世界のひずみにあるしん太の棲み家

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空想家

Date :
2009年10月08日
Category :
小説
このまま年をとっていけば、間違いなく後悔する。洋一はそう確信していた。何かを「変革」する必要がある。そう思うようになったのはいつの頃からだろうか。
 何かを変革。何かを変革。最近、彼はその「変革」ということで頭をいっぱいにしていた。何かをきっかけに彼の人生が劇的に変化する、ということを待ち望んでいたのだ。実際、テレビのドキュメント番組でよく見る、「その時、Aに転機が訪れた」、という様なことが自分にも起こらないものかと思うのだ。洋一は考える。自分の人生は、まだ始まりさえ見せていない。自分だってその気になればやってやるさ。まだその気になっていないだけさ。こんなことを考え続けて、何もせず、毎日を無為に過ごして一体何になるのかという思いもあるが、では、具体的に何をどうすればいいのかということになり、それもわからず、結局、何かを「変革」という考えに落ち着くのだった。
 洋一は駅の構内の清掃員をしており、プラットホーム、トイレ、喫煙室などを清掃する。以前は無心でしていたこの清掃作業も、最近はこの「変革」という考えが頭の中をグルグルと回り出し、まるでうわの空のような様子で、行われるようになっていた。だんだんと同僚達とも距離を取り、一人とりとめのない空想の中にいることが多くなった。洋一は空想する。自分がまるでハリウッドスターのような存在になり、何千、何万という人間達が自分の一挙一動に夢中になる。大勢のファンの波をかき分け、高級車の後部座席に乗り込む。追ってくるファンやカメラマンを尻目に運転手に車を発進させる。洋一は恍惚とする。自分にとってそうなるのはごく自然なことに思われたし、そうなるべきなのは自分であると思っていた。そのために、何としても、自分の人生を「変革」しないといけない。それさえ出来れば薔薇色の未来が訪れることは目に見えている。


 「変革」とか転機といったものが訪れる気配はいっこうにない。洋一はよく空想して、その度に幸福感に満たされるが、それが現実になることは不可能に見えた。彼はそれでもいいと思い始めていた。たとえ現実のものとならなくても、空想するとはなんと素晴らしいことだろう。空想が僕を幸せにしようとしている。夢のような空想に溢れた人生。なんと素敵だろう。僕は空想する力を手に入れた。洋一はそう思った。


 FIN

コメント一覧

    • そい
    • 2009年10月29日 08:16
    • 世界の歪みを変革するんだ。
      変革したらもっと変革するんだ。変革し続けるのってたいへんだ。
      変革辞めたら保守になった。変革辞めたら安定した。
      安定し続けるのも、なんかつまんない?
    • しん太
    • 2009年10月30日 23:21
    • >そい様
      こんばんは。
      自分の世界が納得出来ないうちはいっぱい変革したいですね。
      変革出来る要素があるうちは変革したいですね。
      でも保守して安定するのもいいかもね。

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