都市伝説 黒い少女 マレフィキウムの天使編【完結】(AKIBA賞応募可能?)

その頃、ネットで命を買う少女のことが話題になっていた。人は、彼女を黒い少女と呼んだ・・・。                                                               都市伝説 黒い少女の続編です。「ライトなラノベコンテスト」参加です。よろしくお願い致します。

⑥ ~ 精算 ~

「そろそろ時間ね、延長する?」

「結構です!」

「じゃ、精算カウンターへ、一緒に行きましょう。」

「マレフィキウムの天使」こと「うさぎ」に連れられ、レジへと向かう。



「コスプレOPコミで、1万5千円(消費税込)です。」 店員が事務的に言う。



「な、奈美、5千円貸してくれ!」 もう財布は破裂、助けを求めるしかない。

「ええっ、しょうがないわね。今回は社会勉強代ということで・・・。」



「毎度あり~っ。」 ライトにお愛想頂き、「マレフィキウムの天使」こと「うさぎ」にコスプレ姿のまま外まで見送られ、別れ際に諭された。



「あんたたち、もう来るんじゃないわよ。」



「分かってますよ。って、佐藤さん!( °O °;)」

なんとセーラー服姿の佐藤さんが、「ネオ秋葉ウエストビル」の前で「マレフィキウムの天使」こと「うさぎ」を出待ちしていたのだった。



「お金、出来ました。」

佐藤さんの手には、2千万円入りの紙袋がしっかりと握り締められていた。

「まさか、黒い少女はオレの報告を待たずに、契約したのであろうか・・・。」



‐ そういえば、成績悪いって言っていたもんな、あの女・・・ ‐



「黒い少女って? もしかしてあの女?」奈美が気づいてしまったようだ。

「こういちくん、そういうことだったのね!」 ‐ もう破滅である ‐



「さすがね、黒い少女の被害を減らすためにボランティアしていたのね。」

「へっ?」

「今日の経費は、奈美が負担してあげる。だからがんばって!」

「はあ、ありがとうございます・・・。」



奈美は勘違いしてくれたようだ。(と言うか、勘が悪いだけのようだ。)



と、そういう経緯により、仕切り直しとなった。



「佐藤さん。彼女はもうお金が貯まると言ってますよ。それに、佐藤さんとは、お客と風俗嬢の関係以上ではないって。」



残酷な宣告にもかかわらず、佐藤さんは一途だった。

「かまいません、彼女のために2千万作りました。受け取ってください!」



佐藤さんが「マレフィキウムの天使」こと「うさぎ」にお金を渡そうとしたそのとき、周りに大勢の警官がなだれ込み、オレたちは囲まれてしまった。



‐ 黒い少女のことが、とうとうばれてしまったのだろうか ‐



「銀行強盗容疑で、現行犯で逮捕する!」 佐藤さんの手に手錠がかけられた。



「ええっ、黒い少女のことじゃないの?」 オレは意外な展開に混乱した。



「なんだね、君は。部外者は引っ込んでいたまえ。」

警官はオレたちを制止し、佐藤さんを連行しようとする。



「お金の工面が出来なかったから・・・。」 佐藤さんはなみだ目でつぶやく。


佐藤さんは、黒い少女の連絡を待っていたが、なかなか来ないので待ちきれず、銀行強盗と言う強行に出たらしい。 (なんだか、責任を感じるような・・・。)



「黒い少女って言うのはなんだ? 」警察から尋問を受けている。

「ブ、ブラックスワンのことですよ、あの保険のCMの・・・。」



滅茶苦茶な言い訳であるが、なぜか警官には通用してしまう。

「こいつ、頭もイカれてしまっているらしい。」(減刑されるだろうか・・・。)



「佐藤さん!」 「マレフィキウムの天使」こと「うさぎ」が呼び止める。

「あなたのこと、きっと待っているわ。」



「ええっ!?」 何が起こったのか、オレも奈美も分からなかった。



「マレフィキウムの天使」、ボクは君のためなら耐えられる!」

佐藤さんは、そう言い残し、万世橋警察署へ連行されていった。



もうわけが分からない、「マレフィキウムの天使」こと「うさぎ」は、いったい何を考えているのだろうか。もしかして、佐藤さんの気持ちにほだされ、愛が芽生えたのだろうか・・・。



「うさぎさん、佐藤さんのこと分かってくれたんですね。」オレは嬉しかった。

「気持ちは伝わったわ。」

「それにしても、罪を償うまで待っててくれるなんて。」オレは嬉しかった。


「そうでも言われなきゃ、あの人もつらいでしょ。」

「へっ?」

「あの人が出てくる頃には、もうわたしはこの街に居ないわ。」



「もう少し、あともう少し時間が経てば、すべてのことが忘れ去られる・・。」


遠い目をして電気街のネオンを眺めている「うさぎ」は、とても美しく見えた。

それの姿は、まさしく「マレフィキウムの天使」だった。



「こういちくん、もう帰ろうか・・・。」

奈美がオレの上着の裾を引っ張っている。

「そうだな、帰ろうか・・・。」



秋葉原の街は新陳代謝が激しい、この間あった店がなくなったかと思えば、いつの間にかビルが建っていたりする。この「ネオ秋葉ウエストビル」だって、後どのくらい建っているのだろうか。

佐藤さんが今度秋葉原を訪れた時には、「ネオ秋葉ウエストビル」も「マレフィキウムの天使」も、影も形も無いかも知れない。

でも、来ることが出来ない間、佐藤さんがその目で現実を理解することが出来るまで、「マレフィキウムの天使」は彼の心の中で存在し続けることだろう。



‐ それで・・・・、いいんだよな・・・ ‐






翌日、日曜日にもかかわらず、黒い少女はオレを呼び出した。

「あんたね、また私の仕事を邪魔したわね。」

「そんな、不可抗力ですよ、不可抗力!」

「まあ、契約前だったから、賠償も何も無いけどね。」


佐藤さんは契約前だったので、黒い少女的には契約不成立で通るようだ。



「あの、オレはもうこれで「お役ごめん」で、よろしいでしょうか。」

「えっ、あなたは契約後のキャンセル、5千万円分しっかり償ってよね。」

「5、5千万・・・。」



まだまだ黒い少女との縁は切れそうに無かった。



でも、オレはなんだかすがすがしい気分だった。

とにかく佐藤さんは救われた、そう信じられる気がしたからだ。



「あんた、なにニヤニヤしているの、風俗嬢のことでも思い出したの?」



「なんでもないです。」 奈美のこと、いつか救える日が来ると信じよう。




ということで、「
マレフィキウムの美女編」、完結です、



お読みいただき、ありがとうございました。

⑤ ~ 天使登場 ~

「マレフィキウムの天使」だ!」(思わず小さく叫ぶ。)



佐藤さんから見せてもらったツーショット写真のようにメイクはしていなかったが、オーラがあった。(間違いない。)

まあ、奈美に似ているというところも判断基準ではあったが・・・。さすがに出勤時の服装は質素で、ALL UNISHIRO?という感じである。



「あの人がそうなの?」 奈美も興味深深である。

「なんか、わたしに似ている感じ・・・。」(奈美もそう感じたようだ。)



意を決して、「マレフィキウムの天使」を呼び止める。

「あの、すみません。」



彼女は呼び止めに面食らったのか、足を止めてくれた。

「何か御用でしょうか。」 意外と冷静な反応である。



「あの、少しお話する時間をいただきたいのですが・・・。」

「どこのお店の人か知らないけれど、高校生?をスカウトに雇うなんて、秋葉原の風俗業界も低年齢化したのね。」

メイド姿に着替えている奈美はともかく、オレは高校の制服姿だったので、足元を見られてしまったようだ。



「風俗!?」奈美が聞き返した。(当然奈美には事前説明していない。)

「ちょつと、こういちくん、聞いていないわよ。」

「あ~、その~、言ってないよね・・・。」

「言ってないよねじゃないわよ!どうなってるの?」



二人の会話に少し「じりじり」したのか、「マレフィキウムの天使」は切り出す。

「あの、お店に出なければならないんだけど、もう行っていいかしら。」

「あっ、すみません。少しでいいんです。お時間ください。」

「じゃ、お店でお話しましょう。スタートは予約入っていなかったから。」

オレは仕方が無いと、「マレフィキウムの天使」の提案を受け入れた。



「30分8千円よ。」

「わ、分かりました。」



「ちょっと・・・。」 奈美は大困惑である。



成り行きとは言え、風俗店初体験である。(メイド姿の奈美と一緒だが・・・。)



店に入り、「マレフィキウムの天使」は店長と打ち合わせしている。

(そりや、高校生を風俗店に連れ込んだんだから当然だが・・・、それにメイドさんも付いてくるなんて異常だよな。)



「話はつけたわ、2年3組で待っててね。」

「2年3組?」 奇しくもオレと同じクラス・・・。



「部屋の名前みたいよ。」



奈美の指摘で通路を見てみると、クラス名が部屋の名前になっていた。」

「なるほど・・・。」 2年3組は一番奥のようだ。



2年3組に着く前に、通路で別のお客さんとすれ違うが、誰もオレの顔を見る客はいなかったが、奈美はガン見されていた。



「奈美、おまえ、店の人と間違われているぞ。」



通路の奥に行くにしたがって、怪しげな声が聞こえてくる。



「こういちくん、ここはいったいどんなところなの?」 奈美の顔は真っ赤だ。

「手コキってなに? 本番なしって・・・?」



‐ そんなこと、聞くなよ! ‐ オレも真っ赤である。



「ラ、ライトな風俗ってことさ・・・。」



‐ こいつ、風俗がどんなところか分かっているんだろうな・・・ ‐



急いで2年3組に入り、「マレフィキウムの天使」を待つ。

部屋の中はベットと棚があるだけで、簡素であった。



座るところはベットしかない。オレと奈美は初めて一緒のベットを使った。 いや、座った。 そういえば、「奈美は布団で寝ているんだったよな」などと、つまらないことが頭をよぎるが、不思議といやらしい気分にはならなかった。



「お待たせしました。」 

部屋のドアがノックされ、「マレフィキウムの天使」が入ってきた。

その姿・・・、上はブラ、下はパンツと、上下ピンクの下着姿であった。



「うさぎです。よろしくお願いします。」(源氏名だろうか・・・。)

あっけに取られる高校生二人・・・。(当然である。)

「いちおは、お客さまだから、手荒な事はしないけど、いったい何の用なの。」



「こういちくん、見ちゃだめ!」

奈美がオレの目を両手でふさぐ。自然と体は密着し、奈美の胸がオレの背中に当たる。これはこれでかなりのサービスだ。(鼻血ブーです。)



「わ、分かった、分かった、見ないから!」 

オレは奈美に目をふさがれたまま、彼女にお願いする。



「すみません、な、何か着てもらえませんか?」 

「あら、コスプレのオプションね。この中から何か選んでよ。」



奈美の手の隙間から、彼女から示されたパンフを見ると、「女子高生」、「看護婦」、「OL」、「メイド」、「アニメ」と、モデルが衣装をつけた写真が貼ってあった。



「奈美、おまえが選べ!」 オレは責任を奈美に押し付けた。

「じ、じゃあ、アニメで!」

「ア、アニメかよ!」 → なぜか激高するオレ!

「どういう意味よ!」 痴話喧嘩の開始である。



「じゃあ、少し待っててね。」 

そう言うと、騒いでいる俺たちを尻目に、彼女は部屋を出て行った。



待っている時間が気まずかった。実質2、3分だっただろうが、1時間くらいに感じた。



「お待たせしました。では、お話しましょう。」 彼女が部屋に戻ってきた。

「はい、お願いします。」



彼女のコスプレは、人気ロボットアニメのヒロインのものだった。

「わあ、似合いますね!」 奈美は喜んでいる。



‐ 何の目的でコスプレするのか、分かって言っているんだろうな! ‐



オレは「うぅん」と咳払、気まずい状況を早く解消しようと、話を進めた。



「あなたをとても愛してる人がいるんです。」

そう切り出すと、オレは佐藤さんから聞いた話を始めた・・・。





「じゃあ、わたしのために佐藤という人が死んでくれると言うことね。」

「そうです。あなたは佐藤さんのことを、どう思っているんですか?」

「どうもこうも・・・、そりゃ身の上話とかしちゃったけど・・・。」

「相手の話も聞いちゃったけど・・・・。」



「あなたから、「命を粗末にしないで!」と、言って欲しいんです。」

オレは佐藤さんを黒い少女の手から救いたかった。



「ねえ、こういちくん、今の話って、どっかで聞いたことがあるような・・。」

奈美が何かに気づき、小声でオレに聞いてきた。



‐ うっ、しまった。奈美には、黒い少女とのことは秘密だった ‐



「ねえ、どうしてあなた、他人のことで、そんなに一生懸命になるの?」

本質を突く質問が、「マレフィキウムの天使」こと「うさぎ」より浴びせられる。



「そ、それは、友達だからというか、何というか・・・。」



‐ し、しまった、突っ込まれてしまった ‐



「彼、「友達なんかいない。」って、言っていたわよ。」(正確な情報である。)



「ま、あの人とは、お客と風俗嬢の関係以上ではないから、言ってあげてもいいけど、彼、出入り禁止なのよね。あなたが伝えてあげて。」



黙って聞いていた奈美が口を開く。

「でも、あなた、過去を消したいんでしょ、お金はどうするの。」

「お金? ああ、もうすぐ貯まるわ、そうしたらこんな街とは「おさらば」よ。」


風俗嬢(それもライトな)って、そんなに儲かるのだろうか・・・・。

④ ~ 再調査 ~

翌日、黒井はオレの前に現れた。

「で、情報はそれだけなの?」
「はい、」
「もう一度考えろと?」
「はい。」

「あんた、店に行ってきて。」
「はあ?」
「店に行ってきて。」
「店って、どこの店に行くんですか? 」
「「マレフィキウム」、天使に確認してきて。」
「高校生を、風俗店に行かせるんですか。」
「何か文句ある?」
「まあ、行ってみたいことは・・・、みたいですけど・・・。」
やっぱり奈美の顔が浮かぶ。それは恐怖からか、愛からなのか・・・。

幼馴染の奈美は可愛い。黒い少女との一件で、これまでを超えた関係になったと自負しているが、恋人と呼べるには、まだ少し距離がある感じがする。

教室でボーっと考えていたら、奈美が声をかけてきた。

「こういちくん、何か悩んでいるの?」
「えっ、いや、別に・・・。」
「奈美は判っちゃうんだぞ、隠し事しているって。」
高校生とはいえ、女の勘は恐ろしいものである。

「教えてくれたら、力になれるのになあ。」
「こういちくんは「奈美のもの」なのになあ。」
「奈美は、人殺しになるかも知れなかったんだよ。」

「ああ、もう分かったよ!凸(`△´+)」 オレは我慢できずに承諾する。

秋葉原の「マレフィキウムの天使」と呼ばれる女の人を慕っている大学生から相談を受けたこと、そしてそれは騙されていると教えてやったことを話した。

当然、黒い少女のことは内緒である。

「どうして、こういちくんが、そんな相談を受けるの?」
「L、LINEで知り合ったんだ。」 もちろんデマカセである。
「LINEでねえ・・・。」 疑いの眼である。

「わざわざ秋葉原まで行ったの?」
「悪いかよ。」
「奈美も連れて行ってよ。」
「なに?」
「奈美も連れて行って!」
こうなると、奈美はもう引かない。しかし、一緒に行って、調査が出来るものだろうか・・・。

今日は土曜日、あらかじめ「マレフィキウムの天使」の出勤スケジュールを確認、(と言っても、HPを見ただけなのだが)午後4時にあわせて「ネオ秋葉ウエストビル」前で待ち伏せすることにした。オレと奈美は地元の駅で待ち合わせをして、電車で秋葉原へと向かう。
高校の校則で、外出時は制服着用となっているが、まさか奈美も制服で来るとは思わなかった。

「少しくらい、お洒落して来ればいいのに・・・。」
「どうして? デートでもないのに、お洒落しないといけないの?」
「そりやそうだけど・・・。」

‐ この間の言葉はなんだったんだよ ‐ 自問自答してみる。

「あなたが死んだら、わたしも死ぬからね!」

普通、こんなこと言うのは、恋人か家族・・・、家族か・・・。

‐ は、ははっ、そういうことかな・・・ ‐ すこし気が重くなった。


十分余裕を持って秋葉原に到着、土曜日の午後の人出はかなりのものである。この間入ったメイドカフェで、奈美と時間をつぶすことにした。

「お帰りなさいませ、ご主人様、お嬢様!」
相変わらずの歓迎振りである。

「こういちくんって、こんなところに出入りしていたのね・・・。」
奈美は少々あきれ気味だが、実は結構楽しんでいる様子だ。

「そ、そんなこと無いよ、2回目だもん。」
「どうなんだか・・・。」

「じゃあ、わたしは、この「萌え萌えオムライス」食べたい。」
「じゃ、「オレは愛情たっぷりのコーヒー」だけでいいよ。」

交通費だけでも大変なのに・・・、何しろ軍資金が足りない。
本来なら、「マレフィキウムの天使」に店内で会うのがベストなんだが、(少し興味もあったりする)高校生のお小遣いじゃ困難である。
ましてや奈美と一緒となると、その選択は地獄の片道切符、とにかく奈美のご機嫌を損ねないように時間をつぶす。

ハートマークが手書きされたオムライスを食べ終わると奈美は言い出す。

「ねえねえ、わたしもメイド服、似合うかな?」
「えっ、そりゃ似合うと思うよ。」
「じゃ、この体験コースやっちゃうね!」
「えっ?」

メニューの端っこに、メイド体験コースが書いてあったのだ。
4千円・・・、これは痛い出費だが、止むを得ない。

奈美が席を立って10分くらい経っただろうか、新しいメイドさんが現れた。
「新人の奈美で~す。」
そこには萌え萌えの奈美が立っていた。腰のところに名札までついている。

‐ に、似合いすぎる ‐ 

学校の制服姿とはまた違って、これはこれで正解である。(萌え)

「どお、結構似合っているでしょ ?」
「お、おう、似合っている。」
「じゃあ、これ着て帰っちゃおうかな ?」
「ええっ!」
「メイド服を購入すると、体験コースの4千円はサービスなんだって。」

さすがに驚いた。奈美がこれほど秋葉原に順応性があったとは・・・。
オレはメイド姿の奈美と、おいしくお茶をいただいた。
当然ながら、メイド喫茶のお会計は跳ね上がった。
‐ お金の力はおそろしい・・・ ‐ (実感した。)

「15分前になったから、そろそろ張り込みますか。」
「張り込みねえ。」

「行ってらっしゃいませ、ご主人様、お嬢様!」

店を出て、「ネオ秋葉ウエストビル」前で待ち伏せを開始する。
周りには、メイドさんがうじゃうじゃしている。
奈美のおかげかどうか、目立つことなく張り込みできそうだ。

しかしながら、別の問題が発生!

「彼女、どこのお店なの?」行きかう男共が、やたらと奈美に声をかける。
「今日は彼の専属なの。」奈美はオレの腕に手を廻し、腕を組んできた。
「なんだ、先約済みか。」無事追い払うことが出来たが、こんなことが3回はあっただろうか・・・。(少しうれしい・・・。)

「わたし、メイド喫茶でバイトしちゃおうかな?」
「それは却下!」 (何ということを言い出すんだ・・・。)

そんなことを繰り返していると、ターゲットが現れた。

③ ~ マレフィキウムの天使 ~

とにかく落ち着いたところでと、近くの喫茶店に入り、話を聞くことにする。


「いらっしゃいませ!ご主人様、お嬢様!」

なんと、メイド喫茶だった・・・。さすが秋葉原、侮りがたし・・・。

しかし、かえって目立たない感じでよかったようだ。(女装男子連れだもんね。)


「では、お話、聞かせてください。」 オレはもたもたするのが嫌いだ。

「はい、実は・・・」

佐藤さんのお話は、ネオ秋葉ウエストビル2階にある「マレフィキウム」と言う店の女の子を助けるため、お金が必要とのことだった。

「彼女、元彼に写真取られていて・・・」


その彼女と元彼は、最初は同棲するほど仲むつまじかったらしいが、相手のDVが原因で別れて彼女が逃亡。それを根に持った相手が、ネットにあんな写真や、こんな写真をばら撒き、それを消すためにお高いハッカー?を雇わなければならないため、お金が必要、自分の命を差し出そうということらしい。


「で、佐藤さんとその彼女との関係はどうなんですか?」

当然、今彼だろうと思い聞いてみたが・・・、


「ただのお客とお店の女の子という関係です。」

「はあ?」(これって、騙されているのではないだろうか)


「ボクは、とにかく彼女を助けたいんです。」

「どうしてそこまで・・・。」 オレは困惑した・・・。


「彼女はボクに生きる希望を与えてくれたんです。」


‐ 命を売ろうとする人間が、生きる希望だと? ‐


「ボクは大学に入学したものの、友達も出来ず、ただ漫然と日々を過ごしていました。」 佐藤さんの話は続く・・・。


そんな彼だったが、秋葉原は楽しいところだった。自作PCの店はしのぎを削っているし、メイドさんは優しいし、猫カフェはあるしと、とにかくいろんな属性の人々が歩いている混沌とした街、まあ、彼なりの居場所を見つけたと言うことなのだろう。


ある日、ジャンク屋を見て歩いていたときに「ネオ秋葉ウエストビル」の2階には何があるだろうかと上がってみたら、「マレフィキウム」という店があった。中を覗くと、俗に言うブルセラ、コスプレ専門店だった。


前々からその気はあったのかもしれないが、店内に「JK剥ぎ取りセット」?なるものがあり、矢も盾てもいられず(本当は「矢も盾もたまらず」、「居ても立ってもいられず」と混じったんだろう)購入、店を出たところでその彼女に会ったのだという。


「彼女は、そんなところで何をしていたんですか。」

「彼女は・・・、ライトな風俗嬢だったんです。」


佐藤さんは彼女にキャッチ、店に誘われ、とりあえず「たわいの無い」お話をしていたが、「何を買ったか見せてくれ。」とせがまれ、彼なりに抵抗はしたらしいのだが、とうとう開封、「JK剥ぎ取りセット」を見られてしまったのだ。


「恥ずかしがること無いのよ。」と、物分りのある言葉を頂き感動、言われるがままに服を着替え初女装、小柄で華奢、もともとロン毛だったので、化粧をすれば?そのまま女子高生に変身完了したのだ。


「お店的な仕事もさせてね。」と、その後入念なサービスを受け、この世と思えない満足感を得たとのことだ。


‐ 女装するだけでも興奮するだろうに、その上サービスまで・・・ -


なんだかオレも体験してみたくなるような話だが、頭に奈美の顔が浮かぶ・・・。


- こんなことしたら、確実に殺されるな・・・ ‐


おかげでフルブレーキがかかる。オレは一線を越えずに済んだようだ。


「で、それで、どうして命をささげるところまで行き着いたんですか?」

オレは自分のことは棚に上げ、聞かずには居られなかった。


「マレフィキウムの天使」、佐藤さんは、本名も知らない彼女をそう呼んでいる。女装に目覚めさせてくれた?彼女目当てに店に通いつめ、あのサービス?を受けながらも次第に打ち解け、お互いのプライベートな話までするようになり、元彼の話を聞いたらしい。


「自分の過去を消すために、お金が必要なの。」

彼女がライトな風俗嬢になったのはそういうことらしい。


「だから、お願い、もっと通ってね。」 

佐藤さんはバイト代をすべてつぎ込み、天使に貢献(貢いだ)した。

しかし、彼女は後もう少しで目標金額に達するというところで空き巣に遭い、通帳と印鑑を盗まれ、被害に気がつく前に銀行から全額引き出されてしまったそうだ。


佐藤さんは「もう一度やり直そう。」とか、「ボクが責任(結婚する)を取る。」など、彼女を慰めたりしたそうなのだが・・・、「もうこれ以上、あなたに迷惑かけたくない。」と言われ、店も出入り禁止となったそうだ。


佐藤さんは寂しそうに「マレフィキウムの天使」とのツーショット写真を見せてくれた。「マレフィキウムの天使」は、なんとなく奈美に似ている気がした。


「それからボクは、このあたりをふらふらしているんです。」

遠い目をする佐藤さん・・。オレには騙されているような気がするのだが・・。


「いったい、彼女はいくらお金が必要だったんですか?」

これは黒井から命令されている確認である。


「2千万だそうです。」

「2千万ですか・・・。」(なんか、身につまされる金額である・・・。)


「でも、佐藤さんは、いいとこまで貢いだんでしょ。」

「貢いだんじゃない、ささげたんだ!」


佐藤さんはオレの言葉に怒り出したが、オレは食い下がる。


「だって、彼女のお客さんは、佐藤さんだけじゃないですよね。」

「初めはそうだったが、最終的には、彼女の出勤日をすべてリザーブしたんだ!」

「それでですよ、出入り禁止になったのは。」

オレの指摘に「はっ」とする佐藤さん、しばらく目をつぶっていた・・・。


「金の切れ目が、縁の切れ目・・・、それでもいいんです。」

下を向いたまま語りだす佐藤さん、さらに言葉を重ねる。


「それでも彼女を助けてあげたい。」


「佐藤さん、あんたねえ・・・。」 オレにはもう何も言えない・・・。


ふと、われに返ると、周りからの視線が集中している。

男子高生とセーラー服のJKと、いや、女装男子の別れ話に話題集中である。


「ご主人様、未成年の方のお帰りの時間になりました。」

午後10時、ニコニコ顔のメイドさんが店を出るように促す。

「うわっ、もう帰らなくっちゃ!」 今から帰っても、12時を廻ってしまう。

「佐藤さん、もう一度、よく考えてください!」


オレはそう言うと、店を飛び出て駅へと急いだ。

② ~ ネオ秋葉ウエストビル ~

‐ くっそう、秋葉原だと?!ここから何時間掛かると思っているんだ -

 

黒井から送られてきた情報によりますと、連絡してきたのは都内の大学に通う2回生:佐藤一郎(20歳)、血液型O型、生年月日は・・・(ここは個人情報)身長155センチ、体重50キロ、趣味:コスプレ・・・って、よく調べてあるな・・・。

指定された場所は、駅近くの「ネオ秋葉ウエストビル」前信号のあたり、あまり秋葉原のことは詳しくないが、とにかく行ってみる。

駅に付いた頃はもう午後8時を廻っていた。あまり時間はかけられないので、とにかくその辺を歩いている人に片っ端から聞いてみることにした。

 

‐ まずは、あのおタクっぽい兄ちゃんに聞いてみよう -

 

「ネオ秋葉ウエストビル? おまえ高校生だろ、何しに行くんだ?」

相手にされない、何かいかがわしいところのようだ。

「いえ、その、待ち合わせしているだけなんですけど・・・。」

言い訳してみたが、相手にされなかった。

 

‐ 今度は、あのティッシュ配っているメイドさんに・・・ ‐

 

「おにいさま、ネオ秋葉ウエストビルですか? 連れて行ってあげますけど、」

「ありがとう!」 

 

‐なんて親切なんだ!、さすがはメイドさん! ‐

 

「お金かかりますけど、いいですか?(-)

「ど、どういうことですか?」

「わたしとデートすると、1時間5,000円なんです。」

「いや、デートしなくていいんですけど・・・。」

「じゃあ、お仕事の邪魔になりますから、あっち行ってください、プンプン

○`ε´○)

 

な、なんて世知辛いんだ、ニュースでやってたことって、案外ホントだったんだな・・・、なんて思っていたら、万世橋警察署が目に入った。

 

‐ 聞いても大丈夫かな・・・ ‐

 

「ネオ秋葉ウエストビル? ああ、そのガードの下辺りだよ。」

あっさり教えてくれた。

 

‐ さすがはポリスマン!感謝します! ‐

 

深々と頭を下げ、お礼を言い立ち去ろうとするが、警官からの視線が痛い。

ずーとこっちを見ている・・・。(気がする・・・。)

 

‐ ど、どうしよう・・・ ‐

 

ガードに近づくと、色っぽい看板が目に入った。これはとどまりにくい・・・。

ちょうど横断歩道(押しボタン式)があったので、反対側に渡ってみる。

 

‐ よし、警官からの視線は、ついてきていないな -

 

また反対側に渡ってみる。なんだか居心地が悪い・・・。

そこでまた反対に渡ってみる。

 

‐ なにやってんだろ、オレ・・・ -

 

自分で自分が情けなくなった頃、佐藤一郎らしき男を見つけた。

いら、正確には、オレが見つけられたという感じだった。

 

「あの、もしかしてあなた、保険屋さんですか?」

黒井からの資料の通り、小柄で華奢な感じのする、セーラー服姿の男だった・・・。

 

‐ セーラー服姿の男? -

 

われながらのノリツッコミである。

奈美も筋肉質の足をしているが、やはり男の足は違う、一目でそれと分かった。


「あの・・、佐藤さんですか?」

「はい、佐藤です。」


声は作っているのか、女っぽかった。しゃべり方も・・・。

「あの、訳あって、代理できたんですけど、お話聞かせてください。」

「はい、お待ちしておりました。」

 丁寧な言葉使いが気持ち悪かった・・・。

① ~ 片棒? ~

オレは県立桜ヶ丘高校の2年生、高野一郎、通称「高一」だ。
幼馴染(恋人?)の中浦奈美からは「こういちくん」、友達や担任の先生からは、「こういち君」と呼ばれている。

何が違うかって? 親しみだよ、し・た・し・み!


ある日の放課後、奈美とカラオケに行った帰り、いろいろあったが、何とか解決、奈美との距離もガチて縮まり、手を握って帰ったりした。

詳しい経緯は、ここ↓を見て欲しい。

http://blog.livedoor.jp/tadano_kouichi/archives/cat_139908.html



それは、奈美を家まで送り、手を振って別れたばかりのときのことだ。

連絡はすぐにやってきた。オレの携帯に着信が鳴り響く・・・。


「こういち君、命を売りたいとの依頼が入っているのだけれど・・・。」

あの、「黒い少女」こと「黒井」からだった・・・。


「あの、オレはもう関係ないかと・・・。」

「あなたの契約、キャンセルしてあげたけれど、賠償がまだなのよね。(-。- )

「ば、賠償ですか・・・。」


‐ 黒い少女との一件は解決したとばかり思っていたが・・・ ‐


しばらく間が空いたが、黒井は容赦しない。

「確か、一生かかっても払いますとかなんとか・・・。」

「た、確かに言いましたけど、許してくれたんじゃなかったんですか。」

「あなたたち、すぐに帰っちゃったけど、聞こえなかった? 」

「確か、黒井さんは、あんたたち、もうどっか行ってと・・・。」

「あら、よくわたしの名前を知っているわね、上司との電話を聞いていた証拠ね。」


オレはなんだか不安になってきた。耳の中に残る言葉があったのだ。


「お・と・と・し・ま・え、一生かけて償ってもらいますか、と・・・。」

「あれって、「奈美に償え」ってことじゃなかったんですか?」

「そんなこと、一言も言ってないわよ。思い違いね。」

「そ、そんな・・・。」


本当に思い違いだったのだろうか・・・。そうだとしても、ここは切り返さなくてはなるまい・・・。


「そうだ、オレ、お金ないです。」

 

‐ これしかないでしょう! ‐


「分かっているわよ、だから、「か・ら・だ・」で返しなさい。」

「か・ら・だ・ですか? 肩でもお揉みすればよろしいでしょうか。」


‐ ここはトボケル・・・ ‐


「おふざけじゃないわよ、わたしのアシスタントをするの。」

「アシスタント? ですか。」


‐ 何がなんだか分からない ‐


「要するに、仕事を手伝えってことよ。」

「ええっ、そんな。」

「いいから、相手の情報を転送するから、話を聞いてきて。」

「そ、そんな・・・。」

「わたしも最近忙しいのよ。仲間内じゃ、成績最低だし・・・。」

「そうなんですか?!」(そんなこと言われても・・・。)

「最近、自殺志願者が多くなってきてはいるんだけれど、本当に死にたい人なんて・・・少ないのよね。」

「はあ・・・。」(それはお困りでしょう・・・。)

「人間、「生きていて何ぼ」なのよね。」

「じゃあ、どうしてこんな仕事しているんですか?」


‐ ここは逆質問! ‐


「内緒。」

「ケチ!」(身も蓋もなし。)


「さ、行くの、行かないの?」

「行かなかったらどうなるんですか?」

「そうね、今度はこの間の彼女と二人で、「心中」でもしてもらおうかしら。」

「鬼!、悪魔!(*´)

「ふん、なんとでも言うがいいわ。元はといえば、あんたが悪いんじゃないの。」

「うっ。」(悪態つきやがって・・・。)


「さ、行くの、行かないの?」

「な、奈美には手を出すな!」(奈美に知られたら、それこそ殺されてしまう。)

「じゃ、行ってきてくれるのね。」

「行きますよ、行きますとも!」(もう、やけくそである。)

「はい、よろしい、では報告を待っています。よろしく。」

「は、話を聞いてくるだけですからね!(*o)/

オレの言葉が終わらないうちに電話は切れてしまった・・・。


‐ オレは、死神の片棒を担がされてしまうのだろうか・・・ 

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