロも含めてそういう人が大半だと思います。

その間に「プレー」を続けていたらどうでしょうか?おそらく圧倒的な優位性となります。バフェットの真骨頂はそこにあると思います。
また、球場から出て、様々な体験をして心身ともに豊かな生活を送ることも非常に重要なことだと思います。
球場の中にいると、そんなことすら忘れがちです。

           ○

ということで、表面に表れている「評価」の動きに気を取られて、本質を見失う事無かれ…という話でした。
どうもあれもこれも書きたくなってしまって記事が長くなるのですが、次回以降はより端的に、短い記事にしていこうと思います。
今日のものも2つか3つの記事に分けたほうがスッキリしてよいかもしれませんね。

では、また!
 


「買おうとしている資産の将来の利益ではなく、価格変動に注目しているのならば、それは投機です。それも間違いではありません。ただ、わたしは自分が投機で成功できないことは分かっていますし、投機で成功し続けることができると主張する人は信用できません。
コイン投げでも、半分の人が一回目は当たります。しかし、そのなかに、その先も勝ち続けることが期待できる人は一人もいません。
また、検討している資産が最近値上がりしたという事実は、買う理由にはなり得ません。」
(バフェットからの手紙、第四版p167-168より) 


(橘優コメント)

バフェットの前回(前回)の 文章の続きです。
「投機」に対するバフェットのスタンスを述べています。

まずはバフェットの主張をまとめてみましょう。

a.「買おうとしている資産の将来の利益ではなく、価格変動に注目しているのならば、それは投機です」とありますが、「投機」を端的に定義しています。かんたんに言えば、「価値」を見るのではなく、「価格」を見るのが投機だというわけです。

b.その上で、「それも間違いではありません」と言います。
確かに「投機」であろうとなんであろうと、継続的に勝ち続けられるなら、株式市場というものを金儲けゲームと捉えるのならば、「間違い」ではありません。
むしろ企業の将来の業績予測など面倒くさいことをしなくても価格分析だけで儲けられるのなら、手っ取り早い方法とすら言えるでしょう。
しかし、バフェットは「投機で成功し続けることができると主張する人は信用できません」として、コイン投げを例に挙げます。
「価格変動の分析だけで成功し続けられるなら良いが、わたしは信じないよ」というわけです。

c.最後にダメ押しで、「検討している資産が最近値上がりしたという事実は、買う理由にはなり得ません」というわけです。これは、いわゆる「モメンタム系」の投機家を例として挙げているわけです。モメンタム系とは、「上昇した場合はさらなる上昇が期待できる」という、価格のモメンタム=勢いを重視したスタンスです。

             ○

では、少し掘り下げて解説します。

まず、aです。投資とは何か?投機とは何か?という話ですね。

投資とは、企業の将来価値の予測も含めて「価値」を算出し、それよりも割安に取得することです。「価値」を重視するわけです。
一方投機とは、「上がると思うから買う」「下がると思うから売る」という、「価格」を重視する在り方と言えるでしょう。

ところで、投資と投機は厳密な区別はできないんじゃないの?という方もいると思います。
私も、そう思います。
その上で、順序の問題とは言えそうです。あくまで「初めに価値ありき」なのが投資家で、「初めに価格(変動)ありき」なのが投機家というところでしょうか。
投資家にとってもも価格水準は重要ですし、価格変動とも完全に無関係ではありません。
投機家でも価値をしっかり把握するタイプもいるでしょう。「賢明な投機家」ならば、むしろ「価値」にはこだわるはずです。
要は、どちらを根本に置くかという順序の問題だと、ここでは簡単に分けておきましょう。


次に、bになります。
bは「投機で成功し続けることができると主張する人は信用できません」というバフェットのスタンスを表明しています。

では、本当に投機で成功し続けることはできないのでしょうか?
私なりの結論を書いておきます。先に書いたように、投資と投機も完全には分けられませんが、ここで、純粋な「投機」、つまり価格変動そのもののみの予測で成功し続けることは・・・と言われれば、一般論としていうのなら、それは無理です。
もちろん結果として成功し続ける人はいるかもしれません。それは運かもしれませんし、なんらかの優位性によるものかもしれませんが、一般論としてそれを継続的なものと捉えることはできないということです。

なぜ継続するとは言えないのか?といえば、それは「競争」だからです。
例えば、明らかに勝率の高い価格変動パターンを発見したとして、それを皆が真似したら勝率は必然的に変わるからです。
つまり、純粋に価格変動パターン等で勝負するということは、基本的に、「他の投機家と同じようなことをして、かつ、自分は人よりうまくやる」という、「競争」の舞台に上ったことになると言えます。

そこでも結果的にある程度の期間勝ち続ける人はいるのかもしれませんが、一般論としては「無理だ」というべきものです。
過去はうまくいったんだ!と成績を見せられても、「過去はその手法がうまくいったのね」という事でしかありません。
明日にはその手法はモットモまずい選択になるかもしれません。


ただ、個人的には、「価値」の分析に加え、価格変動パターンや人間心理を組み合わせたような、「賢明な投資家」と「賢明な投機家」のハイブリッドとでもいうべき存在はあり得るとは思います。



c.「検討している資産が最近値上がりしたという事実は、買う理由にはなり得ません」

cは、いわゆるモメンタム系投機家へのバフェットの冷めた一言です。

バフェットや純粋な投資家の視点からすれば、資産の「価値」が変わらないのに「価格」が値上がりしたのであれば、単に「割高になった」というだけのことであって、なぜ「割高になった」ことを理由に買うのか、ほとんど狂人の言葉としか思えず、理解に苦しむでしょう。

一方モメンタム系投機家からすれば、「確かに、多少割高にはなったかもしれない。しかし、モメンタム投機は確率的に勝つ確率が高い。これは統計的に実証されている」と反論するでしょう。
しかし、それは、一を知って二を知らずの議論で、例えば、「なぜ上昇したことが次の上昇に影響を与えると断定できるのか?他の諸要因は調整した上での統計か?」という話です。

いずれにしても、bで議論したように、モメンタム投機も、論理的に「競争」の話で、彼が他の投機家よりもうまくやり続けられる…とは一般論としては言えない点は同じです。





「投資を検討するときは、資産の将来の生産性に注目します。将来の概算利益の予想に自信が持てなければ、その件は忘れて別の案件に目を向けてください。すべての投資先を評価できる人はいません。ただ、すべてを知る必要はなく、自分がかかわことだける理解しておけばよいのです。」(バフェットからの手紙 第四版 p167)

(橘優コメント)

バフェットの前回(参照)の 文章の続きです。
この文章はおそらく多くの人にとって意味が取りにくい文章だと思います。

まず、「将来の概算利益の予想に自身が持てないならば」投資をすべきでないということですが…

「そもそも将来の概算利益を出すことなどできるだろうか?20年後の未来なんてわかりますか?」「予想というが、それは主観的なもので、客観的な事実ではないアヤフヤなものなのではないか?」「バフェットは予想はしないと言っているのに、矛盾していないか?」などという疑問が出る人も多いと思います。

将来の概算利益の予想に自信が持てる場合というのは、モットモ分かりやすい例で言えば、企業の業績が長期的に安定しているとか、明らかに強い競争優位性を持っているとか、シェアの変動が起こりそうもない…といった場合です。

将来の正確な予測などは神様にしかできません。バフェットも人間ですから不可能です。ただ、(自分から見て)簡単なケースに的を絞れば、将来の概算利益の予想に自信は持てるわけです。結果的に正しいかどうかではなく、自信が持てるかどうかの話です。
その「的」そのものをどれだけ深く、広くできるかは、個々人の努力次第でしょうが、ここで大事なことは、あくまでも自分の能力の範囲内、自分が自信を持てる案件にしか投資をしない、という姿勢でしょう。

また、当ブログでおなじみ残余利益モデルによれば、
価値=現在の資産価値+将来の残余利益の現在価値
ですが、この視点から言えば、「将来の残余利益の現在価値」が重要な価値算出の要素になる以上、「将来の概算利益に自信が持てない」場合には、つまり「価値」に自信が持てないわけですから、当然投資は困難になります。

ただ、実際には適正な割引率であれば、20年後の残余利益の現在価値というのはそれ程価値算出において大きな影響は無く、例えば目先5年~10年の予想でも概ね正しい価値の算出が可能です。つまり実際に未来永劫までの利益の予想が必要なわけでもありません。

さらに当ブログではこれに一工夫二工夫するわけですが(市場価格からの「期待」の逆算や、保守的な姿勢)、ここでの議論からは外れるので、おいておきます。


次に、「すべての投資先を評価できる人はいません。ただ、すべてを知る必要はなく、自分がかかわことだける理解しておけばよいのです。」いう後段です。

これは文字通りの意味でしょう。すべての投資先を評価できる人は実際いません。もっと言えば、多くの企業の価値は算出は事実上困難です。つまり、将来の概算利益に自信を持てる企業は一握りです。その一握りの企業についてしっかり価値算出をできるようすれば良い、という話です。

これに対して、チョット価値算出方法を学ぶとあらゆる企業の価値を評価しようとする人がいますし、一定の数式であらゆる企業の価値を算出して割安だとか割高だとか一覧にしたものが本として売られていたりしますが、ほとんど無意味…というより、有害ですらあります。

投資でモットモ重要なことは、正しい価値算出法の習得は前提として、「価値を算出できるか」自体を見極める事、そして割安に投資をすることです。簡易的な価値算出法であらゆる企業を評価しようとするのはその逆の在り方と言えます。

           ○

まとめると、ここでバフェットの言わんとしていることは、投資候補の「価値を算出できるか自体を見極める」という姿勢についての事でしょう。具体的には、投資を検討するときには、その企業の将来の業績を概ね「自信を持って」予想できるか?を問え…ということです。


 


随分長いことブログ・メールマガジンを更新できずにいました。というのも、かねてからお伝えしていたように本の執筆やその他に忙殺されていたためです。
とはいえ、ブログ・メールマガジンは私の原点であり、心待ちにしてくださっている読者もいらっしゃるので心苦しく思っておりました。
とはいえ今個別銘柄分析などを本格的に行う時間もなく、簡単な分析をしてもあまり意味が無いので、どうしたものかと考えていました。

そこで、本の執筆の為にもなり(思考の整理という意味で)、読者にも参考になるものとして、バリュー投資の名著中の名著である「バフェットからの手紙(第四版)」の中で投資に特に役立つと思われる部分について、時間を見つけて少しずつコメントを書いていこうと思うに至りました。

では、みていきましょう。
              ○

「その分野の専門家でなくても、満足のいく投資リターンを上げることはできます。ただ、その場合は自分の限界を認識し、必ずある程度はうまくいく道を選びます。単純なことに徹し、ホームランは狙いません。そして、簡単な儲け話は、即座に却下します」(p167)

(橘優コメント)

「その分野の専門家」というのは、ここでは、その分野・業界・企業に非常に詳しい人の事をいうのでしょう。そうした人でなくても、「満足のいく投資リターンを上げることができる」という事をバフェットは主張しています。
話の流れとしては、バフェット自身がほとんど見たこともない農場や一度も行ったことのない商業用不動産に投資をして満足のいくリターンを上げているというエピソードからの話です。

さて、多くの人は、ファンダメンタルに基づく投資をするのならば、その分野・業界・企業に非常に詳しくならなければならない、それが必須事項だ…という認識を持っているかもしれません。確かに自分のよく知る対象に投資をした方が良いというのは直感的に分かります。

ところで、「よく知っている」とはどういうことなのでしょうか?自分がその業界で働いていることでしょうか?その会社の従業員であることでしょうか?それともその会社や商品のマニアであれば良く知っていることになるのでしょうか?
私は証券会社の社員でしたから、業界については知っている方でしょうし、趣味の音楽やラーメン等についても詳しいほうだと思います。読者にもそれぞれに詳しい分野があるでしょう。
しかし、企業や商品についての知識が豊富なことは、必ずしも投資家として「知っている」ことでは無いと私は考えます。

ここで、「よく知っている」の意味を二つに分けて考えてみましょう。
1.その企業・商品・業界・実務等の具体的な知識
2.投資対象の「価値」を算出する為の知識

2の、投資対象の「価値」とは、a.資産価値、b.将来にわたる利益に因るものです。特に将来にわたる利益を押さえるためには、その企業がなぜ、どういう仕組みで利益を上げてきた、いる、いくのか?どういった点に戦略的な特徴があるのか?その特徴は損益計算書にどのように結び付いているのか?持続的だと考えられる根拠は何なのか?等を押さえる必要があります(この辺の観方は本で書くつもりです)。

1と2の両方に詳しい場合は、本当の意味での「専門家」と言えるでしょうが、必ずしも「専門家」にならなくても満足のいくリターンは上げられると思います。
もっといえば、2のノウハウがあれば、実際、投資家としてはあまり困ることは無いでしょう。
2をしっかりと磨いた土台の上で1が加わった時には、「鬼に金棒」ということになり、時にホームラン級の投資ができるのかもしれません。
一方、2のない1は、投資活動においては、あまり意味を為さないでしょう。


あまりブログを書かないのも読者にも申し訳ないですし、私もブログ力?が落ちるのもアレなので、本の執筆の中で可能なかぎりにおいて、意識的に時々書いていきたいと思います。

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さて、どうもトランプ(次期アメリカ大統領)の口先というかツイッターでの「つぶやき」介入が波紋を投げかけているようです。

トヨタを揺さぶる「トランプ恫喝」という激震 メキシコへの投資をなりふり構わず抑え込み | 自動車 - 東洋経済オンライン
「米国のドナルド・トランプ次期大統領は1月5日、トヨタ自動車がメキシコ工場の建設を進めていることに関して、ツイッターで「トヨタはアメリカ向けのカローラを生産するため、メキシコのバハ(・カリフォルニア州)に新しい工場を作るという。ありえない!アメリカ国内に工場を作らないなら、高い関税を払え」と警告。メキシコ工場新設の撤回を強く求めた。」

「トヨタは2015年4月、2019年にメキシコに新工場を設立し、小型乗用車「カローラ」を年間20万台生産すると発表しており、昨年11月の米国大統領選直後に起工式を開いたばかりだ。投資額は約10億ドル(1150億円)と巨額で、新規雇用は約2000人に上る見込みだ。  トヨタはこれまで、あえて工場の新設を数年間凍結し、既存工場の能力増強や生産技術の向上に注力してきた。まさに久しぶりとなるメキシコの新工場は新たなクルマ作りの知恵と工夫を結集した象徴的な存在なだけに、大きな衝撃が広がっている。」
トヨタ、メキシコ工場はトランプ政策次第 「もう少し状況が分かったら考える」 | ロイター - 東洋経済オンライン
「トヨタ自動車<7203.T>の豊田章男社長は5日、メキシコでの新工場建設計画について、トランプ米国次期大統領の政策や決断など「いろいろなものを見ながら判断していきたい」と述べ、現時点では変更はないとの見解を示した。ホンダ<7267.T>の八郷隆弘社長も、当面はメキシコでの事業を今のまま継続する考えを示した。」


北米戦略に政治リスク トランプ氏、トヨタに口先介入 2017/1/7 (日経新聞17/1/7)

 「日本企業の北米戦略に不確実性が増してきた。トランプ次期米大統領が5日、自身のツイッターでトヨタ自動車にメキシコ工場の新設撤回を求めたことで、経済界や日本政府に波紋が広がっている。日本企業にとって米国は収益を左右する最も重要な市場。自国経済を優先するトランプ氏の動向次第では、日米経済摩擦が強まり、日本企業が対米戦略の修正を迫られる可能性もある。  
トヨタは2019年にメキシコに約10億ドルを投じて新工場を稼働させ、小型車を米国にも輸出する予定だ。この新設計画に対しトランプ氏は「あり得ない! 高い関税を払え」とツイッターに投稿、撤回を求めた。」


米製造業、打算の屈服 フォードがメキシコ新工場撤回(日経、1/5)
「米国第一」を掲げ国外へ拠点を移す企業を攻撃するトランプ次期米大統領に、企業側が対応を迫られている。米フォード・モーターは3日、メキシコ新工場の建設撤回とミシガン州への投資を表明。メキシコ投資の中止は空調機器大手キヤリアに次ぐ。国内回帰の圧力に抗しきれなかった形だが、企業側にも「打算」が見え隠れする。
(中略)
「日本電産の永守重信会長兼社長は6日、「(自社の)メキシコ工場は南米向けにし、米国には中国や欧州から輸出することもできる」と指摘。自動車の米国生産の流れが強まれば、米国での部品生産拡大を検討する考えを示した。」
米フォード、メキシコ工場新設を撤回 トランプ氏は歓迎:朝日新聞デジタル
「米自動車大手フォード・モーターは3日、メキシコに新工場を建設する計画を撤回すると発表した。トランプ次期米大統領は海外に生産拠点を移す米製造業の動きを再三批判しており、フォードの判断には同氏の意向が影響したとみられる。   発表によると、当初はメキシコに小型車を生産する工場を16億ドル(約1900億円)で建設する予定だったが、これを取りやめる。かわりに米ミシガン州内の既存工場に7億ドルを投じ、700人の新たな雇用を創出するという。マーク・フィールズ最高経営責任者(CEO)は記者会見で、「トランプ氏による企業の成長を促す政策に後押しされた」と語った。」

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上記のような「つぶやき介入」が続いた場合、(日本)企業にはどの程度打撃になるか?結論から言えば、今のところのニュースを見る限りでは、あまり影響が無いのではないかと考えています。

企業はどう動くか

「つぶやき」によって、フォードのように委縮と打算によってメキシコからアメリカへ工場回帰を行うこともあるでしょうが、一方でトヨタやホンダのようにそのままメキシコへの投資や工場稼働を続ける企業もあるでしょうし、日本電産の永守社長の指摘のように中国や欧州からの輸出を模索する企業もあるでしょう。

一般論として言えば、実行性が不明なツイッターの「つぶやき」程度で既に予定されている「工場への投資を止めます」などと言うのは、大企業の社長としてはどうかしているでしょう。


実行可能性はどうか?

いずれにしても、現状では「つぶやき」は「つぶやき」であって、実際に高関税をかけられるかどうか?が問題となります。
で、その実行性はどうかというと、実際にアメリカでのメキシコからの輸入に高関税を課すのならば、NAFTAの見直しが必要である上に、WTOのルール違反にならないのか?とか、メキシコその他国際社会・世論からの批判・報復に繋がるのではないか?議会は賛同してくれるのか?という問題が出てくるでしょう。色々とハードルが高いように思われます。


企業業績への影響は?

それで問題は、(日本企業の)企業業績への影響です。基本的には実行可能性が低いので、全体としての業績への影響はかなり低いと考えています。

とはいえ、トランプからすれば、単につぶやくだけで終わって、「つぶやき大統領」としてほとんど無視されるような事態となるのは避けたいでしょう。そこで、おそらく「多少の結果」を得て誇大広告して終わるのが現実的に思われます。
「多少の結果」とは、例えば、企業側からして、「万が一」に備えて現状できるリスク対策を考えるならば、当面決まっている投資以降は、メキシコへの投資を現状の設備維持程度に減少させ、トランプの顔を立ててアメリカへの投資を多少なりとも増加させるというような動きです。

例えばトヨタについて言えば、2017年3月期決算の補足資料(参照)などをみると北米への投資額は24%程度(2017年予想)で、日本に次ぐ拠点になっています。
北米への投資枠内で、これから数年でメキシコとアメリカの投資比率を多少変化させたり、分かりやすくアメリカに工場を新設するような投資を行い、トランプに多少の結果をプレゼントして誇大広告に乗ってあげて攻撃されなくなるのなら、そうするでしょうということです。

その辺りの投資比率の見直しが結果として吉と出るか凶と出るかは為替や経済情勢が複雑に絡むので、誰にもわかりません。
いずれにしても、業績にそれ程大きな影響とはならないでしょう。


結論

もちろん実際に何が起きるかは分かりませんが、基本的には、この件については企業は対策も可能ですし、そもそもの実行可能性も低いと考えられるので、必要以上に怯える必要も騒ぐ必要もないと考えています。
実際に企業業績に及ぼす影響も、数字の面では軽微でしょう。

ただし、日本企業はともかくアメリカ企業・アメリカからの投資引き上げにより、メキシコ経済に打撃となり、それが色々と多方面に影響を与えて、結果的に世界経済の波乱要因となる…とか、アメリカに資金が回帰してドル高になり、それがアメリカ経済の重しになり…等々というような風が吹けば桶屋が儲かって、蝶々の羽ばたきが竜巻を引き起こす式の話となってくると、「分からない」としか言いようがありませんが、この辺は少し注意・意識して見ていきたいところです。

(1/8追記)
今回のメキシコの件はともかくとして、トランプは中国に対して為替操作国認定だとか関税引き上げ措置を主張しています。それが現実味を帯びた場合には、世界経済は勿論、日本企業にも色々な影響を及ぼす可能性が高いと思われます。
そして、中国の為替操作国認定については今回のつぶやき恫喝よりもずっと実現性が高いのではないかと見ています。
今は何となく市場はトランプ期待で上昇していますが、トランプ大統領就任前後でのいろいろな意味での不確実性がある上に、世界的に株価も上昇しているため、相対的にリスク(損失可能性)は高まってきていると言えます。

(1/10追記)
 「北米への投資枠内で、これから数年でメキシコとアメリカの投資比率を多少変化させたり、分かりやすくアメリカに工場を新設するような投資を行い、トランプに多少の結果をプレゼントして誇大広告に乗ってあげて攻撃されなくなるのなら、そうするでしょうということです。」
と書きましたが、やはりトヨタ、米に1兆円超投資…トランプ氏批判受け(読売新聞) - Yahoo!ニュースという動きが出てきました。
「今後5年間で1兆円」ということですが、例えば2017年3月期の元々の北米地域への設備投資は3250億円だったので、5年間で1兆円というのは、やはり「乗ってあげる」という範囲内であろうと思われます。




あけましておめでとうございます。

今年は、いよいよ本の出版や、その後有料メールマガジンのスタートを予定しています。
日々精進してまいります。
あまり記事は書けなくなっていますが、執筆が一段落したら色々と書いていこうと思います。

本年もよろしくお願いいたします。

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